初詣っていまいち何するのか分からないしどこの神社行けばいいのかも分からない
時間は少し戻ったり戻らなかったり。 前回『数日目を合わせなかった』って言ってたけど何日か明記してないからセーフ 1日と2日で数日カウントでええやろ
by 奏士
作者野郎安易にミスった責任人に擦り付けやがった
新年3日目 つまり1月3日 三が日とかいうヤツの最終日だ。
新年のイベントはこの日までに終わらせるのがルールだとか何とか。 去年までの我が家は寝正月だがな。 重政も4日までは普段の1.13倍グーダラする。
去年まで 過去形の理由は言うまでもなく、今年は初詣とやらに来ているから。
事の発端はベルのワガママ、もとい希望。 それに泉ちゃんやその他が無駄に乗り気だったので無理矢理駆り出されました。
でも悠ちゃんから「これで飯でも奢ってやれ」と軍資金を頂いたのでその事は皆に黙っておこう。 懐にゲットだぜ!
何となく稼ぎが下の人から金を受け取るのは気を使うが、それはそれこれはこれ金は金。 あればあるほど税金で持っていかれるがあって困るものでは無い。
「──ジ! ソージ!」
「あん?」
「ソージ! 話聞いてマスカ!?」
「聞いてる聞いてるバッチリ聞いてる超聞いてる。 俺はやっぱ7:3派だな」
「何の話してるのかは分かりませんけど、少なくとも先輩が話を微塵も聞いてない事は分かりました」
と頼金が申しており。 え、合挽き肉の割合の話じゃなかったの?
「ンも〜 新年からこれじゃあ先が思いやられマス」
「はーいはい。 んで何?」
「だから〜 着物の感想を聞いてマス!」
あ〜はいはいそういう展開ね。 読めた読めた。 読書感想文の課題図書くらい読めた。 それほっとんど読まない奴じゃん。 作者は当時ハマったギャルゲーをそれっぽく変換して出した伝説が無いぞ。 なんて無駄な一文。
「頑張ってお洒落した女の子を褒めなきゃ男がスターレイルデス」
なんかゲームの名前が出た様な気が。 作者最近一目惚れしまして。
現実逃避はここまで。 いや寧ろ現実に戻ることこそ現実逃避と言える。 俺の現実は空想だから。
さっきからベルが「褒めて褒めろ褒めなきゃ後は無い」って態度で示してるから早急に目を通す。 うーん
「目に優しくない」
「それは感想と言わない」
マジトーンで言われた。 だってお前鏡見ろよ。
基本フォームの時点で金髪・翠眼・スタイル抜群の美少女って言うオーバースペックなのに赤い着物まで身にまとって化粧したらさぁ……なんかこう、色が煩いというか。
「お嬢様、やはり緑の方が良かったのでは?」
「でも緑じゃ目立たないデス」
「申し訳ございません。 ウチのお嬢様は付き合う人を選ぶ対人偏食家の割に目立ちたがり屋でして」
「お前のお嬢様はジキルとハイドか何か?」
莇さん貴方どういう教育なさってるのかしら? こんな面倒な人間そうそう居ないぞ。
「安心してクダサイ! 最新の流行を取り入れたデザインだから下着は着けてマセン!」
「何時の時代の流行だよ。 大正時代か?」
もうノーパンに関しては割と頻繁にあるからつっこまない。 でもこれだけは言う。 デザインの話関係ありました?
「これで脱がす時も安心デス!」
「ねぇなんでこいつ除夜の鐘効いてないの?」
「恐ろしい事ですが、除夜の鐘で消滅した後即復活したものと思われます」
それは恐ろしい。 煩悩の塊恐るべし。 あれ、そういや紅葉も消えて無くね?
「はいはい3人とも着物似合ってるからさっさと賽銭ぶち込んで帰るぞ。 重政が家で待ってる」
「もうちょっとじっくり褒めて!」
「ま、まぁまぁ……」
「……これ以上望むと長くなる」
青い着物の紅葉と黄色い浴衣の泉ちゃんに宥められるベル。 泉ちゃんはやっぱり赤より黄色だな。 桜色も似合う。 紅葉に関してはテーマカラーだから特に言うとこなし。
「華さんもとても可愛いですよ」
「えへへ……ありがとうございます! お母さんに着付け手伝って貰ったかいがありました!」
「着物もそうですが、華さん自身もです」
「そ、そうですか? 具、具体的にどの辺が────」
「おいそこの2人。 切り殺されたくなければイチャイチャを辞めろ」
「うわソージが刀を!」
「今まで何処に……」
それは勿論背中に。 四次元ポケット越えの収納量だ。
「……危険物没収」
紅葉に取り上げられた。 俺の愛刀その4『クリミナルバスター』が……
「行くぞー」
「ですね」
ぞろぞろと歩き出す。 三が日だが、最終日だからか多少人は少なくてそこそこ歩きやすい。
「おいそこの男2人」
と、ここで頼金が。 ちょっとテンポ悪くなるから出てこないでよ。
「さっき2人が褒めてた中に私が入ってないのはどういう意味だ」
「特殊部隊みたいな服着てるやつをどう褒めろと?」
正月にアーミールックはなぁ……寒くないの? いや防寒してるみたいだけどっていうか軍仕様だから性能はいいんだろうけど。 頭の上のゴーグル何? それ暗視スコープか何か?
「私は華さん一筋ですので」
「うわーなんか腹立つ。 褒めて欲しい訳じゃないけどなんか腹立つ」
「お前TPO弁えろよ。 タダでさえ人が多くてコイツら目立つのにお前が悪目立ちしたら人の視線凄いぞ」
「ちゃんと弁えてますよ。 これは徹夜で神聖青○プレイを張り込んでた名残です」
「莇、警察に電話」
「面倒なのでご自分でどうぞ」
なんやコイツ。 使えんやっちゃな。
というかだからか。 コイツだけ現地集合だったの。 ここら辺に住んでるのかと思ってた。
「すんごいの撮れたんですけど見ます? 因みに無修正です」
「いや見な「見たい!」……」
「……興味ある」
人を押しのけてまで主張するな思春期ガール共。
「先輩幾らで買います?」
「盗撮映像をナチュラルに買わせるな。 要らん」
「あ、無修正は苦手派でしたか」
そういう意味じゃないんだけど面倒だからそういう事にしておこう。 俺は無修正でも見れる派。 普段からモザイクや黒海苔に触れてるからなんかこう、新鮮さがあるというか。
「泉ちゃんも見る?」
「み、みみみ見ませんっ!」
「え〜? そんな事言ってチラチラこっち見てたクセに〜」
泉ちゃんも多感なお年頃。 成長を温かく見守ろう。 でも膜は破らないでね。 この世界はそういう系に都合のいい世界だと俺は信じてる。
「青……かん? 青い缶詰って事ですか?」
「ええそうですね。 鯖缶でしょうか」
そして薪姫の扱いが上手くなっている莇。 クリスマスの夜にヤッたと推測される2人だが、薪姫の知識的にはまだそこまでなのか? なんか純粋だった昔を思い出す。
そう……膣の存在がイマイチ分からなかった頃、入れる場所が分からなくてア○ルで妊娠すると勘違いしていたあの頃を。 思い出して改めて分かる幼少期の歪み。
「そろそろ大人しくして、いい加減に御参り行くぞ」
色んな意味で悪目立ちして注目集めてるからミスコネクション間違えたミスディレクションを酷使しなきゃいけないじゃないか。 俺は観測されるまで存在しない存在……そう、シュネーヴァルツァーの猫の様に。 それバラやで。 もしくは槍。 シュレディンガーや。
そしてミスコネクションはただのボッチだ。 じゃあ間違えてないじゃん。 なんやお前消すぞ。 新年早々自分同士が不仲で困る。
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「……お賽銭は幾ら?」
「えーと、確か縁起を担いで5円とか15円とか1145141919円だった気がします」
「最初の2つはともかく最後のは違うぞ」
賽銭で1000万出すボケが居る訳ないだろ。←お年玉で5000万渡そうとしたボケナス
「あれ、幾らでしたっけ」
「縁起ガン無視すれば自由だ。 金額は関係無い」
なんて返したが、1番縁起が良いのは万札って事は黙っておこう。 紅葉なら軽く出しかねん。
「う〜ん……ナラ、ワタシは15円にしておきマス」
「では私もそれで。 華さん、小銭は忘れず持ってきましたか?」
「む〜 そんな子ども扱いしないでください! ちゃんと忘れずに────あ、あれ? お財布が……」
「如何なさいました?」
「お、お財布間違えました……間違えて買い出し用のお財布持ってきちゃいました」
「おやおや。 では今日は私が出しましょう」
「うう、ごめんなさい……後で必ず返します」
「いえいえ、これも共同作業の一環です。 それに、夫婦になれば財産は共有する物です」
「ふ、夫婦だなんてそんな……結婚はまだ早いですよ〜」
……………………
「……ダメ」
「まだ何もやってねぇよ」
「……今取り出そうとしてる物は何?」
「我が家の蔵に眠る毒ナイフその2。 通称《逆暴れん坊将軍》 毒が男の体内に入ると徐々に不能・種無しになる。 因みに女が触れても効果は無い」
「……没収」
くそう! まだ奪われた! お前はいつもそうやって俺から何もかも奪っていく!
でもいいもんね。 まだ奴を始末する手段はある。 先祖代々性格悪い柳家の想いが詰まった蔵を舐めるなよ。
「ほらそこイチャイチャしない。 前進みましたよ」
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漸く俺達の番になった。 俺と莇は普段着だからそこそこ厚着してるけど、女性陣は着物で寒くないのかしら。
って聞くと「寒いけどオシャレは我慢!」って返ってくるだろうから聞かなくていいや。 オシャレはする側としない側の壁がデカイから。
御参りの話だ。
流石に7人は狭いので3:4に別れてやることになった。 俺は4人組。
「ではお先に」
「うい」
先に莇・薪姫・頼金の3人がやる。 何を願掛けしてるのやら。
「~~~~っよし! 終わりました!」
薪姫がものっそい真剣にお願いしている。 めっちゃ擦り合わせてるけど、それ手の皮焼き切れない?
「お次どうぞ」
「はーいはい」
入れ替わりで賽銭箱に小銭をポイ。 この投げた小銭が賽銭箱の中で跳ねて下に落ちた時の音好き。 何となく御参りに来たって実感する。
とは言ったものの、特に願う事も決意することも無い。 神は『居るんじゃないか』と思っているが、神に頼る事はしない主義だ。
何より、去年『平穏無事』を願ったのに見事にぶち壊してくれやがったから尚更。 絶対許さない。
でも何となく目を閉じて両手を合わせちゃう。 うーむ。
ちらっと横目で見れば紅葉もベルも泉ちゃんも静かにしてる。
いや訂正する。 ベルからなんか邪念を感じる。 あいつ何を願ってんだ? いやだいったい想像つくけど。
俺はとりあえず今年も平穏無事で。 次叶えなかったら許さない。
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「……やっと終わった」
「来てまだ1時間も経ってないのに、凄く長く居た気がしますね」
「皆さん何をお願いしたんですか?」
「コラコラ華ちゃん。 お願い事は口にすると叶わないよ」
「え、そうなんですか!? 危なかったー……危うく『いつまでも料理が出来る莇さんとの幸せな未来』が叶わなくなる所でしたー」
「……あ」
「今、口にしましたね」
「アチャ〜」
「……————っ!!!! どどどどうしましょう! 叶わなくなっちゃいました!」
「落ち着いてください華さん。 叶わなくなるというのはあくまで願掛けの様な物です」
「そうなんですか?」
「えぇ。 それに、もし叶わなくなったとしても私が叶えますのでご安心を」
「あ、莇さん……」
…………………
「……没収」
「まだ何も出してねぇよ」
「……会話に入らなかったから警戒してた」
おのれ紅葉ぃぃぃ!! いやこのネタは前にもやったな却下却下。
そんなこんなでまた没収された。 今度はワインオープナーを。 これがまた良い具合に上手く拷問に使えるのよ。 携帯性抜群だし。
「では皆さん! これより少しの間自由時間となります。 お昼を屋台で食べるも良し! ここいらを見回るも良しです! 時間になりましたら、降りた所にある公衆トイレ前に集合してください。 危ないので女性は必ず2人以上で行動すること。 それでは解散!」
「では、私達は2人で回るとしましょう」
「はいっ! 皆さん失礼します」
あーもう2人仲良く手を繋いじゃって。 というかここに来た時からずっと繋いでる。 死ねばいいのに。
「莇……外でするなよ?」
「ご安心を。 華さんは私だけのものです。 何より、華さんにはまだ早いので」
「…………」
「はーい先輩今日は我慢しましょうねー ここ神聖な場所ですから」
「何が神聖だ。 ROM専ばかりの日本の神に邪魔されてたまるか」
それに、神に祈っても何も助けてくれないしな。
「神を信じるくらいなら俺は人の手で片をつける」
「……セリフだけは1丁前」
「はいはい先輩カッコイイカッコイイ。 では没収です。 3人とも先輩取り押さえて危険物を全て押収してください」
「ラジャー! 大人しくキャッスル!」
「……ゴロゴロ出てくる」
「しゅ、手榴弾まで……これって本物なのでしょうか」
「くっ! 汚いぞ貴様ら!」
あっちこっち引っ張られてまさぐられた。 もうお嫁に行けない。 という訳で重政俺に嫁ぐ気ない?
種族と性別の問題なら大丈夫。 蔵を漁れば人化と性転換する何かは見つかると思うから。 最悪ベルブレラ製薬に頼む。 地下研究所とかで作ってんだろどうせ。
「ではこれは押収袋に入れまして……後程返却するので今日は大人しくしていてください。 はい、私達も解散しますよー」
そして誰も居なくなった。
え、本当に置き去りにされたんだけど。 皆居なくなったんだけど。 こんな所で自由展開有り? いやでも出かけ先だからある意味自由では無いのか。 そもそも俺初詣行く気無かったし。
……とりあえずどうしよ。
神社だからロクな娯楽が無い。 というか何回も来てるから今更感ある。
財布はある。 スマホもある。 念の為持ってきてたイヤホンもある。
……よし、どっかで飯買って日陰でゲームしてよ。
そうと決まれば早速屋台を調べる。 最も価格と単価のバランスがいいのはどこだ?
500円6個は高く感じるし、かと言って300円8個は逆に怖い。 ここは400円くらいを目指す。 あ、たこ焼きの話ね。
なんと言うか、やっぱり屋台価格でも何となく安心するのは400円だよなぁ。 妥当って感じがする。
ざっと見繕って色々買い揃える。 よーし後は日陰だぁ。 人通りの少なくて狭い場所探そう。
やっためっけ。 なんか今日テンポ良い。
丁度収まって、それでいて適度にスペースがある。 俺今日からここを第6の家とする。
飯を腹に入れてゴミは纏めてゴミ箱にメテオジャム。 飲み物も残ってるから準備万端。
イヤホン、OK
ゲーム起動、OK
人気、OK
紅葉達の気配、OK
オールグリーン
やっばいワクワクしてきた。 いざ行かん! 選択を強制される成り上がりの学園へ!
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素晴らしかった。 パソコンにインストールしてやるのとブラウザでやるのとでは色々と違うし環境の乱れで時々フリーズするけど、スマホさえあればどこでも遊べるからブラウザ版対応は好き。
共通は終わったから個別へ────と思ったが、そろそろ集合の時間だ。
早くに行くと面倒臭いノリに付き合わされそうだし、かと言ってギリギリに行くとそれも面倒。 何となく集まったかな位で行こう。 間に合えばいいのだよ。
時間を潰すために神社をぶらっとぶらぶら。 人多い……
いや1人で歩くには問題ないんだけどさぁ……多いことに変わりないしなんか神を否定してから空気が重いし。 怒られたか? だって事実だし……
「……甘酒か」
三が日だから無料配布してる。 折角だし1杯────
「? ソージ」
貰うのは辞めて他んとこ行こ。 境内の裏側って何となく不気味だよね。
「……どこ行くの?」
音も無く先回りするその技術を今程憎んだことは無い。
「…………」
奏士は踵を返した。
「おっとソージ、どーしてEscapeしようとしてるんデスカ?」
しかし後ろに回り込まれた。 俺の後ろに立つなぁ!
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なんやかんやあって共にご一緒する事になりました。 終盤特有の雑なカット辞めて。 さては疲れてるな?
「……♪ 美味しい」
「ほー……甘酒ってこんな味デスカ」
「おばあちゃんの甘酒を思い出します」
……甘い。 甘酒なんだからそうなんだけど。
「ソージはどうデスカ? ワタシの母乳入り甘酒」
「異物混入させんな」
「おっとソージの言いたいことは分かりマス。 『お前の全ては俺だけのもの』 そう言いたいんデスね!」
この女は胃に穴を開けるRTAでもしてんのか? 年が明けて復活した俺の胃が音楽室の壁くらい穴だらけよ。 あれの名前は有孔ボード。
「……奏士は今まで何してたの?」
「色々見て回ってた」
「着物に浮き出る下着ラインとかデスカ?」
「お前もう黙れ」
ベルちゃんそのまま甘酒が気管に入って激噎せすればいいのに。
「……頼金は? 一緒じゃないのか」
「……千聖は別行動」
「まぁチサトなら変な人に手を出される心配も無いデス」
それは頼金に女性的魅力が無い事を意味しているのか、それとも頼金の対応力を信じているのか。 うーん両方。 そりゃ全身武装した人に声掛けたくないわな。
「ソ〜ジィ〜 ワタシ〜、男の人に声かけられて怖いデ〜ス」
「何だ急に。 気色悪いぞ」
妙にポーズを決めながらにじり寄ってきた。 本当にキモイ。
「……5回ナンパされた」
「多いのか少ないのか分からん」
それでも、こんな場所でする人はやっぱ居るもんなんだなぁ。 泉ちゃんに手を出したらその手を切り取って断面を焼く。
「んじゃ」
「……どこ行く気?」
「散歩」
「え〜 流石のワタシも歩き疲れマシタ〜」
なぜ一緒に来る気でいるんだ? 誰も頼んでないぞ。
「……下駄は歩きにくい」
なら普通の靴で来ればいいのでは? ってのは無粋かね。
「ソージ〜 おんぶしてクダサ〜イ」
「嫌で〜す」
「ダイジョーブ! ソージにもメリットがありマス」
「なら言ってみろ」
どうせロクな事じゃないだろうけど。 というか俺じゃなくてお前のメリット言われるんだろうけど。
「ワタシは今下着を着けてない……つまり! 着物の生地の厚さと締めつけを持ってしても尚大きいワタシの乳を押し付ける事が出来マス」
「成程。 予想通り聞く価値は無かったな」
「なんですと!」
だって本当に価値無かったし……これはもう映す価値すら無い。
「一応聞くけどお前は?」
「……私はちゃんと履いてる」
安心した。 いや自己申告だからまだシュレディンガーの猫状態だけど。 普段の行いが信頼を失う。 元からあったかは知らん。
「話は終わりだ」
「行くならワタシも連れて行け!」
ベルがアリクイの威嚇みたいなポーズで立ち塞がった。
「大人しくするか?」
「YES! 民に誓う!」
お前は統治者か何かか?
「変に騒がない?」
「家康! ワニに誓う!」
「もうそこら辺のトカゲに話しかけてろよ」
「……扱いが雑になってきてる」
そりゃ雑にもなるわ。 三が日の疲労が半端ないんだぞ。 休まる一人の時間は何時も短い。
「ちゃんと言うことは聞く?」
「高須! カビに誓う!」
「今更だけど神に誓う気無いよね」
「そりゃ無宗教ナノデ!」
胸張って言うことか? あと仮にも神社で無宗教は止めなさい。 日本人は差程気にしないだろうけどアニミズムとかがあるから。 何となく無礼ってやつ。
「て訳でGO! イズミ、存在感薄めてないで行きマスヨ! まだ御籤引いてない!」
「ふぇっ、えっ、えっあっ」
面倒なベルの対応を俺に任せてひっそりと休んでいた泉ちゃん。 ベルは存在に気付いていたのか……俺ですら気を抜くと見失いそうになるのに。
ベルに手を引かれて連れていかれた。 ああ、異人さんにつれられて行っちゃった……
「……行こ」
「はいはい」
先に行き立ち止まって手を振ってるベル。 何となく広大な草原で跳ね回るペットの犬を見てる気分。 飼ってるの猫だけど。
いやあれは飼ってるのか? 住み着いてるというかあっちが家主というか。 俺の方が先に住んでたのに貫禄が凄い重政。 お猫様だからしゃーなし。
「……奏士の口からたこ焼きの匂いがする」
「え、そんなに臭う?」
頭1つ分とはいえそこそこ距離あるのにって思ったけど、そういやこいつ学園の敷地内でかくれんぼした時も嗅覚で探し当ててたわ。 紅葉と象のどっちが鼻いいのか気になってきた。
「……あとお肉の匂い」
「肉巻きおにぎりとか言うやつ食ったからな」
「……ずるい」
「お前も食ったんだろ?」
「……ベル達に合わせて少なかった。 あと甘いもの中心」
「それは知らん」
でもまぁエンゲル係数の化け物みたいな紅葉が一般女性レベルの食事量に抑えたら少ないわな。 因みにベルより泉ちゃんの方が食べる。 泉ちゃんって見た目はか弱い乙女って感じだけど実際はそれなりに強いし食べるよなぁ。 これも元気な証。 いやぁ生きてるって素晴らしい!
「なら、家帰ったら何か作るか?」
「……お肉食べたい。 あとお米」
「メニューは考えとく」
「……褒めて遣わす」
「何様だお前」
「……世を照らす太陽」
「お日様かよ」
あとお前はどっちかってーと月だ。 太陽はベルに譲りなさい。 色的に。 泉ちゃんは命巡る自然豊かな大地。
「……♪」
どことなく紅葉が上機嫌。 流石男子中学生より食欲旺盛な女子学生。 学園で『食堂の覇王』と噂されるだけはある。
「そういや、いつも着けてんな」
「……?」
「指輪。 外出る時は毎回着けてんだろ」
「……お気に入り」
「そりゃよかった。 でも指は選べ」
「……?」
「薬指は誤解されるから辞めろ。 人差し指とか中指にしなさい」
「……ヤダ」
普段表情殆ど変わんないクセにこういう時だけ分かりやすくなる紅葉。 ムッとするな。
「何故だ」
「……人差し指は指輪が当たって邪魔」
「中指は?」
「……なんか邪魔」
「理由が薄いなぁ」
あれこれ理由盛って拒否るなら嘘でもいいからもっとそれらしい事言わないと。 紅葉ちゃん本能で生きてるから嘘つくの下手だよね。
「……奏士が薬指にはめたから責任取るべき」
「あれ事故だしやれって言ったのお前だしプロポーズの意図は無いんだけど」
「……プロポーズだと思ってるなんておめでたい頭」
「あ?」
なんだコイツ喧嘩売ってんのか? 安く買って違法スレスレなくらい高く売ってやんぞコラ。 喧嘩の転売ヤーだ珍しっ!
「……薬指に指輪があるとナンパ避けに便利」
「そんな意図が」
「……それでもナンパしてくる人は居るけど」
「人妻は人気あるからなぁ」
俺は好まないジャンルだけど。 他人の妻じゃなくて自分のって意味の人妻は大好物。 純潔の純愛最高。
「で、結局責任って何?」
「……それは自分で考えるべき」
「答え寄越せや」
「……シワの少ない奏士の頭にはいい脳トレ」
「プルプルタマゴ肌なお前の脳よりはマシだ」
手の甲抓られた。 富士山どころかマッターホルンくらい抓られた。 痛い。
「へいへいお2人さーん! 早く来ないとイズミはワタシのモノだ!」
「そんなに急ぐと転ぶぞー」
「ぐえっ!」
「ほら言わんこっちゃない」
それより泉ちゃん慣れてきたね。 ベルの妄言に巻き込まれても前よりは慌てず冷静に対応出来るようになってきた。
「ったく……少しは落ち着けんのか彼奴は」
「……留学先で初めての年越しだから仕方ない」
そういやベルも莇も結局冬休みに帰省しなかったな。 時々テレビ通話してるらしいけど。
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「……あ、禍塚」
「……皐月と二人」
「あの人クリスマスに禍塚誘って告白するとか言ってたけど、どうなったんだろうな」
「……告白したらしい」
「マジで?」
「……でも濁されてフラれたから今は振り向かせる最中って言ってた」
「はえー強いな」
というか濁されてって絶対修学旅行で失恋した事引き摺ってるよな。 人様の内情にどうこう言うつもりは無いけど。
「傍から見れば初々しいカップルだけどな」
「……皐月が幸せそうで安心した」
「ただ……あれだな。 なんか幸せカップル見てると殺意に恨みと怨念をトッピングしたくなるな。 今なら倍盛り無料」
「……ラーメン屋さんの大盛り無料みたいに」
えーと獲物は────くそっ! 紅葉に全部没収されている! 畜生!
「……遥も居た」
「あー?」
紅葉が指差すと離れた場所に遥さん────と腕組んで歩いてるメガネかけた天パ。
「……なぁ紅葉」
「……何?」
「アイツ殺って良いよな」
「…………そんな真っ直ぐに濁った眼で言ってもダメ」
何故だ! ナジェダ!
「なんだよ冬休み中にどいつもこいつもカップル成立しやがって禍皐はともかく遥若は好意があやふやだっただろうが……」
「……よしよし」
「オイ慰めるな。 優しい目で見るな。 頭を撫でるな」
「……奏士も異世界転生したら多分モテる」
「人生単位じゃなくてもうファンタジーじゃん。 もうストレートに否定しろよ」
「……ドンマイ(笑)」
「笑うな貴様」
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「お〜み〜く〜じ〜デス!」
「うるさっ」
「……テンション高い」
もう人にめっちゃ見られてるから黙れベル。 見られてなくても黙れベル。
「全員引きマシタ? ではせーのでopen!」
御籤ってそんな「バッ!」て開くようなもんじゃないだろ。 ホチキス留めしてるならともかく。
「ぐあッ! 小吉デス……」
「えっと……吉、です」
「……大吉♪」
「俺も」
俺、御籤で大吉以外出ることって稀なんだよね。 なぜほぼ毎年大吉引いてるのにガチャ運はゴミカスなのか。
「えーと……
勉学:学べ
仕事:このまま働け
金運:危うし
失せ物:全て下にあり
待ち人:無理
健康:無駄に良し
勝負:負け続き
…………え、これ本当に小吉デスカ?」
大凶でももうちょいマシなこと書いてそうなベルの結果に少し笑ってる紅葉と泉ちゃん。 俺は鼻で笑ってる。 健康だけ良いのがベルっぽい。
「……泉は?」
「ええと……良くもなく悪くもなくって感じです」
まぁ中間の吉だしな。 どうか健康は良い事書いてありますように。
「…………」
「…………」
俺も自分のを見てみる。 えーと……
「……なんて書いてあった?」
「なんかめっちゃ勉強出来るとか書いてあるけどこれ以上成績上がってもなぁ」
「……ムカつく」
あ、紅葉さんそういや2位でしたねにょぽぽぽぽw ねぇ今の気分どう? ねぇねぇ?
「えーい悪い結果は結んで引き直す!」
あーあベルが走って行っちゃった。 アイツ良い結果が出るまで課金しそう。
「……奏士はどうする?」
「俺は結果に関わらず1年財布に入れる派」
「……私もそうする」
大吉だしな。 神よ今年こそ大吉に見合う年にしないと貴様の歴史諸共滅ぼしてやる。
「さぁ引き直し! 行くぞ神社! 御籤の貯蔵は十分か?」
「アイツギャンブルで破滅しないだろうな」
「……そうなる前に莇か梓が止めるから大丈夫だと思う」
梓って誰? あ、影から見守る(優しい表現)ベルの護衛か。 別名白石ィレンドリング。
「小吉小吉凶末吉末吉小吉凶凶小吉中吉凶凶凶凶小吉末吉吉小吉小吉中吉……ぬぉーっ! 封入率どうなってるんデスカー!」
「……凄い引いてた」
「10回に1回中吉出てるの確定排出みたいで笑う」
ところで中吉と吉ってどっちが上なん? 基本的には吉の方が上らしい。 つまり吉は星4で中吉は星3。
「わわわっ……ベルさんこれ以上は……」
「まだデス! こうなったら大吉出るまで引いてやりマス…………小銭の貯蔵は充分! いざ!」
爆死してるベルは泉ちゃんに任せて俺はお守りを購入。 破魔矢とかは知り合いの神社から送られてくるから買わない。
「…………」
裾を引かれた。 後ろを取られた! マズイ! 殺られる!
「どした」
「…………」
紅葉が虚空を指差す。 そこに見えない何かがあんの?
「……御籤」
あ、違ったその向こうにある御籤台を指さしてた。 いやはやお恥ずかしい。
「引けば?」
「……奏士も引こ」
「えー」
だってこれ恋みくじじゃん。 俺に不要な物盛り沢山なんだけど。 例えるならそう、シーザーサラダのシーザー部分くらい不要。 そういう人はゴマどれでもかけて食ってろや。
「まぁいいけど」
そこまで高い物じゃないし。 1回くらいなら付き合おう。
「んーほいっ」
「……どう?」
「えーっとぉ?」
ほうほうほう成程成程……
「お前はどうだった?」
「……大吉」
「運いいな」
「……今年は良くなる予感?」
何故疑問形なのかは知らんけど。 お前の主観でしょうが。
「……奏士も大吉?」
「なんか『神罰』って書いてある」
「…………神罰?」
「ほれ」
紅葉に見せる。 そこには『運勢:神罰』と。 これ印刷だよね。 こんなのあるんだ〜
「……初めて見た」
「だよな」
運勢に負けず劣らず内容も酷い。
待ち人:滅べ
縁談:消し飛べ
恋愛:裁きを下す
星座:絶滅せよ
方位:殲滅
待ち合わせ:亡き者にしてくれる
な? 酷いだろ? 何かしらの意志を感じる。
これはあれか? 神を冒涜したから? それとも普段とは別の神社で引いたから神が嫉妬したのか?
ともあれ、何だこの悪意の塊は。 何一つマトモな情報が無い。
「……ドンマイ」
「お前笑ってるだろ」
「……気の所為」
「ならその目はなんだ」
「……奏士が哀れ」
「うるせぇ」
とりあえずここの神は後で滅ぼそう。 そして俺が新たな神になる。 ゴミの間違いでは? 誰がゴミだ生ゴミと言え。
「そう言うお前はなんて書いてあるんだよ」
「……秘密」
「は?」
「……女の子に恋みくじの結果を聞くなんて不躾」
「なんだお前」
まぁいいや。 見せないなら見せないで興味は無くなった。 俺の好奇心は簡単に剥せるぞ! 養生テープなら便利だな。
「てか、そろそろ集合場所行かないと遅れるぞ。 おいベル、その辺にして帰るぞ」
「そんなぁ!」
「ほっ……やっと終わった……」
あーもう泉ちゃんが両手に御籤抱えてるじゃないか。 これ全部目を通しておけよ。
すいませんねぇ皆さんお騒がせして。って目で言っておく。
「むむむ……やはり悪いことばかり書いてある……」
「ベルさん、歩きながら読むと危ないですよ」
前を行くベルと泉ちゃん。 泉ちゃんがしっかりしてるから年上のハズのベルが情けなく見える。
「そういや、俺ここに来てから何回も神社関係者と間違われたんだが何故だ?」
「……作務衣着てるからだと思う」
「ストール巻いて上着も着てるんだがな」
「……作務衣が馴染みすぎてる」
そんなにかね。 確かに長い間着てるけど。
「……奏士の冬用の普段着を見た事が無い」
「俺は作務衣が普段着だ」
「……お出かけする時に着てる服は?」
「あれは一張羅」
「……あれで……」
え、あれそんなにダメな奴? ジャケットじゃないと認めない派? それは無理だわ俺ジャケット似合わないし。
「ところでさ」
「……?」
「今更だけど、態々初詣の為に隣町まで来る意味あったか? 家で出来るだろ」
「……京都で買った卓上鳥居とミニお賽銭箱で初詣は出来ない」
「ちゃんと神棚もあるぞ」
ちなみに祭神は縁結び。 爺さんの知り合いの神社の祭神が縁結びの神らしくてな。 それ繋がりらしい。
「そだ、紅葉」
「……?」
「はいこれ」
「……お守り」
「学業成就のお守り。 これで少しは成績上がるといいな」
「……喧嘩売ってる?」
いえいえそんなつもりはありませんですわオヒョヒョオヒョヒョヒョオヒョヒョヒョヒョ
はいどーも最近昼寝が最高で堪らない作者です。
いやー暑い夏の昼寝って最高ですよね。
網戸+扇風機+室温26℃……もう最高です。
そのお陰で食事回数が減って激ヤセしました。 気持ち良くて痩せれるなんて最高のダイエットです。 寝汗がその分すんごいことになってます。
はい今回の雑談ノルマ達成した所で本編へ
今回は初詣回、私が1度も行ったことがないやつです。 年明けて初めてという意味なら3月ぐらいに行きます。 近所の小さい神社へ。
いやー 皆様の奏士への感想が一致してるらしくて嬉しいです。 ちなみに作者の感想は
「なんやこいつウッザ」
です。
そんな奴の事より
このペースで2年以内に終わるのか心配です。 だって作中時間であと1年近くあるんですよ? 年越すまでに3年以上かけてるのに? 無理だろこんなんw
的な感じで現実逃避してますが、まぁ頑張ってるので暖かく見持っていてください。 やっぱり今は暑いので冷たくしてください。 その方が興奮します。 冗談です。
ではここで。 先程クロゴキブリが横切ってそれどころじゃないので。 行くぞ私! スプレーの貯蔵は充分か?