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さらわれた姫様と助け出す英雄

残酷な描写があります。よろしくお願いします。


 ゴトゴトと、荷馬車が揺れる。

荷台には一糸纏わぬ女。姫が居た。

馬に鞭打つはゴブリンであった。

姫は、膝を抱え長い金髪を風のそよぐままに、泣いていた。

事態を説明するのに時をしばし戻そう。


 ——— 十日前の事。夜。

 ゴブリンの群れがたったの5人の兵になぎ倒されていた。

ゴブリンも弱いが兵も強い。

幾度も幾度も倒れども、ゴブリン達はようやく兵5人を全滅に追いやった。

そうして、姫はゴブリンのアジトに連れ込まれたのである。

洞窟である。世界遺産級の洞窟をゴブリンは自分たちで掘るのだ。人間のやるそれよりもよっぽど荒々しい作法に則って。

ともかく、姫は衣類を剥がされ、錠に掛けられ、阿鼻叫喚。

 様々な辱めを受けたのであろう。十日たった頃には、「もう許して」が第一声であった。

しかしこのゴブリン、服装が違った。服を着ていた。上下共に服を着ていた。

 姫が異変に気付いた頃には、このゴブリン、錠を外していた。

「なぜ?」と、姫は問う。

「逃げるんだよ。」と、服を着たゴブリンが返す。

「逃げる? どこに? どうやって?」

「うだうだ言わずについて来い。」

「来いと言われて、はいそうですかと行くものですか。」

「じゃあここで、このまま苗床になるか。それがアンタの自由か?」

姫は答えを決めかねた。無言である。考えているのだ。

このゴブリンの言う事を聞いて更なる辱めを受けるか。このままこれまでと同じような辱めを受けるか。

「行きます。」

答えは決まっていた。このゴブリンを信じてみようという答え。本当にあるか分からないけれど、逃げるという選択肢を姫は選択したのである。

「しかし、その前に……」

「服なんてねえ。そのまま来い。」ゴブリンは遮って言う。

無礼千万だ。が、錠を外してくれただけで御の字というもの、姫は覚悟を決めた。


 他のゴブリンに見つからない様に外に出れば荷馬車が用意されていた。

 ――― そして、今に至る。

「おい、見ろ。」と、ゴブリンは笑いかける。

「見たくありません。見られたくありません。」そう返すと姫はまた泣いた。

「家だ。」正面に向き直りゴブリンは続けた。

「では、食事とお召し物を分けてもらって来てください。」

「分けてもらう……ねえ。」

「何ですか? その空白は。」

「そういうのは、人間様同士勝手にやってくれって話だ。」

「話が見えてきませんが……?」

「奪った方が早え。って話だな。」

「!? そういう卑下た考えだからゴブリンはいけないのです!」

「じゃあ、通り過ぎるか。」

「待って、私が行きます。その代り服をください。」

「……まあ、俺はどっちでもいいんだがな。」

「では言う通りに。」

「アイサー。」言ってゴブリンは馬車を止める。

止めるとその場で服を脱いで全裸になる。

思えばなぜ最初からそうしなかったのか分からないくらいスムーズに裸になり、服を姫に投げて寄越した。

「行ってまいります。」姫は民家に入らずして服を得た訳だが、そういって民家に向かう。

 その様子を眺めて送るゴブリン。

 姫は、民家のドアをノックして、「ごきげんよう。」と言った。

それから続けて「いらっしゃいますか?」と尋ねる。そしてまたノックをする。

 それを暫く繰り返す。

 するとドアが開いて男が出てきた。

青年だ。「どうしましたか。」と、男は言う。

 かくかくしかじかと姫。上手く一人である事、腹が空いている事、食事を分けてもらう旨を伝える。

青年は、「それは大変だ。」と言って中に誘う。

 姫も乗って屋敷の中に入るとそこで音がした。ドンとぐえとガタンが同時に聞こえて驚く。

驚くと後ろを見やる。

ゴブリンが民を殺していた。人を殺していた。ナイフで喉を掻っ切って殺していた。

「な、な、な、な、……」

「なにっておめえ馬鹿か? のこのこ人んち入ってんじゃねえよ。」

「で、で、で、で、……」

「でももクソもあるか。こいつは闇業者だ。」

「は?」

「犬の匂いがする。今は昼だから犬は寝かされてるんだろうが、こうやって人気のない所で犬を繁殖させて、狂犬に育てる。そしたら人里襲ってゴブリンの富豪かなんかから金を貰うとか、そんなところだ。」

「蛇の道は蛇という事ですか……」

「ひでえ云い様だな。」言ってゴブリンは屋敷の中を散策する。

 洗ってあるかどうかも分からない服を着て、残り少ない食事を頂く。それから棚を動かし隠し階段を見つけ姫を案内する。

「ひっ……」姫は犬の量に驚く。思っていたよりずっと多かったのだろう。その数おおよそ二百。

「やっぱりだ。狂犬の匂いがする。」

「人里を襲うといいました。」

「言ったな。」

「どうにかなりませんか?」

「俺に出来るのはこれくらいだな。」言ってゴブリン。掛けてあった革製の手袋をひょいと持つ。

「は?」姫はそういった。素っ頓狂な声でそう言った。

「見ての通り檻は誰でも外せる。が、この手袋がなきゃ開けられねえ。噛みつかれるからな。」

「すると?」

「替えの手袋が必要だ。が、この屋敷にはスペアの手袋なんてなかった。」

「つまり?」

「あー、もういいだろ?」

「ですが……」

「急がねえと追手が来る。行くぞ。」

とゴブリンはおたおたする姫を置いて先に行ってしまうので、姫も渋々ゴブリンについて行く。

 つまり、人里と襲うのが少しだけ遅くなる。と言う事だけ言えばよかったのだけど、ゴブリンはそれの先を考えてしまったのだ。


 それから三日。ゴブリンと姫の旅は続く。そうして三日後。

「それにしても解せません。」

「何がだ。」

 この会話も勿論荷馬車での事。

「なぜ殺す必要があったのですか?」

「お前のためだと言えば気は晴れるか?」

「理由を聞いています。」

「だから、オマエノタメダヨ。」

「茶化さないでください。」

「殺さなきゃおめえ、ゴブリンのアジトに逆戻りだろ。今度こそ苗床にされちまうぞ?」

「ゴブリンが人間を操るなんて考えられません。」と、きっぱり言った。

「金って道具はそうやって使うもんだろ。人を使うために使うもんだろ。物を買うためとか、皆がハッピー幸せの為とか、おためごかし言ってんじゃねえぞ。」

「それでは人に仕えるゴブリンもいる事になる理屈です。」

「お金ってやつは働いた報酬で自然と沸いて出るもんじゃねえぞ?」

「愚弄です。これでも王族。造幣所があることくらい知ってます。は、まさか造幣所をゴブリンも持っている?」

「悪くねえ推理だが残念。答えは、奪う、だ。」

「やはり、卑下ています。」とげんなりとした姫は言う。

「そっちの方がシンプルだろうに。幸せの為とか言うなら麻薬吸ってりゃいい。」

「そんなの間違ってます。」

「世界の為に、っていうなら、そうだな。間違ってる。が、それも一つだ。アンタはシンプルさに欠けるから、いろいろとごちゃごちゃしちまってるのさ。」と言った所で町が見える。城下町だ。

 高くない壁に意味のない掘りに似つかわしい丸太の架け橋は誰もいないのに架かりっぱなし。

北の王国エルスヴァン。


4回目の投稿です。よろしくお願いします。

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