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白猫と少女と女の子

「紅葉ちゃ〜ん♡ 次はこっち! こっちの方が似合うから!」


「否! クレハはこっちの方が似合いマス!」


「あ〜イイですねぇ。 会長もうちょっとこう、振り向く感じで」


「……私の意見が無い」


天音達は両手に数多の服を構えて更衣室の紅葉に押し寄せる。1人だけ服ではなくカメラを構えてるのがいるが、今の紅葉はそんな写真家ちさとに対応する程の余裕は無い。 天音達をどうにか捌くので精一杯だ。


「この服ならこっちのアクセも合わせるといいわよ」


「う〜ん……紅葉ちゃんには少し派手すぎじゃないかな〜」


「あ、あの……紅葉さん次はこちらを」


「泉ちゃんの次は私でーす! 千聖ちゃんも写真撮ってばかりいないで選ぼうよー」


「あ、私は自分のファッションセンスにそこまでの自信ないから記録係に専念します。 そういうオシャレは乙女達でどうにかしてくだちい」


「…………」


1つ着ればまた1つ、それも着たらそのまた1つ……と着せ替えの波は途切れず紅葉をコーディネート。 持ってくる服の系統に良くも悪くもその人らしい・・・・・・色が出ており、途中から紅葉のお洒落<紅葉を着せ替えにシフトしている。


だがしかし! コーディネートはこーでn


※ただいまゴミを検知しました。 少々お待ちください


紅葉も皆がこうする理由を分かっているから従ってはいるが、こうも連続すれば疲労も溜まるというもの。 開始からはや1時間。 正直、紅葉の中で

『続きは明日以降でも良くね?』

といった感情が湧き上がっていた。


「紅葉ちゃんはどう思う!?」


「……何が?」


天音わたしが選んだセクスィ〜なこっちのお洋服と!」


皐月あたしが選んだガーリーなこっちの洋服!」


「「紅葉ちゃんはどっちを着たい!?」」


「…………どっちも嫌」


紅葉は心からバッサリ切る。


天音の服は、TPOに真っ向から喧嘩を押し売りするくらい露出の多い服……服? 服と呼べる程の布面積があるのかすら怪しい布の塊だ。


皐月は露出こそマトモだが、異様にハートが多かったり全体的にピンクとパステルピンクとマゼンタが煩かったりと、外で着るには色んな意味で度胸のいる服だ。 これを着れるのは余程のぶりっ子か、羞恥が快感に変わるタイプのどちらかだ。


服としてはクリエイター目線で見れば興味があるが、紅葉の好みとは違う。


ついでに奏士の好みでもない。 いやついでというか本命というか。


元は来る日、もとい、土曜日のデートのために服を選んでいる。


なので、重要視されるのは『紅葉に似合うか否か』ではなく、『奏士が好むか否か』だ。 紅葉は大抵の服なら似合うと豪語しているのでそっち方面の心配はあまりしていない。


正確に言えば、『紅葉の好みと奏士の好みは大部分が一致している』からだが。 それもこれも顔合わせこそ最近だが、長年奏士の描く絵を見て、奏士と漫画を描いて、奏士の搔く升────のネタを調べた結果である。


なお、最後に関してはその事実があったかすら真偽不明とする。 奏士がメンタルブレイクで腹を切らないように。


「……こんなことに意味は無い」


「なーに言ってるんデスカ! 自分一人の意見じゃ気付かない部分をさらけ出すためにこうして手当り次第やってるんじゃないデスカ! 分かったらもう暫く着せ替え人形になりんしゃい!」


「……本音は?」


「クレハを着せ替えるの楽しすぎる」


そのベルの言葉に、紅葉を除いた全員が頷いた。


「…………」


紅葉はその数の暴力とも言える肯定に半呆れ半諦め半チャーハンライス抜きで返す。 どうやらもう暫く家には帰れなさそうだ。


ちなみに、ここはみんな大好きショッピングモールの新店。 紅葉や華の様に身長とスタイルのバランスが悪い、言い換えればロリ巨乳向けの服を多く取り扱う、珍しいニーズの店だ。 需要の矛先が少ない部類ではあるが、確実な需要で固定客が付くタイプの店だ。


なお、その経営戦略を読んだ紅葉は

パンの耳留めてるアレバッグ・クロージャーを作ってる会社みたい」と思ったそうな。


強いて言えば、そんな固定客候補の紅葉は基本的にオーダーメイドだったり一般店でサイズの大きい服を買っているので態々家から遠いこの店に来るのかどうかが問題。


脱線は以上


アイツの好みか……」


「ソージの好み……」


「先輩の好みですか……」


「「「……………」」」


皆は上を向いて少し考えた後、全員が泉を見る。


「え? えっ?」


急に視線を向けられた泉は服を片手に困惑している。 それでも以前の様に小動物化しない当たり、成長を感じられる。 奏士に負けず劣らずの弱メンタルの泉がここまで丈夫になるとは。


「ソージの好み……というか、世界で1番大好きなのはイズミデス」


「てことは、泉ちゃんの皮をはいで会長が着れば万事解決ですね」


「えっ」


「……急にスプラッタ」


自分が狙われていると分かってか、泉は持っていた服を落としてプルプル震えている。 半分冗談ではあるが、ベルたちの目が割と本気だったので信ぴょう性が増したのだろう。


……ん? 半分?


「まぁ冗談は置いておいて。 アイツの好きなものあげていきましょ」


「……猫(動物)」


「イズミ」


「えっと……お家?」


「美少女(二次元)」


「お料理ですかね」


「う〜ん……本かな〜?」


「今のを総括すると……」


「『料理本持った部屋着の泉ちゃんにネコミミ装着させる』が先輩の好みですね」


「……それはもう泉」


美味しいものをかけあわせたら全く別のものが出てきたような感覚だ。 今朝のもんじゃと吐瀉物で生ゴミが出来上がったみたいな。 もしくはシチューとライスを一緒に食べたみたいな。


いやシチューとライス最高に合うでしょうがぶち○しますよ?


シチューオンライスガチ勢の千聖ちゃんは即刻速やかにモノローグへの介入をおやめ下さい。


「やっぱりイズミの皮剥作戦が現実味を帯びて来マシタか……」


「え゛っ」


何故かガチの目で真剣に考えているベル。 このままでは色々と危ういと察知してか、泉は静かに紅葉の後ろに隠れる。


「…………」


紅葉は後輩がしれっと自分を盾にしたことに関して思うことがあるが、その分気を許してると判断して不問にした。


決して、小動物みたいにプルプル震える泉が可愛かったからとかそんな理由ではない。


「う〜ん、これはもう素直に聞いてみよう」


天音はそう言うと、モノローグでなきゃ見逃しそうなくらい恐ろしく早いフリックで奏士に送信。


『紅葉ちゃんは裸エプロンと

裸ワイシャツどっちが似合う

と思う?』


             『-脳神経内科-

              https://www.atamamite              morae.hospital』


奏士は頭の病院のURLを即レスした。


「…………まぁ、これはあくまで最終手段だから今はまだ使わないとして」


天音がスマホをそっと仕舞って切り替えたことに、この場の全員が同時に思った。


「何言われた?」と。 今日はやたら想いが1つになる日だ。


「紅葉ちゃんは何に────あれ居ない!」


「も、紅葉さんならさっき「……お会計してくる」と」


「そんなぁ!」


天音が泣き崩れていると噂をすればなんとやら、手に袋を持った紅葉が帰ってきた。


「…………」


紅葉は、店内で人目も気にせず床に膝を着いて泣いているかつての先輩の姿を見てドン引きしている。


が、それもよくあることだから直ぐに流して記憶から消した。


「クレハ、結局何を買ったんデスカ?」


「……まだ秘密」


「「「え〜」」」


どうやら紅葉は最初に見せる相手を選んでいるらしく、袋の中は頑なに見せようとしない。


だが、その見せる相手が毎日洗濯をしているので、上手く動かないと当日前にバレる可能性が大だ。


幸い、今日が木曜日だから明日1日奏士を昏倒でもさせておけば当日までバレることは無いだろう。 地の文ながらナイスアイデアだから1日と言わず永遠に昏倒させるのはどうだろうか。


「うう……紅葉ちゃんも大人になって……じゃあ次は勝負下着を買いに行こう!」


「……声が大きい」


普通に公衆の面前、しかも、大半が美人と美少女の集団だ。 タダでさえ目を集めるのに、その筆頭格である天音が恥ずかしげもなく下着だのなんだの言うものだから、すれ違う男性諸君がチラチラ見ている。


今更ながら、学園でも屈指の優等生であった天音の本性がこんなだと知って誰も幻滅しないのだろうか。 紅葉以外ほぼ初対面だと言うのに。


「……勝負下着なんか無くてもいい」


「甘いっ! 甘いよ紅葉ちゃん! ファーストキスの味くらい甘いよ!」


「……そんなこと言われても」


清き処女おとめである紅葉にそんなの分かるわけが無い。 お熱い人妻とは違うのだ。


「ファーストキス……何味だったかしら」


「う〜ん……どうなんだろ〜」


「私は覚えてないですけど、その後は甘かったのを覚えてます!」


どうやら彼氏持ちには分かるところがあるらしい。


「ファーストキスはレモン味ってあれ何が語源なんですかね」


「さ、さぁ?」


「キス=甘酸っぱいからとかなんとか?だと聞いたことがありマス」


そして彼氏どころかキスも未経験な側とは温度差がある模様。 甘さそっちのけでレモン味について議論している。


「勝負下着はね、ここぞっ! って時に身に付けると、自然と勇気が出るものなんだよ。 見せる見せないに関わらず、お初のおデートならお姉ちゃんはとても推奨します」


「…………」


天音の言うことにも一理あるので紅葉は反論が出ず、黙ってしまう。


それはそれとして、というかやはりこれはデートなのかと紅葉は少し悶々。 真ん中の口では否定しても、上の口は正直だ。 紅葉=二口女説やめなさいモノローグ担当25番。


そんなやり取りをしながら店を変えて下着専門店へ。 あれだけ騒いだにも関わらず御咎めなしだったのは、紅葉達が一種の集客になったからか。


「一口に勝負下着と言っても、勝負の内容に次第で大きく変わります」


謎のメガネと指示棒を構えた天音が先生風で言う。 指示棒の先に指し示す手が付いているが、この為だけに態々用意したのだろうか。


「細かいことは省くけど、初デートなら色や柄は大人しめ、形状は冒険することを私はオススメするよ。 紅葉ちゃんは普段どんなの履いてるの?」


流石のお姉ちゃんパワーとやらでも、現在の紅葉のアレコレは分からないらしい。


「……(キラキラワクワク)」


訂正しよう。 この自称姉、確実に知っている眼をしている。 紅葉の口から聞きたいがために分からないフリをしている。


その目的は不明だが、天音は半分愉快犯の性質があるからなんとも言えない。 相変わらず各方面にタチが悪い。


「……普通の「バサーっ!」…………」


紅葉が言おうとした途端、ベルが容赦なく制服のスカートをめくって確認する。 外からは見えない位置だったのが幸いか。


「ふむふむナルホドナルホド……」


「なんだった?」


「ふっつ〜のショーツデス。 とんでもなくドスケベorノーパンを期待したのに残念デス」


「……直接確認する必要は無い」


紅葉はベルの脳天にチョップをかます。 その衝撃はベルの身体を通り抜けて床にヒビを入れた。 ベルがカエルのようにならずに済んだと言うべきか、カエルのようになったと言うべきか。


「てか、ノーパンに関してはベル先輩の方ですよね」


「失敬な! 今日はたまたま履いてマス!」


「いや履いてる確率の方が低い時点でおかしいわよ」


皐月の至極真っ当な指摘に「ぐぬぬ」と拳を震わせて悔しそうな顔をするベル。 何が悔しいのか。


「ふむふむ……紅葉ちゃんは白と青系が多いし、柄も無地が大半。 今回はその路線で探してみよう」


紅葉本人の「不要」という意見はまたもや無視された。


「となるとやっぱり紐パンかな? いやでも動くし、ここはシンプルなショーツの方が……」


天音は顎に手を当て、今まで以上に真剣な顔で独り言を呟いている。


その圧に、紅葉も「紐パンなら持ってる」とは言えなかった。


「────よし! 大体の方針は決まったから、次は今のサイズを知ろうか」


そう言って天音はまたもやスマホに打ち込む。 相手は勿論、というより何故かという方が正しい奏士。


『今の紅葉ちゃんの

スリーサイズ知ってる?』


               『-脳神経外科-

                https://www.atama

               mitemorae.clinic』


奏士からはまたもや即レスで病院を勧められた。 今回は内科ではなく外科だ。


「奏士に聞いたら断られちゃった。 すいませーん、メジャー貸して貰えますかー?」


「いや、なんで本人じゃなくてアレに……」


「まぁ、会長に関しては本人より先輩の方が詳しい場合ありますしね」


なお、泉に関しては泉本人ですら知らないことを奏士は把握している。 ここまで来ると嫌悪感があまり湧かないのはラインを超えた証なのだろうか。


「借りてきたよー。 さぁさぁ紅葉ちゃん、お姉ちゃんとあっちの更衣室でつま先から頭のてっぺんまで詳しく測りましょうね〜♡」


「ゲヘヘ、ワタシもお手伝いしやすぜ旦那」


怪しい顔で紅葉に近付く自称姉と変態。 どこまで詳しく測ろうというのか。


「……自分で測る」


「自分でやって違うサイズを買っちゃったら大変でしょ! 大丈夫お姉ちゃん何も変なことはしないから安心して任せてよ〜♡」


「じゅるり……ワタシも変なことはまーったくしないから安心してクダサイ。 ただ、測る時にちょーっと際どいところに触れちゃうかもしれないけど誤差デス誤差」


「……色々危ない」


紅葉はこれから捧げる(かもしれない)純潔を守る為、天音からメジャーをひったくると素早くその場の人間を読み取り、遥一人を選んで更衣室に入り、カーテンを締める。


「あ〜ん! 紅葉ちゃんのいけず〜」


「クレハー? どうしてデスカ〜?」


まるでゾンビのように更衣室に押し寄せる2人。 そんな2人を、紅葉はカーテン越しにノッキングして大人しくさせた。 まさに神業だ。


「それじゃ〜測ろうか〜 どうやって測る〜?」


「……脱いだ方が数値は正確?」


「極力裸に近い方が正確かな〜 でも〜恥ずかしいなら服の上からでも測れるよ〜?」


その問いに、紅葉は少し考えたあと「どうせなら正確な方が」と服を脱ぐ。 と言っても、一応下着は残すが。


全裸になるとあの二人が何しでかすか分からないから。


「………… (キラーン☆)」


「…………(グシャッ)」


「私のレンズが!」


そしてカーテンの隙間から盗撮犯ちさとが狙っているから。 この写真をどうしようというのか。


「それじゃあ姿勢正して〜 まずはトップとアンダーから測るよ〜」


言われて背筋を伸ばす。 人にやってもらうなんて初めての経験で、紅葉は少しだけ緊張。


「そんな力入れたら測れないよ〜 リラーックスリラーックス〜」


遥の眠りを誘うようなふわふわした声と、柔らかいタッチに思わずゾクゾク。 メガネの天パ……伊予柑みたいな名前の人はよくもまぁこれを相手に平然としているものだと紅葉は少しだけ関心。


そして未だに名前を覚えられてない不知火には全人類が涙しなかった。 紅葉は未だに禍塚すら曖昧。


「次はウエスト測るよ〜 お腹引っ込めちゃダメだからね〜」


遥のメジャーが紅葉の白い腹を撫でる。 遥がメモリを合わせようと動かす度に「シュリシュリ」と擦れて少しムズムズ。


「わぁ〜紅葉ちゃん細くて羨ましいなぁ〜」


そういう遥も、一般基準でいえば十分細い部類に入る。


が、いつも隣にいるのがスレンダーなモデル体型こと皐月だからか、遥の基準はやや高めの様子。


「私は色々お肉がついてるから羨ましいな〜」


「…………」


「その分胸にも1番肉が付いているやろがい!」と紅葉は思ったが、あまりこの状況を長引かせたくないので黙ることにした。


その代わりに、紅葉は鏡に写る遥の胸と自分の胸を見比べる。


自画自賛兼事実だが、紅葉だって充分以上のサイズだ。 遥の様に体格に恵まれている訳でも、ベルのように日々のマッサージを重ねた訳でもない。


「何か知らないけど勝手に育った」という究極の天然物。


それでも、今となっては少しばかりサイズが気になるらしい。


これまでは作画資料程度にしか思っておらず、重い・肩こる・邪魔……とデメリットばかり見ていたが、ちょっと気になる相手(紅葉談)ができたとなれば話は別。 自分より大きくて積極的なのがすぐ近くに居て、それより大きい人と長年の付き合いがある。


恋する乙女のお悩みはとても繊細なのだ。


「お尻は〜……はーい測り終わったよ〜」


「……ほっ」


心配していたことは特に何も起こらず、紅葉は一安心で息を吐く。


紅葉の事前イメージでは、メジャーや手があんな所やこんな所に当たっちゃってそのまま声を抑えながらイケナイ雰囲気になっちゃうかも……とかえちちゲームよろしくなことがあったのだが、流石に現実でそれをやると各方面に怒られてしまうので起こらなくて本当に良かった。


というか、紅葉が友達でそういうこと考えちゃうタイプの女の子だったことにわたくし驚き。 モノローグが自我を持つな21番。 今更では?


「それじゃあこれから紅葉ちゃんに合う下着を────」


先の一件で学習した紅葉は着せ替え人形にされる前に天音の横を通り、直感で選んでレジへ持って行った。 その速度風の如し。


直感、と聞くと不安が残るが、そもそもの相手が奏士アレなのだ。 紅葉と同種のオタクだ。 白を選んでおけばハズレは無いし、紅葉は元から白を好んでいる。


何より、似合わないと思っても「似合う」と言わせるし、興味が無くても「似合う」と言わせる。 結論、何も問題は無い。 これは果たして問題無しと言えるのか?


「紅葉ちゃん早い〜!」


「ソーデス! それは買うとしてもやり直しを要求シマス!」


「てか、会長に合うサイズの下着がよく売ってましたね」


「このお店〜、数は少ないけど大きいサイズも売ってるし〜 取り寄せてくれるから直接見たい時は重宝してるんだ〜」


「チサトもここを利用するといいデス」


「いやぁ〜…………私は態々選ばなくてもそこら辺のお店で買えるサイズだしなぁ……」


「お前らと一緒にするな!」という想いを込めつつも表には出さない千聖の記者魂に思わず感服。


「えっと……華さんはいつもどこで……」


「私は基本オーダーメイドです! ブラとパンツどっちかに合わせるともう片方が合わないので!」


泉も『店を選ばなくてもいい同盟』に加盟した瞬間である。 ちなみに会長は皐月。


小百合は店を選ぶ選ばない以前に、小学生よろしくキャミソールで事足りるサイズ……サイズと呼べない値なので加盟は見送られた。 本人が然程気にしていない点もポイント。


「最後は〜お化粧! お化粧道具を買うよ!」


「……化粧?」


人生から除外されていた単語に思わず聞き返す。


紅葉は見ての通り化粧の必要が無いくらい素の出来が高いだけでなく、維持を意識せずともその最高の数値が保たれるぶっ壊れ特性持ちなので、本人の気質も合わさってこれまで化粧と呼べるようなものはしたことが無い。


強いて言えば式などで礼節として誰かにしてもらった経験はあるが、自分でした事は一切無い。


最近は奏士の言いつけで化粧水をつけたりしているが、口紅もファンデーションもマスカラも何も持っていない。


故に、化粧のやり方も全く知らないと言える。


「……化粧なんて必要無い」


「チッチッチッ……紅葉ちゃん、お化粧っていうのはより綺麗に見せるだけじゃなくて、女の子の限界値を引き上げてくれるものなんだよ。 素で90点だからって150点を目指さなくてどうするの!」


「……ちょっと何言ってるか分からない」


「例えるなら、DX版持ってるからってメモリアルとかCSM買わなくていいのかって話ですよね」


「……本当に何言ってるのか分からない」


千聖の発言にその場の全員がキョトン。 紅葉は残念ながら特撮には薄く、2次元を勉強している皐月も特撮には手を出していないので本当に伝わる人が皆無だった。


「くそうっ……ここに先輩がいれば!」


「それじゃ意味が無いわよ」


「どんなボケしても伝わるのに!」


「あ、そっち方面? じゃあ辞めなさいよ伝わらないから」


もはや奏士の事を都合のいい的か何かだと思っている節があるが、奏士側も大差無いのでどっちもどっちだ。


「とりあえず一通り必要なものは揃えようか。 えーと、紅葉ちゃんは初心者だから……」


天音はこれから車でも買うのかと見間違えそうなほどに品物を吟味している。 買うのは、あくまで初心者向けの手頃な化粧品である。 総額はお高めかもしれないが。


「紅葉ちゃんはどっちの色が似合うかな……」


またもや天音はテレフォンを選択。 ライフラインのルールガン無視である。


『どっちの色が合うと思う!?』


          『さっきから俺に聞いてるけど

            あんたら何しに行ったんだよ』


奏士の至極真っ当な即レスに天音はスマホの電源を切った。


「……紅葉ちゃんは何番が似合うと思う?」


天音はみなに意見を求めた。 最初からそうしろ案件だ。


「こっちじゃないですかね」


「いや〜紅葉ちゃん元から白いし、夏場の遊園地行くんですよね。 だとしたらこっちの方がいいんじゃないですか」


「ワタシは皐月派デス」


「私は千聖ちゃん派〜」


私は! 私は! と多数決でどんどん決まっていく。 紅葉は何も分からないので半分蚊帳の外だ。


「……帰りたい」


今日何度思ったか分からないその呟きは、その場の喧騒に掻き消された。


「……これでいいかな。 紅葉ちゃん! 次はお姉ちゃん家でお化粧の練習するよ! 手とり足とり教えてあげるね♡」


「…………」


今日中の帰宅が危うくなったことに、紅葉はどこか悟ったような目で答えるのであった。


────────────────────────────


「……あいつらおせぇな」


「なー(おいもっと揉め)」


「へいへい」


\どすこ〜い!/


「あ? 人妻から?」


『紅葉ちゃん初メイク記念! 色々やってみたからお裾分けするよ!』


「…………連投怖」


「な?(な?)」


「重政どうしよう。 信じて送り出したら紅葉と泉ちゃんがギャルになってる」


「…………(なんだそりゃ)」


そうだよな俺ですらなんだそりゃって思ってるもん。 あ、なんか久しぶりのモノローグな気がする。

はいどーも最近我が家でゴリラの真似を練習していたら隣人から

「昼間っから盛っててうるさい」

と怒られた作者です。 違いますドラミングしてただけなんです


では日付変わってしまったのでこの辺で。 次回もお楽しみに

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