僕自身
あまりにも、泣いていたから。
つい、てをひいていた。
泣きやむことのない子。幼い子。
なのに、僕の手を掴み返すことすらしない。
かわりに、こちらが強く握りしめる。
そうしたら、やってと
泣き止んで足を止めた。だから、僕も立ち止まる。
真っ直ぐこちらを覗いてくるものだから。
その瞳には涙が溢れるだけで、他に感情がないから。
ただ、僕は信用されたかったから。
頼って、縋ってほしいと思ったから。
屈み、抱きしめていた。「僕は君を助けたい」
そう伝え、彼の背を撫でた。
泣いていい。気が済むまで泣いていい。
声だってあげていい。
でも、1人で泣かないでほしい。
悲しいから。
虚無感しかないから。
そう、知っているから。そんな顔をして、泣かないでほしい。
僕はその寂しさ、孤独を知っているから。
幼子を抱きしめ続けた。「僕がいるから。」
独りだと、決めつけて、泣くのはもうやめようか。
僕の胸で泣くようになった子。
愛おしから、頭を撫でる。
小さく、助けて助けてと縋る子。
「たすけてって、その一言がどうして言えなかったんだろう…ね。僕。」
当時の僕自身が、幼いままだから、悲しみをひきずったままだったから。
この子が僕だから、でももう僕はこの子じゃないから。
「もう、置いていかないから。」
もう独りなかないでくれ。