白猫と(実質)初めてのおデート
「あれ、紅葉どこ行った?」
「紅葉殿でしたら、早くに出ていかれましたが?」
「ほーん…………」
「…………何か? 私の顔にゴミでも?」
「いやお前の顔がゴミなんだけどさ……なんかお前と喋るの久しぶりな気がして」
「はぁ、そうですか。 それはそうと顔中心にボコボコにしても宜しいですか?」
「朝から血気盛んだなお若いの。 おいちゃんこれからお出かけだから手合わせなら顔以外でお願いしたい」
「かしこまりました。 顔のみ狙います」
「怖っわ」
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ものっそい身体中痛い。
あんにゃろめ人が受けの鍛錬のために攻めないからって容赦無くやりやがってよぉ……普通あそこで五獣拳使うかね。
でもまぁ得るものはあったから良しとしよう。 拳法使いとの実戦なんて滅多にないから、まだ対応が未熟だったしな。 これラブコメですよね? ラブもコメもねぇだろ終始頭おかしいヤツが頭おかしい言動してるだけだろうが。
……あ、紅葉めっけ。
痛む身体に興奮(変な意味は無い)しながら待ち合わせのバス停に行くと紅葉がソワソワしながら待ってた。
今が9時20分。 紅葉が家に居ない事が発覚したのが8時過ぎだから、紅葉は1時間以上早く居た計算になる。
余程暇だったんだね。 俺も予定時間前にやる事全部終わっちゃって時間まで暇すぎて前倒しになることよくあるから分かる。
それはそうと、紅葉に見つかる前に物陰に隠れてちょっと紅葉を観察。
「……! …………!」
手鏡で前髪を整えたかと思えば服を確認したりカバンの中を漁ったり、胸に手を当てて深呼吸したかと思えばまた髪を弄ったりと凄く忙しない。
何あれ不審者? 不審者レベルなら俺の方が上DA☆ZE!
俺の不審者レベルは9、紅葉の不審者レベルは5ってところか。 拳銃を持った熟練の警察10人がかりでやっと捕縛できるのが捕獲レベル1。 これ最終的に捕獲────不審者レベル1万とか3万とか53万とか出てきそう。
「……! ……すーっ……はーっ……すーっ……はー……」
紅葉ちゃんは再び深呼吸。 一息で1ヶ月動く紅葉ちゃんが何度も呼吸をするとは……出産か? 子沢山なんだな。 調理間に合うのか? ト○コ読んだことある人しか分からないネタを擦るのはやめなさい。
「ふぅ…………」
深呼吸を終えたかと思えばワタワタ再開。 そんなに髪を確認しても変わらんぞ。
さて、そろそろ背後に迫るポリスメンの気配が怖くなってきたから出るか。 なんでこんな朝早くから住宅街に居るの? もしかして俺衛星か何かで監視されてる? 時速4キロ以上で移動したらカーナビおかしくなっちゃう。
「おまー」
待ち侘びた声に紅葉は光より早く振り向く。 一瞬真空波というか鎌鼬が発生した。 あっぶね。 フライングヘアナイフか? もしくはピーラーショット。
「…………待った」
「お前が早すぎるんじゃい。 待ち合わせの15分以上前に来る奴は面接の時嫌われるぞ」
「……就活しないから分からない」
「リッチめ」
という俺も就活しないけどな。 会社勤めとか無理無理ムリムリかたつむり。 死ぬまでの蓄えは今のうちから備えないとね。 多分10億くらいあれば今の稼ぎが無くなっても生きていける。
「あっつ」
朝だってのにお日様は偉そうに太陽さんさんでジリジリと照らす。 朝なのだからせめてもうちょい気温下がってほしいものだ。 お日様ってばこんなにも暑くして何様のつもりだよ。
バス停の日陰に避難するついでに時刻表を確認。 ふむふむ……1番早くても来るまでまだあるな。 バスとか全く乗らないから時刻表さっぱどわがんね。 未だに止まったバスが本当に自分の乗るバスか分からなくて乗車を躊躇する。
……そういやどこ行くんだろ。 バス停集合ならバスを使うんだろうけど。
つってもある程度の予想は簡単だけどな。 情報が揃いすぎてる。 2択まで絞れたけど、確定情報が欲しいな。 試すか……
「こうも暑いとキツイな。 紅葉、飲み物持ったか?」
「……ちゃんと持ってる」
「タオルとハンカチは? 小型の団扇とか扇子もあるか?」
「……お母さん?」
「弁当痛まないように保冷剤入れたか?」
「……夏用の大きいの入れ────ちょっと何言ってるのか分からない」
紅葉は素直に言いかけて途中で口をキュッとした。 シラ切るの下手か。
まぁ〜〜カマかけたら早かったね。 紅葉ちゃんは素直だから嘘が下手なんだ(笑)
ここまでの情報を整理すると、
・バス停集合
・大きめのトートバッグ
・紅葉にしては珍しくメイク有りのお洒落をしている
・休日のお出かけで異様に緊張している
・お弁当持参
・集合時間とバスの時刻表の逆算
これらの情報から察するに、紅葉は海浜公園に行こうとしている。
そしてそこで手作りの燃えカスを食べさせて俺を毒殺しようとしている。
成程……海浜公園なのは家で死ぬと処置が面倒だからか? それともせめて最後に綺麗な景色を的な慈悲か? どちらにせよ俺は今日が命日って訳だ。
まぁ冗談はさておき。 いや割とガチの可能性あるから全部が全部冗談にならないんだけど。
「んで、今日は何処に行くのか知らないんだが?」
「……バスの中で話す」
紅葉がそう言うと、見計らったようにバスが来た。 都合良すぎるが、都合良くないと成立しないのだろう。
「……乗って」
「へい」
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「はぁ。 海浜公園ですかい」
人の少ないバスの中で紅葉からかくかくしかじか教えてもらった。 反応が薄いのは仕方ない部分もある。
「それならバスなんか使わなくても車で行けばよくね?」
「……あんな車で行ったら悪目立ちする」
ぐうの音も出ない正論パンチに負けた。 あんな趣味全開の痛車で遊園地なんて行けば良くて出禁、最悪ぐ○り森に永久封印だな。 ミノタウロスじゃん。
「そりゃ悪ござんしたね」
「……もっと普通の車を買う気は無いの?」
「高ぇ買い物を平然と聞いてくるね。 今納車待ち」
「……もう買ってた。 何買ったの?」
「軽ワンボックス」
「……また意外」
「よく考えたらあんな無駄にクソでっかい車を毎回乗るより軽乗った方が楽」
維持費に関してはどっちにしろ殆ど乗らないから微々たる差だ。 軽1台増えて困るほど余裕無いわけじゃないし。
「……納車はいつ?」
「今月終わりくらい」
「……夏休みの移動手段が増えた」
「貴様俺を足に使おうとしてるな?」
友達と遊びに行くなら自分で行け。 遠いなら友達に相談して自分で行きなさい。 奏士くん夏休みでも関係無く原稿進めなきゃなんだから。 あと生徒会。
「そういや、夏休みって生徒会の仕事どれくらいあんの?」
「……夏休み前にどれだけ終わらせるかで変わる」
「夏休みは1日も登校したくないんだけど」
夏休みだぞ? 暑いから涼しい家で勉学に励んで休みましょうって意味だぞ? そんな休み期間に登校するとかバカのやることだろ。 夏休み補修があるからマジでバカのやること。
「夏休みまで2週間弱だろ? 残り日数で終わるか?」
「……どっちにしろ日程の問題で何回か登校日はある」
「リモートでよくね?」
「……私に言われても困る」
てことは生徒会の枠組みに収まらない仕事ってことか……理事長絡みでも無さそうだし、何かしら他と連携するタイプの仕事か? 嫌すぎる。
てか今の生徒会役員が俺と紅葉の2人体制なのが問題だろ。 対外スキル高い奴が居ねぇ。 今だけはベルの有能っぷりがわかる。 誰か窓口役員になってくんねぇかな。 極力顔見知り希望。
「俺夏休みはちょっとフルで用事入ってるから」
「……もう少しバレにくい嘘は無かったの?」
「あっても容赦しないじゃん」
奏士くんはおしまい! あ〜もう夏休みの価値が薄れる。
「ちなみに聞くけどそれ夏コミと被ってねぇよな?」
「……流石にお盆期間は学園も閉まってる」
あー良かった。 もうホテル予約してるからめんどい手続き踏まずに済みそう。
『ツギハ カイヒンコウエン デス』
停車駅の音声を聞いた瞬間、弾丸の如き速さで停車ボタンを押す。
そしてそれは紅葉も同様。
『ツギ トマリマス』
一瞬の出来事。 速度は互角。 瞬発の差で僅かに俺が有利。
しかし結果は紅葉の指が下にある。 停車ボタンの位置が紅葉に有利だったか──
「……(ムフーッ)」
紅葉は満足そうな顔で勝ち誇っている。 なんだコイツガキかよ。
「……ざーこざーこ♥」
なんだコイツメスガキかよ。
「……分を弁えろ雑種♥」
違ったギルガメッシュだ。 ハートマークついてるギルガメッシュ嫌すぎる。 メスガキギルガメッシュ、いや、ギルガメッスか? もしくはメスガキッシュ。 どっちでもいいわ。
クソどうでもいい勝負の後、バスが目的地に止まるまで紅葉のドヤ顔は続いた。 俺は心の底から顔に拳をプレゼントしたい。
んでもって着きました、と。
「……開園直後だから空いてる」
「まだ夏休み前だしな」
遊園地はいつ来ても混んでると思いがちだが、空いてる時は空いてるのだ。 夏休み終盤とかめっちゃ空いてる。 殆ど並ばなくても乗れるし、夏休み価格で1日フリーパスとか安かったりする。
「とは言いつつ、1年行ってないから年パスが切れているのでした」
「……独り言?」
やべモノローグ漏れてた。
それはそうと。
「入園チケット買ってくるけどどうする? 紅葉はワンチャン中学生で通すか?」
「……子ども扱いしないで」
いやでも童顔だし小柄だし見た感じ大人って印象は────────あ、無理だな。 子どもでは通せないサイズだった。 無念。 胸だけに。 やかましいぞセイウチが! 誰が水陸両用の悪魔だ。
「チケットならある」
そう言うと、紅葉は券売機に向かわずそのまま入園ゲートへ。 ふむ? この公園の入園チケットに前売り券システムなんかあったか?
紅葉に連れられてゲートまで行くと、紅葉はバッグから封筒を取り出した。 何あれ賄賂? 中には山吹色のお菓子or小切手?
と、思ってたら封筒から1枚の紙を取りだしてキャストに渡していた。 今更ながら海浜公園はキャストと呼ぶのかスタッフと呼ぶのか不明。 テーマパークじゃなくて遊園地だからスタッフでいいのか? そこ今どうでも良くね?
「しょ、少々お待ちを!」
紅葉の渡した紙を見た途端にスタッフさんが慌てて駆けてった。 後ろの人がヒソヒソしてるんだけど俺居ないものとして扱ってもいい?
「お待たせしました!」
スタッフさんがおじ様を連れて戻ってきた。 この風格、園長と見た。 そろそろ落ち着かないと現実世界と乖離するぞ。 言うてあくまで参考というかそっくりな世界なんだからいいじゃないの〜 エ○キテル連合!?
「失礼ですが……お2人は轟様とどういったご関係で?」
園長(と思しき髭)が周囲に聞こえないように聞いてきた。 どういう関係って……
「何?」
「……後輩?」
「あの人自称姉なんだし、紅葉は妹でいいんじゃね?」
「……流石にあんな姉は要らない」
「じゃあやっぱ後輩じゃね?」
言うて年齢的には俺の方が先輩なんだけども。 あの人の後輩になってしまったのは奏士くん一生の不覚。
「……友人? です」
結局紅葉の口から出たのは後輩じゃなかった。 選ばれたのは友人でしたか。 先輩と思われるより友情が勝ったのは賞賛するべきか、舐められてると笑うべきか。
「……かしこまりました。 それではこちら、確認が取れましたのでどうぞお進み下さい」
「はぁ……どうも」
謎のチケットを返され、俺らはよく分からないまま入園することになった。 何が何だか。
「おい、紅葉アレはなんだ」
「……天音さんから渡された────入園チケット?」
「何故に疑問形?」
「……私もよく分からない。 天音さんが『これを見せれば無料で入れるし、園内なら1日乗り放題食べ放題だよ!』って言ってた」
「何その過去一得体の知れない物体」
この黒いチケットにどれだけの効力があるというのだ。 天音さんどういうツテ? 明らかに正攻法というか、関係者の中でも深く関わった人しか貰えない類のモノだろ。
怖いわ。 それをしれっと渡してることも、そんな物を持ってることも。 あの人の存在がより不可解。
「……お得と考えれば軽くなる」
「お得ってレベルじゃねぇからなぁ」
この謎のチケット、色も黒いし正体不明だしまんまダークマターではあるのだが、紅葉の言う通り安く済んだと考えるとこにしよう。 深く考えると戻って来れなくなりそうだし。
そんなことより
1年ぶりの遊園地だ。 できる限り不純物は取り除いてから来たかったが致し方ない。 紅葉の存在は片隅に置いて楽しむとしよう。 運良く無料チケットが手元にある事だし。
ふぇっふぇっふぇっ……わしのデッキが火を噴く時が来たようじゃ。 大の大人が才能を無駄遣いして手に入れたこのぐるりカードの厚みを増やしてやる。 まだコンプしてないのがあるし。
「……奏士」
懐からデッキケースを取り出した所で紅葉に袖を引かれた。 カードは貸さんぞ。 俺は正々堂々その場で手に入れたカードで遊ぶタイプだ。 但し場合による。
「なんだ? どうした?」
「……あっち」
紅葉が指した先は遊園地とは真逆のエリア。 あっちには自然と散歩コースしかありませんが?
「……お散歩」
「えっ」
聞きたくなかった言葉に思わずデッキが手からこぼれ落ちる。 地面に着く寸前でキャッチしたからノーダメ。
「散歩?」
「……お散歩」
「ぐ○り森は?」
「……今日は行かない」
「そうか……」
べ、別にガッカリなんてしてないんだからねっ! ただちょ〜っと帰宅願望強まっただけで。 俺がここに来る目的の9割はあの迷路に決まっておるだろう。
「…………帰りに時間があったら寄るかもしれない」
「よし行くぞさっさと行くぞちんたらするな寄る時間が無くなる」
「……………………」
紅葉から「こいつ……」みたいな視線が連射型で来たが、躱してやり過ごす。 圧覚超過が32回くらい働いた気がする。 "雑食"の2倍だ。でも紅葉の捕獲レベルは1垓超えてるから2倍で済んだと言える。 これ何の話?
「……」
散歩という名の前菜に向かおうとしたら紅葉に引き止められた。 袖引くの辞めなさいって何度言ったら分かるんだこの小娘は。 ちっちゃなお口は何のためにあるんだ?
「……何か言うことは?」
「ぐるり森の最終入場が閉園20分前だから早めに終わらせてくれると助かる」
「…………」
紅葉の反応から察するにどうやらもクソも無く違ったらしい。 禁忌肢だったか。
「…………もっと私を見て何か言うことは?」
あら優しい。 紅葉にしてはヒントをくれた。
ヒントによりタイムリミットは延びたので落ち着いて紅葉をじーっくり見てみる。 それはもうじーっと。
「……」
流石に少し恥ずかしいのか、紅葉はちょっと頬が赤い。 この気温だから熱中症の可能性がある。 麦わら帽子被ってても暑いものは暑いから気をつけるんだぞ。
「スーッ……ホクロどこだ?」
探せど探せどホクロが見当たらない。 代わりに分かったのは紅葉はシミ1つ無い肌の持ち主だってこと。 そんなの周知の事実じゃないか。 周知を知らずに語るとは羞恥の事実か?
「……ホクロを見つける遊びじゃない」
「じゃあ痩せた? 夏バテは気をつけろよ?」
「……痩せたは痩せたけど違う」
「え〜……財布とスマホ忘れた」
「……ちゃんと持ってる」
「分かった! 実はパンツの中にバイブを入れられてて誰かから遠隔でゴブッ」
紅葉に鳩尾ブレイクされた。 いい拳持ってんじゃねぇか……
あ、なんか身体が動かない。 これはノッキングか? インパクトされたかもしれない。 ミディアムとウェルダンの間だからレアかもしれない。 ノッキン!! ダメージノッキン!!! それはダメなやつ。
「……セクハラ」
「これまでは許してくれたじゃん」
むしろ自分から話広げるタイプじゃないか。 君はベル以上の耳年増じゃないですか。
「ま、まぁ冗談はさておき」
やべ、ガチ腹痛てぇ。 全身の力が激減してるんだけど。 立ってるのすらやっと。
「何度も言うが、俺にファッションの善し悪しは分からんし感想を求められてもなんも無い」
どうも、ノリと勢いと勘でヒロインの服を決めていたラブコメ原作者です。 イラストレーターも兼ねてます。 ファッション誌読んでも根本的な感性が違いすぎてイマイチ理解できません。
「……私じゃなくて泉だったら?」
「時代が違えば姿絵が聖遺物として扱われたかもしれない」
「……べた褒め」
紅葉は引き半分呆れ半分といったところ。 もうね、泉ちゃんなら何が何でも引き出しフル活用してべた褒めしちゃう。
もしくは、俺程度の語彙で表現できないから何も言えない。
「だからな、お前がお気に入りのリボンでおさげにしてても、白ワンピが夏仕様のオフショル肩紐膝上10cmだとしても、珍しくメイクしてても、下着が新品の紐パンだとしても俺はなんも分からん。 感想が欲しいならお門違いだ」
「……今日のコーデを全部理解してて逆に怖い」
そんなまさかメタルマサカーつって。 奏士くん感性は終わってるけど目は良いのよ。
「?…………」
ふと、紅葉は考えるように黙り込む。 何が引っかかったのだろうか。 小骨?
「……なんで私の下着のことまで知ってるの?」
「ノリと勢い」
「……正直に話して」
紅葉の圧がすごい。 このままだと公衆の面前で正座させられそうだから素直に言おう。
「・今朝部屋を覗いたらランジェリーショップのショッパーが置いてあった。
・袋の劣化度合いから最近買ったものと判断した。
・今日の紅葉は気合を入れた服装だからもしかしたら新品の下着を着けてると予想した」
「……なんで箇条書き?」
奏士くんも説明難しいんだよ大半が直感とキモイ想像によるものだから。 出かける相手の下着を予想するとか普通にアウトものだぞ。
「……なんで形状までわかったの?」
「それは紅葉の所持下着の比率的に紐パンの方が確率高いかなって」
あと勝負下着がどうのこうの言ってたのが聞こえたから。 勝負下着といえば紐パンっていうのはオタク界の常識みたいなところがあるからね。 紅葉も無意識下で紐を選んでる可能性があった。 考察がガチとイカレで怖いな。
「……ちなみに色は?」
「白」
「……即答された」
紅葉の反応から察するに正解だったらしい。 いやだって……ねぇ? 紅葉と俺は所属が同類というか、同じ穴のムジナなんだから思考も近いだろ。 この1年である程度紅葉の事は把握したからトレースも容易。
「ちなみにパール付いてたり観音開きだったりする?」
「……流石にそこまでは行かない」
へ〜 じゃあどんな感じなんだろ。
「……気になる?」
「俺に無い概念だから少し気になる。 知識としてはあるけど根本的な理解が及んでない可能性があるから生の意見を知りたいというか」
「……見る?」
「あぁそれはいい。 口頭で教えてもらえればそれで」
どうやらこれが紅葉的にご不満だったらしく、脇腹に人差し指で17連の突きをされた。
聞きたいんだけど、どうやって見せようとしたの? まさかここでワンピース捲って直接か? それとも脱ぐのか? どちらにせよ紅葉がアウトになるのを未然に防いだのだから褒めて欲しい。 写真に撮ってあるならまだしも。
「……絶対見せない」
「むしろそれが基本中の基本では?」
紅葉がぷりぷり怒ってる。 忘れてたけど普通見せるもんじゃないよね。 他人に見せないのは世の常識だぞ。
ご機嫌ななめな紅葉をどうしようかと頭の片隅で考えていたらスマホが鳴った。 人妻からメッセージだ。
『紅葉ちゃんを不機嫌にさせる悪い子はお仕置しちゃうゾ☆ それが嫌なら紅葉ちゃんに「可愛い」って何度も言ってあげること!』
なんだこの人妻どっから見てやがる。
そう思って周囲の気配を探ってみても見つからない。 こうも人が多いと見つけにくいな。
とりあえず返信しとこ。
『俺自意識過剰なんで嫌です』
俺ってば妄想豊かだからこうしたらどうなるかとか常に考えてるし、自分がやったらどうなるかとかめっちゃ考えちゃう。
俺が褒めるじゃん? 紅葉チョロいからご加減になるじゃん? 好感度上がっちゃうじゃん? 奏士くんの望まない展開になるじゃん? 嫌じゃん? お互い幸せにならないじゃん。
これも全て俺の妄想でしかないんだけどな。 好感度なんて目に見えて数値化できる訳でもなし。 そもそもやることなすこと全て都合よく行くと思ってる方が間違いだ。
ほんっと嫌だ。 どこで間違えたかな。 多分最初から間違えたんだよな。
さーてどうするか。 紅葉が俺に気があるのはだいたい分かる。 少なくとも、アレコレ考える程度には異性と意識されているのは明白。
紅葉の身が堅いのはこの1年で分かったが、それでもあまり刺激すると万が一がある。 奏士くんは独身貴族一人と1匹暮らしがいいのだ。
でもなー 紅葉の機嫌治さないと今後の原稿とか絵とか色々に支障がなー やるしかないのかなー
考えてもわからんし直接聞くか。 迷った時は直線が1番だったりする。
「紅葉紅葉」
不機嫌な紅葉を手招きし、人の目の少ない物陰に呼ぶ。 怪しくないよ〜お菓子あげるからおいで〜 怪しいじゃねぇか。
「……何?」
来てくれた紅葉はまだご機嫌ななめな様子。 これは褒めてくれなかったことよりも褒めてくれなくて不機嫌になってる自分に困惑してる……のか? 成長したなぁ……
そんな紅葉の麦わら帽子を取ってなでなでなりでりんこ。
「……何するの?」
「こうしたら機嫌戻らないかなって」
「……私がいつもこれで機嫌よくなると思わないで」
の割には抵抗しないし徐々にトロンとしてきてるし。 やっぱ単純じゃないか。
「…………(ゴロゴロ)」
ほら喉まで鳴らしちゃって。 ここがええのか?
「……はっ!」
突如、我に返った紅葉が俺の手から離れる。 これこれ麦わら帽子を盾に威嚇するんじゃありません。
「……セクハラで訴える」
「喜んでたくせに」
「……無理矢理やっても女の子が濡れると思ってるなんて同人誌の読みすぎ」
「そこまでは言ってないしそういう系はお前の方が好きじゃん」
お前がどんな本持ってるとか俺知ってるんだからな! 何故ならお前が見せびらかせてきたことあるから! お互い頭おかしい。
「……被告人は何故『女性を物陰に連れ込んで素肌に触れた』のか理由を述べよ」
「なんか裁判始まってるし罪状みたいに言うのやめろ」
内容が間違いじゃないだけに否定しにくいし。 控訴! 控訴!
「生憎と、俺の口は+が出にくくてな。 ならもういっそ行動で示しちゃえ! って」
「……被告人を強制安楽死の刑に処す」
「要するに死刑じゃねぇか」
あとなんで被害者が裁判長やってんだよ。 逆○裁判でも見ねぇぞこんなトンチキ。
「……それで、アレにはどんな意味があるの?」
「紅葉ちゃんめちゃカワ☆らぶり〜はーと」
「……気色悪い」
「流石に冗談だ」
こんなハズレエロゲーのタイトルみたいな意味は含まれていない。
そもそもなんの意味も含まれてないんだけどな。 お洒落されてもワカリマセーン。 似合ってはいるんじゃない? 知らんけど。
「……許して欲しい?」
「いやそもそも怒られるようなことをした覚えは「!」いやなんでもないです許してください食べないで」
紅葉の眼光に負けてしもうた。 この俺を怯ませるとはやりおるな。
「……条件付きで許してあげてもいい」
それ不平等条約の間違いじゃない? 執行猶予だと嬉しいな。
とか考えてたら紅葉が左側に回って腕を抱いてきた。 今から左肩を外すから隻腕で過ごせと? ゲームする時キツイな。 両手両足プレイができなくなるじゃないか。
「……今日1日彼氏役を全うできたら許す」
「なぜ彼氏を?」
「……ナンパ避け」
そう言って紅葉は左手薬指を見せてくる。 そういや指輪してましたね。 いい加減指を変えて欲しい。
「……あと、今後一生彼女ができない奏士にせめてもの慈悲」
「舐めとんのか小娘」
「……この思い出を噛み締めて生きるといい」
「さすがにそこまで渇望してないし落ちてもない」
俺どんだけ貪欲だと思ってんだよ。 むしろ要らないって何度も言ってるでしょうが。
「……奏士風に言うなら、これも漫画に活かすため」
「それを言われると弱い」
確かに、遊園地デートの記録は今後漫画を描く際に活かせるだろう。
でもそれは相手が泉ちゃんみたいにマトモな人だからであって、特殊な女である紅葉はなぁ……活かしたら漫画壊れそう。
「ちなみに断ったら」
「……セクハラで訴える」
「だからセクハラじゃねぇって」
なんだ? セクハラで訴えるならこっちもあるぞ! こちとら日常的に受けてるんだからな! この前なんか『思うように描けないから実物が欲しい』って言ってパンツ下ろそうとしてきたんだからな! これ俺勝てるよな。
「…………まぁいいだろう。 今だけ協力してやる」
「……よろしい」
紅葉は満足そうな顔をしてやがる。 いや麦わら帽子と体格差であんまし顔見えないけど。
「でも腕組むのは結構キツイんだけど。 腰が死んじゃう」
「…………」
俺がそう言うと紅葉も流石に考慮する余地があったらしく、腕から離れて手を握ってきた。 お手手が小さい紅葉ちゃん。
「……これならよし」
「本当に良しか?」
手を繋いでることはこの際いいとしよう。
問題は見た目なんだよな。
奏士くん→一張羅で多少はマシになってるが見た目は不審者
紅葉→身長といい風貌といい完全にロリ(一部分を除く)
これ、通報とかされない? 前に何度も職質された経験あるから怖いんだけど。 遊園地内だからセーフだよな? 最悪の場合は娘で通す。
「……行こ」
「へい」
紅葉に手を引かれて遊園地エリアを後にする。 さらばぐ○り森。 絶対後で行くからな。
どうか通報とかされませんようにと心の中で祈りながら、摩訶不思議なデート(仮)はスタートした。
あと学園の人とか知り合い居ないといいな。 もし見られたら月曜日が命日になりかねない。 もちろん俺の。
「…………♪」
はいどーも調子に乗って紅葉を発情させたら気がついた時には木陰で中田氏していた作者です。 こんなん完全にエロ小説じゃないか!
て訳で全面書き直しました。 それはそうと原本は別ファイルに保存しました。
そんな訳で色々変わって紅葉の発情が遅れることになりましたね。 ほらこんなこと言うから来週発情させないといけなくなった。 すいませんマジで来週こそやりますので。 何がとは言いませんが。
そんなこんなでデート会が半分更新になった訳ですが、こうして1話を長々とやると昔を思い出しますね。 負の遺産ともいいますが。
いや〜今すぐ書いたものを全部書き直したいっ! 1~100話くらいまで書き直したいです。 途中何言ってるのか分からない文章盛り沢山なので。
それではみなさん次回もお楽しみに。
来週は月~土まで仕事なのでワンチャン更新が再来週になるかもしれません。 お盆休み? そんなの存在しませんよ。




