マスコット・キューピット【親愛なる乙女】
私には大好きな物がある。それはネコのマスコットキャラクター、ライ&ミー。未来ランドというテーマパークのマスコットだ。あまりメジャーではないテーマパークのマスコットなだけに人気はあまり無いが、根強くファンを獲得している。私はその内の一人。
初めて見た時に感じた感情は今も持ち続けている。そして、新たに周りに知って貰いたいと思うようになってきた。尤も、そんな事は消極的な自分には無理だと思う。
そんな私はある塾に通っている。不思議な事にこの塾には少数だが、セレブが混じっていた。他の子とは明らかに違う上品な仕草に、シンプルながらに高価なのが分かる衣服。ただの成金とは一線を画す上質な人達だ。
同じクラスに一人だけ、その上質な人が存在している。鳳院藤香。彼女はクラスでは少し浮いている。周囲とは違う雰囲気に、周囲が馴染めていない。
更に、彼女の容姿は上に分類されるだろう。愛らしい顔立ちにふわふわな髪が揺れる。その髪からは甘い花の匂いがしそうである。嗅いだ事は無いけども。
そういえば、先日から彼女が自販機を使っているのを目撃した。恐る恐ると買ったジュースを口にしている様子は何というか・・・どこぞのCMのチワワみたいだった。一口一口と飲んでいく内に美味しさからか頬を緩ませ、微笑むのも小動物みたいで可愛い。
そんなある日の事だった。彼女の視線が私の持ち物に注がれたのは。
キラキラとした瞳が私の鞄を捉えている。正確に言えば、鞄に付いているマスコットだ。私の大好きなキャラクターの。
嗚呼、これは・・・チャンスである。
私の愛するキャラクターを人に宣伝出来る。
私は彼女に声を掛けた。そして、私は彼女の初めての友達になってしまった。その事に後悔は無い。無いのだが・・・何で、あんなに純朴なのか。
私は彼女の何も知らないような無垢さに困惑し続ける事を。