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黒薔薇の魔女ノワールが国から姿を消して早ひとつきが経ちます。
それでも国自体は平和で何の問題も起きてはおりませんでした。
もちろん私がノワールに代わりこの国を見守っていることも関係ないわけではございませんが、それ以前にこの国は平和なのでございます。
そこへやって来た悲劇はノワールという存在を犠牲にすることで事なきを得ました。
ですから、誰が何と言おうと今現在のこの国は何の問題もなく平和なのでございます。
国は栄え、隣国との親睦も滞りなく、豊穣に恵まれ、洪水も地震もなければ天から槍が降り注ぐこともなく、ましてや大魔導師が国に害をなすこともございません。
それなのに今、この国の王城からはかつてないほど活気が失われつつありました。
原因は誰しも分かっております。
「御姉様はご無事でしょうか・・・」
「わたくしがここにおりまするのは他でもない、ノワールが無事生きている証でございます」
「生きているというだけでは納得できませんわ」
それは暗にノワールの様子を見てくるようにと言っているようなものでしょうが、私にはその命令をきく義務もなければ聞けない理由もありました。
よって、私は妹姫であるロザリー様のお言葉でも聞かなかったことにして飛び去ることしかできませんでした。