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元病弱少女転生記  作者: 如月瑠宮
物語が始まる前のお話
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初恋の君は憧れのお姉様

 瑞雲学園には生粋のお坊ちゃまお嬢様集団が存在する。通称「瓔珞ようらく会」である。正式名称は「誇り高き瑞雲の師範となるべき生徒達の集まる会」となっている。何だそりゃ。

 ちなみに何故「瓔珞」なのかはある花から。属名はフリチラリア。その名前の意味はサイコロ箱。だが、その中にはフリチラリア・インペリアスという種がある・・・そう、インペリアス。他のペルシカやメレアグリスではなく、このインペリアスから来ている。

 しかも、フリチラリアの英名は「クラウン・インペリアス(皇帝の王冠)」なのだ。これに目を付けない筈が無い。更に、花言葉は才能、天上の愛、王の威厳!

 で、何故「瓔珞」なのかだが・・・和名が「瓔珞百合」なのです。一般的に花言葉がぴったりな牡丹でもなく、属名や英名を使うでもなく、和名を使う・・・捻りに捻ってますね。

 牡丹会やフリチラリア会で良いじゃんと思う。流石に百合会は微妙だが。会の発足当時の生徒達が考え出した通称は現在も普通に使われているのである。

 ん?どうしてこの話をしているか?決まっているでしょう。私もこのメンバーなんですよ。

 正式な瓔珞会は中等部と高等部だが、初等部から慣れさせる為なのか、瓔珞会は存在する。通称はリトル。まんまだね。そのまんまなリトルに私は所属している。ちなみに、兄達も勿論いる。まぁ、長兄と次兄は高等部、三兄は中等部だから、リトルは下の二人の兄と私の三人。

 そして、未来でヒロインの相手役になる筈の彼も。この事実を思い出した瞬間、兄達が居るリトルに所属するのを喜んでいた私は困った。リトルに居れば、上の三人の兄達と会う機会が増える。だが、それ以上に彼と接触してしまうのだ。はっきり言って、彼とだけは交流を持ちたくない。無理だけど。

 それはそうと、彼の事を紹介しよう。したくないけど。彼の名前は諏訪すわてる。日本を代表すると言って良い大企業の息子だ。一人っ子の彼は無論、跡取りである。小説での彼はまさにカリスマ。瑞雲の帝王だった。

 だが、今の私にとっては地獄への使者。破滅へと導く悪魔にも等しい存在である。私は前世の短い一生に続いて、今世でも短い人生を送る気は無いのだ。

 ・・・・・・そろそろ、兄達が迎えに来るだろう。今日は初めてリトルの集まる温室に行くのだから。行きたくないけど、行きたい。矛盾する考えは、兄達に会いたいのと温室を見たいのと美味しいお菓子があると聞いた事による。前世では殆んどを病室で過ごしていたからか、病室以外の場所に対する憧れが強い。それに経済的にも余裕なんて無かったし。更に、食事制限もあった。砂糖をふんだんに使われたお菓子は天敵にも等しかったのだ。

 思わず溜息が零れる。この年で溜息とは・・・精神年齢は別として、未来が心配になってくるね。

「藤香」

 あ、清高お兄様だ。溜息、聞かれてないよね?


 そして、現在居るのは瓔珞会専用の温室である。温室が学園内にいくつもあるって凄いよね。その中でも、一際大きいのが瓔珞会専用です。それも、使うのは主にリトル。だからだろうなぁ・・・置いてある物が小さめ。

 中央には天使の噴水がある。天使も子供だし、弓矢を持ってるからキューピットかな?可愛いなぁ。テーブルと椅子も小さい子供が使いやすい大きさになっている。ん?キノコ?キノコの形の椅子がある。あの一角だけメルヘン。小人のオブジェがあり、テーブルは切り株の形。

 そこを見ていると、兄達が微笑みながら言った。

「それは藤香の為に用意させたから」

 んん?にっこり笑ってるけど、やってる事が相変わらずだね。嬉しいけども。私はキノコの椅子に喜んで座った。


 メルヘンな外見のマカロンケーキを食べながら、観察を始める。見るのは女性。諏訪輝の初恋の君を探さなければ。それにしても、このマカロンケーキ美味しいね。こんなに豪華なお菓子、前世では見た事も無いよ。これが富の力か・・・姉が手作りしてくれた砂糖控えめのお菓子が大好きだった前世の私。経済的にも、身体的にも良かったんだけど、これを見てしまうとね・・・悲しい。

 あ、二人用のテーブルの人も食べてる。綺麗で清楚な人と同じく綺麗で活発そうな人。先輩だよね。素敵な人達。

 見つめている事に気付いたのか清楚な人が軽く手を振ってくる。そんなに見つめていただろうか・・・気を付けよう。あ、こっち来た。それにしても、綺麗な人達だなぁ。

「可愛らしいお嬢さん、ご一緒しても良いですか?」

 活発そうな人が話し掛けて来た。うわわ、カッコいい。女の人だけど。慌てて、返事が変になっちゃったよ。「うひゃい」って何だ、私。

「はじめまして、四年生の麻生あそう百合子ゆりこよ」

「同じく、四年生の香城こうじょう杏璃あんり。よろしく」

「はじめまして、お姉様方。鳳院藤香、一年生です」

 綺麗なお姉様方とお知り合いになっちゃいました。嬉しい。




 お姉様達との会話を楽しんでいると近寄る影があった。私はそれに気付くのが遅れた。

「百合子」

 その声を聞いて私は思い出す。彼女だと。私は私を殴りたくなった。何で、要注意人物と仲良くなろうとしたんだろう。百合子お姉様こそ、諏訪輝の初恋の君だったのだ。今更思い出しても遅いのに。

 憧れのお姉様が初恋の君だなんて・・・あんまりだ。

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