白猫とプール掃除と強い犬
更衣室で着替えてプールサイドに出ると辺り一面にメスメスフレイム。 プールサイドが熱いのは覚悟してるけどサンダル貫通するの辞めてくんないかなマジで。 足の裏が熱で串刺しだよ。
「……暑い」
同じく水着に着替えた紅葉も、この熱さと暑さにお手上げ状態。 少しでも避けるために日陰から出ようとしない。
「いや〜……『夏が来た!』って感じデス」
何故か居るベルはこの暑さを楽しんでる様子。 犬は夏冬問わず庭駆け回り、猫は日陰で丸くなる。 紅葉は散歩と通学以外で基本外出ないんだから少しくらい日に当たって光合成した方がいいと思う。 俺より外出ないぞコイツ。
「一応聞いてやる。 何故居る?」
「おっと野暮なことは聞きなさんな!」
野暮もクソも無ぇだろが帰れよ。
「プール掃除をすると言う噂を虫の知らせで知りマシタ」
「それ使い方合ってるか?」
虫の知らせの意味って悪いことの予感なんだけど。 ベル的に良くないことが起きるのか俺に災難が降りかかるのか。 多分何故か突進してきたサイとかに激突される。降りかかる災難は犀なん? これが言いたいだけだろ。
「て訳でお手伝いに! あわよくば私のスク水姿でソージを悩殺」
「おい紅葉、コイツどうする? どこに埋めればバレない?」
「ヤバいワタシを亡き者にした後処理の相談始めてる!」
うるさいベルうるさい。 プール掃除の前に疲れさせんな。 これから嫌ってほど疲れるんだから。
「……やりたいなら好きにしたらいい」
「どっちを?」
ベルを掃除する方? それともベルが掃除する方? 前者希望。
「…………」
紅葉は呆れ顔で見ている。 いや分かるよ? 流石にベルを掃除する方を許可するわけないよね。 うん分かってる。 分かってるからそっちは後で俺一人の時にやる。
「クレハから許可も出た! て事でワタシも掃除手伝いマス!」
「…………」
くっ、紅葉め余計な事を。 人手が増えることは喜ばしいことだけどそれ以上の厄介事が増えた気がするってか確実に増えた。 ベビーシッターに加えてベルの相手もしなきゃならんのか……
あ、でも紅葉って仕事はできるか。 普段が赤ちゃんレベルの要介護者でもそこの心配は要らんかった。
「所デ、ワタシ上に着るものを持ってきてないから何か貸してほしい!」
なぜこの女はいちいち胸張って言うのだろうか。 乳アピール? アピールしなくても素で何もかも主張強いから要らんやろ。
「だってさ紅葉。 そのパーカー貸してやれ」
「……奏士が貸せばいい」
「俺今着てるこれしか無いから無理。 お前パーカーの下にTシャツ着てんじゃん」
普通に3枚重ねで暑そうだし、1枚くらいベルに貸してもいいだろう。 てか暑苦しいから脱げ。
「あ、出来ればソージのパーカー希望! ほら、クレハとワタシは体格とかおっぱいの大きさとか違いマス。 ちなみにワタシの方が約10センチ大きい」
「その情報要らねぇだろ」
「……何で私巻き込まれたの?」
安心しろ90超えてる時点で紅葉お前も充分デカイ。 ベルは外人100%だから血の濃さで負けたんだろ。 お前50%やし。
てか、冷静に考えるとこの3人の中で1番バスト小さいの俺かぁ……いや男でバストサイズってのもなんかアレだけど。 言うて俺も鍛えてる分そこそこあるんだけどね。 細マッチョにしてるからそこまで厚みは無い。
あれやこれやという内に羅生門のベルに服を剥ぎ取られて上裸にされてしまった。 下は海パンだから実質全裸。 暑さで脳とろけてない? 脳みそトロトロにしてアヘアヘしてそう。
「どーデスカソージ! ソージのだ〜いちゅきなパーカーonスク水デス!」
「俺Tシャツ派」
勿論パーカーも嫌いじゃないが、ベルに対して肯定は死を意味するからしないことにしてる。 Tシャツ派も嘘でない。
「くっ……流石クレハ。 ソージの好みをこれでもかと理解している」
「……別にそんな意図は無い」
未だ日陰から出てこない白Tonスク水な紅葉さん。 そろそろ出てこい掃除始めるぞ。
「ではソージ! 具体的に何をするのかワタシ知らない!」
「俺も知らね」
「なぬっ」
紅葉から「プール掃除する」としか聞かされてない。
そしてその紅葉は日陰で涼んでる。 コイツ厨房で素麺茹でさせたろか。
※ 夏場の麺茹では死ねる
「……私達は普段授業で使う場所の掃除。 機械設備とか検査は学園側で専門業者を手配するからしなくていい」
「はいソージ今のを一文で」
「炎天下の中ブラシで激熱プールサイドをゴシゴシ」
「なんというインフェルノ!」
ちなみに水抜きは既にされてるから割とマジで汚れ落とすだけ。
なお、学園プールはそれなりのサイズであると仮定します。
つまりこれから導き出される答えは『たった3人で終わる訳ないだろ』
普通に考えて10人単位でやる事だ。 始まる前から絶望。
「……私は水撒きするから奏士はゴミ取り、ベルはブラシをやって」
「采配下手だなこの軍師」
「1人だけ楽しようとしてる!」
力の強い紅葉がブラシ、虫嫌いな俺が水撒き、比較的平気なベルがゴミ取りの方がいいと思います。 なぜなら水抜きの関係でヤゴやら軍曹やらが水槽の底でぴょんぴょんしてるから。 心ぴょんぴょんできねぇよ。
「おら日陰から出てこい。 お前だけ涼しい顔させねぇぞ」
「そーデス! クレハも汗ダラダラになるといいデス!」
「……悪魔が底に落とそうとしてくる」
紅葉は歯医者を嫌がるガキの様に柱にしがみついて離れない。 なんだこいつ服に着いたガムかよ。 もっといい例えあっただろ。 ガムなら凍らせたら固まって取りやすくならないかな……
「ベル、そこの蛇口にこのホースつけて、栓を開けるんだ。 俺は紅葉を狙う」
「ガッテン承知!」
ベルは敬礼すると小走りで水道へ向かう。 プールサイドを走ると危ないけどベルが怪我するなら別にいいか。
「……奏士には人の心が無い」
「俺に無かったらお前を冷蔵庫にぶち込んでる所だ」
ホースの角度と出口の調整、良し。 紅葉は日陰から出ないなら確実に当たるし、日陰から出たら目的は達成。 どっちも御の字な状態だ。
「水門、開けマス!」
「OK!」
ベルが蛇口を捻る音が聞こえ、ホースに水が入ってくる振動が伝わってくる。
が、いつまで待っても水が出てこない。
「おいベル、ちゃんとホース繋げたか?」
「繋げてマース。 あれー?」
ベルは更に蛇口を捻って開けるが、それでも水は出てこない。 でも蛇口から水が出る音はしてるんだよな。
「なんか詰まってんのか?」
ホースの出口を覗いてみる。 使わないホースとかって時々詰まりがあったりするし。
「え〜? あ、ホース踏んでるからか」
その声の後、勢いよく吹き出る水。 俺の顔面に直撃。 水圧にやられる眼球。
「…………水圧強くない?」
理科室かよってくらい水が出た。 俺今左目見えないんだけどちゃんと目ある?
媚薬盛られた処女かってくらいビショビショ。 今日の天気良くて助かった。 流石にこの暑さなら髪乾くだろ。
「(プススーッ)」
「ゲラゲラゲラゲラw」
紅葉とベルは水滴を垂らす俺を見て大笑い。 なんだコイツら同じ目に合わせてやろうか。
「わぷっ」
「ぶっ!」
有言実行の奏士君は即実行。 ホースの出口を狭めて紅葉とベルの顔に噴射。
「「…………」」
ぽたぽたと雫を垂らす2人。 スッキリした俺。 何故か俯いたままブラシを握る2人。
「なんだ? それで殴る気か? すぐ暴力に訴えるのは良くないことだぞ」
ホースを置いてジリジリと後退するが、前からは紅葉が、横はベルが、後ろはヤゴと軍曹だらけの水槽が待っている。
「「天誅ーっ!」」
「や、やってみろやぁぁぁぁっ!!」
────────────────────────────
「「「はぁっ、はぁっ、はぁっ………」」」
気が付けば全身汗だくズブ濡れで横たわっていた。 あの後どうなったかは皆さんお察しの通り。
「おい、どうすんだよ…………掃除微塵もやってねぇぞ」
「…………掃除が奏士をサボって遊んだのが悪い」
「逆だ逆」
「……ていうか、今何時デスカ?」
プールの時計は14:30を示している。 3時間近く暴れてたってのか。
「(キュー)」
「(グゥゥゥ~)」
「……今可愛くない腹の音出したのどっち?」
「ベル」
「クレハ」
同時に擦り付ける2人。 いや片方は嘘つきか。 どっちでもいいから折衷案で二人共にしよう。
「そういや昼飯食ってなかったか……」
「……お腹減った」
「ワタシも〜」
どうにか起き上がって腹を擦る2人。 俺も昼飯のこと考えたら腹減ってきた。 何だこの小学生みたいなやり取り。 遊び疲れて飯を思い出すとか。
「どうする? 掃除終わらせるか、先に飯食うか」
「……ご飯」
「お腹ペコペコでお腹と背中がくっつきそうで反発しマース」
「磁石かよ」
あれ同極同士でやってみると弱いやつでも意外と反発力強いよね。そんで反発力で吹っ飛んだのが顔に当たる。 アレクソ痛かった。
「じゃあそうするか……っても、ベルはどうすんだ? 俺と紅葉の分しか持ってきてないぞ」
それでも5、6人前あるからそれなりの量だけど。 主に紅葉が食うからね。 色々育ち盛りな紅葉さんが。 そろそろiになるとかどうとか。
「それなら心配ドムコン! ちゃーんと持ってきてマス!」
水着といい弁当といい、色々と準備がいいこって。
「じゃあ更衣室から昼飯持ってくるから、紅葉は飯食えるスペース作って待ってろ」
「……(コクリ)」
「デハ行ってきます!」
ベルとその場を後にする。 最近暑いから弁当を保存するのに色々手間がかかる。 保冷剤も夏用の強い奴使わないと途中で溶け切るし。
「ソージソージ」
「あ?」
プールサイドから離れて更衣室前まで来るとベルが話しかけてきた。
次にお前は「2人っきりデスね♡」と言う! ジョセフごっこしてる暇あるなら回避しろ。 ムラっけガチャしても小さくなっても必中だから無理です。 今はムラっけガチャで回避率上がんねぇけど。
「2人っきり、デスね♡」
うわヤダ正解。 これほどまでに当たって嬉しくないのは牡蠣くらいだろ。 それは意味違うだろ。
「さぁ! クレハが見てない今こそワタシにあーんなことやこーんなことするチャンス! カモン!」
ベルは目を輝かせて両手を広げて受け入れ態勢。 凄く鬱陶しい。
「そんな事より女子更衣室はあっちだぞ」
「ちっ、徐々に受け流しが上手くなってきやがりマス」
ベルはそれで満足したのか思ってたよりあっさり引いた。 最近はヒットアンドアウェイが多い。 何が狙いだ?
それはそうと俺も昼飯セットを持ってプールサイドに戻る。 紅葉が普段食堂で食う分も纏めて入ってるから少し重い。 これ紅葉に持ってこさせるべきだったな。
「おまー」
プールサイドに戻ると紅葉が力尽きていた。 マズイな……こう暑いとすぐ腐っちまう。 生きてる時から心が腐ってたけど身まで腐るとなるとちと面倒だ。 どうしようか。
「およ? クレハが死んでる…………ソージ」
「俺じゃないぞ」
「いやまだ何も言ってないデス」
あ、いやついうっかり。 我が身重政くらい可愛くて。
「おおクレハ! 死んでしまうとは情けない! じゃあワタシとソージの2人きりでイチャイチャラブラブなランチタイムにしーマショ」
「腐臭漂う昼飯は流石にキツくね?」
死体はまだいいけど臭いのはなぁ……臭い飯はクセになるって言うけどジャンル違うし。
「(ギュルルルルゥ〜)」
死体、もとい紅葉の腹から可愛さの欠けらも無い音が鳴った。 これはさっきの音の犯人は紅葉である可能性が高いな。
「生きてマシタか……はっ! 今ここでトドメを刺せばソージは私のモノ確定!」
「何そのバッドエンド」
「トゥルーエンドに文句をつけるな!」
ごめんどこが? どう頑張ってもビターエンドだろ。 俺が誰かとくっついた時点でハッピーエンドでは無い。
「おい。 紅葉、生きてるか?」
「(ギュルル〜)」
どうやらエネルギー切れでセーフティモードに入ってるらしい。 そりゃあれだけ暴れ回ったのに加えて、本来昼飯の時間帯に食べてないもんな。 クソ燃費悪い紅葉ならこうなるか。
……いやこうなるか? 俺は最近こういったことでも麻痺して来てるから疑問に思わなくなってきたぞ。 価値観って環境ですぐ変わるもんだよね。
「紅葉、飯だ。 起きろ」
「……起こして」
紅葉は両腕を上に伸ばす。 それ動かす力あるなら自力で起きろや。
「めんどくせぇからもう飯食うか。 プールサイドより教員室の方が涼しいから俺そっちで食うわ」
「あ、ワタシもワタシもー」
「悪いなベル、教員室はそれなりに広いけど1人用なんだ」
「この男安息地を独り占めしようとしてやがる! そういうのがホラー映画とかだと真っ先に殺されるんデスよ!」
確かに紅葉とベルっていう妖怪がすぐ近くにいるなんてホラーだな。 なら尚更同じ部屋に入れる訳にはいかねぇ。
「待って」
紅葉を置いて行こうとしたらシュバっと起き上がった紅葉にしがみつかれた。 重……
「なんだ紅葉、もう動けるようになったのか」
「私だけ置いていくのはダメ」
「なら自分で歩け。 重い」
前に持ち上げた時は軽く感じたけど、こうしてぶら下がる紅葉の重さを実感して少し安心。 ちゃーんと50kgあるみたいで。 流石に40無いとか病気もいいところだもんね。
「クレハだけズルい! ワタシもおんぶ!」
「ぐおっ」
おんぶと言いながら正面から抱き着いてくるベル。 重すぎる。 合計で110キロ超えてる。 あれ、でも俺普段から全身に100キロの重り付けてるよな。 あれー?なんか数字的には近いのになんか凄い差を感じる。
前にベル、後ろに紅葉、両手に激重弁当セット、気温バカ高湿度バカ高という過酷なプレイ。 俺こういうプレイは好みじゃないんだよなぁ……そこんところちゃんと考えてくんない?
「どや? 前も後ろも柔らかろ?」
「それ以上の重さと暑苦しさでそれどころじゃない」
「しっつれいデスね〜 女の子は羽のように軽いんデスよ」
「その羽がガーゴイルくらい重いんだわ」
あの海外の建築物によくある雨桶のあれ。 もしくは神殿の前にある門番的なやつ。 あれちょっと欲しいって思うけど我が家とは笑えるくらい合わなくていまいち手を出せずにいる今日この頃。 洋風建築の家でも買うかね。 ロマンだけを詰め込んで全く使わない高級置物と化しそうだけど。
コアラの様に2人を連れて(?) 教員室に辿り着く。 そして即冷房。 あ〜涼しぃ〜
1年使ってないというのに教員室は思っもてたより綺麗に整頓されていた。
……いや、吸殻が残ってる。 それに所々新しい使用痕がある。 これはあのダメ人間がサボり場としてコソコソ使ってやがったな?
でもまぁ今はそのおかげで比較的綺麗な状態で使えることだし、見逃してやろう。 でもタバコは喫煙室で吸え。
先に降りたベルが床にレジャーシートを敷き、その上に紅葉を投げる。 コイツしがみついてるから振っても中々落ちねーでやんの。
「……奏士は女の子の扱いが雑」
「無礼者を丁重に扱うほど俺は聖人じゃねぇぞ」
紅葉とベルは特に。 もー2人が引っ付くから汗でベタベタじゃん。
「さぁご飯にシマショー」
それぞれ手拭きで手を拭いて弁当箱を開ける。 俺らのは重箱だけど。
「ベル、その弁当はどうした」
「コレデスか? モチモチのロン自分で作りマシタ。 こう、今朝チャチャッと」
ベルはそう言いながら弁当を見せてくる。 とても綺麗な弁当だ。
「なんか用事でもあったのか?」
「元々サツキ達とお昼を食べて遊びに行く予定だったから持ってきてるだけデス」
なんだそれなら言ってくれたらベルの分も一緒に作ったのに。 てか、約束してたならそっちを優先しろよ。
「おっと今『約束してたならそっちを優先しろよ』と、考えマシタね?」
なんだコイツ心読んでやがる。 読まれないように心閉じとこ。 閉店ガラガラ。
「問題Nothing! サツキ達には既に断りを入れてありマス。 何よりワタシにとってソージ以上に優先する事は無い!」
いや友人を是非大切に優先してくださいと切に願う。 具体的には優先度4くらい。 はやてがえしを上回る優先度だ。
「……♪」
そんな中でも紅葉は変わらずご飯をもぐもぐ。大人しくなるならそれでいいや。
「あ、味が気になりマスカ? はい、あ〜ん」
「あ〜ん?」
「そのガン飛ばす返し気に入ってるんデスか?」
ええはい正直好きです。 突然向けられた返しとしては100点でないでしょうか。
「気を取り直して……はい、あ〜ん」
そう言いながらベルは卵焼きを箸で掴んで差し出す。
「手皿は行儀悪いぞ」
「でも顔面パックの時にする手皿ってエロくないデスか?」
「俺の負けだ。 続けろ」
くそう少し分かってしまったのが悔しい。 よくよく考えるとそれとこれとは違うのに悔しい。
「あ〜ん♡」
できる限り箸に触れないようにして卵焼きを口に入れる。 流石ベル。 普段はあんなでも腕はちゃんとしてる。
「どう? どうデスか?」
「美味い美味い」
「でっへへ〜♡ 褒められたぁ〜ん♡」
「…………」
何やら隣から不機嫌な気配が。 ピーマンは入れてないぞ。
「卵焼きの分、好きなの持ってけ。 大量にあるから量は気にするな」
「なんという太っ腹! じゃあ〜 その肉巻きをくーださいなっ」
「はいよ」
箸で肉巻きをベルの弁当箱に入れようとしたらベルが口を開けて待機してた。 えぉ……俺もぉ?
「あ〜ん♡」
「…………」
「あーん!」
奏士君は学習デキる男。 こういう時は素直に従った方が早く終わると分かっているのにどうしてもやりたくないと思ってしまう。
でもそれはそれこれはこれの精神で不満を押さえ込んでベルの口へ箸で持っていく。
「あ〜「はぷっ」あ!」
その途中で紅葉が横からかっさらってった。 ある意味助かった気がするけどどっちにしろ助かってはない気もする。
「も〜 何するんデスかー」
「……ふしゃー」
元の位置に戻った紅葉は俺越しに威嚇。 君たち俺を間に挟んでなにかするのやめてくれんかね。
「これ紅葉。 大人しくこれ食べてなさい」
紅葉の口に唐揚げを突っ込んで大人しくさせ、その間に再びベルの口へ肉巻きを運ぶ。
「あ〜んっ……ん〜ソージの愛の味がシマス!」
そんなものは粒子レベルで入れてない。 どうやらこの女の舌には幸せ変換炉があるみたいだ。
「…………」
またしても後ろから不機嫌な気配が。 紅葉ちゃんの分はちゃんとあるからそう怒らないの。
「次はワタシ! はい、あ〜ん♡」
「もういいだろ」
「non! ワタシが満足するまで続けマス!」
「永遠に終わらねぇじゃん」
「お? よくご存知で。 ワタシは生涯続けマス!」
この人生涯に渡って重いんだけど。 どうしよう耐え切れるかな。 愛溢れて器が壊れそう。
「ソージも、生涯を共にするなら料理のできる女の方がいいですよね?」
「空想の話である前提だが……まぁそうだな。 お互い料理出来た方が何かと便利だろ」
俺倒れました。 食材あるけど相方料理できません。 店開いてませんなんて展開になったらそれはもう大変だ。 俺は自分が倒れてもいいように大量のインスタント食品を常備してるが、それでも完全無欠じゃない。 転ばぬ先の杖は予備があった方が折れても安心だ。
「うんうん! あと〜 人に甘えてばっかの子より、自分のことは自分で出来る子の方がイイデスよね? 朝自分で起きるとか〜洗濯物は自分でやるとか〜」
「その方が手間が減って楽だな。 俺だってたまには寝坊することもあるし、洗濯の暇も無い日だってあるんだし」
今は同居人が居るから洗濯とか家事を優先するけど、一人暮らしの時は後回しだったからな。 漫画とかを優先してたし。
「そうそう! それに〜少しくらい遠慮とか配慮を知ってる子の方がいいデスよね! あれこれ自分のワガママ通すんじゃなくて、無遠慮にプライベート空間に入らないとか、たまには1人の時間を与えるとか!」
「それ少し前までのお前な」
今は物凄く改善されてるけど。 ベルさんは部屋に入る時はノックしてくれるし一人の時間をくれます。 どう思います紅葉さん。
「…………」
紅葉はバツが悪そうにそっぽ向いて何も言わない。 もしかしてグサグサ刺さってる?
「フフーン」
そんな紅葉に対してベルは何やら勝ち誇ったようなドヤ顔。 今のところ紅葉の嫁力は無いに等しいもんな。 稼ぎくらいしかない。 いや稼ぎだけで専業主夫にさせれるくらい強いんだけどね?
「つまり今のを総括すると、ソージに必要なのはワ・タ・シ♡ってことになりマス!」
「総括の座標間違えてんぞ」
多分Z(次元)が違うね。 XYは合ってるかもしれないけどそもそもの問題として俺が嫁を必要としてない点は今だけ外しておく。
「でもワタシ、料理出来マス」
「それなりの腕でな」
それなり(プロ相手に数年師事された後、何年も料理をしてきた俺と薪姫に劣らない腕)だけどね。 ごめん君本当にタダの花嫁修業で身につくレベル? 即戦力だろ。
「お洗濯お掃除完璧デス」
花嫁修業の成果でな。 家の中掃除してると時々ベルが手伝いするから前よりは楽になった。 自分の洗濯物は自分で管理するし。
「ソージを思いやる心もありマス」
それはさっき言ったからパス
「夜の方も理解がありマス」
それは知らね。
「そして何より美少女」
それも知らね。 次元が違えば分かり合えたかもしれない。
「つまりワタシは最高の嫁!」
「……頭痛くなってきた」
ベルの言わんとしてることは分かるけど俺の頭痛と引き換えにする事かは甚だ疑問ではある。 最近必要無かったから薬持ってきてねぇよ。
「て訳で、ワタシとラブラブちゅっちゅしようぜ! マズは内縁の妻からハジメテクダサイ(ぽっ)」
何でスタート地点そこなんだよ。 内縁の妻って色々難しいだろ。 そこまで行くなら結婚した方が早くない? 式は別として。
「ついでにソージのハジメテもクダサイ(ポチャン)」
「最初からそれが目的だろ」
あれ今変なSEが聞こえなかった?
「さぁ! 手早く分かり合うためにデートシマショー!」
「ごめんその日は用事が」
「まだ日程言ってないデスケド!?」
しまった断る定型文を返してしまった。 まぁそもそもクラスの集まりでも俺呼ばれないから一度も使ったこと無いですけどね。
去年……いや一昨年か。 一昨年の体育祭の後はクラスみんなで焼肉行ったらしいです。 俺は呼ばれてない。 そもそも誰も俺の連絡先知らないから当然っちゃ当然。 誘われても断るから手間が省けて助かる。
「…………」
さっきからずっと紅葉はご機嫌ななめ。 今三角定規で言うところのどれ? 直角二等辺三角形くらい斜め? それとも半正三角形くらい斜め?
一方、ベルはそんな事意に介さずベタベタ引っ付いてきたり腕を抱いてきたりと騒がしい。 暑いから離れて欲しいが、状況が状況だから離れるに離れられない。 やはりこういう時は無心で流すのが得策か……なんか私刑禁止のせいで受け入れるしかない被害者みたいな気持ち。
「どう? どうデスカ? クレハよりワタシの方が大きくて柔らかいデス」
「その質問は黙秘権を行使する」
どう答えても安全な未来が手に入らなそうだから。 ちょっとベルの護衛集団の────なんて言ったっけ? とりあえずベルガチ勢のあの人はよ来い! そしてコイツを引き剥がせ!
「ほぉ〜らクレハよりも大きなHIJ……多分JかKカップのおっぱいデスよ〜♡ ソージのお顔を優しく包み込む事は勿論、ナニを挟んでアレする事も出来マス」
「発言のライン超えてない?」
これ全年齢対象ぞ? 区分は一応CERO D以下ぞ?
ベルは自慢の武器を惜しみなく使ってアピールを欠かさない。 胸を腕で寄せ、手で持ち上げ、身体を揺すって揺らす。
ふと横目で紅葉を見れば、自分の胸に手を当てて少し悩ましげ。 比較対象がおかしいだけで君は充分上澄みだという事を理解するといい。
「ところで、Jカップは貧乳という話もあるんだが」
「どこのどいつデスカそんな侮辱をするバカチンは!」
詳しくは分からないですけど、とても豊かな人達らしいです。 皆様あちらの工場に行かれますね。
「ワタシで貧乳ならクレハはどうなるんデスか! 無乳じゃないデスか!」
いや枠組みは貧乳なんじゃないか? 無乳は文字通りまな板の人なので。
「……無乳……」
紅葉が少しだけ落ち込んでる。 今までのやり取りは全てジョークみたいなものなので流して欲しい。
そして紅葉を巻き込んだのはベルなので文句は全てベルに。
「こうなったらもっと大きくしてやるぅ……ソージはどこまで許せマスカ!」
「限界を知らないから答えようがない」
「ンモぅっ、そこは『ありのままの君が好きさ』って囁くところデスよ」
「ありのままのゴミが好き」
「どこの開拓者デスか!」
すげぇや1文字違いだけでこんなに違うんだ。 言葉って面白! 文学に目覚めた死神だ。
それからも、昼飯を食い終わるまでベルの戯言は続いた。 ちょいちょい紅葉を巻き込んで被害を出しながら。
なんか……今日のベルはやけに紅葉を攻撃するな。 生理なのか? だとしたらその状況でも俺への対応変わらないの逆に怖い。
──────────────────────────────
昼食後
「……トイレ」
「へいへい」
「ワタシもー」
2人がトイレに向かう。 奏士はもう慣れた感じで返事をし、弁当セットを片付ける。
「いや〜少し食べすぎちゃいマシタ。 ソージの愛妻……愛夫? 弁当が美味しくてつい」
ベルが少しだけ膨らんだ腹を擦りながら言う。 実際、ベルは手作り弁当の大半を奏士に食べさせ、その対価として奏士の弁当を『あーん』付きで食べていた。
「……満腹」
紅葉紅葉幸せそうな顔で擦る。 満腹+トイレということは下品なんですが……下品なんでやめておきます。
「……あ! 動いた!」
「……」
ベルは少し膨らんだお腹に手を当てて叫ぶ。 紅葉はそんなベルを呆れ顔で見る。
「クレハもどれどれ……蹴った!」
「……満足?」
「ツッコミが無くて寂しい」
正直なベルに何も言う気が無くなったのか、紅葉はふざけ倒すベルを置いてさっさとトイレに向かう。
「アン! 待って待って! 連れションシーマショー」
「……言い方」
女子トイレは完全個室だから連れションと言えるのかは議論の余地があるが、それはそれとして2人は並んで歩く。
「クレハはどうデシタ? ソージのお弁当」
「……美味」
「愛、感じマシタ?」
「……それは分からない」
「む〜」
ベルは残念そうに唸る。 いまいち共有できない事が惜しいらしい。
そのまま2人はトイレに入り、個室で用を足す。 用を足すとはそれ以上でもそれ以下でもない。 いや大小の話じゃなくて。 そもそも拙者スカトロ苦手侍であるからにして。
「……ふぅ」
紅葉が個室から出ると、既に手洗いを終えたであろうベルが出口で待っていた。 行きも帰りも一緒に行こうとは寂しがり屋なのか陽キャ思考なのか。
が、どうやら違う様子。 紅葉を待ってるのは確かだが、『出口で待つ』というより『紅葉を出さない』かのように仁王立ちしている。
「……ベル、そこどいて」
出会いを終えて戻ろうとしてもベルは退く気配が無い。
それどころか、入口のドアを閉めて鍵までかけた。
「……何が目的?」
紅葉が探るように問いかける。 万が一に備え、いつでも動けるようにしながら。
しかし、ベルから返ってきたのは怪しげな笑みと予想外の答えだった。
「これで2人っきりデスね」
はいどーも最近自室でジュースを飲んでいたらまだ残ってるにも関わらず羽虫がペットボトルの中にダイブして泣く泣く廃棄したのが三本立て続けに起こって怒った作者です。 ちなみに最近ユスリカも出ました。 わんちゃん普通の蚊の可能性もあります。 何故か肘が食われてたので。
そんなこんなで夏の先駆けを感じている作者ではありますが、最近本当に暑くなりましたね。 そろそろお布団も冬用を片付けて夏用にするか否かの会議が行われています脳内で。
そんなこんなで長くなったプール掃除の話ですが、流石に次回には終わります多分。
でも来週更新の余裕あるか分からなくなったんですよねぇ……来週7連勤なので。 朝から晩までお仕事楽しいなぁ♪
ちなみに私の職場は近々倒産する(と噂されている)のに新人を雇うくらいとち狂ってます。 ワンチャン倒産してもいいけどお賃金は出て欲しいなぁと願います。 今回は奏士のおち○ち○が出る可能性あったので出さなかっ多分お賃金が出て欲しい。 お金が欲しい。 頼みます7月の出費が物凄いことが確定してるので。
ではこの辺で。 次回は割とマジで更新ない可能性があります。 その場合は翌週です。 最近思うように書けなくてもどかしいなぁ……
PS 予約投稿する直前までサブタイ決めてない問題が発覚しました。 どうしよう今回のサブタイ微塵も考えてない




