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元病弱少女転生記  作者: 如月瑠宮
物語が始まる前のお話
2/16

未就学児からのやり直し人生は辛いものがあります

 私は考えた。最初に何をすべきか・・・とりあえず、会社倒産に備えよう。必要なのは、お金である。

 ・・・でも、未就学児がいきなり貯蓄を始めるって・・・・・・怖いわ。何とかして、こっそりと貯蓄出来る方法を考えないと。

 そんな中、母親に連れられて、ジュエリーショップに行く事になった。そんな所、前世の家族では両親が婚約指輪を買う時に言った程度だよ・・・私は病院ばっかりだったし。ショックを受けながら、周りを見渡す。

 あ、あれ良いかも。何で此処で売ってるのか分からないけど、小物入れがある。ただし、装飾は宝石・・・だから、此処にあるのか。それでも、可愛い装飾だし、子供(ただし、お金持ち)が持っていても大丈夫だろう。

「お母様、私・・・これが欲しいです」

 出来るだけ可愛くおねだりする。あれ?泣いてるんだが・・・お金持ちでも、高いおねだりだったかな。でも、手に入れないと貯蓄が・・・計画が進まないのですよ、お母様。だから、買って欲しい。




 その後、順調に小物入れ(ただし、宝石付)を買って貰い、更におねだりを初めてされた為、喜びのあまり暴走した母により、髪飾りとブローチを買って貰いました。売ったら幾らになるかなぁ。

 四歳にして、貯蓄を始める。勿論、家族にばれない様に。

 一先ず、目標は一億。今はお金持ちだし、少しずつ貯めていけば没落までには貯まるよね。最初はそう思ってました。

 結果・・・そんなにお金を貰わない私に簡単に貯まる訳が無かった。お小遣い?四歳だから無いよ。欲しい物はおねだりで買って貰うんだよ。お金を貰う機会は今の所、お年玉のみ。

 ・・・貯まらないよね。一年に一回しかチャンスが無いんだもん。落ち込むわ。

 まぁ、コツコツ貯める事にして・・・次は会社倒産を防ぐ為に、父親を軌道修正しなくては。倒産の原因は父の横領だから。とりあえず、少しずつ洗脳・・・いや、改心して貰わなければ。まだ確実に横領するとは決まってないが、何かしらの補正が働いて違う原因で倒産する可能性もあるだろう。だから、少しでも可能性を低くしたい。

 父には素晴らしい紳士(ジェントルマン)になって貰います。

「お父様、悪い事はしちゃダメですよ?」

 いきなりそんな事を言い出した娘に父は戸惑いながらも、しっかりと頷いてくれた。普通に驚くよね・・・幼い娘が疑惑の目を向けながら、そんな事を言ったら。

 暫く落ち込んだ父に心の中で謝罪した。でも、絶対に避けたいんだよ。

「・・・藤香」

「なぁに?お兄様」

 落ち込むお父様を眺めながら、話し掛けてきたのは長兄である。何度見てもイケメン。見飽きる事も無ければ、見慣れる事も無さそうなイケメンだ。しかも、五人全員が。ダンディーな父親の遺伝子を見事に継承している。鑑賞にもってこいな兄達だね。前世での兄は少し・・・いや、かなり野暮ったい感じだった。

 つい懐かしんでいると、兄達の心配げな顔が目に入る。いけない・・・気を付けないと前世の記憶が思い浮かぶ。

 何でも無いと笑い掛けると、兄達はホッとした様子だ。うん・・・イケメンはどんな顔でも様になるんだね。本当に羨ましいよね。

 そんな兄達と私の外見は全く似ていない。兄達が父親似で、私が母親似だから。良くここまで真っ二つに分かれたよ。感心しちゃう。兄と歩いていると兄妹に見られないから困るけど。その点、前世では家族全員が何処か似ていたなぁ・・・母と妹と同じ笑窪に、父と同じ泣き黒子。そして、祖母からの遺伝の癖っ毛が同じだった兄姉。

 ・・・愛嬌は有ったと思う。でも、今世の私みたいに美少女では無かった。贔屓目で見ても、である。それでも、愛着があるのは前世の顔なのだ。まぁ。あと十年もしたら慣れて、愛着も湧くだろう。

「藤香、どうしてあんな事を言ったんだ?」

 ・・・うん、不思議過ぎる子になったよね。前世の記憶が戻る前はただただ甘えてくる可愛い妹だったんだもん。それが・・・父親の不正を疑うなんて、信じられないよね。考え無しだったかな・・・もう少しやり方を考えた方が良かったみたい。

 とりあえず、やり方を考えるのは後回し。今は兄達の疑問の答えを考えなきゃ。結局は前世でも今世でも、私はブラコンだったのだ。だから、兄達の心配そうな顔はあまり見たくない。ちなみに前世はブラコンであり、シスコンだったよ。悪いか。

「・・・夢を見たの」

 子供ならありそうな言い訳。

「夢でね・・・お父様が悪い事をして捕まっちゃうの。それで、お父様ともお母様とも・・・お兄様達とも、離れ離れになっちゃうの・・・それは嫌なの」

 頑張って目を見開く。瞬きを堪えて涙を溜める。うるうるおめめの完成、かっこわらい。えぇ、前世の妹の必殺技ですよ。私は全戦全敗でした。

「だからね・・・お父様にお願いしたの」

「・・・そうか」

 まだ疑問は残っていそうだけども、納得してくれたらしい。うるうるおめめの威力は凄いね。

 さてと・・・いっぱい甘えようかな?以前の藤香に戻って・・・それに、今の私も少し甘えたい。


 目の前にあるのは、アイスクリームである。それも、愛すべきバニラの。綺麗なガラスの器に盛られている。

 皆さん、前世の私の事を覚えていらっしゃいますよね。病弱な私はその為に天に召され、今世は悪役令嬢として転生したんですよ。そんな私ですが、前世から続く大好物があるのです。そう、現在進行形で目の前にあるアイスクリーム。それも、バニラが特に好き。

「うふふ・・・」

 多分、前世で使っていた物の何倍もするだろうスプーンでアイスを掬う。一口、また一口。前世ではたまにしか食べられなかった代物を毎日だって食べられる幸せ。

 口の中に広がる甘さと冷たさを堪能していると、アイスは直ぐに無くなってしまう。もっと食べたいが、流石に太ってしまうだろう。

「ううぅ・・・」

 それは嫌だ。折角美少女になったのだから、可愛いままでいたい。たとえ、太ったとしても家族は可愛いと言ってくれる。でも、世間は違う。前世で薬の副作用で太った私を見た見知らぬ人の言葉を覚えている。その言葉はトラウマになった。

「・・・デブは嫌」

 それに、健康な体を損ねるのも嫌だった。我慢しよう。前世ではショックのあまり拒食になりそうなくらい食べられなくなったし、その所為でガリガリになって言われた言葉もトラウマだ。

 何事も適度に。




 入学準備がここまで嬉しくないとは思いませんでした。前世ではあんなに楽しみだったのに。まぁ、破滅に近付いて嬉しい人はいませんね。

「あら?藤香ちゃん、このランドセルは嫌だったかしら。あっちの赤い方が良かった?」

 乗り気じゃない私に気付いた母が手元の紫にも見えるピンクのランドセルとは違うデザインの赤いランドセルを指差す。店員がそのランドセルを直ぐ様持ってくるのは、金持ちの買い物だからでしょうか?でも、金持ちの学校なのにランドセル・・・何か不思議な感じだったが、納得。全部特注品なんだよね、このランドセル。

 ピンクのランドセルは小さなダイヤやルビーで可愛い花を模っている。あ、スワロフスキーも付いてるね。これは高い。赤い方だって、同じ様にダイヤが鏤められている。あ、これバラだね。鏤めたダイヤがバラを描いているんだ。

 他にも、珍しい革で作った奴とか、金箔が張られた奴とかがあるけど、使うのは一つ。何で、最初に私の希望を聞かないで作るんだろう。余るじゃん。勿体無い。

「違うの。いっぱいあるから迷って・・・」

「そう・・・じゃあ、全部使う?」

 予想通り、私に甘い母はこう言えばそう言うと思ったよ。でも、使うのは一つで充分なんだよね。それに、金箔とか・・・趣味が悪い。なら・・・

「ピンクのと赤ので迷ってるの」

 この一言で、ランドセルは二つを順番に使う事になりました。うん、お金持ちになったんだから、少しくらいは良いよね。

 でも、私は知らない。金箔のランドセルを使う人を目撃する事を。

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