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表の僕は、置いてきた

作者: 榎本あきな

ジイド企画に参加する作品です。

テーマ:くぐりぬける NG:通る、入る、出る、進む

NGワードがあったらごめんなさい。

 『個性』というものがどういうものか、君は知っているだろうか。

 世間一般的には、「真面目」や「明るい」など、性格を表している。最近では、背が高いなどといった身体的特徴も個性の1つに捉えられるようだが、今回それは置いておこう。

 ここで僕が言いたいのは、僕の性格についてだからだ。


 ここでもう一つ、マジックミラーというものを知っているだろうか。

 その部屋の壁にある鏡は、こちら側から見れば普通の鏡なのに、隣の部屋に行くと鏡から元の部屋の中が見えるという代物だ。

 ちなみにこのマジックミラーというもの、光の加減で見える見えないが決まるようで、鏡を裏返しても部屋が明るかったら鏡にしか見えない。逆に、隣の部屋が元の部屋より明るくなったら、逆にこっちから見ることができるらしい。


 ……さて、必要最低限の説明が済んだところで、話を始めようか。

 といっても、そんな大した話じゃない。ちょっとした僕の、昔話だ。



 僕は、今ではこんな性格だが、昔は周りに好かれる様な性格をしていた。

 正義感が強く、物知りで、自分の意思を曲げない。

 けれど、それは僕が、人の顔を覚えるのが得意で、それを使って友達を沢山増やしていたから言われていたことだ。

 顔を覚える僕の特技がなくなったら、評価が一気に裏返るのを、僕は知っていた。


 ある日、骨董を集めるのが趣味の父が、マジックミラーを買ってきた。

 その鏡が、僕がいままで見たどの鏡よりも綺麗で、好奇心旺盛な僕は、学校から帰るといつもその鏡を眺めていた。

 けれど、夜だけは父がマジックミラーに近づけさせてくれなかった。

 その理由は、その時の僕にはわからなかった。


 鏡が来て随分とたったころ、その日も鏡を眺めていたのだけれど、眠気が襲ってきて僕は寝てしまった。

 目を覚ますと窓の外は真っ暗で、扉は、僕が寝ているのに気がつかなかった父が鍵をかけてしまったため、出られない。

 不安な気持ちであたりを見回すと、いつもと様子の違う鏡に気がついた。


 その時の僕は、マジックミラーがどうやって表と裏で違うのかなどということは知らなかったが、表が鏡なら裏は部屋の中が見えることは知っていた。

 だから、部屋が暗かったからか鏡でなくなり向こうの部屋が見えるはずのそれを見て、向こうの部屋ではなく、違う場所が映っているのはおかしいと思った。


 ……そう、違う部屋が映っていたんだよ。マジックミラーなのに。


 意味のわからない不気味さを感じながら、それでも好奇心が抑えられなくて鏡に手を伸ばすと、手が鏡の中に吸い込まれ、鏡の表面には波紋が広がった。

 驚いた瞬間、僕は躓き、鏡の中の世界へと転がり込んだ。


 顔面を強打し、顔をさすりながら起き上がると、人のいない、明るい世界だった。

 建物がたっており、街並みは僕の住んでいるところにとても似ていたけれど、人が誰もおらず、暗いはずの空は真昼のように明るかった。

 後ろを振り返ると、そこにあるのは僕の家のマジックミラーと同じ形の鏡だったけれど、手で触れても向こう側に戻ることはできなかった。

誰もいないという恐怖に怯えながら、とりあえず歩こうと、僕は足を踏み出した。


 数時間たったのか、それとも数分だったのかはわからないが、結構歩き、鏡が見えないくらいに遠い場所にきた僕は、途方にくれていた。

 このまま帰れないんじゃないかと思うと、涙が溢れてきた。

 その涙を拭うこともせず、僕はその場にしゃがみこんだ。


「やっと見つけた!ほら、帰るぞ?」

「え……?」


 しゃがみこんで俯いていた僕は、声をかけられて顔をあげた。

 目に飛び込んできた顔は、僕とまったく同じ顔。驚いて、声が出なくなった。


「どうしたんだ?帰るんだろう?」

「いや、俺は……っていうか、君は……」


 ……ああ。どうして「俺」といっているかって?

 昔の僕はその姿のとおり、完全な子供で、俺というのがかっこいいと思っていた。だから、周りにかっこつけたくて、一人称を変えていたんだ。

 まぁ、家では僕といっていたし、今ではもう俺ということなどなくなったがな。

 蛇足はここらへんにして、話を続けよう。


「僕は僕。君は君。でも、僕は君でもあって、君は僕でもある」

「……どういうこと?」

「直にわかるさ。さぁ、手を取って」


 同じ顔、同じ声、同じ体格の少年を訝しげに見ながら、僕はその少年に差し出された手をとった。

 手を引っ張られて立ち上がった僕は、その少年にひかれるような形で、少年の後を歩いた。


「……で、結局君は誰なのさ」

「さっきいっただろう。直に分かるって。……まぁ、しいていうなら、『裏の僕』ってところかな」

「裏の僕……?……意味わかんない」

「そうだろうな。だから、詳しく話さないんだ」


 今の僕と、口調がよく似ているって、思っただろう?

 そんなに急かさないでくれ。こういうのは、順番が大切なんだ。……ちゃんと、最後まで話すから。


 少年の正体が気になる僕は、更に少年に質問しようとした。

 けれど、少年は僕の言葉を遮るように、僕に話しかけてきた。


「そんな話よりも、もっと楽しい話をしよう!」

「楽しい話……?……例えば?」

「そうだなぁ……あっ、君の好きな、本の話とか!あとは……特技とか苦手なこととか?俺、人の顔を覚えるの苦手なんだよなー」


 そういって少年は楽しそうに話し始めた。

 最初は、この気味の悪い少年の話なんか聞きたくなかったけれど、少年の話し方がうまいからか、はたまた好きな本の話しがあったからなのかはわからなかったが、段々少年の話に引き込まれていった。

 いつの間にか、自分も少年と共に、楽しく本の話をしていた。


 同じ顔の少年を見つめていると、僕が彼なのか彼が僕なのか、境界線が曖昧になってくる。

 楽しい感覚も合わさって、わけがわからなくなってくる。

 大分時間がたち、あたりが真っ暗になったころ、僕は少年とずっと話していたからか、話し方が移ってしまった。

 そう……今の僕の話し方と同じだ。


「暗くなっちゃったねー、そろそろつくかな?」

「こんなに本のことについて語れたのは、久々だ。礼をいう」

「いーって。俺も本のこと語れて、楽しかったし。あ、見えてきた」


 いつの間にか、彼の口調や一人称も変わっており、まるで、中身が入れ替わったかのようになってしまった。

 けれど、楽しい気分の僕は、気付かなかった。


 散々歩いて着いた場所は、僕が最初にいた、鏡のところだった。

 けれど、最初の時のように鏡ではなく、向こう側が見えるようになっていた。

 その向こう側には、マジックミラーが置かれていたあの部屋が、僕がもともといたあの部屋が見えていた。


「あれ、あの時は鏡だったのに……」

「これはマジックミラーだから、光の加減で鏡になったりするんだよ。今はこっちが暗いから、向こう側が見えるようになったんだよ」


 彼の言葉に、また新しいことを知れたと頷いていると、今まで繋いでいた手が離された。

 驚いて彼を見ると、僕を見てから鏡……いや、マジックミラーを指さした。


「今の時間なら、向こうと繋がっているから、帰れるよ」


 けれど、僕は帰りたくなかった。

 こんな楽しい時間を、終わらせたくなかった。


「嫌だ。帰りたくない」

「……俺は僕で、僕は俺だ。話すことはできないけど、離れることはない」


 その言葉の意味はわからなかった。

 けれど、彼と話せることもうないんだとなんとなく理解していた。

 だから、せめて。


「……また、会える?」

「君が望み続ければ、いつか、きっと」


 その言葉を最後に、僕は彼に背中を押され、鏡の向こう側へと突き飛ばされた。



 目が覚めると、そこは鏡が置いてあった部屋で。

 びっくりして鏡を見るけれど、それはただの鏡になっており、鏡の向こう側なんて一切見ることができなかった。

 窓からは朝日が差し込み、今は何時だと壁にかかった時計を見ると、もうすぐ朝食を食べる時間だった。


 廊下からバタバタと忙しない足音が聞こえてきて、僕は思わず立ち上がった。

 きっと親が心配して駆け回っているのだろうと思いながら、近づいてくる足音を聞いていた。

 そして、扉が開いて、僕は固まった。


「……なんだ……こんなところで寝ていたのか……」


 その声は、確かに父親の声だった。

 けれど、顔が。……顔が、真っ黒だった。

 まるで、黒のクレヨンで塗りつぶされているかのように。


 僕は、止める父親の声も聞かず、一目散に自分の部屋へと走っていった。

 そして、いつもは全くと言っていいほど触れないアルバムへ手を伸ばし、中身を開いた。


「……何、これ……」


 だけど、結果は同じ。

 僕の顔だけ見えるけど、それ以外は全部真っ黒に塗りつぶされている。

 混乱している僕の頭の中に、一つのことが浮かび上がった。


 僕によく似た顔の少年は、確か、人の顔を覚えるのが苦手だって言っていた。

 そして僕らの言葉遣いは、入れ替わったかのように、最後には変わっていた。


 普通だったら、こんなこと信じない。

 でも、あんな不思議なことがあって、その直後にこんなことになってしまって。

 だから、この「もしも」を信じることしかなかった。



 僕と彼は、入れ替わったのだと。



***


「……んで、それを俺に聞かせて、どうしろってんだ。探偵業をやってるっていっても、そんな摩訶不思議なことには対応できねぇぞ」

「……ここまで聞いて、僕の依頼内容がわからないのか。わかりやすく説明したつもりなんだけどな……」


 本当にどうして伝わらないのかわからないといった顔をした目の前の男に、俺はこめかみが引きつるのを感じた。

 やっぱり、中学時代からこいつは、何一つ変わっていないようだ。


 この男は、中学時代から大層な嫌われ者だった。

 偽善者で、自分の知識を自慢げに披露し、自己主張が激しい。

 別の見方をすれば長所になりそうなそれは、こいつのあるひとつの特徴ゆえに、全て台無しになっていた。


 人の顔を、覚えられない。


 何度話しかけても、必ず最初に「誰だ?」と問いかけてきて、それに答えてから話をする。

 しかも、それは話というより、こいつの一方的な自慢話。

 確かにそれはすごいと思うけれど、それって役に立つの?というような話し。

 自分も伝えたいことがあるのに、ずっとこいつが話し続けるせいで、こちらは話しかける隙がない。


 いつしかこいつは「面倒なやつ」というレッテルを貼られ、こいつに構うやつは誰ひとりとしていなくなった。

 幸い、こいつは誰かに話しかけにいくことはしなかったため、話さなければ無害と言われ、そのまま放置された。

 ……ああ、一時期いじめみたいなこともあったみたいだが、何回いじめてもいじめっ子の顔を覚えない上、何を言ってもきょとんとした顔をされたあと、笑顔でマシンガントークをかますため、いじめる方の精神が持たなくなったみたいだ。人づてに聞いた話だけどな。


 そんなこいつが、唯一話す存在がいた。

 ……なんとなく察しできると思うが、俺だ。


 俺にだけは、こいつは自分から話しかけてきた。

 俺の見た目は、自分で言うのもなんだが、三白眼で目つきが悪く、言葉遣いも悪いため、近寄るやつなんていない。

 そんな俺に、こいつは「君だけは顔がわかるから」という理由で話しかけてきた。


 外面が悪いだけで、精神は真っ当な人間だった俺は、最初こそそれを喜んだが、次第に面倒になっていった。

 だって、こっちはこいつの聞きたくない自慢をずっと聞かされ続けてるんだ。

 しかも、それをいったところで、本人にその自覚がないから欠片も改善されない。

 こっちとしてはもうお前の話なんてお腹いっぱいだ。


 中学のころからそうやって付き合ってきたこいつはいわゆる腐れ縁というやつで。

 けど、高校を卒業してからは一切関わりがなかったのに、どうして今頃連絡をしてきたのか。

 それは、俺が探偵という職業についていたかららしい。



 ……その依頼を受けるために、こいつの意味のわからない昔話を聞いていたのだけれど……。

 正直言って意味がわからない。


 マジックミラーっていうのはわかるけど、表と裏が入れ替わった?マジックミラーの向こうに世界がある?控えめに言っても理解不能だ。

 けれど、これは仕事だ。今の俺とこいつは、腐れ縁じゃなくて依頼主と仕事人。依頼主の話は聞かなければいけない。

 ああ。面倒だ。


「で、何がお望みだ。向こうの世界を証明したい?本当の自分を取り戻したい?それとも……」

「彼に会いたい」

「……は?」

「僕はもう一度、彼に会いたい。彼は言っていた。望み続ければ、いつかきっと出会えると。だから僕は、彼に会いたい」


 なんの飾り気もなく紡がれた言葉。

 いつもゴテゴテと沢山の知識で飾り立てているその言葉を、なぜかこいつは、そのままで俺に投げかけてきた。

 その言葉を受け取り、投げ返す。


「……いいぜ。まずは、そのマジックミラーまで連れてけよ」

「……!!」


 喜びに目を輝かせたこいつは、しかし、すぐに訝しげな顔になった。

 大方、なんで俺が、外面は不良だけど根は真面目な俺は、こんな意味のわからない依頼を受けるのか、わからないんだろう。

 自分でも意味わかんないって思ってんなら、はなから依頼してくんじゃねぇよバーカ。


「お前が変なのは元々だろ。それに、生憎と腐れ縁のお前のことはよぉく知ってるんでね。お前が嘘をつかないってことくらい、百も承知だ」

「……そうか」

「あと、探偵やってると、お前みたいな変な依頼なんてたっくさん来るからな。今更お前みたいな依頼で同様なんてしねぇよ」


 そういって俺は、こいつの背中を押した。


***


 窓から真っ赤な光が差し込み、部屋の中には赤い光が閉じ込められ、ゆらゆらと踊っている。

 その中でも一際光を反射していた鏡は、赤い光が黒くなっていくのと同じ時、その光をゆっくり吸収していった。

 吸収された光が、鏡の中を照らすように、鏡の中に向こう側が見えるようになってくる。


 隣のこいつが鏡に手を伸ばすと、まるで水の中に手をつけたかのように、するりと手が向こうへと透過していく。

 俺も同じように手を伸ばすと、波紋が二つに増えた。


 俺たち2人は、自分の背丈よりも低い鏡を見て、手を鏡につけたまま、頭を低くさせ、鏡の下枠を飛び越えた。

 そして、足が向こうの世界へ着地し、体がするりと、元の世界から鏡の世界へと、移動した。


***


 たった今屈んで通り抜けた鏡を振り返ると、そこには、ただの鏡が。

 空を見上げると、こいつが言っていた通りの空は広がってない。

 空は真っ黒。まっくろくろすけだ。


「おい。どういうことだ」

「……いや、僕にもわからない。こっち側から見えないということは、マジックミラーの性質上、こっちが朝で明るいはずなんだが……。まぁ、鏡になってるなら、現段階でもこっちは向こうより明るいんだろうけどな」

「ふーん……まぁいいか。お前の表だか裏だか知らないけど、もうひとりのお前を探すか」


 そういって、俺たちは暗い街の中を歩き出す。

 いつも人で溢れかえっている街の中は、人っ子一人いなくて、なんだか新鮮だ。

 なんだか、ミニチュアの街の中を、小さくなって歩いている感じがする。


 行き着くべき目標もないため、宛もなく彷徨っていた俺たちは、不思議な音を耳にした。

 その音に、俺は顔を引きつらせる。


「なぁ……今、嫌な音が聞こえたんだけど」

「ああ。奇遇だね。僕も、君が嫌いそうな音を耳にしたよ」

「あの角を右に曲がって4歩行ったとこにいる」

「いや、そこまでわかるなら君が行けばいいじゃないか」

「近づくのが嫌なんだよ察しろっ!!!」


 再び音が聞こえ、俺は「ひっ!」と声をあげ、隣にいたやつの後ろに周り、盾のように背中を押す。

 なにするんだ お前は平気だろ行ってこい! 面倒だ 悪魔!鬼畜!!人でなし!!! なんて口論を交わしていると、曲がり角から、そいつが顔を出した。


 全ての絵の具を混ぜるよりも汚い色で、ヘドロのように溶け切った胴体。

 そいつが一歩進むごとにぺちゃっ、びちゃっ、ぐちゃっという音が俺の耳に届き、更にはドブ川よりもキツイ臭いが漂ってくる。

 常人でも辛いこの姿は、俺にとっては更に辛かった。


 だって俺、ちょっと潔癖入ってる。



「ウ゛ボォォォォオオオオオオオオオッッ!!!」

「うわぁぁぁぁあああああああ無理無理無理無理汚すぎキモイキモイキモイ!!!」

「ははっ!君は相変わらずだな!」

「お前はっ!どうしてそんなっ!!平気なんだよ!!!」


 俺たちを見たとたん襲いかかってきたヘドロを見て、俺たち二人は迷わずUターンをして走っていく。

 正直言って台所の排水口の掃除も死にそうになりながらやる俺には、ちょっと強烈すぎた。

 いや、こんな汚い生き物だかわかんない奴を前にして、欠片も動揺してないコイツの方がおかしいんだけどさ!!


 久々の「走る」という動作に、体が追いつけなくてところどころから悲鳴が聞こえてくるようだ。

 でも、立ち止まったら後ろにいるヘドロの餌食になるし、そんなの、俺を構成する一部でも触れさせたくないため、死ぬ気で走る。

 隣で息も乱さずに走るこいつが憎い。

 そういえば、こいつは運動神経も頭も全部良いパーフェクトなやつだったな。1回死に晒せ。


 そうこうしているうちに、目の前の道が壁に阻まれていた。

 比較的背の高い俺たちよりも高い壁は、よじ登ることはできそうだが、それでも少し時間がかかってしまいそうな程度には高かった。


「おいっ。ネクタイ、貸せっ!!」

「何を……ああ、なるほど」


 するりと解かれたネクタイを手渡され、背中がぞわぞわするのを感じながらあいつの後ろにつく。

 壁が目の前に近づいたときに、俺は叫んだ。


「しゃがめっ!!」


 あいつがしゃがんだと同時にあいつの背中を踏んで飛び、壁の上の方に手をかけ、フェンス越えの要領で足を横にして飛び越える直前に、ネクタイを空いているもう片方の手でぶら下げる。

 それにあいつが掴まったのを重さで感じたあと、壁の向こう側に落下する力と共に、あいつを持ち上げた。

 下につくと、あいつもネクタイで引っ張られた力と壁蹴りを使いながら壁を乗り越えてきた。

 横に着地するそいつを見ながら、俺はほっと息を吐いた。


「はー……こんなの久々にやったけど、案外成功するもんだな」

「昔は、君のおかげでこんな風に逃げ回ることが多かったからな」

「あー……その節は悪かった……っていうか、あれは俺のせいじゃなくて、あいつらが勝手に喧嘩売ってきただけだからな!?」

「知ってる」

「じゃあ言うなよ」


 そういって会話をしている最中。

 あの音が、聞こえてきた。


「……おい、まさか」

「……そのまさかだろう。後ろを見てごらん」

「そっ、そんなわけ……いひゃぁっっ!!!」


 壁の隙間から、ドロドロとした黒い液体が、ゆっくりと流れ出てくる。

 一歩、一歩と下がると、向こうはゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。

 正直言って体力は、あんまり残っていない。



「こっちだ!」



 突然開いた横の扉に、俺は思わずポカンとした表情のあいつの腕を掴んで飛び込んだ。

 中に転がり込むと、ガンっという蹴った音と共に扉がしまる音がした。


「この扉はあのヘドロの嫌いな素材で出来てるから、ここまで追ってこないよ。いやぁ~それにしても、僕とあの子以外の人間なんて、初めて見たな~!」

「ほんと、助かったよ……。ああいう汚いの苦手で……さっ?」

「ん?どうした……のっ?」


 立っている俺たちを助けてくれたそいつを見ると……。


 そいつは、俺とまったく同じ顔をしていた。


「「ド、ドッペルゲンガー!?」」

「いや、違うと思うけど」

「「冷静にツッコムな!」」


 反射的に言ってしまう言葉も同じの、同じ顔をしたそいつと、俺は鏡合わせのように顔を見合わせ……同じタイミングで吹き出した。

 鏡ではなく、別の人間であるはずなのに、ここまでタイミングが同じだと、そりゃあ気味が悪いを通り越して、笑うしかないだろう。

 ひとしきり笑い、真顔でずっと待っていたあいつを見てまた二人で笑い出してから、俺たちはようやく本題に入った。


「あー!久々に笑った~!!……で!ようやく本題に行くんだけど……君たちは誰?どこから来たの?」

「んー……お前は、夜になると向こう側が見えるようになる鏡……マジックミラーっていうんだけど、そのこと、知ってるか?」

「うん。知ってるけど……まさか、その向こう側から来た……なんて、言わないよね?」

「……」

「マジか……」


 鏡の中の俺の問いに無言でいると、肯定だと受け取ったのか、驚いた顔をしたあとにブツブツと「あの手記は本物だったんだ……」などとつぶやき始めた。

 帰ってくる気配が欠片もないため、俺が目の前で手をパンッ!と鳴らすと、「いひゃぁっっ!」と俺がさっきあげた声と同じ声をあげた。

 こんなところまで似なくていい。


「あ~……ごめんね?熱中しちゃうと、周りが見えなくなっちゃってさ。今まではそれでもよかったんだけどね。で、君は……えっと、まず、名前どうしよっか」

「……名前も一緒だったら面倒だし、お前のことは鏡って呼ぶわ」

「了解。んじゃあ、僕は似てる君のことを合せ鏡、君のことは立ち鏡って呼ぶね」

「おう。一応、俺らもこの愛称で話すぞ。立ち鏡」

「わかった。合せ鏡」


 名前までもが一緒だったとき、どっちが本当の名前を名乗るかで始まる争いを避けるために、俺たちはコードネームのような名前をつけた。

 それからようやく、本題へ向かった。


「それで、二人はどうしてここに?」

「俺はこいつの付き添いだ」

「僕は、昔に出会った彼……僕と同じ顔をした人物にもう一度会いたくて、ここに来たんだ」

「ふーん……じゃあ、会ってどうするの?」

「……いや、そこまでは考えてなくて……」

「考えてないなら、やめたほうがいい」

「っえ……?」


 基本的にこいつの言うことを肯定する俺がいたからなのか。

 同じ顔をした鏡に否定されて、いつも自慢げな、楽しげな感情を浮かべていた顔は、この時初めて、困惑という表情を浮かべた。

 その表情が、なんだか新鮮だ。


「さっきのヘドロの化物、見ただろ?立ち鏡と同じ顔の子は見たけど、僕が見たとき、あのヘドロはそいつが生み出していた。だから、揺るがない決心がないなら、あいつには近寄らないほうがいい」

「……でも」

「ほら、今なら、まぁ雲に覆われてるけど、日は昇ってる時間帯だから、なんとか向こう側に行けるよ。あの鏡の周りに、最近ヘドロが湧いてきたから、いつ壊されるかわからないし、逃げるなら早いほうが」

「でもっ!!!」


 鏡の言葉を、立ち鏡が大声で遮った。

 こいつの大声なんて、俺は、今までの人生の中で初めて聞いた。

 俺は、目を丸くして、見つめた。

 あいつは、泣いていた。


「でも、僕が……僕が、あっちの世界に来ちゃったせいで、俺は、こっちに、取り残されてっ……。一人が、大丈夫、な、僕がいれば、よかったのに……!!顔が見えない、向こうの、せ、かいより、こっちに、いれば、よかった、の、にっ!」

「……なるほどね。幼い頃に入れ替わった、こっちの住人なんだ。君。でも、その様子だと、こっちで死んだ住人を向こうの世界でこっちの住人が見ると、顔が見えないってのは、知らなかったみたいだね。で、こっちにやってしまった向こうの立ち鏡が一人なのに気がついて、入れ替わりに来たんだ」

「……っはぁ!?」


 入れ替わりという言葉に、俺は叫んだ。

 それは、今まで育った世界を捨てること。それは、こいつがあの世界から消えることと同じだ。

 そんなのは、嫌だ。


「お前、俺に内緒でそんなことしようとしてたのかよっ!!」

「……ああ。だって、君に、合せ鏡にいったら、絶対にやめろっていわれるから……」

「言うに決まってんだろ!同じ顔でも一緒に育ったお前の方が大切に決まってんだ!!馬鹿言ってんじゃねぇよ、ちょっとはこっちの気持ちも考えろ鏡野郎!」

「それ、僕も君もそうだよ」

「うっせぇな!」

「……そっちの僕は凄い短気だね」


 小さくつぶやいてから、鏡は俺の両肩を抑えてどーどーと言ってくる。俺は馬か。

 けれど、そういわれて深呼吸をすると、だんだんと感情の昂ぶりが治まってくる。

 ようやく落ち着いた俺を見て、鏡はにっこりと笑った。俺の顔で笑うな気色悪い。


「立ち鏡は、あいつが一人で寂しそうだから、自分が代わりになるために来たんでしょ?」

「……ああ」

「でもさー……この世界、あいつ一人だけじゃないんだよね~」


 気色悪い笑みを浮かべる鏡を引いた目で見ながら、もうひとりが誰かを……考えなくてもわかったわ。

 あいつと二人で鏡を見つめると、鏡は満足そうににんまりと笑った。だから笑うのやめろ殴んぞ。


「そう!僕がいるじゃん。僕がいればあいつは寂しくなくなるだろうし、あのヘドロが寂しさから生み出しているっていうなら、それも止められるんじゃない?いや、ヘドロがどうやって出来てるかわかんないんだけどさ」

「……そうか。確かに、そうだな。君がいれば、万事解決だな!」


 解決策が見つかって、きゃっきゃと喜ぶ鏡野郎二人。……あ、鏡は俺もか。

 とりあえず、なんとかなりそうだと理解した俺は、今まで座っていた床から立ち上がり、扉を親指で指し示した。


「解決策が見つかったんなら、行こうや。寂しがり屋の魔法鏡(マジックミラー)のとこに」


***


 この街を知り尽くしている鏡の案内のもと、魔法鏡がいると思しき場所へと向かう。

 途中、あのヘドロのようなものに追いかけられ、鏡と二人で絶叫しながら逃げ、猫のような抜け道を通りながらたどり着いたそこは、立ち鏡の住む家によく似た家だった。


「3日前くらいにここにいるのをみたから、移動してなければここにいるはずだよ」

「ああ、わかった。ありがと……っておい、勝手に行くな」

「ここにいる」


 唐突に電波なことを言ったこいつの手を取ると、我関せずというかのようにそのまま家の中へと侵入していく。おい、我関せずじゃねぇよお前のことだぞ。

 まぁ、結局は行かなければいけないと、鏡とともに顔を見合わせたあと、手を離してこいつの後ろについていく。

 しばらくしてたどり着いたのは、こいつが最初に俺を案内した場所……向こうの世界じゃ、マジックミラーがある部屋だった。

 ドアノブに手をかけると、扉は案外簡単に開いた。


「……誰だ。あんたら」


 向こう側と全く逆の家具の配置の中に、一人、マジックミラーが置いてあった場所の目の前に座る、立ち鏡と同じ顔をした、人間。

 警戒心たっぷりにこちらを見つめる瞳に、やっぱり同じ顔でも違うんだと思いながら、隣にたつこいつが何か言い出すのを、待つ。


「……自分の顔も、忘れたのか?」

「っ!!お前はっ……!!お前のせいで……っ!!!」


 驚異的な脚力で一瞬にして立ち鏡と間合いを詰めた魔法鏡は、胸ぐらを勢いよく掴み、詰め寄った。


「お前が入れ替わったりなんかしなければ、俺は向こうにいたんだ!なのに……お前が入れ替わったから……、ずっと、来なかったから、お前を望み続けたから、あんな化物が生まれたんだ……!」

「……じゃあ、今からでも入れ替わる」

「おまっ……!!」

「無理だ。入れ替わったって、知識は引き継げない。お前はこっちで生きてけるかもしれないけど、俺は何も知らないままで、向こうで生きていくことはできない」


 最初は激昂していたが、次第に、冷静になっていく魔法鏡を見て、なんだか嫌な予感がしてきた。

 そして案の定、その予感はあたった。


「……だから、お前と一緒に、死ぬことにした」


 振り上げられたカッター。驚きに固まる立ち鏡を突き飛ばし、腕でカッターを止める。

 腕から血が流れるのも気にせず、足払いをかけて腕をとり、後ろに腕をまわして地面にうつ伏せに抑え付ける。

 その光景を、廊下で見ていた鏡が、慌てたように部屋の中へと来た。


「ちょちょちょっ!何物騒なことしてんの!?やめてよもう……」

「へ……?同じ顔……こっちの、住人……?」

「お前、向こうには戻れないんだろ?でも、俺たちの世界の住人は、寂しくって死んじゃうんだろ。立ち鏡……俺たちの方のお前が言うには、お前は寂しくてこんなことしたらしいし、だったら、寂しくないようにすればいいんじゃないかと思ってな。……あ、自己紹介し忘れてたな」


「初めまして。僕は鏡。本名じゃないけど、向こうの僕たちと紛らわしいから、そう呼んで。生まれも育ちも、こっち側。君とは違うけど、仲良くしてくれたら嬉しいな」


 困惑している魔法鏡を置いて、立ち鏡と俺はハンカチで止血をしていた。

 向こうに一切目を向けない俺らを見て「自由だなぁ……」と呟いた鏡は、魔法鏡に顔を向けた。


「何回か君を見かけて、話しかけようとしたんだけど、ヘドロが邪魔でさぁ……。僕、ちょっと潔癖症気味だから、近づけなかったんだよね。でも、二人がいたおかげでなんとか君のところに来れたんだ。……あ、あのヘドロ、消せる?」

「え、……え、消せない」

「はぁ!?」


 突如として会話に混じった俺に、びくっと肩をはねさせたあと、こちらをきょとんとした顔で見る魔法鏡。

 やっぱり、ふとしたときの表情は似てる……っていうか!それより!


「あのヘドロ消せないって、それ本気で言ってんの!?」

「う、うん……。いつの間にか俺から生まれてきたやつだから、よくわかんないし、俺の嫌な感情から生まれたって言うなら、今の状態で消えてないといけないのに、窓の外を見る限り、そうじゃないから……」


 そういって魔法鏡が窓に視線を移すのを追って、俺も窓に目を向ける。

 そこには、やっぱりあのヘドロがいて、俺は思わず吐きそうになった。

 それと同時に、俺は、あることを思い出していた。


 最近ヘドロが湧いてきたから、いつ壊されるかわからない。


「うあああああ!!おいっ!必要事項は話したよな!なっ!!」

「えっ、いや、もうちょっと……」

「なっ!!!!」

「あ、ああ……。……何をそんなに慌てて……」

「早くしないとヘドロに鏡壊されんぞ!!」

「もう何も話すことはない。行こう」

「ということで、じゃっ!!」


 片手を上げて挨拶をしてから、俺とこいつは部屋を走っていく。

 それを、一人は呆気に取られたように、一人は呆れたように見つめていた。


「……台風みたいな奴らだったな……」

「そうだねぇ~。あんなのが向こうの僕とか、大丈夫なのかな?」

「……なぁ、あの、その」

「あっ、そうだ。ねぇ、僕と友達になってよ」

「へ」

「この世界、もしかしたら他にもいるかもしれないけど、ほとんど死んでるからさ、今まで他の人とあったことがなかったんだよね~。だから、せっかくだから、友達になりたいと思って」

「……俺も、思ってた」

「そうなんだ!じゃあ、君の名前は?」


「……俺の名前は―――」


***


 今僕たちは、全速力で逃げている。

 何からかだって?それは……。


「お前ぇぇぇええええ!!なんでっ、そん、な、余裕なっ!顔なん、だ、よ!!!転べ!!」

「転んだら確実にあの中に取り込まれるだろ?」

「知ってるっっ!!!!!」


 腐れ縁の彼……合せ鏡の一番嫌いな、汚れという名のヘドロから逃げている。

 他人に触るのもあまり好きではなく、基本的にはいつも手袋をはめているぐらい潔癖な彼にとっては、この化物は悪魔よりも恐ろしいものだろう。

 しかも、元の世界に戻る唯一の道を、こいつに壊されようとしている。そんなの、彼じゃなくても怒る。


「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っっっ!!!なんっでこいつ、こっちくんの!?!?」

「僕が知るわけないだろう」

「知ってたっっっ!!」


 たわいもない会話を繰り返しながら走っていると、鏡が見えてきた。

 空はいつの間にか晴れており、夕日が鏡を照らしている。

 近くまで来た瞬間、鏡はタイミングよく、向こう側を映し出した。

 ちょうど、時間だったのだろう。


 ラストスパートをかけた彼が、僕を抜かして行……こうとして、僕の手を掴む。

 突然のことに戸惑う僕の耳に、息を乱した彼の声が聞こえた。


「こう、しない、とっ!お前、ま、よ、うか、ら!!!」


 ……流石、長年付き合ってきた友人だけはある。

 僕の性格を、完全に理解しているようだ。


 きっと僕は、彼に手を掴まれなければ、このまま本当に帰っていいのか一瞬立ち止まり、その隙に、ヘドロに飲み込まれていた。

 ここまで自己分析ができているのに、自分で選択する気はないのだから、僕は馬鹿だ。


 馬鹿でいい。

 入れ替わって、自分の世界を捨てた僕は。

 馬鹿でいい。

 自分の世界を捨てたおかげで、彼に会えたから。


 僕らは、ふたり揃って鏡の中に飛び込んだ。

 僕の背後で、パキリと、歪な音がした。


***


「はぁ……はぁ……逃げ切ったな……」

「そうだな」

「なんで、息切れて、ねぇんだ、よ……ほんとに……って、あっ!!」


 息を乱す彼のあげた声。

 その彼が見る視線を辿ると……。


「どうした……あ。割れてるな。さっきの音はこれか」

「うっわー……どうしよこれ。俺、弁償なんかできねぇんだけど……」

「……まぁ、友人価格でまけてやろう」

「おっ!マジで!いくらいくら」

「まけた金額差し引いて……ざっと140万くらいか」

「たけぇわ!!」


 昔馴染みの彼と、小気味よい会話の応酬をしていく。

 それがなんだか楽しくて笑いをこぼすと、突然彼が黙り込んだ。

 何かとおもって見つめると、気まずそうな顔で、こちらを見た。


「……あれで、よかったのか。俺のわがままで、こっちに残らせて。最後も、お前を向こうにいさせたくなくて、手、掴んだし……」

「そのことか。……いいんだ。向こうにいても寂しくないってわかったし。それに―――」


 不安そうな彼に、安心させるように、僕は笑顔を向けた。


「―――表の僕は、置いてきたからね」




登場人物


・僕/立ち鏡

本名:立川たちかわ かおる。鏡の向こう側の世界に住んでいたけれど、偶然迷い込んできた「俺」を見て、「俺」と「僕」の境界線が曖昧になって、あ、このまま向こうの世界にいけるんじゃない?って思ったら本当に行けちゃって、しかも人の顔がわからないからガチで焦ったドジっ子。息をするように自慢話をするけど、本人に自覚なし。鏡の世界には人がいなかったから、寂しいとかは感じなかったけど、ずっと前にこっちの人間は寂しいと死んじゃうって聞いてたから、早く入れ替わんなきゃっておもって、でも怖いから友達巻き込んだ。今は巻き込んでよかったと思ってる。大手企業の社長の息子で、今は父親の仕事手伝ったりしてる。偽善者で自分の知識を自慢げに話し自己主張が激しい。


俺/合せ鏡

本名:合田あいだ 恭介きょうすけ。目つきが鋭く三白眼で、オレンジに近い茶髪をした、あからさまに不良という風貌の凡人。巻き込まれ体質。少々潔癖症気味で、汚いものが嫌い。口が結構悪い。外面と口の悪さにより、不良と勘違いされて喧嘩をふっかけられたり怖がられていたりした。立ち鏡とは中学からの腐れ縁。巻き込まれ体質のため、様々なことに巻き込まれているが、結局は見捨てられないため、最終的には自分から巻き込まれに行く馬鹿。探偵業は、数少ない変人の友人に巻き込まれてやっている。口が悪くお節介で短気。


俺/魔法鏡

本名:立川 馨。マジックミラーが好きで眺めてたら鏡の世界に入っちゃったドジっ子。しかも入れ替わりを許しちゃった詐欺にあいそうな子。その後、20年近くぼっちでいたため、寂しくて死にそうになったときに、ヘドロの怪物が産まれた。他人からの評価を一番気にしていたため、知識がない自分じゃ戻ってもダメなことはわかっていたけど、とりあえず一発殴りたかった。なんか有耶無耶になっちゃったけど。今は鏡がいるため、結構幸せ。でもヘドロは消えない。解せぬ。正義感が強く物知りで自分の意思を曲げない。


僕/鏡

本名:合田 恭介。生まれも育ちも鏡の中な鏡人間。生まれた時から自分以外の人間を知らないため、なぜなのか解き明かすために旅をしてる。熱中すると周りが見えなくなるタイプ。物腰が柔らかいが、相手がついてほしくないところを積極的についていくので、基本的には合せ鏡と変わらない。双子かっていうくらい合せ鏡とシンクロする。むしろこっちのほうが普通。違いすぎる立ち鏡と魔法鏡のほうがおかしい。最近は初めての友人ができたため、ちょっと嬉しい。でもヘドロを生み出したことは許さない。嘘を言わず世話焼きで変わり身が早い。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 台詞回しが独特で、けれどすっと頭に入ってきたので、読みやすかったです。 あと、キャラクター一人一人のキャラがよく立っていたと思います。 ヘドロとの追いかけっこのシーンはスリルがありました。…
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