白猫と校外清掃と……?
えー……本日は校外清掃という事でね。 そんなもん業者に頼めやって思うところはありますけど、これも地域交流とボランティアの一環って事で学生がやる事になりましてね。 理事長に上手いこと言いくるめられましたわ。
そんなこんなでって便利な言葉を今回も多用して放課後。 結構な人数揃ってまぁ……暇人の多いこと。 ならそんな暇人を集めて主導してる俺ら生徒会はなんなのか。 これもまた暇人定期。
「……そろそろ時間」
「あーい」
紅葉に命令されたからザワザワうるさい連中を静める方法を考えてみた。 校長みたいに静かになるまでの時間測ろうと思ったけど止めた俺は英断。
「今から人数確認するから番号行ってけー。 はい委員会」
「2!」
「4!」
「8!」
「16!」
「32!」
「誰が二進で言えっつった」
一般読者に伝わらんだろこれ。 いやでもオタクは理系知識豊富だから行けるか。
「委員会は65535まで居ます!」
「ゴリゴリの理系いるな」
2進数が2n-1の表記であることを理解してる奴がおる。 この場合だと65536で2の16乗だから16人か。 暇やな〜
「はい次他の野郎共」
「奏士殿除いて10名です」
「はーい」
野郎共の中には莇たちも居ます。 ほんと暇やな〜
「お前店いいのか?」
「本日は私も華さんもお休みですので」
コイツ折角の休みにボランティアって……優等生か? 付き合って半年くらいなんだからもっとイチャつけ! でも視界内でイチャついたら殺る。
「紅葉、そっちはどうだ?」
「……女子は私含めて11人」
「さいすか」
強制参加の生徒会と委員会を抜くと男女10人ずつか……
そしてその内俺の知る限りのカップルが3組。 禍塚は事実上カップルなので含む。
そして俺は知らんが明らかにイチャついてるのが6組。
ははーん分かったぞ? こいつらボランティアついでにイチャつきに来たな? 殺すぞマジで。
※ 委員会の奴らは発言がアウト過ぎたのでカットしました。
「えー……ではこれより校外清掃を始めます。 女子は紅葉に、お前ら野郎は俺が引率します」
「柳ー それって男女別って事かー?」
「その通りだ不知火。 これは下手に混ぜてイザコザを増やすとかそう言う目的と、掃除中にイチャついて仕事しない未来を回避する目的もある」
後はカップルへの嫉妬で委員会が暴徒と化さないように。 これはカップルを守るためでもあるのだ。
「それと、注意事項として清掃活動中にどっかしらの店入るなよ? 喉乾いたら自販機かそこら辺の水飲み場使え」
「JOKER、腹減った時はどうすんだ?」
「子どもじゃないんだから少しくらい我慢しろ」
もしくは自分の足食え足。 片腕でも可。
「各自道具は持ったな? じゃあ散れ! 散!」
俺がそう言うと同時に野郎共が消えた。 何こいつら忍びの者?
「……」
てか俺置いてかれたわ。 なにこれ俺一人だけ残されてんのはっず。 女子の視線が痛いから逃げよ。
「じゃあ……そういうことで」
「……早く行けば?」
紅葉の最後の一言は俺のメンタルにクリティカル。 どうすんだよもう残機が心許無いぞ。
はぁ……俺今泣いてないかな。
じゃあ俺も泣く前に散ろ。 シュシュッとドロンでござるんるん。 忍。 言うてお前エンシェント使いやったやないかい。
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girls side
「……女子はこっち」
女子は紅葉につられてテクテクテクテク。 その間、仲良しこよしでお喋りが止まらない。 3人集まれば姦しいと言うが、11人もいるから姦姦姦奻でライブツアーだ。道中、ちゃんと清掃活動はしている当たり伊達に育ちのいいお嬢様達じゃない。
「トコロデ、サツキはいつになったら初夜、モトイ初体験を迎えるんデスカ?」
「急に何?」
ゴミをトングで背中のカゴに投げ入れてる最中、唐突な話題チェンジに思わず空き缶を落とす皐月。 その顔には呆れの表情が。
「ほら、あの〜…………………えーと……………………なんかあのイケメンに告白したじゃないデスカ」
「もしかして恭平の事言ってる?」
「Exactly! (スカッ)」
ベルはノリノリでフィンガースナップをするが、案の定と言うか毎度ながら音はならなかった。
「ベルちゃんまだ名前覚えてなかったの〜?」
遥が心配そうな……と言うより、頭が残念な人を見る目でベルを見ている。
だがこれもある意味仕方ないことだ。 ベルにとって家族と奏士以外の異性は割とどうでもいい。 一応、恭平達に友人的意識はあるが、如何せんベルと恭平は接点がほぼ無いので名前を完璧に覚えるまでは至ってないのは確か。
「それはそうと、サツキはいつになったらキョーヘイと付き合うんデスカ?」
「うぐっ」
皐月はばつが悪そうな顔をする。 付き合いたくても恭平が未だ振り向かない現状ではクリーンヒットだ。
「そ、そんなこと言われても……」
「なーに女々しいこと言ってるんデスカ! こっちからアレコレ動かなきゃ振り向かずに首の柔軟で終わりマスよ!」
「女々しいって……私女なのに」
「shut up! 具体的にどこまで進んだのかワシに説明してみるでおじゃ」
さっきからコロコロ変わるベルのキャラ属性に置いてけぼりな皐月だが、観念したのか口を開く。
「その……」
「その?」
「こ、この前のデートで……」
「デートで?」
「────~~~~! 流れと勢いでキスしました!」
「……………あ思ったより進んでる!」
さっきまでのやり取りは何だったのかと言われそうな進行度にベルは驚きを隠せない。 あの遥ですら目を丸くしている。
「まぁまぁまぁ〜 皐月ちゃんってば大胆〜」
「アレ? いつの間にかワタシより先に……アレ?」
母親のような目とニッコニコ笑顔で喜ぶ遥と自分より遥先を行かれてワナワナと震えるベル。
「~~~~~~~!!!」
そして改めて恥ずかしくなり、顔を真っ赤にしてしゃがみこむ皐月というカオスな状況。 とりあえず、道の真ん中でしゃがみこむのは危険なのでよそう。
「これ以上は無し無し! 次は遥!」
「私〜?」
会話の8切りで無理やり矛先を変え、遥へと向ける皐月。 だが、遥はこの程度では動じない。
「あんただけ何も言ってないじゃない。 どうなのよそっちは」
「私はね〜 ふふふ〜」
遥は何も言わず笑顔で返す。 相変わらず何も明かさないが、これが恥ずかしいだけなのか、何も無いのを誤魔化しているのかは分からない。 付き合いの長い皐月ですら全く読めない。
「あれ、でもこの前えーと……ワカバとハルカが手を繋いで歩いてるのを見マシタ。 間に小さい女の子を挟んで」
「それってまさか────」
皐月は一瞬「もう子供が!?」と想像したが、それは流石に産むまでが早すぎるので口を閉じた。 遥がカンガルーならあるいは。
「あれはね〜 不知火くんの妹さんだよ〜」
「あ、そう……」
どことなくホっとしている皐月と、つまんなそうにしているベル。 ベルはベルで何を思ったのやら。
「…………え、あんたもう家族付き合いあるの?」
「それは〜………ひ・み・つ〜♡」
またしても遥は何も言わない。 今回はウインク付きだが。
「ったくもう……じゃあ次はベルちゃん。 アレとはどうなの? 最近は色々静かだけど」
「あぁ……この前ソージがプラモデル作ってる最中に部屋に入ってちょっかいかけてたらバックドロップされマシタ」
ベルは「アレは痛かった」と思い出すかのように後頭部を摩る。
一方、皐月と遥はエピソードがエピソードだからか何も言えない。 これはバックドロップを「痛かった」の笑い話で流すベルがおかしいのか、プラモを作ってるとは言え、シンプルに手を出す奏士がおかしいのか。
「…………」
それを聞いていた紅葉は「両方おかしい」と思ったが野良猫を撫でるので忙しかったから口から出ることは無かった。 珍しい三毛猫のオスだ。
「そ、そう…………あ、えーと……そう! 紅葉ちゃんはどうなの?」
「……?」
急に巻き込まれてキョトン顔の紅葉。 撫でるのを止めたからか、野良猫はその隙にどこかへ行ってしまった。
「……急に何?」
「ほ、ほら! 紅葉ちゃんってアレと基本一緒に居るでしょ? だからどうなのかな〜って」
「…………」
紅葉は「何言ってんだこいつ」という目で皐月を見る。 紅葉的には不愉快この上ない。
「恋のドキドキというか……なんかそういうのあったりしないの?」
「…………管轄外だからベルに聞いて」
「だ、そうだけど?」
「ワタシは年中無休で恋のトキメキを味わっている!」
「だそうよ」
「…………」
自分で言ったことだが、紅葉はベルにパスしたことを後悔した。 魚に水を与えたようなものだ。
「本当に無いの〜?」
「……アレに異性としての魅力は皆無に等しい」
紅葉はお決まりの定型文で返す。 事実、奏士の魅力は極わずかと言える。 イケメンを自称してる時点でお察し。
「あれ、でもアイツって最近女子の中で人気よ?」
「なんですと!」
「…………」
皐月の発言に紅葉よりもベルの方が反応した。 紅葉は表面上は変わりないが、微かに眉が動いた。
「あぁ勿論異性的人気とかじゃなくて」
「まぁ多分少しくらいは居ると思うけど」と皐月は続ける。 奏士はスペックと肩書きだけを見れば優秀なのだ。 だけを見れば、の話だが。
「ほら、アレって勉強できるじゃない?」
「学年1位だもんね〜」
「……不本意」
紅葉だけ別角度の感想だが、皐月は流す。
「その上生徒会副会長をやってて、家庭科の授業じゃあ女子顔負けの腕前で先生役やってくれてるし内容も分かりやすい。 他の男子と違って変な目で見てこないし、他の人より落ち着いてて大人びてるから話しやすい……って友達が」
「「あっ……」」
「あ〜」
皐月の発言に奏士の内情を知っている紅葉とベルは可哀想な人を見る目をし、遥も情報とイメージの齟齬が怪しいのかぼかす。
皐月からの情報を整理すると、
変な目で見ない→異性以前に人間的興味が無いので当然
落ち着いてる→超人見知り故にマトモに話せず最低限の会話も怪しい
大人びてる→訳あって年上
となるので、知らなければ部分部分を切り取ればそうなる。 こんなにも知って悲しいことは無い。
「だからまぁ……恋人って言うよりは1家に1台? 家政婦的な人気よ」
「……確かに」
「ソージは1家に1台必須デス」
日頃(特に紅葉)お世話になっている2人は納得の様子。 奏士は下手に関わったりしなければ良物件。
「だから安心しなさい。 ベルちゃんが奇特なだけだから、競争率は低いわよ」
「あれなんか今ワタシの恋がバカにされた気が……」
「気のせいよ」
実際、奏士の競争率はすこぶる低いのだが、競合相手が強者なのが問題だろう。 と言うか可能性で3人分あるだけマシだろう。
「でもそうね……そうなったらベルちゃんと紅葉ちゃんが取り合う事になるのか……」
「……辞退したい」
「ワタシは3Pでも構わん!」
なぜ先のカオスから1人減っているのにカオス度は上がっているのか。 我々はその謎を解くためにジャングルジムの奥地へと潜入した。 1回入ると出るのに苦労するでお馴染みジャングルジム。
「…………」
紅葉は少し考えた。 ベルは大事なお友達だ。 奏士を取り合って喧嘩はしたくない。 でも奏士がベルのものになるのは何となく不満。
いや別に奏士を好きなわけじゃないけどそれとこれとは話が別というか……と延々と考えては否定して考えては消している。
「…………」
その様子を見たベルはなんだか満足気。 何を持ってそうしたのかは今のところ分からないが、ベルにも考えというのがあるのだろう。 脳に考えるだけの容量があるかはさて置き。
「……そんなことより手を動かして」
「はーいはい。 しょうがないわね……」
紅葉は話を切り上げて奏士、もとい掃除に戻る。 アレコレ悩むより、手を動かして忘れようって魂胆だ。
「…………」
それでも、あまり上手くいってない様子だが。
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「えー……はい、校外清掃は終わりです。 ささやかなお礼として理事長から金ふんだくってジュースと菓子類買ってきたんで、それぞれ持ってっちゃってください。 っかれっしたー」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
掛け声と共に始まる校舎前プチパーティ。 さーておいちゃんのお仕事もそろそろ終わりだ。
「…………」
で、紅葉さんは何処? 未だに1人だけ帰ってこないんだけど。
っていうのをベル達に聞いてみたら『「用事が出来たから少し離れる」って言ってマシタ! て訳で放課後デートしようぜ!』って返された。
あんにゃろ職務放棄しおってからに……帰ってきたらお説教しないとだな。 でも用事の重要度次第で考慮しちゃう俺は寛容だと思います。
えーと、後は参加者名簿とかを提出して終わりか。 いやー長かった。 途中掃除しないでエロ本捜索とかしてたし疲れちゃったよ。
……あ?
ポケットのスマホが振動した。 画面には『着信:紅葉』が。
『ちょっと来て』
紅葉からのメッセはそれだけ。 どこにだよ。
『校舎裏』
俺の意思が伝わったのか、紅葉から再びメッセが来た。 俺これからボコボコにされるん?
『伝えたいことがある』
成程拳じゃなくて言葉でボコボコにするのか……なら安心。 俺様ワードメンタルは強いから。 特防が高いタイプ。 なんならABCS全部高い。 しかしHがカスなので特性が強くなきゃ使われない。これ何の話?
「およ? ソージどこ行くデスカ?」
「ちょっと泣きじゃくってくる」
「……はい?」
さーて何言われるのかしら。 言われたら言い返す方針で行こう。 ハンムラビ法典バンザイ。 俺は男女平等に腹パンアッパー顔面パンチできる大人を目指しているからね。 男女平等ってそういう事だと思う。
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校舎裏に来た。 紅葉の姿は無い。 誘い出されたか? それともまた悪戯か。 だとしたらこれだけで終わるはずが無い。
『お前何処?』
紅葉にメッセ送ってみたら爆速で返ってきた。 はやぁーい
『第2校舎裏』
※ 現在地本校舎裏
普通に場所違ぇのかよ。 つーか紅葉も言えよどの校舎裏なのか。 色々考えた俺がバカみたいじゃん。
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「……やっと来た」
「色々あってな」
先に書類出しに行ったり、第2校舎裏に行くのが面倒くさくてこのまま放置して帰るか否か議論してたら遅れてしまった。 ちなみに帰宅5続行6で劣勢だった。 脳内会議しといて本人が帰宅を求めているこの状況どう思います? 自らの欲に抗ってて素敵だと思います。
「で、なんだ話って」
出来ればお優しく殴って欲しい。 俺が遅れたからか紅葉さん少し不機嫌っぽいし。
「……ちょっと来て」
紅葉が手招きしている。 校舎裏に呼び出しておいてまたどこかに行く気か? なら最初からそこに呼び出して欲しいものだが……
念の為周囲を確認してみる。 いや確認するまでもないな。 だって不自然なんだもん紅葉の手前の地面が。 偽装してあるけど付近に1度掘り返したような跡があるし、何より紅葉がさっきからチラチラ足元を見ている。
つまり落とし穴に誘い込もうって魂胆か。 やはり詰めが甘い。 この程度の出来で俺が引っかかると思われてるとは嘆かわしい。
が、穴を掘った労力と偽装した頑張りを賞賛してここは引っかかってやろう。 流石の紅葉も穴の下に危険物を置きはしないはずだ。 もし竹槍トラップとかあったら泣くね。
「しゃあねぇな……どこにだっ」
こういうのって予め覚悟してたらあんまり……って言うけど、落ちる時は普通にちょっとびっくり。 しかも思ってたより深い。
あと着地の衝撃で足が痛い。 地味に途中で止まりにくい広さなのは厄介。
「ふむ……」
冷静に確認。 穴は直径1m、深さ3mってところか? いつ掘ったんだこの穴。
まぁいいや。 登ろ。
「よっこいせっと」
「……すぐ出てきた」
穴から顔を出すと紅葉が見上げていた。 どうやって昇ったかは企業秘密。
相変わらず紅葉さんはしゃがむ時にスカートを畳むとかそういうことをしないから丸見えです。 ただでさえ女子校生よろしく丈が短いのに、こんな無防備にしゃがんだら重力に逆らう鉄壁スカートでもなければ見えちゃうでしょ。 もっと用心しなさい。 って念を送ってみた。 多分届いてない。 ここ電波悪いな。 電波しか居ないのに。
「……何?」
「お前紐パン好きだよな。 なんか拘りあるのか? ハチマキかスカーフか」
「……変態」
紅葉に顔を押された。 穴の縁に腕の力でぶら下がってたから押されると落ちるんだけど。 てか落ちたし。
まぁまた登るけど。 これ疲れるんだよなぁ……
「……どうやって登ってるの?」
「理系なんで」
「……意味がわからない」
だよな俺も意味分からん。 だって俺理系じゃないし。 そこじゃねぇだろ。
「んで、何の用だ」
「……指導」
「何のだよ」
俺お前に教え導かれるような覚えは無いぞ。 むしろ俺が指導するべきだろ。
「……奏士は最近女の子に隠れた人気がある」
「えマジで?」
え〜嫌すぎるぅ〜 いやほんとマジで嫌。 やめろそういうの。
「……で?」
それで何故俺は穴に2回も落とされたん? いやどっちも自ら落ちたようなもんだけど。 忘れがちだけど、紅葉も年頃の娘なんだから下着に追求しちゃダメだよね。
「……自分がモテてると錯覚して自惚れる前に生徒会長として指導した」
「ご存知かもしれませんがこの国は推定無罪というものがありまして」
「……そうなる前に止めるのも指導の内」
クソぅ俺にしては珍しく言い負けた。 反論する時は反論される可能性を考慮しなくてはいけないというのに。
「言い分は分かった。 で、なぜそれで落とし穴なのかと俺がその程度で自惚れるような奴だと思われてることについて聞こうか」
あとこの落とし穴をいつ掘ったのか。 多分抜け出した時なんだろうけど。
「……落とし穴は思いつき」
やべーこいつやべー 思いつきで穴掘って落とそうとしてるよやべー
「俺に関しては?」
「……奏士はこれまでモテる以前に女の子の話題にもあがらない悲しい人生を送ってきてそうだから、隠れた人気なんて知ったら舞い上がること間違いなし」
「お前が俺の何を知ってる」
「……それを今解き明かしてるところ」
そうでしたね。 数々の悪戯で忘れてたけど、そういや元々俺から昔の話を吐かせる事が目的でしたね。 いやはや時の流れは恐ろしい。
「……言う?」
「穴に落とされて言うと思うか?」
「……パンツ見たからお詫びで」
「それはもうさっき落とされたからチャラ」
「……私のパンツはそんなに安くない」
「安いだろ」
毎日洗濯で見てんだから実質無料だろ。 いや無料だとマズイな。 『無料ほど安いものは無い』って言葉があるくらいだし。 うへー高くつきそう。
「……(ムッスー)」
目論見が全部外れてご不満な様子。 何この何も生まれない悲劇。 俺がただ穴に2回落ちただけやないかい。
「……とにかく、奏士は女の子から言い寄られてもちゃんとお断りしなきゃダメ」
「……既に去年から言い寄ってくる奴が居るんだけど」
ベルフローラとかそんな名前の人です。 諦めが悪くてやんなっちゃいますね。
「……あれはもう仕方ない」
紅葉的にもベルは枠外らしい。
ていうかなして紅葉が俺の恋路を邪魔しようと言うのか。 俺に春が来たらどうするんだ!
……あ、来ないが故の忠告か。 「恋人作りません!」って言ってる奴ほどあっさり作ってハマったりするもんな。 成程確かに理にかなってる。
「……返事は?」
「それはそれでしたくないから嫌」
「……浮気?」
「落ちてんだよ既に」
ていうか俺はいつまで穴に半分入ったまま会話してんの? いい加減出よ。
穴から出て制服を叩く。 うわめっちゃ土が。
「話はそれだけか? もう無いならさっさと帰るぞ」
そろそろ夏とはいえ、もう夕方だ。 洗濯物は干しっぱなしだし、重政成分も足りなくなってきた。
「…………」
「……何?」
「いや……」
一瞬、「まぁ後者は最悪紅葉を猫と仮定して補充すればいいか」と思ってしまった自分を罰したい。 介錯は自分でやるから誰か俺の腹を切ってくれ! 切腹の覚悟無い武士とか嫌すぎるな。 それより大きなツッコミどころあるだろ。
「……約束」
「しないぞ。 俺の春は俺のものだ」
「…………」
紅葉に手を掴まれて強制指切りされた。 小指持ってかれるかと思った。 もしかして紅葉ってパワー系極道? 兄貴の好きなケジメってやつ? 俺如くシリーズならOF THE ENDが好き。
「……約束したから守らなきゃダメ」
無理やり約束させるとかやってる事ヤクザじゃん。 紅葉組ですか? それとも果汁組ですかい?
「……帰ろ」
どうやら俺に春は来なくなった様で。 紅葉はそれで満足したのか幾分か雰囲気が柔らかくなった。
おのれ……この恨み来世で晴らしてやる。おっそ。
イマイチ納得できないまま、生徒会室に行き荷物を持って帰路に着く。 ささやかな憂さ晴らしとして自転車爆走で紅葉を置き去りにしたいが、紅葉は自転車に追いつく瞬足の持ち主なのですぐ追いつかれてお終いだ。 それで済めばいいなぁ……絶対済まない。 お仕置される。 怖。
てかどっちにしろ無理だ。 紅葉は我が愛車「シュナイダー」の荷台に乗ってやがる。 俺はちゃんと押してるんですぜ? これ振り落としても罪にならないよな。
「……♪」
紅葉はご機嫌で足をプラプラさせてる。 歩行者の邪魔になるからやめなちゃい。
「ご機嫌だな」
「……一安心した」
「さいですかい」
そんなに俺が幸せになるのを阻止したいか。 いやこれ委員会もとい俺が普段からリア充にやってる事だな。 成程やられるとうぜぇ。 それはそれとしてリア充殲滅は続ける。
荷台でご機嫌な紅葉に今できる最大限の不快感を与えようとなるべく自転車に振動を与えながら帰路に着く。
その途中、どうしても気になることを考えていた。
紅葉が最近所有権を主張しだしている気がする。 俺を物みたいに扱って! 誰だ紅葉に吹き込んだのは! またあの人妻かァ! 新婚の人妻なら大人しく家で子作りしてろやァ! ヤバいつい口悪い俺が出てしまった。 これが締めなの嫌すぎるな。
はいどーも皆さんこんにちは。 今のところ花粉症になってない作者です。 毎年この時期は花粉症になるかならないかの賭けが発生して不安ですね。 我が家は絆創膏が山のようにある代わりに薬が全く無いので薬局の閉まる夜中に花粉症発生すると地獄です。
それはそうとお久しぶりです。 1週間会わないだけで長期間会ってないみたいに感じますね。 小説書くのってこんなに楽しいことなんだなぁと再認識してます。 それもこれも読んでくださる読者の皆さまのおかげ。 そして何より先日夢で「書けやコラ」と言ってきた奏士のお陰です。 悪夢ですね。
作中時間ではそろそろ6月のはずですが、このまま日程的に告白までどのくらいなのかを作中時間で計算してみました。 ものすごいカツカツで恐れおののいてます。 こんなの僕のデータに無い! 計算したはずなんですけどねぇ……
では薬局が閉まってしまうのでこの辺で。 ウエルシアなら24時まで開いていますが、私はツルハ派なので。
では次回もお楽しみに。




