休み明けの初登校と仕事程行きたくないものは無い
短い短い冬休みも終わってしまった。 それはもうびょえっと言う間に。 なんか擬音がキモイ。
そして来てしまった登校日。 今日から2年生最後の学期だぁ。
言うてまだ進学受験が迫ってる訳でも就活の為に大忙しという訳でもない。 本当に何も無い三学期。 強いて言うなら留年するか否かに関わる期末テストがある程度。
しかし俺は学年首席の常連だからその心配も無い。 退学はしたいけど留年はなんか格好悪いからヤダ。
そんなこんなで始業式とか飛びまして生徒会室ドーン! 今回の前置きという名の無駄話ノルマ達成!
「おい、聞いているのか奏士」
「聞いてる聞いてる。 鴨南蛮がなんだって?」
「成程聞いてなかったな? 鴨鍋の話をしているだろう」
微塵も聞いてなかった俺が言うのもなんだけど鴨鍋の話してたの? 思い付き がビンゴでちょっと嬉しいけど物凄く不気味。
「それは別にいい」
あ、流していいんだ……
「本題に入ろう。 諸君、冬休みは御苦労。 短い休みの中、生徒会活動に時間を割いてくれたこと、礼を言う」
土下座しろー! 靴を舐めろ〜! 俺の貴重な冬休みを浪費して生徒会活動させたこと詫びろー! 意志で詫びろー! 石でも可! 最近また爆死しまして。 いやそれはもうすんごい物がね。
「三学期は今年度の締め作業と来年度への引き継ぎ準備が主になる。 残り3ヶ月、頑張ってくれたまえ」
「理事長、お1つ宜しいですか?」
「なんだ莇、言ってみろ」
「今更ですが今回も顧問が不在なのですが」
言い忘れてたけど、も助はまたエスケープしました。 今頃どっかでサボってるのは確実。
「奴は死亡扱いとする。 他に質問がある奴は居るか?」
はいはーい! も助の保険金は誰が受け取るんですかー? 失った石の補充に充てたいから欲しい。 流石俺、外道未満のゴミと呼ばれるだけはある。 誰だよ俺の事そんな風に呼んでんの。 モロ作者なんだよなぁ……俺より奴の方がゴミじゃないか?
「……居ないな。 ならば以上だ」
それだけ言い残して悠ちゃんは生徒会室を後にした。 も助の保険金は?
「そうだ忘れていた。 花伝、ちょっと来てくれ」
「……?」
紅葉だけ呼ばれて悠ちゃんの待つ廊下へ。 扉も閉められた。 そんな重要事なら隣の会議室使えばいいのに。
「あ〜 今日はもうオワリって事デスカ〜?」
ベルが背伸びしながら言う。 その直後、痛めたのか、机に突っ伏して腰を摩った。 おばあちゃん無理しないで。 無理しないで安らかに眠れ。
「おい奏士、お前も来い」
「あ?」
泉ちゃんからのお茶を受け取ろうとしたら俺まで呼ばれた。 くそっ……久しぶりの泉茶んが飲めると思ったのに。
そしてまた悠ちゃんは生徒会室の扉を閉めた。 なんの内緒話? 陰口? 陰口は後で本人に言わなきゃダメだぞ! 滅多打ちにして心壊してやれ! 純粋にゴミ。 人のこと言えない。 いいや俺は言うね。 棚上げしまくって棚卸し面倒なくらい言うね。
「何の話?」
「時期生徒会長────正式には学生会長の話だ」
「はーん」
そういや、前期は事前準備とかがあるから信任投票じゃなくて前生徒会長の指名(一応「お願い」のスタンス)だとかどうとか聞いた気がする。
ついでに、普段から「生徒会生徒会」って呼んでるから忘れてたけど、学生会が正解。だって学園だから学生だもの。 生徒だと未成年になっちゃう。
「で、なんで俺呼ばれたん?」
まさか来年度もやれと? 流石に無理があるぞ。 超人見知りだからマトモに会話するまで1年は必要。 相手が無礼ならちょっと短くなる。
「お前は会長補佐側の副会長だろうが。 自分の役職を忘れたのか」
あ〜そんな設定ありましたね。 全くそんな描写無かったから忘れてたし自分が副会長って事も忘れてたし、紅葉が生徒会長って事も忘れてた。
というか生徒会の事も忘れてた。 冬休みが長すぎるんじゃあ! 最初と言ってること違うぞ。
「んで、時期会長がどうしたって?」
「実はな、まだ決まってないんだ」
「はーん」
でもまだ1月ですけど。 引き継ぎ考えても3月か、早くても2月末でいいんじゃね?
「正確には候補すら見つかっていない」
「候補探しって誰の仕事?」
「基本的に花伝」
「ちゃんと仕事しろよ紅葉」
「……私のせい?」
「少なくともお前の交友関係の狭さが原因の1部じゃね?」
「……反論出来ない」
やったー毎回何かしら言い返してくる紅葉に勝ったー これで勝ちだと思うな人として終わりの大うつけめ。 織田信長みたいなあだ名付けられた。
「大半は副会長が会長になったりするんだが……」
「……奏士もベルも会長に不向き」
「それは確かに」
俺は仕事そのものが出来ても人を惹きつける力は無いし、引っ張る力も無い。 つまり人望0。
ベルは会長、つまりリーダーとしては実力不足だ。 リーダーよりボス向きの性能してる。 会長になっても皆を纏めた後が問題。
そうなると、ちゃんと生徒会長してた紅葉ってすげぇんだな。 伊達に1人で回してただけはある。 見直しかけたわ。
「それならあの人に頼めばいいだろ。 ほらあの……なんかポニテで黒髪の────あの喧しい人」
「……小百合?」
「そうそれ」
前々から会長目指してたし、あの人なら人の上に立つ余裕のスペックがある。 ちょっとポンコツな点含めて素質。 完璧なリーダーよりも弱点がある方が親しみ易い。 ってネットに書いてあった。
俺はほら、弱点なんてない完璧な男だからそういうの分からないし。 ゲームのラスボスくらいデカイ弱点晒しておいて何言ってんだこいつ。
話戻すと、あの────さ、佐藤さん? を会長にすれば隣のドSも付属してくるから人手が増えるよやったねゆうちゃん! おいやめろ。
「……小百合は最初に断られた」
「あらま」
小百合さんでしたか。 これは失敬。
「『紅葉さんと直接対決で勝ち取る事に意義があるのですわ!』って言われた」
「声真似上手いな」
「……(ドヤ)」
そんな事はどうでもいい。 紅葉のドヤ顔もどうでもいい。
「唯一の助け舟がティッシュ製か……せめてキ○ワイプの船なら良かったんだが。 あの姉を名乗る変人に相談とかしてみたのか?」
「……奏士、天音さんのことそう呼んでたの?」
「本人には内緒だぞ」
「もう聞いちゃったゾ☆」
うげ。 いつの間に背後に。 俺の気配察知にすら引っかからないとか何だこの人。
「酷いな〜君。 私の事そんな風に思ってたなんて」
それより人の頬を人差し指でグリグリしないでください。 地味に爪がくい込んで痛い。 というかあーた今日はネイルしてるのね。 凄く目立たないけど。
「……でも事実」
「紅葉ちゃんも酷ぉ〜い」
そう言いながら紅葉にハグしてヨシヨシと頭を撫でる天音さん。 あ? あんたなんで今俺の方見てドヤ顔した? あ?
「轟か……丁度いい。 去年の生徒会長として聞かせろ。 候補はどう選んだ」
「う〜ん……私は『次になるのは紅葉ちゃんしか居ない!』って思ったから紅葉ちゃんしか考えてませんでしたし……会長になったのも皆が異様に後押しするからですし」
あ、天音さん敬語使えたんだ……悠ちゃんにすら姉として接するのかと。 話変わるけど年の差逆転姉妹ってイイよね。 ごめんこれ何の話?
「……初耳」
「あれ、言ってなかったっけ?」
「……立候補の切っ掛けも選んだ理由も聞かされてない」
「ごめんね〜 でも、お姉ちゃん後悔はしてないよ」
「……?」
「そりゃあ学生会長は大変だったけど、やってみれば楽しかったし、こうして紅葉ちゃんとも出会えたんだもん!」
「…………」
紅葉は真っ直ぐな目で言われて少し照れ臭いのか、それともただ単にベタベタくっ付かれるのか鬱陶しいのか顔を背ける。 あ、頬が少し赤いから照れてるな?
「紅葉ちゃんにもお友達が出来たみたいだし、感無量だよ! でもお別れが早くて寂しいからまだ卒業したくないよ私!」
「だが轟、お前の成績なら余程の事をしない限り卒業確実だぞ。 成績優秀、内申も問題無し。 保険委員長に学生会長の経験も有り、部活でも優秀な成績を納めている。 留年は諦めて卒業しろ」
「そんな〜 もうちょっと紅葉ちゃんと一緒に居たかったな……」
「……連絡先交換してるから卒業後も会える」
「私は紅葉ちゃんと同じクラスになりたかったんだよ!」
「……それはもう手遅れ」
「こうなったら……如月理事長、来年のクラス替えで紅葉ちゃんと少年君が同じクラスになるように操作してください!」
「……なんで?」
「そして君はクラスでの紅葉ちゃんの様子を逐一私に報告すること! はいこれ私の連絡先!」
おお、皆の憧れの先輩の連絡先を入手してしまった。 とてつもなく要らない。
「残念だが私にそんな権限は無い。 そういうのは教員にでも言え。 丁度あそこにサボり魔が居るぞ」
「あ! 霜月先生、只今少々お時間宜しいでしょうか?」
「お? 誰だお前」
うわすげぇ、あの人一瞬でモード切り替えた。 成程姉フォームが素であのお嬢様モードが外面か……流石湖の貴婦人、人を騙すのが上手い。
「てか、も助って来年も担任引き継ぐの?」
「ローテーションだからな。 奴は3年担当になるから、何かあったら気軽に扱き使うといい」
でもアレ扱き使った所で……なんだよなぁ。 普通に自分でやった方が早そう。
「……同じクラス?」
「お前と同じクラスは気苦労が耐えなそうだからマジ勘弁」
「……脱走する奏士を捕獲しやすいから大歓迎」
怖い紅葉怖い。 KKKだ。 クー・クラックス・クラン?
「では花伝、私の方でも何人か候補は見繕っておく。そっちでも新たな候補を考えておいてくれ 」
「……分かりました」
「因みに立候補も居なければ花伝が連勤しても良いんだぞ」
「……2連勤は面倒なので」
なんかバイトみたいな事言ってる。
「いっそ奏士にやらせるか? 元々生徒会に入れたのは更生の為だしな」
「そういやそんな理由だっけか」
「……更生、した?」
「少なくとも話す人は増えたし連絡先も(相手から一方的に)増えたぞ。 人と繋がりを持つという意味では更生したと言える」
ついでにたった今先輩の連絡先も得たからこれで同級生・後輩・先輩の三連覇達成だ。 で、さっき渡されたこの紙どうすればいい? あの人から連絡来ても面倒だし燃やすか。
「いやまだだろう。 それは第1段階に過ぎない」
「は?」
「第2段階だ。 恋人作れ」
「気は確かか?」
2次元を愛する男に3次元程度に彼女を作れと? いや性別は指定してないから男でもいいのか……いや色々アウトだろ。
「安心しろ。 メンバーが変わった新生徒会に無理矢理お前を就かせる事は無い。 マッチングアプリでもなんでもいいから人を好きになってみろ」
「……紅葉、奴は何を言っているんだ?」
「……要するに全裸+ノーダメ+ガード無し剣士で黒曜石を砕けばいい」
「無理ゲーって事?」
おま、その黒曜石は剣士装備でも一発で体力の殆ど削る奴やん。 分からない人は『3G 黒曜石』で検索。
「なんだ、そんな不可能な事か?」
「お前がスタイル抜群の美女になるくらい無理」
「成程貴様ぶち殺すぞ」
そう言いながらローキックかますの辞めてくんない? お前のローキック地味に避けにくいんよ。 体格も鍛え方も違うから痛くないけど、ギャグパートになったら何故かクソ痛い。
「なぁに安心しろ。 ベルフローラが居るじゃないか」
「おい冗談はよせ」
「何を言う。 今どき珍しいぞあんなにお前を思ってくれる女は。 来世含めても出会えんぞ」
あれ今サラッと来世も独り身断定された? 気の所為だよね。
「自由に使える穴だと思って行ってみればどうだ」
「聖職者以前に人としてアウトだよお前」
仮にも従姉を「お前」って呼んじゃうくらいアウト。
「ならば泉はどうだ。 お互い基礎好感度は高いだろう」
「色々と無理」
主に俺の精神面が。 なんと言うか、創作の推しが現実に出てきてもさぁ……て感じに近い。 遠くて近い場所から愛でたい。
「ならば…………」
「……?」
「いや、なんでもない」
「…………?」
悠ちゃんが一瞬紅葉の方見たから紅葉の頭上にハテナが。 あ、ちょっと増えすぎ邪魔。
「まぁ2人共頑張れ。 さらばだ!」
悠ちゃんは無駄にコートをたなびかせて立ち去った。 なんだったんだアイツ。
「……彼女……」
「あん?」
「……奏士、留年確定」
「えあれって進級すら出来ない制限なの?」
「……ドンマイ(笑)」
「お前今笑ったな?」
「……気の所為」
なんだコイツはっ倒してやろうか。 いや反撃で軽く捻られるから止めておこう。 初詣の時にこいつに勝てる力を願っとけばよかった。
「……天音さんは奏士を気に入ってる」
「そうなん?」
俺は未だに苦手意識が強い。 それはもう強い。
「……天音さんが素で接してるのが証拠」
「あれやっぱ素だったんか」
「……気を許した人の中でも極小数の本当に気に入った人にしか見せない」
「なんだその鉄壁のヒロイン属性は」
あーでもあの人教師からの評価は高くクラスメイトからは信頼され、後輩たちからは憧れを抱かれるいい子ちゃんなんだっけ。 さぞ窮屈だろうに。
「…………」
「んだコラ」
奏士くんのほっぺが千切れちゃう。 作者学園スプラッターとか苦手だから止めたげて。 これ平和な作品だし。
「お? どうしたお前ら生徒会室の前で。 粗挽きか?」
ここでサボり魔ことも助登場。 相変わらず全身にやる気が無い。 死体の方がまだ生気で満ちてる。
「誰がコーヒー豆だ」
「……逢い引きの間違い」
「そうそう合挽き肉」
「それだと混合挽肉になるだろうが」
確かに俺は何度か紅葉の手によって挽肉にされたけども。 要するにフルボッコにされたって意味。 原型留めなくなるくらいボコボコにされたけど主人公だから復活した。
「どうしたも助。 サボりはもう終わりか?」
「いやいや勝手にサボりと決めつけるなよ。 俺がいつサボったって言うんだ」
「年中無休で休んでるだろ」
「……少なくともマトモに仕事してる姿を見たことがない」
「それって授業含む?」
「授業は基本的に聞き流してるから内容は知らんが、少なくともそれなりにマトモな授業はしてるんじゃねぇの?」
「……学生からの評判だけは良い」
「マジかよやったぜ。 それはそうと奏士は減点な」
「聞かなくても分かる内容に時間を使うくらいなら自分の事に時間使う」
「これで俺のテストでほぼ毎回百点取るんだから嫌味だよな〜」
因みにも助の担当教科は社会(歴史)だ。 暗記科目はテスト範囲の内容全部覚えときゃなんとかなる。
「それはそうとなんだその箱」
「これ? なんか知らんけど渡された。 まぁ詳しいことは部屋の中で話すから早く開けてくれ。 両手が塞がってる訳じゃないけどドア開けんのめんどくせぇ」
「何だこの教師」
だがまぁ扉に近いのは俺の方だから開けてやる。
……今更だけど、なんで歴史担当が白衣着てるんだ? 別に汚れないだろ。 アイデンティティか何かか?
へー チョークやホコリからスーツやシャツの防汚目的だったり広いポケット目的だったりするのか。 納得納得。
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「お、ソージ、クレハ遅かったデ────アラマ、モスケも居マス」
「おや、今日は随分と早いですね。 普段であれば活動終了間近に来ますのに」
「コレ渡せって言われてなー」
そう言っても助は箱を揺らす。 音的に何か硬いものが入ってる。
「ど、どうぞ」
「お、サンキュ」
も助は泉ちゃんから湯呑みを受け取って飲む。 熱いのによく火傷しないな……
「それはそうとなんでお前居んの?」
「どもども〜」
さも当然の様に生徒会室に頼金が居る。 慣れてきたよね。
「まぁいい。 それで、その箱は何なんだ?」
「おお、ちょい待ち」
そう言っても助は机の真ん中に箱を置いて蓋を開ける。
すると中には木星の玩具が。 異星の玩具とか気になる。 他の惑星から攫ってきた住民とか? プレデターですか? あれ一応地球が舞台だったけど。 3作目が好き。
「何だこれ。羽子板?」
「……手巻き独楽」
「これは……歌留多でしょうか」
「こっちは福笑いです」
「これはチャカデス」
「『おはじき』と言え」
「後はけん玉、お手玉、双六、だるま落とし……昭和玩具大集合ですね」
懐かしの玩具達が箱にいっぱい。 何これノスタルジックおもちゃ箱?
「これらどうしたん?」
「さっきサボ────構内の見回りしてたら歴史研究部の奴らから受け取ってな」
今『サボってた』って言ったな。
「『是非生徒会の皆さんも新年の伝統遊びを楽しんでください』だってさ」
「無理に作った高音がキモイ」
「黙らっしゃい」
だって物凄く喉に悪いタイプの女声だったし……
「というか歴史研究部なんてあったのか」
「……目立った実績が無いマイナー部」
「へー」
「……因みに現部長はお手玉検定五段+けん玉日本一になったこともある」
「ゴリゴリに目立った実績あるじゃねぇか」
その記録で目立たないって相当だろ。 本分の歴史研究そっちのけで昔遊びの記録保持してんのかい。
「つまり、今日はこれで遊ぶってことデスカ?」
「それは好きにしろ。 俺は渡したからもう寝る」
そう言っても助はソファに横になっていびきをかき始めた。 あいつ勤務時間内だよな?
「……どうしますか?」
「折角頂きましたし、遊んでみましょうか」
「じゃあどれからにします?」
「私、独楽回しというのをやってみたいのですが」
「……でもスタジアムが無い」
「ベイでも喧嘩独楽でもないからそんなぶつかり合う勝負システムは無いぞ。 最後まで回ってた人の勝ちだ」
「……スピンフィニッシュオンリー」
まぁ理解したならいいか。
「ええと、こ、これはどのようにして巻けば……」
「それはこの紐をまずこうして────」
「こ、こうですか?」
「そうそう。 で、こうやってぐるぐる巻いて────」
泉ちゃんは頼金に任せよう。 何気に頼金が遊び方知ってることに驚き。 みんな現代っ子だから知らないもんかと。
「……奏「ソ〜ジィ〜! 遊び方を手とり足とり胸とり尻取り香取教えてクダサーイ!」…………」
なんか途中から変なの混ざってた気がする。
「この紐はどんなplayする用の紐デスカ? ワタシで実践してplease!」
「はい、じゃあ紐の先縛って玉を作ったら即席の鞭が作れまーす。 ほらSMプレイしてやるから脱げ」
「痛いのは嫌! 優しくしてぇ〜ん」
なんやコイツうっざ。
「真面目に。 独楽の下に紐巻いて、独楽投げる時に紐だけを勢いよく引っ張る。 それだけだ」
試しに目の前でやって見せる。 俺も久しぶりに触ったけど腕は衰えてないらしい。
「成程。 投げる際の傾きが重要そうですね」
続けて莇もやってみる。 が、引っ張る時に独楽のバランスが崩れてろくに回らず止まった。
「アオバってば完璧に理解した感じ出してまだまだデスね〜 このワタシがお手本を見せてアゲマス!」
「盛大にミスるに賭ける」
「賭けが成立しませんよ」
「2人ともシャラップ! ミル貝を見るがいいデス! せいっ!」
「あっぶね」
ベルが放った独楽はすっぽ抜けて俺の頭部目掛けてフライアウェイ。 予想通りというかお約束というかコメディアンというか。 やはりベルは何時だって笑いを忘れない。
「おっと、これは失敬。 どうやらワタシの愛が溢れてソージまっしぐらの様デス」
「とか言ってるけど?」
「本日のお嬢様は脳みそを入れ忘れてきたので仕方ありません」
「毎日の間違いだろ」
「お、なんだ喧嘩か?」
独楽を両手に構えたベルが威嚇してる。 そんな「独特な形状の武器使う謎の達人」じゃねぇんだから止めとけ。
「…………」
「あっぶね」
紅葉の独楽もフライアウェイ。 俺ってもしかして独楽に愛されてる?
困ったなー 独楽の付喪神(美少女・美幼女)ならワンチャンあるけど無機物とはなー 無機物ならワンチャン。 あれ今回って作者の性癖暴露回だっけ? 性癖暴露はこの小説投稿してる時点で始まってんだろ。
「紅葉、お前はもう少し力を抑えろ。 見ろ、独楽が壁にめり込んでなお回転している」
音凄いんだけどこれ独楽みたいな削岩機だったりする? あ、止まった。
「…………」
「はいはい教えてあげるから次弾装填しない」
早く何とかしないと部屋が破壊される。 備品がどれも高そうだから壊した後が怖い。
「んで、こうやってこう」
「……こう?」
「背骨っ!?」
あ、莇がお亡くなりに。 墓参りは面倒くさくなくなるまで欠かさないぞ。
「もうちょい弱く」
「……こう?」
「後頭部っ!?」
死体蹴りまで……
「もっと弱く。 自分の馬鹿力を自覚してか弱い乙女くらい優しく投げろ」
「……弱く……」
「延髄っ!?」
独楽の芯棒が莇の首へジャイロ効果でまっしぐら。 莇は無事お亡くなりになりました。 めでたしめでたし。
「お前ってアレに恨みでもあんの?」
「……手が滑った」
そうか滑っちゃったかー
「……大学受験くらい滑った」
「それは人によると思う」
というか貴方まだ未経験でしょ。 世の受験戦士達の滑り具合を笑ってやるな。
「……訂正する。 奏士とベルのギャグくらい滑った」
「アレワタシ巻き込まれた!?」
莇に続いてご主人様に流れ弾が。 厄介な肉壁を先に倒してから本体を叩くとは定石を分かっている。
「ほんとお前の口はよく喋るなぁ……今すぐ採れたてのゴーヤで塞いであげてもいいんだぞ」
「……ちゃんと下茹してて苦くないなら構わない」
「採れたての意味知ってる?」
紅葉ちゃんのおつむはとても残念。 理解力無いから万年2位なんだよ。
紅葉にはお仕置として頬を限界まで引っ張る刑を科すとして……
莇は────まぁ頑丈だし別にいいか。
「アオバ〜? 生きてマスカ〜?」
「え、ええ……ゴフッ! ギリギリ」
「チッ」
「……メンゴ」
「それより奏士殿今舌打ちしました?」
うわ急に流暢に喋りだした。 お前さっきまで絶え絶えだっただろ。
「ええい独楽遊びはダメだ。 紅葉が人を殺しかねん」
「……そろそろ手を離して」
おっと。 そろそろ刑期終了だな。 みょいんみょいんでちょっと楽しかった。
「次は何しますか?」
「どれにしましょう……」
「ウーン……Heyソージ! パス!」
突然ベルが何かを投げてきた。 うんこ? 動物園のゴリラかよ。
「お手玉? 投げればいいのか?」
3つくらいなら簡単に出来る。 ひょひょいのひょいっと
「次行きマース! よっ! ほっ! はっ!」
「おい投げんな」
ベルが次から次へとお手玉を投げてくる。 最初は3つだったのにあれよあれよと増えていき今では16個に。
「……おー」
「は、速すぎてお手玉が見えない……」
「うわぁ凄い通り越してなんかキモい」
見てないで止めろや。 これ疲れるんだぞ。 天井あるから高さが出せないし。
「ベル先輩どうしたんですか急に」
「ソージなら何個でも出来ると信じマシた! ……デモ本当に出来てる事はちょっと引いてマス」
「あ?」
お前自分からしておいて。
「デハもっと増やしマス! しまった残弾がNothing!」
そりゃ1人で16個もやるもんじゃないし。 お手玉の個数ギネスは14かそこらだったはずだから俺は軽く超えてることになる。 人知れず歴史的記録を残しちゃうなんて流石俺。
「こうなったら! チサ────トは違うとしてクレハ! イズミ! 今すぐパンツを脱いで丸めたソージに投げマス!」
「……やらない」
「やりません!」
「来るなら来い。 全てを破壊してやる」
俺の残弾は16だ。 つまりベルを16回合法的にシバける。
「……ハッ! さては2人共今日はノーパンデスね?」
「ちゃんと履いてます!」
「……そんなベルみたいなことしない」
「失敬な! ワタシのノーパンデーは月2、そして戦闘力も2デス!」
「(戦闘力)ひっく」
「普通は月2回もないですよ。 というか1回すら無いですよ」
てか、平日が月20日くらいだから10日に1度履かずに生活してるのか。 素足なのに。 頭おかしいんじゃなかろうか。 いや頭は手遅れレベルでおかしいのか。
「因みに今日は履いてるんですか?」
「お、気になりマスか? 見たいデスカ?」
「あ、そこまでじゃないので見せなくていいです。 先輩にだけ見せてください」
「OK分かった!」
「分かるな」
「痛っ! ちょっ、お手玉痛い! 詰め込まれた小豆の復讐が痛い!」
近付いてくるベルに向けて一斉放射。 今の俺はドッジボール最強。
「さて……2人片付いたところで次どうする?」
「……双六」
「わ、私も双六が……」
「では広げましょう。 先輩どうせサイコロ持ってますよね?」
「何面?」
「普通に6面でいいですよ。 え、他に持ってるんですか?」
「10面、12面、20面、100面までなら」
「100面ダイスってちょっと大きいゴルフボールですよ」
うんだからTRPG以外で使うこと無いよ。 そして俺はTRPGを持っててもやらないから更に用途無し。 欲しかったから買った。
「ふっかーつ!」
「酷い目に会いました」
ちっ立ち直りが早い。 やはり似たもの同士か。
「おや、双六ですか」
「人生ゲームの縮小版みたいなやつデスネ!」
違うは無いけど違うよな。 この否定しきれないのモヤッとする。
「では始める前に皆さんコマを選んでください。 えーと……あ、この袋ですね」
頼金が袋を逆さにするとチェス駒みたいな形の奴がコロコロ出てきた。
「早い者勝ちデス! ワタシはこれ!」
「で、ではこれで……」
「……あった」
「私はこれにしましょう」
「じゃあ…………私はコレで!」
「先輩お先にどうぞ」
「んじゃコレ」
「では余ったコレを私の駒としましょう」
駒結果
ベル→犬
泉ちゃん→兎
紅葉→猫
莇→シルクハット
薪姫→コック帽
頼金→カメラ
そして俺がピエロ
ここでもピエロに縁があるとは……これは「君は生粋のエンターテイナーだ!」って意味なのか「お前はずっと笑いものだ」って意味なのか。 どっちにしろ笑われることに変わりないピエロな奏士くん。 鼻で笑われる未来しか見えない。
「んで、1人部外者混ざってるけど」
「? ソファで寝てる人ですか?」
「恐らく華さんの事を指しているかと」
あそこでぐーすか寝てるボケナスは一応関係者ですね。 一応ね。
「いつ来た?」
「さっきです!」
成程言語化が難しい時間に来た、と。 伸ばすと面倒だし、今更1人増えても莇の死亡が確定した事以外大差ないから流そ。
「では始めます。 えー……では先輩から時計回りに行きましょう」
おっと初手の大役を仰せつかったぞ。 俺は初打席本塁打を決める男。 ついでにフラグもへし折る解体屋。
サイコロの前に進行マスを確認。 振るサイコロは1つ。 つまり1~6マス。 マスをひっくり返すと内容が書いてある仕組みだから詳細は分からないが、大体の場合初手で5以上を出すと何かしらのバッドマスに当たる。 つまり狙うは4。
そして俺は出目を自由に選べる能力持ち。 この勝負かつる!
「えー……いちにいさんし。 どーれ?」
マスをペラりとひっくり返す。 マスが丸いし磁石でくっついてるからオセロみてぇ。
『次に振るマスが1つ増える 』
お、やったね。
『その対価として次の番まで好きな子を膝の上に乗せる』
訂正クソゲーだわこれ。
「おっと流石先輩。 初手から盛り上がるマスに止まりましたね」
「どこが?」
おい製作者出て来いやゴラァ! これどう見ても手作り双六だよなァ?
「ちょっと研究部行ってくる」
「ダメです。 先輩潰す気ですよね」
いやいや潰すなんてそんなに権力でどうこうしないさ。
ちょっと力でねじ伏せて来るだけ。 研究部なんてモヤシくらいしか居ないから片手で殺れる。
「はい席座って。 で、誰を乗せるんですか?」
「えこれ拒否権無し?」
「ルールブックにもそう書いてありますね。 ちなみに拒否ったら即脱落and罰ゲームだそうです」
「罰ゲームって何」
「1分間誰かとキス、だそうです」
「だそうですじゃねーよ」
ほらーベルじゃなかったバカが目を光らせてるじゃーん。
「ソージ! さっさとリタイア!」
「するかボケ」
あとなんで自分が選ばれると思ってんだこの金髪。
「では膝の上に乗せてください」
くっ……重政が居れば! 『人』って明記されてないからセーフ。
「ハイハーイ! ワタシ! ワタシ! ワタシに清き1票を! ついでに清くない1本を!」
「去ね」
「はっ! さては興奮で双六どころじゃなくなっちゃうんデスネ! イヤ~ン盛り上がるってナニがデスカ〜♡」
「消し飛べ」
ベルじゃなかったバカクソは無視するとして。
「まぁ一択だよね」
泉ちゃんを誘拐────もといドナドナしてお膝の上にポスン。 あ〜暖かい。 若い子は代謝がいいから暖かいわー
「チッ!」
ベルは舌打ちをした。 フィンガースナップは相変わらずミスった。
そして泉ちゃんは口から魂的な何かを出して召された。 君は召す側だろう。
「えーと、ではお次はベル先輩ですね」
「イエッサー! 唸れワタシのメタリックゴールドな右手!」
なんでちょっと色艶があるのか知らんけど。
「えーと、1ですね」
「どうやら右手は金メッキだった様ですね」
「そんな偽物みたいに!」
そうだぞー 金メッキだって日々頑張ってるんだ。 騙されやすい人に金という夢を見せる為に。
まぁあれだ。 文字書くだけなら高級万年筆じゃなくて百均のペンでいいよね理論だ。 拘らなければどうということは無い。
「それでどうだったんですか?」
「あ、ソウデシタ……えーと」
『8462751359468回休み!』
「……え?」
『8462751359468回休み!』
「……え?」
『8兆4627億5135万9468回休み!』
「……What?」
動揺しすぎてベルから母国語が出た。 母星語が出ないだけマシ。
「えーとつまり……」
「ベル先輩は実質ゲームオーバーですね」
「Nooooooooo!!!」
流石ベル。 何時だって何処だって皆の手本を見せてくれる。 これがエンターテイナーというものです。
「ソージ! これやっぱりクソゲーデス! 今すぐ部長の首を差し出せ!」
「俺もう遺恨とか無いから自分でやって」
「この白状者!」
だって過程はどうあれ結果的に泉ちゃんが近くに居るし……すーはーすーはー
「いやまだデス!」
「まだ足掻くのか」
「こういうのは罰ゲームに復帰項目があるはず! チサト!」
「えーっとぉ…………あ、ありますね」
「よっし! 復帰条件はどれデスか!?」
「『好きな人と1分間キス。 但し相手が拒否した場合は復帰不可』って書いてあります」
これの作者やたらキスさせたがるな。 これもしかして恋人用とかそういう系対象の双六じゃないのか? 要するにヤリサー向け。
「よしソージ!」
「諦めろ」
「ならクレハ!」
「……パス」
「イズミ!」
「無理です」
「くっ! じゃあもうチサト!」
「どうして私が苦肉の策なのか聞きたいですが嫌です諦めて受け入れてください」
「チクショー!」
哀れベル。 まじ哀れ。 笑える。 不幸って美味しい。
「お嬢様の尊い犠牲のおかげで1だけは回避する必要がある事が分かりましたね」
「で、ですね……絶対に避けないとダメです」
「……南無」
「クレハ! ワタシまだ死んでない! 諦めたらそこで試合終了! 諦めてなかったらまだ続行デス!」
「その対偶は無理がある」
「お、そんなに言うならリタイアしてソージの唇奪いマスよ? 復帰に拒否権あっても罰ゲームに拒否権は明記されてない! そしてワタシはしようがしまいが結局ゲームオーバーと変わらないから怖いものは無い!」
これが手負いの獣ですか。 獣っていうかケダモノですけど。 性欲だらけの淫獣ですけど。
「はいはいまだ休みってだけでゲームオーバーではないですよ。 莇先輩の番です」
「あ、莇さん頑張ってください……」
「では」
コロコロコロリンと賽が転がって出目は4。
「先輩と同じですね。 ではどうぞ!」
「それでは失礼して」
莇が呼ぶまでもなく薪姫は自ら膝の上へ。 うわー手斧準備しとけばよかった。
「えへへ……なんだか普段より視線が高いです」
「お次は華さんですし、このまま進めてしまいましょう」
さては貴様ゲームを言い訳にイチャイチャする気だな? えーとチェーンソーはどこに……
「よーし……えーい!」
「5、ですね」
「やりました! 私がトップです!」
薪姫が駒を進めてマスをひっくり返す。 そこには
『君は魔性の女だ! 男性プレイヤーは魅力で1回休み』
「だってさ。 華ちゃんってば悪い子!」
「魔性の……女? 私って悪い子だったんですか!?」
「えぇそうですね。 私の心を掴んで離さない悪い御方です」
「俺巻き込むの止めてくんね?」
「…………」
紅葉さん手の甲抓るの辞めようね。 俺の皮膚の伸縮性はそこまでじゃないから。
「この場合先輩のサイコロ増加効果はどうなるんですかね」
「効果文的に次振る時だから休んだ次に適用じゃね?」
「ではそれで。 えーと、お次は────私ですか。 せいっ!」
『1!』
「ぬぁっ! まぁ進行役に専念するので差程問題はありませんね」
切り替えはやーい。 これにて犠牲者は2人に増えた。 とりあえずサスペンスドラマによく出てくる顔と名前のパネルにバツ書いとこ。
「次は泉ちゃん! どうぞ!」
「……………………」
「泉ちゃーん? 次泉ちゃんですよー」
「…………はっ、はい! なんですか?」
「先輩の逞しい(笑)身体堪能してるところ悪いけど、泉ちゃんの番ですよー」
「い、いやいやそんな事は!」
えーしてないのー? 俺は泉ちゃんの温もりとか匂いとか堪能してるぞ。 今日の泉ちゃんは普段とは違って少しフルーティ。 シャンプー変えたのかな。
「はーいはい泉ちゃん振ってー」
「え、えーっと……では」
ころころころりんすっとんとん。 賽は投げられた。 それより転がる擬音がおむすびころりん過ぎる。
「3! 初めての数字ですね」
「内容は────」
『3マス進む。 進んだ先の指令を行う』
「えーと、要するに6まで進む……でいいんでしょうか」
「はてさて内容はー?」
『今日の下着の色を答えよ。 上下で違うなら2つ』
泉ちゃんは、指令に目を通すと、マスをそっと戻した。
「はいはい泉ちゃんダメですよー無視しちゃ。 ゲームオーバーでキッスの刑になっちゃう」
「ううう……でもぉ……」
「仕方ないにやぁ……誰でもいいんで先輩の鼓膜破ってください」
「耳塞ぐでよくない?」
「ついでに目も抉りとってください。 読唇術で読まれるので」
「俺が顔背けてればいいのでは」
「……実行」
「待て判断が早すぎる」
この判断力はあの人もニッコリ。 俺まだ五感を失いたくない。
「先輩はワガママですね〜 じゃあ耳塞いでください」
「はいはい」
「ついでに首も180度回転させてください」
「俺はフクロウか」
「…………」
「頭に手を添えるな。 無理だからな? 言っておくが流石に可動域の限界超えてるからな?」
「……注文が多い」
至極真っ当なことしか言ってないんだけど。 紅葉は俺に何か恨みでもあるのか? むしろ俺が紅葉を恨むことしかされてない。
「莇さんも聞いちゃダメですからね?」
「ご安心を」
薪姫は手で莇の耳を塞いで顔を近づけて泉ちゃんの口が見えないようにしている。 それ以上近付いたら莇の命は無いと念を送っておこう。
「---・ --- ・-・-- ・・ -・・・ ・・-・・ ・・ ・・- ---・」
「・・-・・ ・・-・・ ---・- ・・ ・- ・-・- ・-・-- ・・ ---・-」
紅葉がすんごい力で両耳塞いでるから何言ってんのが全然聞こえん。 それより顔歪みそう。
「はいOKです! 」
「何色なん?」
「言うわけないでしょうど先輩」
「ド変態みたいに言うな」
まぁ泉ちゃんの好みと傾向から予想して、今日は青系統かな。
「はい泉ちゃんが先輩の膝の上で死にそうなくらい真っ赤になってる間に先行きましょう」
俺の膝の心配は? 火傷しそうなくらい熱いんだけど。 低温やけどしそう。
「……私」
紅葉の出目は2。 綺麗に1周で6マス全部が出た。
して、件の内容はというと……
『隣の野郎に1発かましてやれ!』
逃げようとした瞬間捕まりました。 最早消えることすら許されない。
「……覚悟」
「おいこの双六燃やすぞ。 クソゲー作りやがって」
「はいはい先輩大人しくしてください。 そして泉ちゃんを盾にしない」
か弱い年下の女の子の影に隠れるいい歳した大人。 情けないが俺に関しては今更過ぎてダメージゼロ。
「……痛いのは一瞬だけ」
「それで一瞬じゃなかったことあった?」
「……じゃあ最後まで痛みたっぷり」
「そんなトッ○みたいに言われても」
そんなやり取りをしている間にも紅葉の手は近付いてくる。 聖なるバリア泉ちゃんフォースは無効化された。
ジリジリと後退り。 紅葉も徐々に追い詰めて来る。
そしてソファの横に来たところで壁を背に立つことに。
「……大人しくしてれば痛くない」
「嫌じゃ」
紅葉は内部で衝撃が弾ける攻撃が出来る。 相変わらずどこで身につけたのか知らんが、防御無効はどれも痛いことをよく知っている。 防御無効は特撮あるあるだから。
そしてそっと、紅葉の拳が腹に制服越しで触れる。
1泊遅れて襲いかかってきた衝撃。 触れた箇所から内部へ浸透し、中心に辿り着くと一気に破裂。
しかし俺に2度目は無い。
己の体を知り尽くした事で可能な肉体運動で衝撃を腹から左手へ移動。
丁度ソフで寝ているも助の腹へ左手を添え、移動した衝撃を放つ。
「ぶふぇっ!!」
「ぐぉっ!?」
大半がも助に逃げたが、それでも残りカスが左手を損壊。 すげぇ痛い。
「は、腹が……何がっ」
「ち、近くに居た……お、お前が悪い」
「えー先輩から近付いたのに」
何はともあれ、俺の左腕とも助の腹のおかげで一命は取り留めた。 助かったマジで。
「はい次行くぞ次!」
「……仕留め損ねた」
紅葉がすんごい怖いこと言ってたけど、怖すぎるから聞かなかっかことにしておこう。 今日やたら不機嫌だけど何かあった? あの日? それとも構ってくれなくて拗ねてるの? うーんこれは流石にキショい。
「えーでは、先輩は1回休み、ベル先輩は8兆休みなので莇先輩ですね」
「では、コマの効果もこれでお終いですね」
「あ、俺もじゃん」
振り賽増加は『次振る時』だけど、乗せる云々は『次の番』だからね。 『次の番を飛ばす』じゃなくて『次休み』だから終わってしまった。 何この遊○王みたいな裁定。
名残惜しいが泉ちゃんを解放。 さらば泉ちゃん。 シャンプー変えたのかどうかだけ教えてくれ。 因みにボディーソープは変わってない。
「華さんも、席にお戻りください」
「え〜 もうちょっと居ちゃダメですか?」
「残念ながらルールですので。 そういうのは後程」
「うー……分かりました。 今はそうします」
「…………」
「……ダメ」
「まだ何もしてないんだが」
「……顔が言ってる」
「おいそんなに俺のイケメンを見るなよ」
「…………」
わぁそんな残念な人を見る目で見られたの久しぶり。 俺はイケメンじゃなかった……って事か?
つまりイケメンじゃなくてハンサムって事か。 かーっ! 参ったねこれは。 それ聞かされてこっちが参っちまうよ。 んだとこの野郎。
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ダイジェスト 双六
『夜道は危険! 1番近くのマスに居るプレイヤーと次の番まで手を繋げ! 2人以上居るなら1人でよし』
「では華さん、お手を拝借」
「はい! どうぞ!」
「チッ ナチュラルに恋人繋ぎしやがって……」
「先輩僻むなら心の中でやってくれます?」
『君は王の素質がある! 隣のプレイヤーは一つだけ言うことを聞く』
「わーい王様です!」
「では王様……いえ、女王様。 なんなりとご命令を」
「うーん……じゃあ頭を撫でてください!」
「かしこまりました」
「えへへ……莇さんの手で撫でられるとなんだか気持ちいいです……」
「…………」
「…………ダ「まだ何もしてねぇからな」……対応してきてる」
『君の胸のサイズを皆に言え! 男なら黙ってろ』
「あ、あの……どうして私だけこういうマスに……」
「さぁさぁ泉ちゃん。 言わないと罰ゲームだよぉ〜?」
「で、でもぉ……」
「大丈夫大丈夫。 今回も先輩の鼓膜破るから」
「だから耳塞げばいいだろ」
「……今回は素直」
「泉ちゃんのサイズなら目測で凡そ把握してる。 本人の口から正確な数値が知れないのは惜しい」
「……それを小声で聞かされた私に謝って」
「泉ちゃんに配慮した結果だ受け入れろ」
「……気持ち悪い」
「さぁさぁ泉ちゃん!」
「う、ううぅ〜〜…………っ! B以下、です」
「え〜数値も知りた〜い」
「こ、こここれ以上は言いませんっ! つ、次紅葉さんですよね! どうぞ!」
「……仕方ない」
『誘惑! 隣の人は君の魅力にメロメロで1回休み』
「俺毎回何かしらで休みになってるんだけど。 まだ増加権保持してるのなんなん?」
「……変態」
「えぇ悪いの俺?」
「先輩は相変わらず見境無いですね。 そんなだから下級生に『会長に取り入って職権乱用して美少女を手篭めにしたヒモカス根暗ニートキモオタ男』って噂されるんですよ。 まぁこれ殆ど間違ってませんけど」
「何もかも間違いだし俺そんな扱いされてんの?」
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「よっ」
「上手いですね」
「一時期俺の中でけん玉が大流行してな。 やりまくった」
「相変わらず変な時間の使い方してますね〜」
「よいっ……しょっ」
「泉ちゃんも上手いですね〜 先輩に手取り足取り密着して教えてもらったの?」
「いえ……普通に教えてもらいました」
「なーんだ面白くない」
「面白さで人を性犯罪予備軍にするな」
「そんなことより「あ゛?」そっちはどうですか────」
「……落ちた」
「おっとと……」
「あっ! また失敗です……」
「……胸が邪魔」
「玉に当たるししゃがむ度に揺れて痛いデース」
「う〜 やっぱりこんなの無い方がいいです……」
「「…………」バキッ」
「頼金、けん玉を握り砕くな」
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「では読みます。 『恋する星と小夜曲』」
「────あった」
「あっぶな!」
「か、かるたが壁に刺さった……」
「クレハが早すぎて札が取れないデス!」
「奏士殿、頬から血が出ていますよ」
「おいこれかるたじゃなくて凶器だぞ」
「うわぁ〜会長かるた上手いですね!」
「これは上手い下手の領域なのでしょうか」
「次読みますねー 『必殺ファンクショ「──見つけた」』」
「2度目は無いっ!」
「おお、指で挟んでキャッチした……」
「ソージお見事! そしてクレハは色々と危ないから見学!」
「……残念」
「……ところで、女性陣に聞きますけど、札取る時体勢的にパンツ丸見えですけど良いんですか?」
「それ言わなきゃ誰も気にしなかったのになんで言うかな」
「ワタシはソージに見せるパンツしか履かない!」
「どっちにしろ見る気ないから色んな意味でではかない(儚い)パンツだな」
「先輩何『上手いこと言ったキリッ』みたいな顔してるんですか? 普通にドン引きモノですよ」
「そこまでじゃなくね?」
──────────────────────────────
外遊び 羽付き
「……えい」
「ホワァァァッ!」
「あぶねっ!」
「会長抑えて抑えて! 羽付きは落とさないルールですよ!」
「……バドミントンと似たようなものだと思ってた」
「クレハ! 理解したならもうちょっと優し危なっ!」
「っく! ガードベントォ!」
「ぐはっ!」
「あ、莇さーん!」
「……流石外道奏士。 汚い」
「少なくとも発端お前」
「……これで肉へ────莇は居ない」
「アレ今アオバの事肉壁って────」
「……狙うは奏士の奏士」
「何この子怖い」
「あ、あの……皆さん平和に……」
はいどーもお盆は繁忙期なのに予想以上にお客が少なくて仕事が楽な作者です。 その代わりお賃金が減りますが。 お賃金欲しいのぉぉぉぉ!
お盆は親戚が集まったりで従姉妹達にお小遣いあげなきゃですからね。 私のお財布すっからかん。 その代わり何故か臨時収入として叔父から諭吉貰いました。 あれ今は栄一でしたっけ? まぁどっちでもいいです。
そんなこんなで今、日も登る朝5時に書いてます。 凄くお腹が減りました。 略してSOS。 S凄く Oお腹が減りま Sした
気がつけば8月も半ば。 今の夏休みがいつまであるのかは知りませんが、そろそろ宿題の山に焦る人が出てくる頃ではないでしょうか。
とはいえ、今はもう宿題提出も電子媒体だそうで。 不便ですね。 紙なら「持ってくるの忘れました」で数日稼げるのに電子は相変わらず「ならログインして出して」で終わりですからね。 先ずやってない前提で話してますが、宿題はそういうものです。 私はちゃんと終わらせましたが。
ではこの辺で。 そろそろちゃんとした出番をあげなきゃと思う今日この頃。 焔の事じゃありませんよ? 巌賢星とかいう初心ゴリラの事です。 天音とセット以外で出しにくいので難儀してます。 みんなは覚えてたかな? 私は忘れてた。
P.S.
ご馳走様でした。 3日ぶりのご飯で生き返るぅ⤴︎︎︎
夏場の絶食はマジでやばいですね☆
でもお金ないしやる気ないし動きたくない>>>>>>>>食欲だし夜型過ぎて起きた時には飲食店混んでたしで色々放置してました。
美味しかったです。 竜田揚げとツナマヨおにぎりとキリンレモンともも水と王水とテトロドトキシンとウインナーロールとマフィンと焼きそば