愛娘の成長【大いなる母】
私にはそれはそれは可愛い娘が居る。五人の息子の後に生まれた娘は小さくて本当に育ってくれるのか心配になる程だった。それはどうやら、私だけでは無く、夫も息子達でさえもそうだったのだと後で知った。だが、娘は幸いな事に健康に育ってくれた。息子達の様に丈夫とは言い切れないけれども、それでも充分である。
「藤香ちゃん」
名前を呼べば、可愛い娘は笑顔で振り返る。本当に可愛い。こんなに可愛い子が自分の娘だなんて・・・神様に感謝する。
最近、娘の様子が変だ。可愛らしいのは変わらないのだが、どこか違うと思う。何が変なのか言葉で表現出来ないが確かに変わった。しかし、私の娘である事に変わりは無いのだ。様子が変?それがどうだと言うのだろう。可愛い事に変化は無かった。大切な娘なのだ。
「藤香ちゃん」
何時もの様に名前を呼ぶ。娘は振り返る。何時もの笑顔だった。
「ねぇ、あなた」
愛する夫に話し掛ける。私達は政略では無い恋愛を経ての結婚をした。それは上流階級では珍しいだろう。だが、たとえ政略だったとしても私は夫に恋をしたと思うのだ。そんな相手との大切な我が子は皆大切で大切で仕方がない程。こんな夫婦になれた私は幸せ者だ。同じような夫婦の少なさを知っている。
「私達は幸福だわ」
幸せな結婚が出来たもの。私の言葉に愛する夫は微笑んだ。優しくて頼もしい夫。どうか、愛娘にもそんな人が出来ますように・・・私は願ってやまない。どうか、この願いが届きますように・・・