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掌編

熱血!竜騎士団!

作者: 綴 詠士
掲載日:2025/12/30

 今、最後の決戦が始まろうとしていた。


 目の前には化け物たちの大軍が迫っている。大きな棍棒を持った巨人が無言で歩き、緑色の肌で人型の異人たちは笑い、スライムは青い水の玉が地面を這うように進んでくる。


 俺たち王国軍も戦いのためにここにいた。


 俺は赤い鱗の身体の竜に乗り、これから戦うのだ。


 とはいえ、怖い。


 すぐに死ぬかもしれない。いや、本当に怖い。


 なんでこんな戦いに出陣しないといけないんだろう。


 もう普通に皆で戦ってくれないか?


 そんなことを思うが誰もそんなのは通じないだろう。


 それどころか、皆が期待に満ちた目で俺を見ているのを感じる。


 無数の視線が俺を見る。


 背後で竜を駆る他の竜騎士達も俺をじっと見る。いや、お前らもなんか言えよ。どうせ怖いんだろ。なんで俺だけが言わないといかんのだ。


「マルス、頑張れ~」

「皆を奮い立たせろ~、お前ならいける~」

「熱血熱血~」


「うるせえな!」


 俺が振り向き怒鳴ると、彼らはすんっと、真面目な竜騎士に戻る。くそ、外面だけはしっかりしやがって、だから変に期待されるのに。

 

 やらないといけない。


 顔を両手で叩く。


 よし、切り替えろ。


「お前ら!!! この戦いはここで終わらせる!!! 俺たちは最強だ!! 闘志を燃やせ!! 熱血魂でいくぞおおお!!!!」


「うおおおおおお!!!!!!」


 大音量の雄たけびが木霊する。


 ちょっと気後れしつつも、俺は竜を操り先陣を切った。


 まずは一撃を見舞おう。


 まあ、死んだらそれでいいや。もうしらん。


 俺は竜を操り、一直線に敵の先陣に突っ込んだ。


「うおおおお!!! この俺の前に出てくるとは愚か者たちが!!! 死ねええ!」


 槍を突き刺し、巨人を屠る。


 そしてそれを合図に俺たちの軍勢が敵軍と衝突した。


 俺は必死に戦う。


 とにかく死にたくない。


 必死に敵の攻撃を避ける。どうにか避けて、周りの味方から離れないように戦う。


 そこにスライムたちが飛び乗ってくる。


「うお!」


 スライムが俺の頭を包む。息ができない……。


 水中で溺れるかのようになり、必死にスライムを引きはがそうとするが、全然動かない。


 やば、死ぬ。やっぱ命令を無視して家に引きこもってればよかった。


「……」


 俺が死にかけ、竜から落ちそうになると、急にスライムが取れて息が楽になった。


「おい! マルス! 死ぬんじゃないぞ!」

 

 見ると周囲には竜騎士達がいて、俺を助けてくれたようだ。


「すまん、助かった」


「ほら! 声を出せ! お前がいないと皆が戦えないんだからよ!」


「……そうだな」

 

 周囲を見ると、あちこちで衝突が起きていた。


 剣士が緑色の異人を切り殺す。巨人のこん棒で兵士たちがゴミのように吹き飛ばされる。


 勝つために声を出さないといけない。


「よし!! 敵は弱い!!! 皆俺の周りに集まって! 一気に叩くぞ!!!!」


 そうして戦った。


 やがて敵軍が逃げ出していく。


「臆病者どもが!! やったぞ! 俺たちの勝利だ!」


 味方の軍から喜びの声が上がる。


 俺たちは勝ったのだ。


 そしてどうにか俺も生き残ったのだ。よかった。


 ……とはいえ、これじゃあ熱血竜騎士団はまだ続きそうだな。まあいいんだが。






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