表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元病弱少女転生記  作者: 如月瑠宮
物語が始まる前のお話
3/16

疑問と衝撃、そして、笑劇

 ランドセルの次は制服。私が通う事になる瑞雲学園は初等部から制服がある。ハイウエストのバルーンスカートのワンピースに、丸襟のブラウス。冬には、ワンピースと同じボルドー色のボレロを着る。とりあえず、お値段が気になります。お高いんでしょう?

 で、今は何をしているかと言いますと・・・お披露目と言う名のファッションショーです。観客は勿論家族。

 正直に言う。恥ずかしい。でも、嬉しい。だって、こんな事をするのは初めてなんだ。前世はベッドの上が殆んどだから、パジャマばっかりでファッションなんて気にしてられなかった。それに、こういうのは妹の役割だと思っていたから・・・今は私が妹だね。

 そうか・・・妹もこんな気持ちだったのかな?気恥ずかしいのに、何故か嬉しい。でも、何となく分かるんだ。

「可愛いわよ」

 母の嬉しそうな声に楽しくなってきて、その場でくるりと回ってみる。あ、これ・・・妹もやってたよ。

 そろそろ家族の紹介でもしようかな。皆揃ってるし。

 先ず、両親。鳳院藤高ふじたか花香はなか。若くして鳳院家を継ぐ事になった父と旧華族で生粋のお嬢様である母だ。そんな両親は大恋愛の末に結婚に至ったらしい。流石に詳しくは知りません。

 五人の兄達。長兄と次兄は双子。長兄が貴君たかきみで、次兄が貴仁たかひとと言う。私とは十歳離れている。だから、物語の始める頃には社会人である。あれ?兄達がしっかりしてたら、大丈夫な気がしてきた。三兄の由貴よしたかは七歳、四兄の光貴みつたかは五歳、五兄の清高きよたかは四歳、それぞれ離れている。あれ?やっぱり兄達で何とか出来る気がしてきた・・・ていうか、藤香に兄が居るって小説には書かれてなかったんだよね。

 疑問に感じながら、大切な家族に制服姿をお披露目した私だった。




 今日は従妹に会うそうです。前世では妹を可愛がっていたのに、今世で居るのは兄だけ。少しつまらなかった。しかし、一つ年下の従

妹が居るそうだ。どんな子かなぁ・・・仲良く出来ると良いな。

 そう思ってました。


 従妹、つまりは父の妹の娘なのだが、両親と一緒に来る彼女は昼過ぎにやって来た。従妹を見た最初の感想は、可愛い。明るい茶色の髪が小さな縦ロールを作っている。髪を結うリボンはピンクで、ささやかながらにも綺麗なレースがあしらわれていた。リボンと同じピンクのワンピースの裾をきゅっと握る手は小さい。不安そうに周りを見ている目はネコみたいだ。

 ・・・前世の妹もこんな感じだった。懐かしさに視界がぼやける。駄目だ、泣きそう。皆が心配するから、我慢我慢。耐えろ、私。

「久しぶりね」

 母が叔母に話し掛ける。確か前に会ったのが、私がハイハイしてた時らしいから、本当に久しぶりなのだ。私はさっぱり覚えていないけど。まぁ、当たり前だよね。覚えてたらちょっと怖い。

 叔母は兄達に大きくなったわねぇ、と声を掛けている。しみじみした様子で話しているが、雰囲気はほのぼのだ。この微妙な違い分かるかな?

 そして、私を見た叔母は目を見開いて黄色い歓声を上げる。

「まぁまぁ!花香さんに似て、本当に可愛らしいわ。叔母様にお顔をもっと見せて!」

 あらあら、可愛らしい叔母様ですこと。少女みたいな叔母を優しい眼で見守る叔父は素敵な旦那様だろう。良いなぁ、こんな旦那様が欲しい。前世では恋人はおろか好きな人さえ出来なかった。そういう意味では寂しい一生でした。せめて、先生が老人じゃなけりゃ・・・私の担当医はおじいちゃん先生だったんだ。優しくて、私を孫みたいに可愛がってくれた。あ、いかんいかん。前世の記憶にトリップしてた。

 叔母が私の前に屈み込み、頬に手を添える。そして、子供特有の柔らかほっぺを揉む。もみもみもみもみもみもみ。え?これ、どうしたら良いの?

「ふふ・・・柔らかい」

 恍惚と言われても・・・困ります。とりあえず、誰か助けて。ヘルプミー。


 もみもみから解放された私は叔父から従妹を紹介された。佐倉さくら美園みその。それが、従妹の名前。うん、聞いた事無いね。知らないね。小説には出なかったのかな?

 何はともあれ、仲良くなりたい。前世の妹を思い出させる可愛らしさは私のメーターを振り切っているんだから。ん?メーターって何だと?私の妹ラブメーターです。

「仲良くしてやってくれるかな?」

 勿論ですとも!そう答えようとした瞬間、それは遮られた。

「いやです!」

 ぷっくりとほっぺを膨らませて言うのは可愛い従妹。可愛いよ、不機嫌顔でも。でも・・・言われた言葉と可愛いお顔が笑顔じゃない事実に私はショックを受けた。

 あれ?くらくらする。何で?




 その後、私はショックで倒れた事を知る。しかも、譫言うわごとで、嫌いにならないでとか、仲良くしたいとか言ってたらしい。重症ですね。

 従妹は兄達と遊んで貰って、日が沈まない内に帰ってしまった。それも、ショックだ。私が遊びたかったのに。

 先程まで不機嫌だった従妹に代わり、今度は私が不機嫌になった。でも、悲しい事に無意味である。不機嫌顔の私を家族はただただ可愛い可愛いと言っている。こっちは怒っているのに。全く意味が無い。私の感情に気付いて欲しいよ。てか、気付け。可愛い娘(もしくは妹)の変化に気付けよ。普段の甘さは何処に行った。普段の、何も言わなくても気付いてくれる甘さは。今までのはまやかしだったのか・・・とりあえず、気付いてくれるまで不機嫌でいよう。

 そう決めて実行した所、家族に落ち込まれました。まさか、十日間落ち込まれるとは思わなかったけど・・・幼気いたいけな少女の楽しみを奪った罰だ。本当にショックだったんだよ。

 でも、復活した兄達はどういう思考でそうなったのか・・・勘違いをしていた。まさか、構って貰えなかったから拗ねていたのだと思われるとは。誤算だ。はっきり言う。貴方達は構い過ぎです。少し・・・いや、かなりなシスコンですよ。まぁ、私もブラコンだから仲良いのは構わない。でも、兄達は度が過ぎている。極度のシスコン。それが兄達の症状だ。

 困ったものである。

 溜息を吐く未就学児であった。しかし、そんな子供は嫌ですね。無邪気に笑っていたらいいのに・・・自分の事だけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ