年が変わると全てが変わった気がするけど結局いつも通り
新年 メリーバースデーハロウィン! カオスにも程がある。
という訳で年が明けた。 新年に何すんねん信念で漫画に専念すんねん。 デーン
という安いラップから始まった新時代。 新時代なんて信じないわつって。 やけに韻踏むけど、作者ラップにハマった? それにしてはチープなライムだけど。
でも登り続けるぜ壁をクライム
その前に倒すぜ序盤のスライム
武器を買うのは仲良しクライム
俺のプライムは年中無休 デーン
…………本当にハマってない? もうちょい腕磨いてから披露しろや。
えー 読者の皆様。 みっともない姿を見せた。 いやもう手遅れなレベルで見せてるってか全国公演してるしなんならロングラン公演してる。 露出の間違いでは?
そんなことより新年だ。 ここまで長過ぎる。
新年、1月1日。 つまり昨日は去年ってこと。 初手のボケで力使い果たしてスタミナ切れ起こしてんじゃん。
柳家では年が開けると何をするとか決まってる訳では無いが、親類縁者が集まってかっちゃん騒ぎが恒例だ。 いや違う間違えた『どんちゃん騒ぎ』だ。
親類縁者、と言えば聞こえはいいが、それも祖父の話。 俺にそんな縁は無い。 精々、いつものダメな大人3人が遊びに来て飲み明かし悠ちゃんの両親が挨拶に来る程度。
爺さんの時は凄かったぞ。 もう文字通り全国から挨拶に来てたから。 あれだぞ。 全国って日本じゃなくて世界って意味の全国だぞ。 あのジジイどんだけ縁結んでんだ。
しかしそれも去年までの話。 今年は一味違う。 何せ下宿人が3人も居る。 その上、泉ちゃんも来るらしい。 俺ちゃん朝から大忙し。
紅葉達学生の分のおせち、大人達酒飲み様に濃いめの味付けのおせち、雑煮や簡単な摘み。 そしてそれらに合う飲み物。 事前に仕込みを終わらせていなかったら快くお断りするところだ。
しかし、何だかんだであの大人達に助けられているのも事実。 意外か? 俺はそれが分からないほど自惚れてはいないぞ。
「……よしっ」
どうにか、皆が来る前にテーブルに全て並べ終えた。 新年早々やりきった感凄い。 じゃあ今年の気力は使い切ったから来世から本気出す。 来年以降をチャージに回すカス。
そろそろ来る時間だ。
今日は寝てないからちょい眠い。 最近徹夜がキツくて眠気もヤバい。 一周まわって生活リズムが正常になってる。
「おはようございます」
少しこっくりこっくり繰操りながら豪華客船を操縦してると莇が現れた。 それよりなぜ船のランクを上げた? 因みに名前はタイタニック号。 名前からして色々ダメそう。
「おはよーさん。 早く首洗ってこいよ」
「顔では? 言おうとしてることは何となく分かりますが」
「昨日は画面越しでイチャイチャしてたんだろ? 今日は我慢してやるから洗ってこい」
「今年も安全に過ごせるといいのですが」
そう言って莇は自分の席に座る。 来た時点で身支度が終わってるからね。
「~~~~おふぁよぉほひゃひふぁふふ」
ベルが大口の欠伸をしながら起きてきた。 眠そうにしてるが髪はとかしてあるし顔も洗ってある。 服も寝間着からラフな私服に変わっている。 何だこの無防備と準備万端の融合。
「ふぉ〜ひぃ〜 あけま○こに落とし種」
「いつまで寝ぼけてんだ?」
「……ふぁたひふふぁ〜 ふぉんひふぇ〜す」
さっきから眠そうに欠伸しながら言ってるから呂律が回ってない。 何となく言ってることは分かるが。
「あおばも〜 あけました〜」
「おい」
なんで莇には普通に挨拶してんねん。 というか目を開けろ。 前見て歩け。 だからあれ程夜更かしは程々にと言ったのに……
てかそういう意味では紅葉が1番危うい。 ただでさえ普段から起こしに行かないと起きないのに、昨日は普段より遅くまで起きていた。 これはまた朝から苦労しそうだ。 寝てる時の紅葉にはオートガードがあるから毎回命懸けだ。 だって正確に急所狙ってくるし。
「……ちょっと紅葉起こしてくる」
「ワタシも行きマース」
あ、ベル目覚めた。
「……そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
セリフからしてダメだろ。
「朝から無駄な犠牲出す訳にはいかん。 ここで待っておれ」
「イエス!マム!」
「誰がマムだ」
「まぁ実際やってることは世間一般の母親に近いですけどね」
それに関しては否定出来ない。
とは言いつつも、ここにいる3人全員が世間一般的な家庭とは程遠い環境で育っているがな。
そういや、ベルの母親の話って聞かない。 これは自分から言われるまで無視した方が良さそう。 今はそこまで興味無いし。
「紅葉ー」
部屋のドアをノックしてみる。 やはり返事は無い。
「紅葉ー 朝だぞー」
キツツキの如くノックしてみる。 返事は無いが殺気を放たれた。 安眠妨害の対応が酷すぎる。
そういや俺、この前大麻で稼いだ金でタイまで行ったんだけどさ。 それがバレてタイ王国の入国審査の時に蜂の巣にされた。 ホントもータイ王国の対応酷過ぎる。
※ これはあくまで思いつきのギャグです。 実際に起こったことではありません。 そしてタイを侮辱する意図はありません。
「入るぞー」
そっとベッドまで近付くとやはり紅葉はぐっすり。 モコモコパジャマとふかふか布団に包まれて幸せそうに寝ている。
「おい、朝だ」
「んーー」
揺らしながら声をかけるが唸るだけで返事は無い。
だがしかしこれは普段通り。 ここからが本当の勝負だ。
「起きんしゃい!」
勢いよく布団を剥ぎ取る。 定石だが、寒さに物凄く弱い紅葉には4倍弱点+急所+その他補正で65536ダメージだ。 じゃあ0だろ。
「…………」
暖かい布団が消えたからか、紅葉は即座に身体を丸くして防御体勢をとる。
しかし俺には全て既知。 毎朝起こす経験が未知を排除している。
「おーい。 起きないと飯抜きだぞ」
「……ん、んん……」
『飯』に反応したのか、紅葉の唸りが強くなる。 夢と現実の境に居るらしく、モゾモゾ動いている。
「んー……」
肩を掴んで揺らしてもまだ起きない。 なんかあと一歩って感じ。
「…ンー……ん」
紅葉は自分の安眠を妨害する手を掴んで頬をスリスリ。 寝惚けてますねこれほ。
「ん〜♪ …………すぅ……」
そのまま手を離さずに安眠。 俺の手を返せ。
しかし紅葉はさっきまでより安らかに眠ってる。 俺の手が即座に再生するに賭けて切り落とすのもワンチャン。
だが愛する右手とお別れしたくない。 ので、空いてる左手でスマホを操作してSEサイトを開く。 えーとあの音はどこかな……あ、あった。
スマホの音量を最大にして出来る限り離れた場所から再生ボタンを押す。
\ピシャーンッ!!/
「ふにゃぁぁぁぁっ!!?」
紅葉の嫌いな雷の音を大音量で流すと飛び起きた。 今猫になってなかった?
「……夢?」
「おう、おはようさん」
「……奏士?」
「遅いから起こしに来たぞ」
「……悪夢を見た」
「さいすか」
「……女体化した奏士とお風呂入ってたら生えてた夢」
「それは色々と悪夢だ」
主に俺が。 こいつ時々俺を女にしようとしてるけどそういうタイプの人? 俺が美少女になったら結婚の申し込みが殺到するぞ。 俺ってスペックだけは優秀だから。
「ほら、もう飯の時間だから早く顔洗って着替えてこい」
「……分かった」
そう言いながら紅葉は布団の中に潜り込む。 なんだコイツ天邪鬼か?
「おい出てこい。 お前寝る気だろ」
「……外界は寒い」
「住めば都だ安心しろ」
「……住む為には安全な家が必要」
「あー言えばこう言うの辞めなさい。 ほら出て来い」
紅葉を布団から引っ張り出す。 なんかズルっと抜けた。
「……仕方ない」
完全にベッドから出て覚悟が決まったらしい。 大体の眠気は立ち上がれば覚める理論だ。
「…………」
「……立ちながら寝てる?」
「……着替えるから出てって」
「あっ、はい」
部屋の外に出てドアを閉めて数分。 何時ものワンピースに着替えた紅葉が出てきた。
「……何してるの?」
「また寝かねないから待ってた」
「……そう言って着替えの音を聞きたかっただけ」
「お前の部屋は防音だから外からは聞こえないぞ」
唯一ドアだけは普通だから漏れるが、耳を当てても着替えの音は聞こえない。 そして俺に聞く気は無い。
って事を説明しようとしたら紅葉の腹も目覚めたらしい。 凄い音。
「……お腹減った」
「元気でよろしい。 顔洗って歯を磨いてこい」
「……ん」
紅葉を洗面所まで行かせ、居間に戻ろうとすると丁度チャイムが鳴った。
「開けろ! メト口イド市警だ!」
「所属が違うわよ悠ちゃん」
「おーい酒が重いから早く開けてくれー」
「はーいはいはい朝からうるせぇなこいつら……」
玄関を開けると大人達大集合。 朝から勢揃いでどうもどうも。
「おう奏士。 新年だ。 お年玉よこせ」
「新年初会話で年下に強請るな」
「え、何奏士くれんの? じゃあ俺も」
「誰がやるか。 早よ上がれ玄関先で鬱陶しい」
「はーい。 お邪魔しーます」
も助から酒のダンボールを1つ受け取って運ぶ。 こいつら3箱も持ってきやがった。 どんだけ飲む気だよ。
「おーっすしんあまー」
「新年の挨拶の略し方って『あけおめ』以外にあるんだ」
「おうお前達。 今年もよろしく頼むぞ」
「ヘーイユウ! コトコトー!」
「ベルフローラが何を言っているのか訳せ奏士」
「今年もよろしくをギャルっぽく言っただけだ」
「成程あれが今時のギャル語か……」
【悲報】常に時代に置いてけぼりな悠ちゃん。 ギャル語を知らない
「……瑠姫さん」
「あら紅葉ちゃん。 今年もよろしくね」
「……よろしくお願いします」
「なぁ奏士。 この酒どこに置けばいい?」
「今日飲むならこたつの近くに置いとけ」
「うーい」
一気に賑やかになった。 これで残りは泉ちゃんか……
「あ、悠ちゃん。 2人は何時頃来る?」
「母さん達は夕方に来るそうだ」
なら急ぐ必要は無いな。 もし今来ても大丈夫なように準備してあるけど。
「!」
「ソージが消えた!」
「……残像?」
気配を感じて玄関にワープ。 不可能を可能にする男とは俺の事。
そしてチャイムを鳴らす前に玄関を開ける。
「わわわっ」
急に開いたことに驚いてバランスを崩しかけた泉ちゃん。 そんな姿にも安定して萌える。 俺は今年も絶好調です。
「いらっしゃい泉ちゃん。 あけま」
「あ、えっと……おめでとうございます」
「上がりなよ。 そろそろ始めるから」
「お、お邪魔します」
最後の1ピースが揃った。 さぁ伝説の妖怪の封印を解放する時! 作者は未だに大辞典の封印解いてない。
「にゃ」
重政も現れた。 頭の上に乗るな重い。
「重政、新年明けましておめでとう」
「にゃ(あけま)」
「あ、あの奏士さん」
「ナンジャラホイ」
「重政にお年玉を持ってきたのですが……猫缶。 これはあげても大丈夫ですか?」
「どうだ重政」
「スンスン……にゃ(美少女からのプレゼントは受け取るのが男だ)」
「ど、どうですか?」
「あ〜 (意訳すると)食べたいってさ」
「にゃ(おい)」
「で、ではこちら」
「うい、確かに」
泉ちゃんから猫缶を受け取って重政の頭の上に置く。 俺のバランス感覚がヤバい。
「……戻ってきた」
「やーっぱりイズミデス」
「お、お邪魔します」
「いらっしゃいませ泉殿。 今年もよろしくお願いします」
「あ、はい。 よろしくお願いします」
泉ちゃんが深々と頭を下げる。 やーんフォームが素晴らしく綺麗。 つくしい! どこの美食四天王だ。
「キャー ♡ イズミが着物着てマス!」
「……綺麗」
「あ、ありがとうございます……お母さんが折角だからと張り切りまして」
「……メイクもしてる」
「ソージどーですかイズミは! 真っ赤で綺麗なおべべが素敵デス!」
「綺麗なおべべって魔王以外で聞いた事無ぇ」
まぁ確かにブラボーだが。 泉ちゃんの可愛さにドキがムネムネ。
「……珍しく奏士が平静」
「ソージ的に着物は範囲外デスカ?」
「いや、こうなる事を想定して既に心臓止めてあるから」
「うん、意☆味☆不☆明デス」
いやーそろそろ酸素の供給が不足して死にそうへへへ……へ────────ぴー
危ねぇ危ねぇ心電図が新年ずっと不動になるところだった。
「じゃあ早速はいコレ」
「あ、ありがとうございま────す?」
受け取った封筒を見て泉ちゃんがポカンとしてる。 お口小さいの可愛い。
「それはなんですか? 手付金か何かですか?」
「……援助交際費用」
「ソージ、資金洗浄はもっとちゃんとした方法でやらないとダメデスよ」
「綺麗な心の持ち主が1人も居なくてやんなるわ」
あとベルはマネロンを肯定するな。 お前のバックに製薬会社あるから余計暗く感じるんだよ。 違法な事してないだろういや既に黒に近いグレーなことしてたわ。 結局あの発情ドラッグはどうなったんだろう。
「もっと清い心で考えろ。 お年玉だどう見ても」
「お年玉……ああ、臨時収入ですか」
「そんな濁った言い方するな。 今後もよろしく的なアレだ」
「……つまり『お金あげるから今後も身体の付き合いを続けよう』ってこと?」
「紅葉は円光から離れろ」
「ハイハーイ! ワタシもお年玉欲しいデース!」
「あ、なら俺も俺もー」
「私も欲しーい」
「奏士、金寄越せ」
「最後のはただのカツアゲだろクソ従姉」
なぜ俺は年上の、それも立派に働いてる(1名除く)社会人から金をせびられてるんだ?
「……1つ宜しいですか?」
「どうした莇」
「お年玉、と言うとポチ袋か茶封筒が一般的ですが、奏士殿の使用した封筒はやけに大きくありませんか? 下の方が異様に膨らんでいますし」
「……本当です。 中に何か硬いものが入ってます」
泉ちゃんが耳を近づけて封筒を振る。 そんな事しなくても触れば分かるのにそうしない泉ちゃんも可愛いと思いました。 これはもう愛情超えて信仰の域だな。 しかも狂信。
「泉殿、折角ですし開けてみては?」
「え、いえ奏士さんの前ですし……」
「別に構わんぞ。 俺は気にしないし、そんな細かいマナーはクソ喰らえだ」
なんか『お年玉は貰ってから2日後に開けないといけない。 貰ったその日に開けると失礼』だとか『その人の前で開けるとマナー違反』だとかそういうのあるらしい。 我が家は俺が当主なので面倒なクソマナーは排除する。
「えっと……では失礼して……」
泉ちゃんが封を開けた中のものを取り出す。
「あ、あれお札……とは違う……これは────」
泉ちゃんが中のものを摘んで引き抜く。
出てきたのはピン札────ではなく、銀行の通帳。 名義は俺。
「あ、あの……奏士さん、これは……」
「お年玉」
「……口座に入れる斬新さ」
「乱心の間違いではないですか?」
「イズミイズミ! 幾ら入ってマスカ?」
「え、えーっと……一、十、百、千、万、十万、百万────」
目を通して認識する事に通帳を持つ泉ちゃんの手が震えた顔が青ざめていく。 泉ちゃんもしかして寒い?
「……泉?」
「黙り込んでドシマシター?」
紅葉とベルが覗き込む。 すると目を見開く2人。
「それで、結局幾ら入っていたのですか?」
「5、5000…………」
「5000円ですが。 奏士殿にしては低めですね」
莇の反応に泉ちゃんは首が取れそうなくらいブンブンと振る。 そんなに振ると髪が凄いことになるぞ。
「万、です……」
「万?」
「ご、5000万円入ってます」
「……なんて?」
「5000万円です」
「……申し訳ございません。 少々耳が遠くなった様で。 もう一度お願いできますか?」
「5000万円です」
「……お嬢様、お願いします」
「あ〜………コホン。 フィフティーンミリオンイェン、デス」
今凄いカタカナだったな。 貴方の母国語ですよね。
「なるほどなるほど……お嬢様、警察に通報を」
「了解デス!」
「待て。 何故そうなる」
あと主人を顎で使うな。 お前がやるべきだろ立場的に。
「奏士殿、正直に吐いてください。 一体どこから盗んだのですか」
「先ず真っ当な手段で手に入れた俺の金である可能性を除外するな」
「でも真っ当か違法かで聞かれたら何対何デスカ?」
「10:0で真っ当だろ」
「……奏士なら0:10が正解」
「貴様後で覚えておけ」
味方がいねぇ。 くそゥやはり貴様ら全員敵だ! 俺の味方は重政ただ1人(1匹)だ!
「まぁこれが真っ当なものだとして……奏士殿は馬鹿ですか?」
「どこがだ」
「……お年玉で5000万渡す所」
「あとそれが異次元だと気付かない所デス」
さっきから当たり強いなコイツら。 さては自分だけ貰えなくて嫉妬してるな?
「何も間違ってないぞ。お年玉の意味は要約すると『今年も無病息災でよろしく』だから、俺は泉ちゃんへの想いを込めただけだ」
「……胃もたれしそう」
「こんな重いの流石のワタシも受け止めきれないデス」
「これ重いで済むのですか?」
なぬ。 俺の想いはゴミカスだと? やはり億の方が良かったか……でも一度に大量の金移動すると色々面倒だし……
「こ、ここっ……こんな大金受け取れません!」
「大丈夫それくらいならまた稼げるから」
「……そういう問題じゃない」
「……あ、もしかして現金の方が良かった? 即金で3000万までなら渡せるけど」
「いや絶対現ナマか口座かの違いは関係無いデス!」
「お嬢様現ナマはやめましょう」
「ととっ、とりあえずお返しします!」
「えー」
折角この口座のカードと判子も同封したのに。 勿体ない。
あ、税金の問題? 大丈夫何とかするから。
「普通に常識的な額を渡せば済む話では?」
「今後の進学・就職・老後の分まで援助してあげようかと……泉ちゃん家、今は片働きで生活できてるけど、それでも柚希も泉ちゃんもまだ学生だから資金的問題は残るし、昔は世話になったから少しでも恩返し出来ればなって思って……」
「ならそれはそれで恩返しすればいいのでは?」
「面と向かってやるのはちょっと恥ずかしい」
「何今更初心がっているのですかこの無神経の権化は」
「シンプルに酷くない?」
莇、前々から思ってたけどお前口調は丁寧だけど言葉は悪いよね。 というかほぼ理想とも言える彼女出来て唯一の問題点『超年下好き』が薄まってきたから徐々に常識人枠のツッコミキャラになってきたよね。 お前キャラ変すると読者が困惑するやろがい。 ただでさえ作者の魔界みてぇな画力の問題でキャラ立ち絵も挿し絵も無いのにさぁ。
「仕方ない……では泉ちゃん、君にこっちを授けよう。 自由に額を書ける小切手と普通のポチ袋どっちがいい?」
「あの……普通の方で」
「……普通のがあるならそっちを先に出せばいい」
「というか、小切手って事は5000万円どころじゃない額渡そうとしてマス」
「奏士殿は一刻も早く『金の使い方講習』を8回は受けてください」
そんな宝くじで高額当選した人が貰う本みたいな講習あんの?
でも手元に1億円あるのに10円ガム1つ2つ買う事に躊躇する方が色々と問題じゃない? 金とカードは使う時に使わないと。 まぁカードはお守りじゃないけど金はお守りになるか……
「ほっ……ちゃんとしたお札だ……」
泉ちゃんが受け取ったポチ袋を確認して安心してる。 まぁそれでも万札入れてるけどね。 世間一般の平均額は知らん。
「ならこの通帳どうするか」
「あ、なら俺が判子と一緒に預かってやるよ」
「いやいや、私が預かろう。 も助に預けるより安心だ」
「いえ、私が預かるわ。 ねぇ奏士、口座の暗証番号は?」
「誰が渡すかクズ共」
人の金を毟ろうとする汚い大人に渡してなるものか。 これはいつか受け取ってくれる日まで保管しておくんだ。 恩返し云々は全てが嘘って訳じゃないし。
「ソージ! ワタシの分のお年玉は?」
「何故お前にやらなきゃいけない」
「あ、確かに夫婦の共同財産になるから渡す必要はアリマセンね」
もう否定するのも疲れた。 流そ。 袋田の滝くらい流そう。
「…………」
「服を引っ張らずに口で言え」
「……お年玉」
「小遣い生活のベルはまだしも立派に稼いでるお前にやる金は無い」
「……残念」
思ってたより紅葉が素直に引いた。 色々怖いんだけど。 いつものお前なら髪に着いたガム以上に粘るだろ。
「なぁ奏士。 腹減った」
「勝手に始めとけ」
「よっしゃ奏士からOK出た出た。 悠、何から飲む?」
「いいちこ水割り」
「渋いわね……私は〜 うーん宝から行こうかしら」
「あいよ! 大将! 麦のウォータブレイク!」
「お前が入れるんじゃねぇのかよ」
「とか言いつつも準備してくれるお前が好きだぜ」
「髭生えた野郎に惚れられても嬉しくねぇ」
そう言いながらしっかり準備する面倒見の良い俺が俺は大好きだ。 自分大好き。 超好き。
「それじゃあ新年を祝して……」
「「「かんぱーい!!」」」
「はいはいあそこは酒臭くなるから学生はこっち。 何飲む?」
「……コーラの赤」
「私は烏龍茶を」
「え、えっと……オレンジジュースをお願いします」
「はーいよ。 ベルは?」
「うーん……! マスター スクリューパイルドライバーを」
「お前の中でマスターはプロレスラーか何かなのか?」
お前にキメていいなら即座に可能だが。 あとスクリュードライバーな。
「じゃあアイブレイカー!」
「目潰し?」
アイスブレイカーとアイ・オープナーが混ざってない?
「エクスカリバー!」
「そんなカクテルは無いしあったとしても作り方を知らん」
「じゃあキス・ミー・クイック!」
「あ、そのカクテルはなんか腹立つから取扱してないわ」
「逆になんで!?」
それは色々ありまして。 主にとあるベストイキリストが原因。
「ネタ切れか? お子ちゃまは大人しくジュースで我慢しろ」
「くっ……己の知識の浅さが憎い……あ、スパークリングオレンジワインワイン抜きで」
「だからそれはフ○ンタでは?」
「お前米抜きチャーハン頼むタイプだろ」
※ 米抜きチャーハン→味の濃い卵とじ肉野菜炒め
あとオレンジワインはただのぶどうジュースの色違いだ。
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食事の後は自由時間。 まぁこれも毎回か。
学生側は早々に食事を終えて片付け。 紅葉が居るから料理は余らない。
莇はこれから薪姫とイチャイチャ、もとい新年の挨拶に行くそうで。 純粋に滅べばいいのに。
ガールズは仲良く新年遊び。 無駄に広い土地で凧揚げとかするんかね。 近くに木が多いからあまり凧揚げに向きそうにないが。 紐巻き独楽は無いけどベーゴマとベイブレ○ドならある。 スタジアムも揃ってるぜ。 遊ぶ相手? 勿論独りだ。
あーつっかれた。
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「……居た」
「んお?」
片付けを終えて酒飲み達の相手してたら紅葉が来た。
「……」
近付いて来たが、酒飲み空間に入る寸前でしかめっ面で留まる。
「……お酒臭い」
「そりゃこの部屋だけアルコール消毒液をスプリンクラーしてるからな」
「……ちょっと何言ってるのか分からない」
ユニークな返しだと思ったんだがな。 相変わらず紅葉は手厳しい。
「……慣れた」
紅葉の鋭い嗅覚にアルコールの刺激臭は天敵かと思ったが、予想以上に適応が早い。 人類最大の武器「適応力」を遺憾無く発揮してる。
「おう花伝! お前も飲むか?」
「ダメだ。 紅葉に酒を飲ませるな酔っ払い」
悠ちゃんから紅葉を遠ざける。 危ねぇ危ねぇ。
「なんでぇ花──花────紅茶? 花紅茶の彼氏面して。 正月くらい大丈夫だろ」
「まず名前が違うし正月でも紅葉に酒はダメだ」
紅葉の苗字に紅茶混ぜたら別のものになるだろうが。 いやまぁ元がそっちなんだけどさ。
「……子ども扱いしないで」
「子ども扱いはしてない。 お前が前に酒を飲んだ結果から言っている」
そう、あの海の夜。 間違えて飲んだ結果ゾ○ドも驚きの本能解放した紅葉に為す術なく蹂躙されたあの悪夢を。
「……あれは1種のバグ」
「バグは取り除かないと再び発生するぞ」
「……奏士は口煩い」
「なぁーにイチャイチャしてんのアンタら。 大丈夫よ。 女の子は少しお酒に酔ったくらいが可愛いんだから」
「そういう問題じゃないから言ってんだって」
というか、酔ってるとはいえ、仮にも学生に酒を進める教師達というのはどうなんだ? お前ら平常時はそれなりにマトモな大人だろ。 多分。
みかんでも食おう。 ザルに入れて天板の真ん中に置くと何となく旨味が増す感じがする。
「いいかよーく聞け。 紅葉はめちゃくちゃ酒が弱い。 ロシア人のハーフだってのに血もキャラもガン無視で酔う」
「……奏士のロシアへの偏見が凄い」
「しかも酔ってる間は本能のまま動く。 ただでさえ普段から正直なコイツが更に本当に従ったらどうなるかわかるだろ」
「……普段から自制してる」
「いーやしてないね。 そして人が綺麗に向いたみかん食ってんじゃねぇ」
「……私の前に置くからそういうものかと」
「ほーう随分と強い本能だ。 自制してなお無意識下で動くとはな。 この口か? よく動くこの手の口が悪いのか?」
「……私的に白い筋はもっと綺麗に取ってある方が好き」
「まだ言うか貴様」
もう毎回紅葉の頬を引っ張ってるから頬を引っ張られながらでも普通に喋れるようになってきやがった。 ここは適応しなくてよろしい。
「……! 奏士も飲んでる?」
少し顔を近づけただけでキャッチする紅葉の嗅覚。 お前ロシア人と象のハーフだったりする?
「付き合い程度に少しな」
言うて弱い酒を一杯二杯だけど。 紅葉の鼻の良さは凄まじい。
「む、流石に酔いが凄いな……奏士、水が切れた。 持ってきてくれ」
悠ちゃんが一気飲みしたほろ○い缶の縁をカジカジしながら言う。 それは食べ物じゃないが、もし鉄分を摂取してるだけの可能性にかけてスルーしよう。
「仕方ねぇな……他何か要るものは?」
「あー……なんかサッと行ける摘みが欲しい」
「私は冷たいもの〜 火照った身体を冷やしたぁ〜い」
そう言いながらシャツのボタンを開けるからスケベなも助がガン見してるぞ瑠姫さんや。 普段の半開きの目とは違う。 血走ったガン開きの眼だ。 キモイが気持ちは分からんでもない。 俺もゲームしてる時とかに乳揺れ発見するとめっちゃ見る。 健全にガン見する。
「じゃあ軽く素麺でも茹でるか……お前は?」
「……何素麺?」
「そうだな……梅と─────薄切り豚ロースとささみ、どっちがいい?」
「……豚ロース」
「じゃあ梅しゃぶ素麺にするか。 ちょっと待ってな」
膝に力を入れて立ち上がる。 おっとと……力が入らねぇや。
「……大丈夫?」
「問題無し。 じゃあ作るけど、紅葉は酒飲むなよ」
「……分かってる」
「その前に水をくれ〜」
「あの従姉かなり酔ってるな……はいよ。 お前はそろそろ飲むの辞めとけよな。 コタツ布団に吐いたら二度とお天道様を拝めなくしてやる」
「うい〜」
本当に大丈夫なんだろうな……本当にやばい時は瑠姫さんが止めるだろうけど。 あの人酔ってるけど酔ってないし。
────────────────────────────
「んっぐ、んっぐ、んっぐ…………ぷはぁっ! あ〜水飲むと楽になってきた気がする」
「っもう、悠ちゃんってば次から次へとお酒飲むからよ。 大して強くもないのに」
「理事長なんてやってるとな〜 色々とストレスが溜まるんだ〜 ウチの学園の学生は問題児も多いし、来賓はどいつもこいつも偉そうだし、その上身の丈以上の事を求めてくるし、も助はサボる」
「ちゃんと仕事はしてるぞぉ〜」
「私が覚えてる限りだが、お前がマトモに生徒会顧問をしていた回数を数えるのは片手で事足りるぞ」
「グビっ……それはアレよ。 生徒会役員全員が優秀過ぎて俺が居なくても仕事できると判断しての事よ」
「因みに、本来お前がやるべき仕事である先方との交渉やボランティアで使用する備品の手配等の書類を花伝が私に届けに来た回数は両足の指を足しても足らん」
「……………」
も助は気にせず酒を1口のみ、大きく息を吐く。 そして────
「頼むから減給は勘弁してくれ」
「土下座してまで頼むことか」
その場で見事な土下座。 ついでに誠意の証として悠の足を舐めようとして蹴り飛ばされた。
「頼む! 俺最近貯金&小遣い制で金が無いんだ!」
「知るかボケ!」
「来年から本気出すから頼む! 金くれ!」
「新年初日に言うことか!」
「知らない人が聞いたら完全にヒモのセリフよね」
「知ってる私が聞いてもクズのセリフだがな」
その間も、も助の頭は悠の小さい足がしっかり踏んでる。
「それより、気になる発言だな。 貯金と小遣いがどうとか」
「あ、あーっと……」
「どうした? なにかやましいことでもあるのか?」
「いや寧ろやましい事が無いというか情けない話というか」
「何よ勿体付けて。 正直に話しなさい」
友人2人に詰め寄られてお目目がマグロの如く泳ぐも助。 もし競泳眼自由形があれば今すぐ代表入りだ。
「……財布を握られた」
「は?」
「今俺ん家で預かってる親戚の子がさ、禁煙禁酒の次は『貯金しろーっ!』って家計簿付け始めてよ。 ついでに小遣い制になって常に金欠」
「何やっとるんだお前は」
呆れる2人。 確かに、も助は金があれば使うタイプなので貯金も微々たる量だ。 仮にもそれなりに高給な宿木学園の教師なのに。
「まぁ、確かにあんたにはそれくらいのブレーキ役が居た方が安泰よ」
「でも! この前は『何か買ったらレシート見せろ』って言ってきたんですよ! これじゃあこっそりタバコ吸えないし多めに酒も買えない! エロなんか以ての外だ!」
「そんなの、見せなきゃいいじゃない」
「……俺が隠し事してるとすぐ分かるような奴相手にですか?」
「こりゃ完全に尻に敷かれてるなぁ」
も助が机に突っ伏しておーいおいと泣き叫ぶ。
酒を制限されてて今日は良いのかと言われたらアレだが、その分別日に酒の量を減らすから問題無いらしい。も助は相変わらず年下に弱い。 本人がダメ男だからしっかりしてると余計に。
「理事長は相変わらず大変そうね〜」
「ええ。 でもそれなりに楽しくやれてますよ」
「あらあら、そういうの良いわね〜」
「瑠姫さんはどうなんですか? 編集業の方は。 今日だって数少ない休みじゃないですか」
「そりゃ勿論大変よぉ〜 作家は原稿出さないし、創作の世界だから誰も彼も拘り強いし、休みは少ないし……でも、なんだかんだ楽しいものよ」
「へ〜 俺も教師は大へ「お前「あんたはサボってるでしょ」だろ」えー」
大人達が愚痴と近況報告を肴に酒を酌み交わしている中、紅葉はというと
「…………」
話に付いていけず取り残されていた。
紅葉もプロの絵師として活躍しているが、働いている意識は無く、仕事として描くモノはあくまで「描きたいから描いてる」の延長と捉えている。
そして仕事の世界が違うが故に苦労の内容も違う。
紅葉は奏士がくれた蜜柑とジュースを飲みながらぽつんと残されていた。
「……ぷはぁっ! そういえば悠ちゃん。 どいつもこいつも手のかかる〜って言ってたけど、奏士はどうなのよ」
「奏士ぃ〜?」
「ほら〜 奏士って前と比べたら凄く丸くなったじゃない? 学園でのあの子はどうなのよ」
「どうもこうも……全然角まみれですよ。 未だに他人を受け入れないし目を離すと1人で何かしてるし……成績も授業態度も優秀だから文句言いにくいのがタチ悪い」
「あら手厳しい」
「……でも、最近はクラスの人とも話すようになりまして」
「そうなの?」
「えぇ。 無理矢理生徒会に入れて人と触れ合わせて見ましたが、それなりに。 私たち以外に、同世代の付き合いができたみたいです」
「そりゃ良い事だ」
「……そうねぇ」
妙にしんみりした空気に紅葉が少し困惑。 ついでに蜜柑も食べきって困惑。 自分で剥くのは面倒。
「ねぇ紅葉ちゃん」
「っ!……何ですか?」
紅葉は急に話しかけられて少しびっくり。 危うくジュースを零しかけた。
「学園での奏士ってどんな感じ? 同級生目線で聞きたいわ」
「……私はクラスが違うのでなんとも」
「だが合同授業は同じだろう。 選択授業でも幾つかは奏士と被ってるし」
「……なんでお前がそんなの知ってんの?」
「理事長権限だ」
「あっそう……理事長ってすげー」
も助が酒でアホになってきている。 いや元からアホだが。
「それで、どう?」
「……私は会う前の奏士を知らないので何も言えません」
「じゃあ質問を変えるわ。 奏士に出会いとか無いの?」
「……出会い?」
「具体的に言うとラブロマンス。 ストレートに言うとお・ん・な♡」
何故最後だけ色っぽく言ったのだろうか。 が、それを聞く人は居なかった。 奏士が居ないのが悔やまれるなんて屈辱。
「……彼女って意味ですか?」
「そう! それよ!」
瑠姫が興奮のあまり身を乗り出す。 普段のスーツとは違って今日は生地の緩い普段着だからか、作中最大サイズの霊峰がずっしりと揺れた。紅葉は光の速さで視認して元に戻った。 女でも大きいものは吸い寄せられる。
「ほら、奏士って好みの対象がアレでしょ? 現実で唯一好いてるのは泉ちゃんだけだし、あれはどっちかと言うと兄妹愛────というか、ペットを愛でる感じに近いし」
「…………」
物凄く好き勝手言われてるが、否定する箇所が1つも無いので紅葉は黙った。
「で、どうなの?」
「……今日の瑠姫さんは少し変」
「だって大事な弟の恋路だもの。 気になるわよ」
「…………」
「ああ気にするな花伝。 この人は私達の中で1番年上だからそういう位置付けにしてるだけだ」
「……」
紅葉は瑠姫と天音が重なって見えた。 誰彼構わず姉を名乗らないあたり瑠姫はマシだ。
しかしここで紅葉は止まる。 「居ない。 抑人に興味が無い」と言えばすぐ終わるが、何となく、それを言うのは負けた気がする。 何となく。
「…………」
どうするか、考えていたら喉が渇いてきて、近くにあったコップを取って飲む。 そろそろジュースが無くなる。
「あっ、それお酒────────」
──────────────────────────────
「……むっ」
作り終わった摘みを持って出てきたら凄く嫌な予感。 このまま近付いて良いものか……
よーし、近付いて確かめよう。 脳死プレイにも程がある。
「おーい。 でけたぞー」
「おーさんくす」
も助にお盆ごと渡す。 あー暑かった。 冬場は寒さで温度が分かりにくいから辛いぜ。
「どないした」
「いや〜」
「それが……」
悠ちゃんも瑠姫さんも歯切れが悪い。 なんだなんだ? ゲロったか? 文字通り。
「……紅葉?」
無言で庭を眺めていた紅葉がゆっくりと振り返る。 あれ、なんかデジャブ。
「…………」
ふむふむ。 なるほどなるほど。
・顔が赤い〇
・ポーっとしてる〇
・悪寒〇
・フラッシュバック◎
逃げよう。
「消えた!」
「…………」
「花伝も消えたぞ!」
「ぐぉぉぉぉっ!」
「あ、戻ってきた」
逃げた瞬間捕獲された。 こんな所で無駄な身体能力を活用しやがって……
「ん〜〜♪」
あの日の夜の様に本能解放ワイルドブラストした紅葉。 猫宜しく首にスリスリしてくる。
「誰だ紅葉に酒飲ませたバカは」
「花伝が間違えて飲んだ。 無実だ」
本当か……? 流石の紅葉も確認くらいは────いやこいつ確認しないわ。
「スンスン……スンスン……」
「あら、本当に猫みたいになるのね。 良かったわね〜今だけモテモテよ」
「全く嬉しくない」
「……? ペロペロ……」
「奏士、頬を舐められているが抵抗する気は無いのか?」
「抵抗して無駄に疲れるよりは好きにやらせて飽きさせる方が楽」
「そう言って、本当は嬉しいんじゃないのか?」
「いや普通に重いし邪m「ガブッ!」痛い」
肩を噛まれた。 重いって言ったのがダメだったのか?それでも痛いと言えば甘噛みに変える慈悲は残ってるらしい。
「……んだコラ」
3人がこっち見てニヤニヤしてる。 なんだ? 顔がキモイぞ。 も助は普段通りキモイ。
「いんやー?」
「奏士も変わったなーと思ってな」
「少なくとも拒絶しないくらいには気を許してるのね」
3人とも見当違いも甚だしい。 俺がそう簡単に気を許す訳ないし、ましてや変わることも無い。 これは普通に本気で逃げて簡単に捕獲されただけだ。 あれなんか目から涙が……雨漏りか?
「それにしても羨ましいわね。 ねぇ紅葉ちゃん。 こっちこっち」
「……? ……」
あ、紅葉が離れた。 今のうちに逃げ────ダメだ「逃げたら次は無い」ってオーラ放ってる。
かのユリウス・カエサルはルビコン川を渡る時こう言った。
「賽のポイ捨て厳禁」
と。 獲物として見られた時点で逃げられないんだなぁ。 そうじ
「ギューッ♡」
瑠姫さんは紅葉を抱き締めた。 紅葉窒息しない? それ窒息しない?
あとも助ガン見やめろ。
────────────────────────────
「────はっ!」
「どうした天音よ」
「なんか……なんかよく分からないけどお姉ちゃんの座を奪われた気がする!」
「??? 何を言っとるのだお主は」
「それはそうと賢星くん、はいあ〜ん♡」
「ワシはやらんぞ」
「え〜 昨日はあんなにも激しく食べてくれたのに……」
────────────────────────────
「────むっ」
「どうした奏士。 いつも以上に顔がキモイぞ」
「うるせぇ黙れ」
なんだ? なんだ今の感覚は。 何となくだけど今すぐにあのウブゴリラぶちのめさないと行けない気がする。 巌砕きしないと。 威力40の格闘技? 誰もポケモソの話はしてねぇ。
「はぁ〜 癒されるわぁ〜」
「…………♪」
瑠姫さんは紅葉にバックハグ。 紅葉は紅葉で色々と柔らかいのが心地いいのかリラックスしている。
「若い子って良いわ〜 暖かいし、お肌スベスベだし。 なんかこう、触れ合うだけで活力漲るわ」
「……つまり自分はもう若「何か言ったかしら奏士」ゲヘヘ何でもないでヤンス」
危ねぇ危ねぇ。 瑠姫さんはまだアラサーだった。
……あれ、アラサーだよね? 俺正確な年齢知らねぇんだけど。 なんなら悠ちゃんが何歳年上なのかも知らん。 うっ頭が……
「悠ちゃんも抱いてみる?」
「私もですか?」
「…………」
瑠姫さんから離れた紅葉は悠ちゃんの元へ近付き、ハグの体勢で待ち構える悠ちゃんの胸────
「……♪」
をスルーして悠ちゃんを膝に乗せて頭を撫で始めた。
「あらあら、悠ちゃんは逆に抱かれる側だったのね」
「まぁ体格差的にそうだろうな」
「あと悠の胸に飛び込んでもただ硬いだけだしな」
「貴様ぶち殺されたいのか」
も助は順調に人の地雷原でコサックダンスしております。 もう教師辞めて地雷処理班になれよ。
「……♪」
「ねぇ悠ちゃん。 どう? 抱かれた感想は」
「物凄く屈辱です」
の割には頭ナデナデを受け入れている悠ちゃん。 もしかして屈辱に快感を得るタイプ? 悠ちゃんはSだと思ってたけど、Sの外殻に守らせた柔らかい中身はMだったのか! じゃあこれからも嫌がらせしよ。
「…………」
「どうしたも助。 さっきからじっと見て」
も助は酒を飲みながら紅葉達ガールズ────いやレディースの方を無言で見ている。 また瑠姫さんの乳をガン見してるのかと思ったが、違う様子。
「いや……何、ちょっと思ってな」
「何を?」
「さっきから2人が『抱かれた』だの『抱いた感想』だの言ってるからエロい事したのかなって思ってな」
「なるほど。 聞いて損した」
カーペットの毛玉合体させてデカくしてた方が有意義な時間だった。 ちなみに俺の最高記録は13kmや。
「…………ん」
紅葉が戻ってきた。
そして人に胡座かかせてスペース作るとそこにすっぽり収まった。 俺は椅子でした?
「ん〜〜♪」
「やっぱりそっちがお気に入りみたいね」
「こりゃ勝てん」
「なぁ奏士、俺だけ無視されたんだがどういう事だ?」
「普通にアウトだからじゃね?」
どっちにしろお前年下に興味無いんだから良いだろ。
「?」
そんな事お構い無しに紅葉にゃんこは自由気まま。 そろそろ歯型残りそう。
「あーっ! 戻ってこないと思ったら何してるんデスカー!」
うわ面倒なのが来た。 今回はもう出てこないと思ったのに。
「みんなで遊ぶためにソージを呼びに行ったハズのクレハが何してるんデスカ! マミーハンターがマミーになってどうする!」
マミーハンターがマミーってややこしっ! それミイラのこと言ってんのか文字通り古代遺跡の謎で種付けされてママになったのかどっちだ。 後者が出る時点で色々アウトだろ。
「しかもベタベタして……いくらクレハでもシージを独り占めする事は許されないデスヨ! ベルちゃん憲法にそう書かれてマス!」
「何その頭の悪い憲法」
「わ、わぁ……紅葉さん大胆……」
泉ちゃんまで! 今は誤解生むから来ないで欲しかった!
「まったく……で、クレハにどれだけの量の媚薬飲ませたんデスカ?」
「お前じゃないんだからそんなことするか。 酒飲んで酔ってんだよコイツ」
「またまた〜 お酒飲んだ程度でそんなになる訳無いデスよ〜 ワタシを馬鹿だと思って騙しても無駄デス!」
いや確かにお前を馬鹿だとは思ってるけど騙してはない。 馬鹿だと思ってるけど。
「……え、本当デスカ? 言い換えるとマジデスカ? Really?」
無言だったのが信憑性を帯びたのか、ベルはあっさり信じた。 実際本当のことしか言ってない。
「え〜 クレハってお酒に弱いタイプだったんデスカ……」
「……? ……♪」
「あ、あんなにくっついて……」
泉ちゃんは顔を真っ赤にしながら目を手で隠してるが、指の隙間からガッツリ見てる。 こんのドスケべ!
「ク〜レハ! はい、こーっちおいで〜 カモーンヌ」
「………… ぷい」
紅葉は一瞬ベルを見て顔を背けた。 日頃の行いだな。 セクハラするからだ。
「くっ! こうなったらワタシも!」
ベルはそう叫ぶと近くにあった酒を開けると一気飲み。 お前大丈夫か? 頭とか。
「…………くっ! この程度の酒で酔えるか!」
いやお前が一気飲みしたの度数70越えのウォッカ……しかもストレートなんだけど。 なんやコイツ怖ァ……なんで平然としてんの?
あ、普段から泥酔してるみたいなもんか。 思考回路が機能してないし言動とか支離滅裂だし。 だからこれ以上酔わないのね納得。
「ソージ〜 ワタシ〜 酔っちゃったみたいデ〜ス♡」
「お前今自分で『酔えるか!』とか言ってただろ」
「それは空耳か難聴のどっちかデス」
「なるほど確かに泥酔してるな。 発言が意味不明だ」
どっちにしろお前ハキハキ喋れてるよね。 アルコール回ってても酔ってはないよね。
「べ、ベルさん大丈夫何ですか? 凄く強いお酒でしたけど……」
「ああ、あの程度ならイギリスにいた時に何度か飲んでるから平気デス」
イギリスの飲酒年齢って確か────いや大丈夫か。 食事を伴えば16歳から行けるらしいし。 この作品の登場人物は全員年齢不詳だし。
「あ〜んソージ介抱してクダサーイ」
「誰がするか。 お前さっき明確な意識で酔ってないこと自白しただろ」
「それはそれこれはこれ」
「酔ってる奴よりタチが悪すぎる」
その酔ってる奴こと紅葉さんは自分を無視してベルの相手をしてるからか不機嫌そうに肩を噛んでくる。 俺の肉は硬いから美味しくないぞ。 脂肪多めで筋肉も少ないベルとか瑠姫さんを食べなさい。
「いいぞー! もっとやれやれー!」
「酒の肴に丁度いいな。 おい泉、お前も行け」
「えぇぇぇっ!? 無理無理無理無理なんで私も!」
「お前が行かないとバランス悪いだろうが。 ほら行け」
「待ってお姉ちゃん押さないで! きゃっ!」
「ぐおっ!」
一気に3人分の重さが……あ、待って誰だ今俺の股間に手を添えようとしたの。 ベル一択じゃん。
「ソージ〜 初詣行ってファーストキスして姫始めシマショ〜」
「誰がするかボケ! 邪魔だから退け!」
「失礼な! ワタシは適正体重デス!」
「話通じねぇなんだコイツ」
「……ガヴッ!」
また紅葉に噛まれた。 お前はいい加減に酔いから覚めろ。 も助達がスマホ構えて録画してんぞ。 これ素面で見返したら死にたくなるやーつ。
こうして、予想通り1年の始まりも騒がしく終わった。
なお、この後紅葉は数日目を合わせようとしなかった。 これに関しては俺悪くない。
はいどーも夏バテで一日一食が続いた結果逆に2食以上食べると身体が受け付けなくなった作者です。 本当に夏バテって辛いですね。
仕事のやる気出ませんし動くのも面倒ですし食欲減る分睡眠欲とかが増えますし。 私最近半日近く寝てます。
なんで冬の話書いてる後書きで夏の話してるんですかね。
それはそうとお正月です。 私はお年玉あげなきゃいけない立場なのでそこまで好きではありません。 日々を苦労して生きてる大人こそお年玉貰う側じゃないでしょうか。
そして正月遊び、というものがありますが、今はもうすっかりやらなくなりましたね。 昔はかるたや凧揚げをしていましたが、凧揚げしていた空き地は駐車場になりましたし。
今年の新年会で親戚とかるたやろうと取り出したら「それ何?」って言われました。 今時の子どもは知らないってマジですか? もう小学校の授業で昔遊びとかやらないんでしょうか。
本編行きます。
今回なんか長くなりましたね。 久しぶりに約2万文字です。 最近は短めでしたので久しぶりな気がします。
その原因の大半が奏士の暴走と大人たちの愚痴なのはあれです。 三平方の定理みたいなものです。 解説は私にも無理です。
それでは長くなりそうなのでこの辺で。 来週はコミケがありますね。 勇者の諸君は励たまえ。 私は魔王か何か?