3~9以下略(後編)
「ま、今は奏士が立派だとかそんな話はどうでもいい」
自分から話を広げたくせに、勝手にぶった斬るこの教師。 どうやら割と本気で喧嘩そのものに興味が無いらしい。
「そもそも、喧嘩してる時点で立派もクソも無いしな。 だからさっさと仲直りしてこい」
妙に大人な対応をするも助に、紅葉は怪しさMAXしか感じない。 普段のも助を知ってるがために。
「……本音はなんですか?」
「仲直りとかマジでどーだっていいから俺の仕事手伝うよう言ってんくね? 荷物移動させるよう言われたけど量多いからやりたくない」
「…………」
(事が事故に半分は当然だが)己のことしか考えていない目の前の教師を、紅葉はどうやって理事長にチクるか考えることにした。 どうやら、この教師に取り繕うという言葉が無いらしい。
「あ、いや仲直りしてくれないとマズイな」
「?」
「生徒会長と副会長が不仲で仕事の連携取れなくなると最悪俺の管理責任になる。 ほら、俺って一応生徒会顧問だし」
紅葉はこの清々しいカス野郎に拳を入れるべきか検討する方向にソフトした。 とりあえず3発は確定。
「つー訳で、お前らさっさと仲直りしてこい。 大丈夫だ奏士は約束を守る男だから脅迫でもなんでも約束させればどうにでもなる」
「……教師以前に人として問題がある」
紅葉はおまいう過ぎる感想を述べるが、それはそれこれはこれ。 以前の事は高圧洗浄機で流してあるので無問題だ。
「だーいじょうぶだ奏士チキンだから。 とりあえず無理矢理にでもぶちゅっ♡としちゃえば言うこと聞くと思うぞ」
「……セクハラで訴えたら勝てそう」
「は〜最近のやつはすーぐセクハラパワハラモラハラ……ハラスメントに繋げやがる」
なんかそれっぽい事を言って無かったことにしているが、どう考えてもセクハラな上に生徒に対して行っているのでツーアウトだ。
「ハラハラ煩い世の中だよな。 ハラハラ言うってことは『孕めオラァ!』が待ってるって事か? ロックンロールかよ」
今のでスリーアウトだ。 チェンジの暇すら与えないコールド負け。 しかもハットトリック・オウンゴールで永久退場モノだ。 ここまで来たら強すぎて伝説に成りうる。
「……教師人生の遺言は以上ですか?」
「成程。 俺のアドバイスを聞いて直ぐに実行するとは流石学年次席の生徒会長サマだ。 ここは穏便に示談で解決したいからそのボイスレコーダーを消してはくれまいか?」
過去一真剣な顔で言うも助は既に土下座の準備を終えていた。 切腹でもしそうな威圧感だ。 土下座する側が放つものでは無いが。
「……残念ながらまだ録音してないので 」
「マジ? じゃあいっか」
何も良くは無いが、一難去ったも助は飛び上がる。 着地の際に腰に来たのか、険しい表情だ。
「んで話を戻すが、奏士はちゃーんと約束を守るからどう脅して取り付けるかの方法なんだが」
「……まだ続ける気…………」
腐れ外道な作戦会議に呆れる、自称善人な紅葉ちゃん。 最終手段として脅迫を考えていたのは腐れ外道じゃないみんなには内緒だよ♠ 地の文にバトルマニア混ざってるな。
「……そもそも、奏士は嘘つきだから約束を守らない」
「まぁ確かにアイツは嘘をつくことに罪悪感とか無いタイプの人種だが」
「……記憶力も無いから約束したことも忘れそう」
「……ふむ?」
ここでも助が訝しむように表情が一変する。 先までの間抜け面では無く、真面目に精査しているかのような表情だ。
「……何か気になることでも?」
「ん。 いや…………奏士はあんなでも、頭の出来だけは別格だからな。 覚えたことは忘れない」
「…………」
奏士周辺人物の奏士に対する評価が妙に高いのが気になるが、それはそれとして紅葉の中には疑問が残る。
『覚えたことは忘れない』 要は瞬間記憶に近い能力だが、紅葉だって記憶力は良い方だ。
だが、も助の言うそれは記憶力の良し悪しとは少し違う。 そんな雰囲気を纏っている。
「確かに、覚えようとしない事に関しては欠落レベルで何も記憶してないが……」
「……でも、奏士に昔ことを聞いたら『覚えてない』って言われた」
「昔……昔ねぇ…………」
も助は何時に無く真剣な顔で思考している。 普段からこれくらいキリッとしていればいいものを。
「覚えてないで返すにしてはアバウトだな。 いや、奏士の事だから嘘にならない範囲では明かしたけどピンポイントな箇所に関してはそう答えたか。 奏士が意図してると過程すると何か知ってて動いている。 となると俺のやるべき事は────」
「……?」
急にブツブツ話し始めたも助の異様さに、紅葉は半歩退きながら身構える。 も助はいつになく真剣な顔だ。 今年分の真面目エネルギーを使い切るかの如く。
「────よし。 あ〜…………紅茶」
「……花伝です」
「そうそう花伝。 悪いな名前あやふやでな」
紅葉は失礼極まりないこの教師を本当に懲戒免職できないか検討を再開するが、も助の零した「どうせ後々柳になるんだし覚えなくてもいいか」という一言で今回限り見逃すことにした。 いや今本当にそうなるかならないかの瀬戸際なのだが。
「奏士が『覚えてない』って言ったなら、それなりに理由があんだろ。 なんか、お前の方で覚えてることとか無いのか?」
「……無いから困ってる」
残念な事に、紅葉はかつて両親が事故にあった影響でそれ以前の記憶を殆ど失っている。 幼少期の陽炎のような記憶故に鮮明な形も情景も無く、あるのは漠然とした感覚のみ。
それでも、独自の捜査や昔を知る関係者を辿ったりと色々調べては見たものの、どれも決定打には至らず立ち往生。
奏士の過去を知りたいのも、半分は自分だけ知らない事に対する不満からだが、もう半分……というより本質は自らの呼び覚ましだ。 どうにも、奏士の柳家と紅葉の花伝家は以前から個人的な繋がりがあり、話を聞く限り、紅葉の記憶の鍵は奏士にあるらしいことが分かった。
だがしかし、鍵を手に入れたいのに扉が開かない。 面倒なダンジョンよろしく、一つ一つクリアして開けろと言わんばかりに。
「……?」
紅葉は考えながら違和感を覚える。 何か見落としていることがある様な…………
「……………………っ!」
そこでピラメク発光ダイオード。 そして全力活性前頭葉とギラメク太陽。 なお、夕方なので太陽はギラギラしてない模様。
急にカバンを乱暴にガサゴソし始めた紅葉に、も助は「お? お?」と不審者感丸出しで困惑している。 珍しく紅葉は表情を顕にしているのもあるのだろう。
「あった」
紅葉が鞄から取り出したのは膨らんだ封筒。 以前、悠から受け取ったあとカバンから取り忘れていた物だ。
差出人は紅葉の祖母。 送り状の品名には祖母の文字で「アルバム」と記載されている。
紅葉は人目もはばからずその封筒を力任せにやぶき捨て、中のアルバムを取り出す。 学園の紅葉信者が見れば乱心かと騒ぎ立てそうだが、今日が半ドン+夕方であるが故に校舎内の人影がほぼ無いのが幸いか。
表紙には今は亡き母の字で『紅葉』と自分の名が記されている。 長年押し入れ当番だったであろうアルバムは所々損傷が見られ、表紙も掠れていたが、何故かそれが自分の名前だと認識できた。
そっとページをめくる。 長い間開いていない証として、ページ同士がパリパリになって接着している。 何枚かは根元から取れかけているほどだ。
1ページ目はまだ乳飲み子だった頃の自分の写真。 写真の下には両親の文字で『紅葉 爆誕!』と書いてある。
2ページ目には『ぐっすり紅葉ちゃんとパパ!』という字と共に、ベビーベッドの横で寝落ちしている紅葉パパが。
次は『初はいはい!』という字とその写真。 紅葉は、物心着く前の自分の写真を見て不思議な感じと共に、どこか懐かしさを覚える。
1ページ捲る事に、少しずつ写真の中の紅葉が成長して面影が出てくる。
おもちゃで遊ぶ紅葉。 ご飯を食べる紅葉。 抱っこされて喜ぶ紅葉。
そして、今と変わらない顔で絵を描いている紅葉。
徐々に呼び起こされる記憶を噛み締めながら、紅葉はページをめくる。 今は亡き両親との思い出を振り返りながら。
どれもなんて事ない日常。 それでも、両親との数少ない思い出。 既に別れて閉まっているからこそ、紅葉は自分の両親が少しでも幸せでいられた事に安堵する。
アルバムの紅葉は入園し、クラスの皆がそれぞれ集まって遊んでいるのに一人絵を描いている写真が残されている。 この頃は1人だけ髪色と名前が違うから誰も近寄っては来なかったな、と振り返る。
紅葉からすれば気にせず絵を描けるので苦ではなかったが、園の先生は大変だっただろうな、と。 幼子に国とハーフの概念は無いので、昔は行事でグループを作る時に毎回残されてい先生がどうにかしてどれかしらの班に入れてもらった記憶があった。
誕生日ケーキの火を消してる写真や、園のお絵描きコンテストで入賞した際のメダルを掲げてドヤ顔をしている写真。 これは今と大差無いか。
幸せな幼少期を辿ると、最後の写真と思わしきページに行き着く。 まだページは残っているが、これ以降アルバムに貼られたものは無い。
つまり、この写真が、両親が遺した最後の写真。
一体どのような写真なのか。 この場に緊張が走る。
「…………」
なお、も助を除く。 紅葉に配慮してか、も助はアルバムに目もくれずスマホをポチポチ。 いい事なのか悪いことなのか……
「っ!」
紅葉ら意を決してページを捲り、網膜に焼き付ける。
その写真を見て理解した瞬間、紅葉はまるで裏の世界を見たかのような静寂と、膨大な記憶の奔流を見に受けていた。
写真はなんの変哲も無い公園での1枚だ。 恐らく、迎えに来た紅葉の母が撮ったのだろう。
大きなスケッチブックと色鉛筆を持った少女が2人。 それと2人を見守るように1歩離れている少年が1人。
写真には『紅葉ちゃん初めてのお友達!』と母の字が添えられており、その傍には上から塗りつぶした何かがある。 隙間から父の字と思しきものがちらほら見える当たり、余計なことを書こうとして母に怒られたのだろう。
しかし紅葉にとって問題はそこではない。 その程度なら慣れたものだ。
重要なのは写真に写る存在。
1人は銀髪の少女。 これは勿論紅葉だ。 少なくとも、紅葉知る限り態々スケッチブックを公園にまで持っていく程絵が好きな銀髪の少女は1人しか知らない。
その隣に居るのはふわふわ茶髪の少女。 泉と瓜二つとも言える容姿だが、泉のように『大人しめ』では無く、『落ち着いた』と表現するような少女だ。
そして3人目。 余程写真が嫌いなのか、この場から消えようとしているが茶髪の少女に掴まれて逃げきれず渋々撮られて不機嫌な少年。
目つき雰囲気態度最悪。 写真からでも性格も最悪な事が伝わってくるが、2人の少女をとても優しい目で見守っている。
誰がどうと記されているわけでも、教えられた訳でもない。
だが、紅葉の本能と直感が答えを告げ、思い出した記憶が答え合わせをする。
そして、その答えを火種として誘爆。 今まで紅葉の中で溜まっていたもやもやが形を成し、答え合わせが連鎖する。
『間違いない』そう確信した時、既に紅葉はアルバムを閉じて動き出していた。
「……嘘つき」
「あ、おい」
も助の声も届かず、紅葉は駆け出す。 ホラ吹きに拳を入れるために。
「……はぁーっ……仕方ねぇなぁ……」
心の底から出た言葉と共に、も助は生徒会室に向けて歩き出す。
「手のかかる弟だな」
どこか嬉しそうな笑みを浮かべて。
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「おいっーす。 奏士居るかー?」
「先輩なら行方不明ですけど……」
「……なんで卒業生が制服着て宿学に居んだ? そういうプレイか?」
「いえ、これは色々ありまして」
「アマネ、これって…………」
「ふっふっふっ…………時は来た!」
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\ピンポンパンポーン♪/
『生徒会副会長、柳奏士くん。 大事なお仕事がありますので、至急校舎裏に来てください。 繰り返します────』
『奏士、悪い』
\ピンポンパンポーン/
………………何今のクソ不穏な放送。 しかもなんか自称姉の変人の声だったし。 なんでいんだアイツ
それよか、最後のも助の言葉も気になるな。 態々生徒会室の放送設備使ってまで何をする気だ? 何を謝った?
……行きたくねぇなぁ…………校舎裏で何されんの? 仲直りしないからボコされんの? それならそれで返り討ちにすればいいことだからそっちであってくんないかな。
行きたくないけどマジで大事な仕事とかだったら後が怖いし、ちょっと状況を確認するくらいならまだ間に合うか?
はー…………行くか。
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…………なんか誰も居ないんだけど。 何? 校舎裏に呼び出しドッキリ? 悪質すぎるからポックリさせるぞマジで。
\ピンポンパンポーン♪/
『柳奏士くん。 柳奏士くん。 至急第2校舎裏に来てください。 本校舎裏ではありません』
※ 現在本校舎裏
なぁんだよぉおもぉぉぉぉっ!! またかよぉおおっ! このセリフ便利すぎるから俺が言ったことにならないkうおっ!?
はいどーも皆さんこんにちは
逆算すると戦隊があと2話(3話)で終わることよりも新シリーズのプリキュアが楽しみすぎる作者です。
年代といいエアインテークといいSNSでも話題のキュアアルカナ・シャドウといい……何もかも不意打ちで滅多刺ししてくる公式には感無量です。
でもそれはそれとしてあと2話で戦隊をどう終わらせるのかが怖くて震えています。 なんかもう詰め込みかその後のツアーとかに続くディケイドショックがありそうで。 怖いですねぇ……
何が怖いって、大雪がまだ警報の段階なのに何故か私の懐が既に極寒ということが。 誰かお金ください。 具体的には国。
ではこの辺で 次回も以下略




