エルフが現れた。3
エルスヴァンから出るとゴブリンはフウガに向かった。
エルスヴァンで敵を引き付けている内に、今度は軍略で戦おうというのだ。
「よお。」とレッド。気軽く片手なんか上げている。
ミカドはしばしその様を見てから放つ。
「遅かったですね。」
「そう言うな。あとはアンタお得意の軍略だ。敵はエルスヴァンで相当ダメージを食らうはずだからな。」レッドはご陽気だ。
「ダメージ、ですか。恐らく皆無でしょうね。」ミカドは嘆息してこれを言うとレッドも表情を変える。
「なぜ。」
「風の魔法結晶を、いえ、全ての魔法結晶を持っていかれました。」
「それにしたってノーダメージって事は無いだろ。」
「以前にお伝えしたかと思いますが?」
「プロミネンスが発生する程の火力だって話か。」
「それを打ち消したという話をです。」
「もっと解りやすく言いやがれ。」とレッド。ミカドは再びため息をついて答える。
「火とは何ぞや。」
「あ?」
「火とは、かいつまんで言うなら摩擦。分子の活動が大気中にまで達する、その姿が火なのですよ。」
「だから何だ。」
「こういう話は苦手の様ですね。では風とは何ぞや。」
「おちょくってんな。」
「風とは、揺れです。火が高密度でのみ発生するのに対し、風は密度は関係ありません。」
「つまり発生条件の差がそのまま影響し合うから、風の魔法は火の魔法を打ち消せるってことか。」
「惜しいですね。風も火も大きさで競えばそれほど変わらないという所までは分かって貰えたみたいで何よりです。しかし、それだけでは説明不足。そこで平たく言いましょう。
風の魔法とは揺れの操作、つまりベクトルの操作。対して火の魔法とは高密度での分子活動であり、媒体となる物質は謎。加えて方法も謎です。
しかし分子の活動さえ一定の方向に揃える事が出来たなら、摩擦という条件がそろわなくなります。火のの魔法の最低限の条件さえ揃わせなければ風の魔法に軍配が上がると言う事です。」
「長文ご苦労だな。まったく毎度のことながら次元が違う話を平気でしやがる。」
「物質と方法さえわかれば火は起こせます。」
「ベクトルの操作ね。つまりどんな力も逆向きに跳ね返しちまうって事か。すげえな風の魔法。」
「そこまで万能ではありません。」
「今はだろ。それよりこれからどうするかだ。」
「グリーンピース様ならば、あるいは。」
「グリーンピース・ワーガイア、ジョヴァンニか。」
「もしくはブルーブレス様ならば、何らかの魔法結晶を生み出しているかもしれません。」
「ぶっ魂消た事言うじゃねえか。」
「そうでしょうか。国宝を生み出すは人の所業です。」
「魔法結晶の偽物くらいなら、物質の発生を有する大地の魔法でどうにかなるか。だとしても、ジョヴァンニには行きにくい。」
「お察しします。そこでヒュートレッド様は私がお守りいたしましょう。」
「守るならブルーブレスだろ。」
「は?」と、ミカド。
「一緒に来るなら……。」と、レッド。だがミカドはこれを遮る。
「一緒にはいきません。」
「おいおい、俺一人じゃ死んじゃうって。」
「貴方は本当に腰抜けですね。レッド。」とヒュートレッド。金髪の少女だ。
「いきなり出て来るな。びっくりするだろ。」
「ずっといました。」
「お呼びじゃねえ。」
「ミカドさんは私を守ると言いました。だから私はジョヴァンニへ行けるのです。そして憎きブルーブレスを打って取るのです。」
「どうだ、これがジョヴァンニの姫様だ。」とレッドはミカドに言う。
「流石に太々しいですね。お顔の皮が羆並みなのでしょうか。」
「皮肉はどうあれ、預かるじゃなく、守るって言葉を選んだ時点でおめえの負けだ。ミカド。君子危うきにに近寄らずとか考えてんならお門違いってもんだ。エルフが出てきた以上世界の何処に居たって危険なんだよ。」
「そうですか……、分かりました。同行しましょう。」
その一言で決まりだ。次はジョヴァンニ。




