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 ところ変わって城下町。

 町にも大魔導師不在の知らせは届いておりましたが、大した影響はございません。

 それはもちろん、私の力もあってのことですが、やはりそれは元来この町が平和であったからでしょう。

「生きているか?」

 死んでいるかも知れないと思いながら声を掛けると、思いがけず大きな動きで立ち上がられて驚きのけぞる羽目に。

 そんな私を慌てて拾い上げると窓枠に戻してくれたのは、ノワールを慕っていた彼の兵士でございます。

 生気のない顔で、もしかしたら死んでいるかもなどと思ったのも無理はない姿の彼が、今でもノワールのことを想っていることは明白です。

 彼は到底真実を知りえる立場にはにはありませんが、ノワールが居ないという事実のみでこうまで泣き暮らすことができるようでした。

 彼が真実を知ることもないのでしょうが、知ったとしたら身投げか、もしくはその身を挺してノワールを助けようとすることでしょう。

 まぁ、只の兵士にできることなど何もないのですが。

「ノワール様は、ノワール様はご無事なのですか!?」

 真実を知らない彼は、ノワールが国を離れたということしか知らないでしょうから、余計なことを告げるわけにはまいりません。

「私がここに存在するということはそういうことだ。そんなことより、真面目に働かないとノワールが戻ってきたときには奴の連絡係を下されてしまっていることになるぞ」

 それどことか職を失っている可能性もありうるのだが、とりあえずそれを聞いた兵士ははっとして瞳に力を漲らせておりました。

「ですが、ノワール様は本当にお戻りになられるのでしょうか」

 嘘をついても構わないのであれば、ここで彼を勇気づける言葉を吐くこともできたでしょう。

 ですが私は嘘のつけない正直者です。

 何も言う言葉のない私は、黙って彼の眼前から飛び立つことしかできませんでした。


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