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第7話:その契約書、隙だらけやんか

大切な畑を奪われた老農夫。

情報の格差を利用した、卑劣な詐欺師にヨシコさんが吠える!

ナケナシ王国と魔王軍の境界に位置する「黄金の麦穂」と呼ばれる広大な農耕地帯。

かつて両軍の兵站を一手に引き受け、「最強の総務」として名を馳せたヨシコにとって、この地は単なる食料供給地ではなかった。

魔王軍時代、厳しい冬を越すための備蓄米を確保すべく奔走した際、無理な増産依頼にも「ヨシコさんの頼みなら、土が悲鳴を上げても何とかするだ」と笑って応えてくれたのが、老農夫パウルだった。


だが、数年ぶりに訪れたヨシコの目に飛び込んできたのは、かつての黄金色の輝きを失い、雑草が伸び放題となった荒れ果てた畑だった。

そしてその中心で、泥だらけの地面に膝をつき、力なく震えるパウルの姿を見つけたとき、ヨシコの胸に激しい怒りが灯った。


「ヨシコさん……すまねぇ。ワシの代で、先祖代々のこの畑……奪われちまっただ」


パウルが震える手で握りしめていたのは、この地域の新進貴族、バロム子爵と交わした「魔法触媒貸与契約書」だった。

表向きは「大凶作による土壌の劣化を防ぐため、収穫量を倍増させる魔法の触媒を格安で貸し出す」という、慈悲深い支援を装ったものだ。

しかし、ヨシコがその書類を手に取った瞬間、指先から嫌な魔力の振動が伝わってきた。


「パウルさん、顔上げなさい。あんたは何も悪くない。……ただ、この『ゴミ』を持ってきた奴が、徹底的に腐ってるだけや。ウチがその根性、叩き直したるわ」


ヨシコはパウルを連れ、土地の強制収用を祝って豪華な酒宴を開いているバロム子爵の屋敷へと乗り込んだ。


「ほう、農夫の味方か。だが無駄だ。これは正当な契約。納得してサインした以上、この土地は私のものだ」高級なワインを揺らしながら、バロムは下卑た笑みを浮かべ、パウルを冷たく見下ろした。


「納得してサイン?嘘ばっかり言いなさい。バロムさん、あんた、この書類に魔法的な細工をして、わざと誤認させたやろ?これ、総務の視点から言うたら『詐欺』どころか、国家への背信行為やで」


「ハッ、証拠でもあるのかね?この契約書は王国魔導士ギルドの公認だ。田舎のおばさんの言いがかりで、私の正当な権利は揺るがんよ」


ヨシコは不敵に笑い、三つの通信端末を同時に起動させた。


「証拠?証拠なら、今からウチの自慢の弟たちが、あんたの退路を『事務的』に断ち切るから、覚悟しときなさい!」


画面が眩い光を放ち、ヨシコの呼びかけに応じた弟たちの顔が浮かび上がった。


「シロウ、あんたの出番やで!この『汚い紙切れ』の化けの皮、今すぐ剥がしなさい!」


『姉ちゃん、任せて!うわぁ、この契約書、術式の組み方がえげつないわ!』画面の中で四男・シロウ(工学博士)が、眼鏡の奥の瞳を鋭く輝かせてまくし立てる。『紙の繊維自体に、読み手の認識を狂わせる「認識阻害ルビ・ディセプション」の多重レイヤーが仕込まれとる。パウルさんの目には「豊作の保証」と見えてた部分は、実際には「債務不履行時の土地無償譲渡」っていう隠し条項や。……今、その術式を解析して、元の文面を可視化した「デジタル鑑定書」を作成したで!これで言い逃れはできんわ!』


「な、何を……!?魔法ギルドの秘匿術式を、そんな短時間で……!」


「さらに、こっちも聞きなさい。……サブロウ、経営コンサルとしてこの『経営』、どない思う?」


『……左様ですわね。あまりに慇懃無礼、かつ「経営」と呼ぶにはおこがましい暴挙ですわ』三男・サブロウ(経営コンサル)が、冷徹な敬語関西弁でバロムを射抜いた。


「うるさい!弁護士でもないコンサルに何がわかる!」


『おや、勘違いしないでください。私は契約の法規ではなく、君の「無能な経営判断」を指しているのですわ』

サブロウは冷淡に言い放つ。

『シロウに解析させた、君が銀行へ送った内部資料のログ……。君、この農地を奪って担保にすることで、王都中央銀行から「未開地開発」の名目で十億の融資を引き出す計画書を提出してましたわね?ですが残念。……この計画、前提条件である土地の取得が「詐欺」に基づくものだと銀行側にバレたら、どうなるか分かりますわね?土地を失うどころか、不当な融資申請による背任罪も問われる。君の「経営者としての命」が今、ここで終わりますわ』


サブロウの言葉は、バロムが築き上げようとしていた歪な「砂上の楼閣」を根底から揺さぶった。

ヨシコは通信端末を手に持ち、震え始めたバロムの鼻先へと一歩踏み出した。


「あんたな、知識のない人を騙して奪ったもんで、自分が幸せになれると思てたんか?情報はな、人を陥れるための武器やない。正しい商売をするための道具や。……ウチの弟たちを敵に回したこと、後悔しなさい」


バロムの顔から余裕が消え失せ、役員室には重苦しい沈黙が落ちた。

ヨシコの瞳は、かつて数多の難題を「事務的」に片付けてきた、最強の総務の輝きを宿していた。


(第8話へ続く)


魔法の認識阻害で契約を偽装?

総務をナメたらあかん。

シロウ、解析準備はええな?次回、詐欺師の全財産を「法的・技術的」に解体しますわ。

更新通知、お忘れなく。

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