バレンタインデーとかクソ喰らえ
「はいソージ! Happy バレンティンday!」
「今オランダ出身の野球選手居なかった?」
朝っぱらからベルに絡まれた。 普段の朝は比較的ローテンションのくせに……
「それはそれとしてこれを進呈シマス! ありがたーく受け取って、今後貰えない悲しみを塗り替えてクダサイ」
「後半部分必要か?」
なんで俺はチョコ貰うついでに貶されてんの? 素直に渡せんのかお前は。
「ち・な・み・に〜 チョコにはたーっぷりの媚♡薬とベルちゃん特性の母乳────」
「受け取り拒否したい」
「────が出なかったから仕方なく牛の母乳を使用してマス」
「普通に牛乳って言え」
市販の牛乳で安心した。 少なくともベルの腕なら名状しがたいチョコのようなものを渡されることは無いだろう。
……いや流したけどこれ媚薬入りだな。 普通にチョコのようなもの渡されたわ。
「まぁ媚薬も冗談デス」
「何がしたいんだお前」
「残念ながらチョコを固める過程で媚薬の成分が無効化されちゃいマス」
「試したんか」
「なのでワタシのラブジュースを混ぜマシタ」
どうしよう媚薬以上に安心できない物が混ざってる。 普通に汚物混入だろ。 チョコに謝れ。
「ふっふっふっ……これもジョークデス」
「俺忙しいんだけど」
「普通にミルク・ホワイト・ビター3種のチョコだから安心ご無用」
「なら安心出来ねぇよ」
「おっと間違えた。 心配ご無用!」
「何がしたいんだお前」
クソ忙しい朝に無駄な時間使わせやがって……と言いたい。
でも言わない方が早く終わるから黙ってよ。 人は口を閉ざすことで大人になる。
ついでにピーマン→コーヒー→ビールと苦味を乗り越えても大人になる。
まぁ俺苦いの嫌だけど。 紅葉と違って食えない訳じゃないからまだ大人。 言い分がクソガキ。
「じゃあこれ! ちゃーんと味わって、ワタシを想って食べるんデスよ! 後で感想を言ってクダサイ。 言葉が恥ずかしいならカラダで一晩中語り合うのも可! 寧ろ推奨!」
「口で言えるから結構です」
「ちっ」
毎度毎度思うが、コイツは乙女として見られたいのか見られたくないのか分からん。 醜い部分全開だけど好かれる気が無いんじゃなかろうか。
「それでは任務完了! サラバ! あ、朝ごはんの卵焼きは塩っぱい方で!」
それだけ言い残してベルはどっか行った。 多分部屋に戻った。
ついでに、今日の朝飯に卵焼きは無い。 まぁリクエストされたなら作るけど。
で、このチョコどうしよう。 冷蔵庫入れといて帰ったら食う事にしよう。
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「は、はい恭平。 コレあげるわ」
「あ、ああうん。 ありがとう皐月」
「いーな〜 ねぇさっちゃん俺の分は?」
「強請るな。 どうしても欲しいならさっきコンビニで買ったブラ○クサンダー「おっ!」の包装紙をあげるわ」
「義理ですらない!」
普通に、そして本当にゴミを渡されて膝を着いて慟哭する若葉。 因みに中身は皐月が恭平に食べさせた。
「おはよ〜」
「おはよう遥。 遅かったわね」
「あ、うん〜 ちょっと忘れ物しちゃって〜」
「あらそう。 ちゃんと持ってきたの?」
「ちゃーんと忘れずに持ってきたよ〜」
「いや1回忘れて……まぁいいか」
「ところで〜 不知火くんはどうしたの〜?」
「ああ、若葉なら、皐月から義理チョコすら貰えなくて絶賛落ち込み中」
「そうなんだ〜」
そう言うと、遥は防寒具を脱いで鞄を机に置き、中から可愛らしいラッピングを施されたブラウニーを取り出した。
「は〜い不知火く〜ん 私からプレゼント〜」
「…………」
若葉がゆっくりと顔を上げる。
そしてチョコと遥を認識すると、若葉に生気が戻っていく。
「これを……俺、に?」
「うん〜 皐月ちゃんと頑張ったんだ〜 受け取ってくれると嬉しいな〜」
「…………シャッハァオラァ!」
「うわ急に元気になった」
「ヒィヤッハァァァッ!!!」
「……走ってどっか言っちゃったけど」
「不知火くん走ると危ないよ〜」
「いやそういう話じゃないでしょ遥」
「若葉は元気だなぁ」
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「どうしました? 普段の奏士殿の顔を薄めたような顔してますが」
「普段の俺どれだけ酷い顔してんだよ」
あ、もしくは普段の俺がイケメン過ぎて今の俺が普通の顔になってるってこと? ヤダー困っちゃうぜ。
「それで、どうかしましたか? お腹の調子が悪いのであれば授業が始まる前にお手伝いに行くことを推奨しますが」
「いや、腹の調子じゃなくてな」
学園全体、いや世間、いや国中、いや世界中がバレンタインに染まっている。 吐き気するよね。
「どいつもこいつも7分の1程度で浮かれおって……」
「2/14を約分する人初めて見ました」
そういう莇の手には貰いたてほやほやのチョコが。
「お前今年は何個だ?」
「私は1つだけです。 あ、お嬢様からはノーカンですので、それ含めれば2つですね」
「ふーん」
その貰った1つとやらも、どうせ薪姫からのド本命通り越して愛だろう。 吐き気が加速するぅ!
「奏士殿はお幾つ受け取ったのですか?」
「今年は6つ配る予定」
「配る側ですか」
だって従姉筆頭で大人達がチョコを強請ってくるし。 毎年。 材料費は向こう負担だから別にいいけどさ。
「それで、お幾つ受け取ったのですか?」
「1つだけどベルから受け取った物だから安全と確信してない。 故にまだノーカン」
「お嬢様に愛されてますね」
俺は歪んだ愛としか思えないんだけど。 もっとこう、落ち着けるタイプが欲しい。 重政みたいな。 バレンタインだろうと重政の好感度が1番高いの流石。
「HR始めるぞー 席つけー チョコしまえー 次俺の前でチョコ出したら問答無用で俺の腹に没収するぞー」
「霜月先生はどうなされたのですか?」
「気にするな。 非モテの僻みで奴は毎年こうなる」
「奏士殿が言えるセリフですか?」
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そして放課後
「あっ、あのっ」
「んじゃらほい」
「こっ、これっ! 受け取ってください!」
わぁー顔真っ赤な泉ちゃんからチョコ受け取ったー
「これ本命?」
「へうあっ!?」
「あーはいはい先輩そこまで。 これ以上は泉ちゃんが爆裂しかねないので、勇気出して渡した所で抑えてください」
「えー」
だってハート型の入れ物だし勘違いしたくなるよね。
「因みに私達も貰いました。 先輩と同じハート型容器で」
「無念」
「泉ちゃんからのチョコ……女の私でも勘違いしそうになります」
「分かる〜 泉ちゃんもしかして私達が本命?」
「いっ、いえ本命という訳では!」
「え〜ちょっと残念です」
なんて口で言いながらも普通に嬉しそうにしている薪姫と頼金。 俺も超スーパー究極アルティメットうれち。
「ささっ、先輩食べてみてくださいよ」
「ここで?」
「はい。 泉ちゃんが先輩を想いながら作ったチョコですよ。 最初に食べるのが裏筋です」
今なんかちょっと違う気がしたけど気のせいだな。
「じゃあ1つ」
リボンを解いて蓋を開けると、中には綺麗に成形された多種多様なチョコが。
泉ちゃんの手作りチョコ……これで既製品を入れ替えただけだったら泣けるけど泉ちゃんから貰えただけでそんな悲しみも打ち消されるからどっちでもいいや。
1つ、至って普通のチョコを1つ摘んで口に運ぶ。 匂いは大丈夫。 見た目だけ素晴らしいタイプではなさそう。
まぁ泉ちゃんに料理下手属性無いけどね。 それなりに出来る方だし。
「…………」
「どっ、どう……です、か?」
「……\カッ/」
「ピッ!?」
「爆散した!?」
「うわー見事に粉々……」
「あーあぶね」
「先輩気持ち悪いんで戻りながら喋らないでください」
いやー危なかった。
「まぁいいや。 それで、お味はどうだったんですか? 反応見るからに聞くまでもなさそうですが」
「ん、美味い美味い。 よく出来てる」
「ほ、本当、ですか?」
「マジ。 マージ・マジ・マジーダ」
「なんで急に魔法変身?」
わーい頼金だけだけどネタが伝わったー この作品ネタが伝わる人少なくてちょっと寂しいから凄くうれちい。
「それじゃあお礼に。 泉ちゃんにこれを進呈しよう」
俺も鞄からチョコを取り出して渡す。
「あ、ありがとう……ございます?」
「先輩それ本命ですか?」
「ド本命「えっ」って言ったらどうする?「ほっ」」
「泉ちゃんを勘違いさせた罪で極刑」
「じゃ言わない」
実際本命じゃないしね。 俺の愛の結晶だと思ってくれていいよ。 本命より重ぇ。
「泉ちゃんが嬉しそうにしてるのでいいですけど。 で、私達の分は?」
「えなんで貰える身分にあると思ってんの?」
「えなんで貰える身分じゃないんですか?」
いや君他人。 俺無関係。 泉ちゃんの写真を優先して流してもらってるけどそれはそれこれはこれ。 ビジネスライクで行こう。
「えー余分にあったかな……あ、あるわ。 1袋やるから2人で分けろ」
「いえーい」
「わーいありがとうございまーす」
何故か男側が後輩女子達にチョコを渡しているバレンタインデー。 最近はそういうの煩いからあまり深くは突っ込まないけど。
「そういえば先輩、会長見ませんでした?」
「俺も知らん」
「そうですか……今日は生徒会無いので何処にいるか分からないんですよね」
「帰ったんじゃねぇの?」
「いえ、靴があったのでまだ学園です」
「さいですか。 俺も探してるんだが電話が繋がらん」
「先輩今度は何したんですか? 遂に揉んだんですか?」
「この際何を揉んだのか明確にしないが、俺は無実だぞ。 何もしてない」
「え〜本当ですか〜? そういうのした側は気付かないって言うじゃないですか」
「うーむ……昨日の夕飯に苦味抜きしたピーマンのペーストを混ぜたのがバレたか? いやでも全部食ったしな……じゃあ一昨日カードゲームでボコボコにした事か? それも今更感あるし1日空いてるしな……」
「思ってたより内容がしょぼい」
「ダメだ皆目見当もつかん。 世間一般で言う"やらかし"なら紅葉の方がよりやってる」
「例えば?」
「全部言うと今日中に帰れなくなるけど聞きたいか?」
「あ結構でーす」
なんだ残念。 頼金に愚痴ろうと思ったのに。
「それじゃあ、会長見つけたら連絡ください」
「うーい」
「で、では失礼します」
「また明日ー!」
「気を付けて帰るんだぞー」
あれ今の俺めっちゃ先輩してない? どっちかってーと児童を見送る小学校の先生の気分。
「……さて、俺も本腰入れて探すか」
泉ちゃんからのチョコを1つ口に入れて鞄に入れる。 ラッピングは完璧に元通りにした。
んで、紅葉はどこかな? 学園の監視カメラ程度ならハックできるけど、それでも見つからないってのは面倒だ。 紅葉の靴か鞄にでもGPSつけとけゃ良かったな。
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そして、そんな奏士を遠くの物陰から見る影が1つ。
「……やっぱり混ぜてた」
しかし、奏士がそれに気付くことは無かった。 今のあいつは大部分が泉ちゃんのチョコで占められている。
はいどーも三本立ての夢で解釈違い・脳破壊・恐怖を味わった作者です。 私何かしましたか?
詳しく話しますと、夢に紅葉が出てきまして。 そこまでは嬉し恥ずかしニンニクマシマシだったのですが、何故か莇とカップルになってる夢でした。 私が想像した紅葉の姿とは違うイチャイチャを見せられた私は解釈違いとNTRによる脳破壊のダブルパンチ。
次の夢では私の家に無数の美少女が押し寄せる恐怖。 しかも全員窓をこじ開けて入ろうとするので恐怖倍ドン! なんか異様に怖かったです。
最後の夢は、私の愛用してるカバンの中に大量の昆虫が発生。 発生というか、夢で私が捕まえた昆虫を試験管の中に入れて置いたら栓が取れて大脱走。 それに気付かず放置した結果、一種のコロニーが完成しそれを取り除く地獄。 私虫嫌いなのにどうやって捕まえたんですかね。
てな訳で心のすり減りがヤバいです。 バイト先の戦力がまた辞めたことよりもヤバいです。 どっちも助けてヒ°ュオーラ。
それはそうと普通に書く時間無さすぎ&長くなりそうなので今回は途中で切りました。 次回が本当の本編です。
ではこれで。 癒しが欲しい……