表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/70

白猫と避ける黒烏とミドルネーム通りの行動

「いてきま────ぶねっ」


玄関から出ると、上から水風船が降ってきました。 今日の天気予報じゃ晴れのち曇りだったんだがな。


水風船は当然避けたが、問題はそこじゃない。


「…………」


門の影から紅葉がこちらを見ている。 少し悔しそうな顔で。


「……(ササッ)」


あえて振り向いてみると、紅葉は直ぐに隠れた。 でも銀髪が見え隠れしてる。 頭と尻を隠して髪隠さずってか。 神隠しっ言葉があるのに。


「……」


最近こういったイタズラがよくある。 紅葉が何かしらのストレスを抱えた結果なのだろうか。 あれか、レディースデーなのか。


そっと近付いてみると、紅葉は凄い速さで走り去った。 頑張れば追いつけそうではあるが、そうまでして問い詰める程の被害が出てないから見逃しておく。


さて、あれは何なのかねぇ……


──────────────────────────────


「…………」


登校して靴箱を開けると中は素晴らしいデコレーションが。 妙にリアルなゴキブリとネズミのおもちゃが素晴らしいアクセントを見せているね。 あまりの出来に中指がスタンディングオベーション。


正直心から触りたく無いが、靴を履き替えないとスリッパ生活をしないといけないから仕方なく上靴を取り出す。 うわ、中までぎっしり。 最後までゴキたっぷり。


「…………」


「(ササッ)」


視線を感じで振り返るとまた紅葉の影が。 あの野郎後でしばく。 おもちゃを使ったのは最低限の配慮なのか手に入らなかったからなのか。


傍から見ればイタズラの域を超えてイジメと捉えられかねない。 事実、俺の靴箱を見た学生達はヒソヒソ噂話。


でも俺に精神的被害しかないから特になぁ……イジメにしては温いし。 被害も「うわ嫌だなぁ」程度。 やることがチープ過ぎる。


一体何を目的としてこんなことをしているのか。 聞こうにも、紅葉は見た瞬間に逃げるから対話も難しい。 教室では口を割るといいが。


玩具はありがたーく紅葉の靴箱に返却して上靴に履き替える。 いつも履いてる靴のハズなのにどこか違和感。 おもちゃとはいえさっきまでゴキたっぷりだったからかな。


なんだかなぁ


──────────────────────────────


教室に入ると紅葉は何食わぬ顔で席に座ってた。 俺に気付かれてると知っていてこの顔……太い奴だ。 どうせ太ももとか腹回りも太い。


「…………」


やべ殺気が。


紅葉が知らぬ存ぜぬで行くなら、俺も犯人に気付いてない体で進めることにしよう。 暇潰しにはなるだろ。


「…………」


席に着くと、紅葉は肩肘をついて考え事をしている風を装いながら横目でチラチラとこっちを見てくる。 それ目疲れない?


見てくるのに何もアクションは起こさない。 強いて言えば俺の席にブーブークッションが置いてあったくらい。 これ後で生徒会長席に置いとこ。


「…………」


「…………」


同じクラスで隣の席だと言うのに会話が一切無い。 紅葉の保護者であるポニーテールのあの人はいつ来るの?


「紅葉さん、おはようございます」


あ、噂をすれば。


「……おはよう」


「ついでに貴方も」


「ども」


相変わらず人の扱いが雑なポニテさんに軽く返事。 雑云々は俺も人のこと言えない。


「……如何なさいまして? もしかしてまだ解決しておりませんの?」


「……難航してる」


「はぁ……」


ポニテさんは頭痛がするのか頭を抑えてため息。 大丈夫? 頭痛いなら頭もぐといいよ。 患部摘出が必ずしも解決になるとは限らない良い例。


「貴方も早く折れなさい。 面倒ですわ」


「悪いの俺?」


「……まぁ、どちらとも言えませんけど」


だよね俺悪くないよね。 紅葉が意地にならなきゃ終わる話だよね。 無理そうだけど。


「紅葉さん、もういっそベルさんに頼んで自白剤でもなんでも取り寄せて貰えば早く終わりますわ」


「……『流石にまだ作ってない』って言われた」


「あら、作る予定はあったんですのね」


前から言ってるけど、ベルの実家には少しくら健康食品を扱う製薬会社としての一面を見せて欲しいよね。 今のところはアンブレラな1面しか見せてない。 その内ウイルス研究しそう。


……待って? 紅葉が既に聞いてるって事は使う予定はあったってこと? 怖ァ……倫理観どうなってんだよこいつ。


※ おまいう案件ですが流してください。


「色仕掛け……は通じなさそうですわね」


「お前のお嬢様はしたないな」


「発情期の色ボケ扇子でごめんね」


「誰が色ボケ扇子ですって?」


ポニテさん激怒。 扇子の色が黒一色になってる。 色の変化殺せ○せー?


「だってほら、お嬢様ってば僕と2人きりになるとすぐ────ごふっ」


神鳴が何を言おうとしたのか、それが判明する前にお嬢様は鋭い突きを鳩尾に。 あの神鳴が一瞬で……


「申し訳ございません。 少し用事が出来ましたの」


ポニテさんはそう言いながらダウンした神鳴の首根っこを掴み、ズルズルと引き摺りながら教室から出てった。 達者でな……


そして取り残された俺と紅葉は唖然。 突然出てきて突然居なくなったからびっくりしちゃった。


「……色仕掛けする?」


「俺のトラウマ増やしたいならやってみろ」


「……今後のために止めとく」


「懸命だ」


その後、あの二人はホームルームが始まっても戻らず、帰ってきたのは1限が終わった後だった。


そして何故か・・・、神鳴が干からびていた。 ポニテさんはいい顔してた。 何してたコイツら。 ナニしてたのか? セクハラがオヤジ臭い。 お兄さんだ俺は。


──────────────────────────────

2限 選択授業


という訳でわたくしは選択科目の1つに家庭科を選んでおりまして。 理由は無論「楽だから」


だって裁縫も掃除も調理も何もかも俺が普段やってる事ですし。 選択科目は出席点とか無いからその点もある。


だってこれ自主性に委ねるという名の放置だからね。 どの授業に出て何をするかも自由だし、何もしないのもまた自由。 俺も時々選択授業サボってる。 最高のスポット見つけるのに苦労した。


しかしこの授業、デカイ問題がある。


「えー、では調理実習を始めます」


「「「よろしくおねがいしまーす!」」」


受講生がほぼほぼ女子なこと。 少し盛った。 俺以外女子だ。


というのも、これと似た授業で『調理』というものがある。 その名の通り、料理を極めるための授業。 家庭科みたいにアレコレ他の事やらないし、授業も本格的だ。


何せ、調理の授業は第一線級の料理人が教えてくれる本格仕様らしい。 料理人目指すなら家庭科じゃなくて調理に行くよね。


て訳で、家庭科には必然と『家事+α』の上達を目指す学生が入る。 つまり、女子学生が増える。 古臭い考えとかじゃなくて、一般的に主婦の割合は男より女の方が多い。


そんでもって家庭科は講師が居ない。 被服・調理室を使う関係上、必要最低限の監督者は居るがその監督者がも助なので実質不在も同義。


因みにそのも助は隣の準備室にこっそり布団持ち込んで寝てる。 棚倒れて下敷きになればいいのに。


そんなこんなで、女子18の男ワイな家庭科の授業なんですが……


「えー……本日の調理実習は2限にカップケーキ、3限はハンバーグを作りますが、皆さんエプロンは持ってきましたか」


「「「はーい!」」」


うっせ 黙れや


と、心の中で年頃の娘+金○朋子特有の高い声に愚痴をこぼす。 一人一人はマシなんだけどね。 一斉に大声出されるとキツイ。


「ではボードにカップケーキのレシピを書いていくので、まずはこの通りに作ってください。 余計なアレンジ加えると高確率で失敗します」


「先生、字が汚くて読めません」


「……こんなこともあろうかとレシピを人数分刷ってきたので、各調理台で1枚持ってってください」


「先生、最初からそうしてください」


心に刺さる生徒の一言にもめげない。 俺はこの程度でやられるほどヤワじゃないんだ。 何気ない一言の方が傷つく事よくあるけど。


「えー、全員行き渡りましたね。 では調理開始してください。 先生も前で作ってるので、分からないことがあれば聞きに来てください」


「はい。 柳先生、早速質問なんだけど」


最前列の調理台にいる皐月さんが挙手。 何かな? 持参したエプロンが余りにもフリフリのガーリー過ぎたから交換して欲しいって事かな? 色んな意味で俺が着るのキツいっす。


「はい、どうしましたさっちゃん」


「さっちゃん言うな。 先生はどうしてガスマスクをしてるんですか? てかマジでなんで?」


柳先生はその問いに「コーホー」と息遣いで答える。 ガスマスクって呼吸に体力使うわ。 しかもフルフェイスだから暑ぃ。


「……先生、これないと視線の圧に耐え切れそうにない」


「多分ガスマスクそれ無い方がマシよ」


これは理論じゃないんだ。 心の問題なんだ。 顔覆ってるから相手から俺の顔が見えないことに意義がある。 でも暑ぃ。 息苦しい。 脱ごうかな。


はい、ここまで読んだ皆さんはもう分かったかな? 講師不在なのでこうやって時々奏士君が講師してるぞ。 唯一の男だけど主婦力はトップなのを知られたからな。 女子ネットワーク怖い。


「……では他に質問無いな? はい始め!」


「パン!」と手を叩くと同時に動き出す主婦見習い達。 この中の何人が純粋な思いで主婦を目指してるのかしら。 「働きたくないから主婦やります」って人の方が多そう。


そういう人に限って主婦の面倒さを知って諦めるんだよな。 主婦のコツは適度に手を抜くことなのに。 毎日バカ真面目にアレコレやってたら身体と精神が持たない。


さて、俺も取り掛かるか。


今日のお題はカップケーキとハンバーグ。 さっちゃんを先頭に、恋する乙女達が

「あの人に渡したい!」

って志願した結果、俺に白羽の矢が立った。 本当の意味で。 この男女比で前に出て先生役とか生贄だろ。


「先生、ちょっと」


「はいはい?」


さっちゃん達に呼ばれて調理台に行く。 『さっちゃんら』とは言ったが、俺の顔見知りはさっちゃんと遥さんしか居ない。 あ、あの俺に2人も顔見知りが……


「バターってこれくらい?」


「んー……もうちょい柔らかく」


「せんせ〜い、こっちは〜?」


「こっちも。 事前に室温には戻しといたから、溶けるは溶けるんだが……あまりにも溶けなかったら湯煎かレンジの手もある」


「わかった〜」


「あ、レンジは10秒ずつ、湯煎なら55℃前後でゆっくりと!」


「は〜い」


遥さんは返事をしながら器を持ってレンジへ。 あの人行動早い。


さて、と。 調理再開しないと。


と言ってもな〜 俺にとっちゃ慣れた作業だからすぐ終わるんだよな。 事前に準備終わらせてるから、混ぜて焼くだけなら30分程度。


「うぇぇっ!? こんなに砂糖入るの!?」


「これがあのカップケーキの中に……ゴクリ」


どうやら向こうの調理台では早速お菓子作りの洗礼を受けておりますね。 愉快愉快。


お菓子作りをすると嫌でも知ってしまう砂糖の量。 普段何気なく食べてる物でも、山のような砂糖が使われているのだ! 食うのを控えるのなんてできやしないだろ? でも食べてると太るのは明白。 太りたくないけどお菓子は食べたいこの矛盾に苦悩する顔。 愉悦っ!


「……マスク越しだから分からないけど、なんかあいつイキイキしてるわね」


「お菓子作りが好きなのかな〜?」


おっといけないいけない。 ぼーっとしてた。


俺もうやる事無いんだよな。 オーブンの余熱してたからもう焼いてるし、調理器具は洗い終わってるし、焼き上がり後の準備も済ませてある。


一方皆はまだ混ぜの工程に苦戦してる様子。 いやーはっはっはっもっと苦しむ顔を見せておくれ。 今の俺は性格悪いぞ。紅葉のイタズラが無い反動かな。


「アンタ、手が止まってるけどもう終わったの?」


「年季が違う。 何年作ってると思ってる」


「手際いいね〜」


やった褒められたでへでへ。 でも褒められるようなことはしてないからあまり嬉しくはない。


本来ならこの時間を使って見て回ったりアドバイスしたりするんだが……俺に知らん女学生に話しかけるような度胸は無い。 というかガスマスク男が近付いて来たらトラウマになるだろ。 何もしない俺英断。


「…………」


暇過ぎて黒板替わりのホワイトボードに落書きしてる。 そういや紅葉もこの時間は絵を描いてるんだっけか。 何を描いてるのやら。


「……アンタ、絵、上手いわね」


「集中を乱すな」


「なら集中乱れるような絵を描かないでくれる?」


えーでも流石の俺だってこの場の人種に配慮して萌え系の絵は描いてないぞ。 マスキュラーポーズをとる筋肉ムキムキゴリゴリのマッチョマンを描いてる。 食欲とミスマッチすぎるだろ。


「……それモデル誰?」


「君の想い人」


「人の想い人を勝手に筋肉ダルマにしないでくれる?」


だってなんか面白そうだったし……ムキムキとは無縁そうな爽やかイケメン禍塚くんがゴリゴリのマッチョになったら顔とのギャップで笑えるじゃん。


「ねぇねぇ、不知火くんは描かないの〜?」


「何リクエストしてんのよ遥」


2人は今日も仲良し。 んで、いつになったら禍塚と付き合うん?


それからも、ちょいちょい質問に呼ばれつつ落書きをしながら焼き上がりを待つこと30分。 上手に焼けました〜


「……うむ」


焼き具合を確認してみたが、どれも素晴らしい。 こんなにも素晴らしい菓子を毎日食える我が家の住人はなんて幸せ者か。 店に出せるクオリティだし、今度から金取ろうかな。 いや家賃と食費は貰ってるけどさ。


さて、あとは冷ますだけだ。


えー……コホン。一発ギャグが思いつかない俺とかけまして、思いつかない責任を俺に丸投げする作者と解く。


その心は、どちらも責任転嫁するカスでしょう。 そりゃそうだ全部俺の妄想なんだから。


「あとは焼き上がりを待つだけ……」


「皐月ちゃんそんなに張り付いて見てても早くならないよ〜?」


どうやら続々と焼き始めてる様子。 中には既に焼き終えて冷ましの工程に入ってる生徒もちらほら。 これ2限の終わりに間に合うかな……


「…………」


時間的にギリギリな予定を案じていたら、紅葉が鼻をヒクヒクさせながら現れた。 ちょっとだーれー? 廊下側の窓開けたの。 俺か。 そういや換気のために開けてたわ。


「……」


「…………」


紅葉と目が合った。 紅葉は俺の手元にあるカップケーキと俺を交互に見ている。


「…………」


紅葉が何やらノートブックに何かを書き込んでいる。 ノートブックって事は、外で写生でもしてたのか?


「……」


紅葉がノートブックを見せてきた。 カップケーキの絵だ。 実力に違わず、上手い。


「…………」


紅葉が目をキラキラさせながらこっちを見ている。 意図は分かったが、俺はあえて気付かないふりをした。


でも絵に拍手はしておく。


「はい、そろそろ焼き始めないと2限の終わりに焼き上がりが間に合わないぞー」


「!?」


伝わらなかった事が余程驚いたのか、紅葉は目を丸くしている。 何この言葉を一切介さない会話。 なんで意思疎通出来てんの?


「……」


紅葉がじーっと見ている。


無論、このカップケーキは紅葉が現れることを想定して多めに作ってある。 残りは泉ちゃんとその他の分。


だからこのカップケーキを渡しても問題無い。 のだが……


「先生! ちょっと」


「へいへい」


「!!」


紅葉はスルーして質問者の方へ。 しょんぼりしてる紅葉を見るとちょっとばかし心が痛むが、そもそも痛む程度の心は持ってなかったから幻肢痛だな。 お前結局認めてんじゃねぇか。


「ラッピングについてなんですけど……」


「先生デザイン系のセンス無いから好きな人へのラブ注入しとけばいいと思う」


俺のセンスの無さはお洒落着から溢れ出てる。 なんだ白Tに空色のシャツって。 もっとこう、他の主人公みたくジャケット着るとかしろよ。


「…………」


あれ、幻肢痛なのに中々収まらねぇな。 気のせいか、紅葉の頭に耳が見える。 なんだ病気か。 早退して病院行こ。


「ねぇ、ちょっと」


「はいはい?」


「アンタ紅葉ちゃん放置してんじゃないわよ。 見なさいよあの顔。 無視するからしょんぼりしてるじゃない」


「じゃあさっちゃんママが構ってあげてよ。 俺にそんな義務は無いし、今お仕置中だから」


「なんのよ」


「人の下駄箱の中に虫の玩具詰め込んだり椅子にブーブークッション敷いたり風呂上がりに水風船投げてくるイタズラ」


「…………」


流石の皐月さんも庇いきれないのか黙っちゃった。 俺は紅葉の目的が知りたいです。


「…………(プルプル)」


あ〜これ以上放置すると面倒なことになりそう。 さすがに声かけるか。


「……何の用だ」


「っ」


珍しく意識が向いていなかったらしく、声をかけると紅葉の肩が動いた。 あ、若干限界に近そう。 泣きそう? ねぇねぇ泣きそう?


「……別に」


「そうか」


この期に及んで意地張るってなら俺はお手上げだ。 お人好しじゃないのでね。 お人好しだったとしても底がクソ浅い。


「…………」


「…………」


戻ろうとしたら紅葉に肘の生地を掴まれた。 指で摘んでるだけなのに凄い力だ。 泣きそー


「……もう一度聞くぞ。 何の用だ」


「……特に用事は無い」


「なら離せ」


「奏士が無視したから離さない」


君今年いくつ? 子どもじゃないんだからさぁ……あ、いや紅葉はその辺子供か。 本来は親の教育と人付き合いで覚えるもんだからね。


「悪いがなんの事だが分からんな。 俺は先生としてカップケーキの作り方を教えてる最中だ」


「……私に気付いたのに他の子の所に行った」


「質問されたからな。 お前から何も言われないなら知らん」


「……気付いてたくせに」


「さぁてな。 俺はエスパーじゃないから言われないと分からんくてな」


「……ああ言えばこう言う」


それはお前だろうに。 うーむ、この際だし紅葉が社会で困らないように色々教育するべきか?


「仕方ないな……カップケーキ、食べるか?」


「!…………なんで?」


「作り過ぎてな。 ベル達にお裾分けしても余りそうだし、お前なら量あっても食えると思ってな」


「……どうしてもって言うなら」


そう言う紅葉は少し機嫌が戻ってソワソワしてる。 よくよく考えたら紅葉にあげる義理は無いのに何だこの義務感は。


「ほれ」


カップケーキを1つ持ってきて紅葉の前に出す。


「……♪ ありが──」


紅葉がカップケーキを取ろうとする直前、俺は手を引いてカップケーキを紅葉の手の範囲外にやる。


「…………」


紅葉はじっと見てる。 ちょっと怒ってる。


「……何するの」


「あげる前に聞きたいことがあってな」


「……何?」


紅葉はちょっとだけ緊張してる様子。 自分がイタズラした事について聞かれると思っているのだろうか。 大正解。


「いやな? 前にお前がチーズケーキ持ってきた日があっただろ」


「……一昨日」


「そう一昨日だ。 生徒会室で仕事終えた後にお前が取り出したよな。 珍しいな〜って思ってたらお前が箱から取り出して皿に乗せてくれてさ」


「……日頃の感謝」


「んで、お前確か紅茶をいれようとしたけど、茶葉が切れたとか行って生徒会室を出てったよな」


「……私としたことがうっかりしてた」


「そん時お前に『先食べてて』って言われたから俺は先にいただいた訳だよ」


「……それで?」


「これがびっくり本来は甘いはずのチーズケーキがとても辛くってさ。 試しにお前のを1口食べてみたらこっちは甘いんだ。 なんで俺のだけ辛かったんだろうな。 見た目は全部同じなのに」


「……お店の人が間違えた」


「と、思うじゃん? 俺、お前がチーズケーキ入れてた箱の店を調べてみたんだよ。 そしたら、辛いケーキなんて置いてなかったんだよ。 チーズケーキなんてホールで作ってから切るから、全部辛いならまだしも1切れだけ辛いなんて有り得ないよな。 なんでだろうな」


「…………」


紅葉は凄い汗を流している。 もう自白と同義だよね。


「なんでだろうなー? 正直に吐くならカップケーキをやるが、どうする?」


「…………」


今、紅葉の中で葛藤していることだろう。 吐けば貰えるが、怒られる。 吐かなかったら怒られないけどカップケーキは貰えない。 嘘ついても俺ならすぐ分かる。


「……私用に激辛にしたチーズケーキを奏士に間違えて渡しちゃった」


「紅葉、正直に言おうな? お前は辛いのが好きじゃないハズだ」


「…………ムカムカしてやった。 辛さの原因はスコーピオンパウダー」


殺す気かな? それでよく「辛かった」で済んだよ俺。 なんで無事なんだよマジで。


「まぁよろしい。 罰としてこのカップケーキはボッシュートだ」


「!? 約束と違う」


紅葉は頑張って背伸びして俺の手からカップケーキを取ろうとしているが、俺も手を上に伸ばしているから元の身長差で届かない。 ジャンプすれば簡単に届くのにしないの is 何故?


「んーっ!」


つま先立ちでプルプルになりながら背伸びしてる紅葉を見るとこう……嗜虐がゾクゾクするというか、調子乗ってる子どもに頑張っても届かない高みがあることを教え込む時特有の高揚感があるというか。 俺こんな性癖だったっけ?


「何意地悪してんのよ」


「ぐえっ」


「にゃっ」


後ろから後頭部にチョップされた。 「避けるのめんどくさいなー」とか思ってたら結構痛かった。 あと紅葉にケーキ取られた。


「……奏士は意地悪」


「よーく思い返せ。 何から何まで原因お前」


「……過去の事は水に流す」


「無理矢理流すと詰まるぞ」


「……負けた」


紅葉が何やら敗北を悟っている。 だと言うのに何呑気にカップケーキ食ってんだコイツ。 美味そうに食いやがって。


「性格悪いんだから……いや今回は紅葉ちゃんにも非があるみたいだけど」


「……皐月も奏士の味方?」


「私は正しい方の味方よ。 こんな常に強い方の味方する男と一緒にしないでよね」


初耳。 俺さっちゃんからぶり○りざえもんと同種だと思われてた。 俺は常に俺だけの味方だし、味方なんかいる訳ないだろ! 常にソロプレイだぞ! ネトゲでもワールドチャット系の機能を一切使わない。


「それより、はい。 紅葉ちゃんにお裾分け」


「……皐月の手作り?」


コレと比べると出来が悪いかもだけど」


「……ありがと」


「あ、じゃあ私も〜」


「え、会長に渡してもいいの? 私も!」


「ずるい! なら私も!」


「私も!」


「私も!」


皐月さんを皮切りに、紅葉を慕う皆が今日作ったカップケーキを手渡す。 いや……それ本来は想い人に渡すために作ったんじゃ……まあいいけど。 俺知らんし。


「……大量」


いつの間にか紅葉の両手には山積みのカップケーキが。 これだけ食べても太らないのが紅葉ボディ。


「……何?」


「いや……」


『なんでコイツ未だに人望あるんだ?』とか思ってないですからマジで。 あれだけ人前で素を見せておきながら保たれてる理由が分からないとか思ってないですから。


「……奏士も見習うといい」


「性格ブスの反面教師は間に合ってるんだよね」


俺はもう『柳一族』っていう性格最悪の反面教師が身近に居ますから。 多分鏡見ればいつでも見れる。


てか、流れで忘れかけてたけど紅葉がイタズラする理由を未だに聞けてない。 今のところ無差別テロみたいな理由しか判明してないんだけど。 癇癪持ちなん? それとも生理が長続きしててストレス過多なん?


「……今失礼なこと考えてた」


「真っ当なことしか考えてないぞ」


今この女の横っ面ひっぱたいたらさぞかし気持ちいいだろうな。 イタズラ1回は1回だと思ってる。 我が家はハンムラビ法典現役だ。


このまま説教タイムに行こうかと思った丁度その時、2限の終わりを知らせるチャイムが鳴り、あちこちの教室から学生が出てきた。 どうやら家庭科室を目指している様子。 多分もクソも無く、確実に目当てはこのカップケーキ。 女子の手作りを食べたがっている。 ゾンビかな?


「うえぇぇぇ……」


疲れ果てたベルが現れた。 最近頑張ってますね。


「……生きてる?」


「あ、クレハ…………ギリギリ生きてマース……」


そう言うベルに生気はない。 余程お疲れの様子。


「……何してたの?」


「次の資格試験に向けて模擬試験をもぎもぎしてマシタ」


「何言ってんのかわからんけどだいたい分かった。 おつかれさん」


労いをこめてベルにカップケーキを渡すと、活力が漲ったのか「やる気元気陰摩羅鬼おんもらき!」 って言いながら生気が戻った。 怖。


「いや〜助かりマシタ。 頭使ってると甘いものが欲しくなりマス」


「もう1個持ってくか?」


「なんと! デハお礼にワタシの脱ぎたてパンツを差し上げマス」


「お礼はゴミを押し付ける理由にならねぇぞ」


ベルがスカートの中に手を入れる前にカップケーキを渡す。 コイツなら公衆の面前だろうとやりかねない。


だって時々ノー下着デーやってる人だもの。脱ごうとしたって事は、今日はちゃんと履いてるらしい。 嫌だなこの確認方法。


「ソージは……ははぁーん? 1つの部屋に1人の男と沢山の女の子……さては赤ちゃんという名のお菓子作りをしようとしてマシタナ?」


「頭使い過ぎてバカになってんな」


「……それは元から」


「フォローが酷い!」


てか、普通に他の人に聞こえるから俺の肩身がより狭くなるような事言わんでもろて。 ただでさえフルフェイスガスマスクで肩身の狭さ6畳1間のワンルームなんだから。 ちなみにユニットバス。


「おっと次の準備をしなくてハ。 サラバダー!」


ベルは今日も元気。 目的を持って生きるって素晴らしいね。 人は生きる理由があると輝くものだ。


「…………」


一方紅葉は不満そう。 生きる意味失くした? 大丈夫大丈夫、どうせ死ぬまでの暇潰しが人生だってどっかの誰かが言ってたから。


「……奏士、ベルと話してる方が楽しそう」


「そうなん?」


自分でも意識したことは無かったが。 まぁ確かに会話のテンポというかノリは違うわな。


「……私と話してる時よりイキイキしてた」


「……いや、多分それイキイキしてると言うより懐かしさを感じてただけだな」


「懐かしさ?」


そう、懐かしさ。


最近はベルの描写が減ってああいったノリが薄かったから、前はあんなに嫌だったあのノリも今ではどこか懐かしい。 定期的に激辛料理食いたくなるみたいな感じだ。


「……ベルの方がいい?」


「誰とベルを比べてんのかは聞かんが、あれを毎回やられたら普通にキツイ」


どんなに美味しいものでも毎食は嫌だよね。 作者は一時14食連続袋ラーメン食ってた時があるけど、5回目くらいから飽きてた。


「……」


紅葉は満足いく回答だったのか、雰囲気が少し和らいだ。 どこかホッとしてるような……


「……そろそろ行く」


「そうか」


紅葉は両手に大量のカップケーキを持ったまま、ノートブックとペンケースを頭の上に乗せてフラフラと教室に戻っていった。 あれ大丈夫か?


「……春ね」


さっちゃんが人の肩に手を置いてそんなこと抜かしおった。 もうそろそろ夏ですけど。 あなたの春はいつ来るんですか? いつになったら俺に禍塚を正式に彼女持ちクソ野郎として処刑する権利をくれるんだ?


「春だ〜」


遥さんまで抜かしてた。 あなたはもうとっくに春来てるでしょ。 相変わらず不知火とどこまで行ったのか未公開ですけど。


「……ところで、2人はちゃんとアイツらに渡したん? さっきの休み時間中に」


「……あ」


「あ〜」


どうやらすっかり忘れてたらしい。 禍塚、不知火、ドンマイ(笑)


でもえー 人が折角時間合わせて渡せるように仕向けたのに忘れるとか……まいっか。 俺に被害ないし。


「はい、次の調理実習始めるぞ。 ハンバーグ作るから机の上片付けろー」


「「「はーい!」」」


うっせ 黙れ


さーて、紅葉にお説教する内容整理しとかないとな。 泣かないといいなぁ……


──────────────────────────────


「…………んがっ!?」


放課後 夕日が差す準備室でも助が目覚める。


「やっべ寝過ぎた……今日授業無くて良かったー」


問題は授業じゃなくて仕事中の居眠りでガチ寝の部分なのだが、今ここにそれを指摘する人がいないのだから仕方ない。


も助は寝起き眼を擦りながらフラフラと布団を畳んで準備室から出る。 当然、家庭科室には誰もおらず、扉も施錠されている。


「やっべ、コレ主任に怒られるな……」


それでも急ぐようなことはしないのがも助。 既に諦めの境地へ達している。


「……あ? 何だこれ」


教室を出ようとするも助の目に入ったのは、ホワイトボードの落書き。 今日、奏士が描いたまま消し忘れたものだ。


そこには、顔だけ元のまま身体だけ筋肉ダルマに変えられ、全員何かしらのポージングをしている学園のイケメン達が描かれていた。 文字にしても何を言っているのか分からないが、つまりはそういう事だ。


「……あれ、ここ家庭科室じゃなくてボディビル会場か?」


なんて事を言いながらも助は家庭科室を出る。 これはも助を忘れて帰った奏士達が悪いのか、職務中にガッツリ放課後まで寝たも助が悪いのか。 恐らく1:9で後者だろう。


後に残されたのはホワイトボードの落書きだけ。 本日は家庭科室を使う予定の部活は無いため、次に使うまでずっとこのまま残り続ける事になる。


その後、この絵は夜の見回りにて発見されるのだが、何故か「夜の家庭科室から番号と声援が聞こえる」と噂になったという…………


「っていう話ししてもいい?」


「あの……前置きで全部分かったので大丈夫です」


「ほえー 宿学にそんな噂があったんですか」


「ううん? この噂は私の作り話だから最後の奴だけ作り話だよ?」


「なんなんですかー!」


「ごめんごめん。 それにしても……先輩は面白そうなことになってるねぇ」


「奏士さんと紅葉さん、の事ですか?」


「まぁそれもあるっちゃあるね」


「? 逆にそれ以外何かあるんですか?」


「いや〜色々あるのよ色々」


「「?」」


「泉ちゃんと華ちゃんがキョトンとしたところで……では次回もお楽しみに! 次回は先輩があんなことやこんなことをするかも!」

はいどーも夜型すぎて最近起きたら基本夕方な作者です。 昼夕寝る癖が出てきてマズイです。


そんなことより


最近自分が迷走してないか心配になってきました。 特にこの辺はプロットが曖昧なことしか書いてないので次の明確なプロットまで道を照らして置かないといけないので苦悩してます。 てかこれ今回の最後とか迷走してますよね。 こういう時は脳疲労が限界に達してると思ってください。 夜型すぎて眠れなくて……


では次回もお楽しみに



PS 4月以降もちゃんと毎週投稿するのでご安心を ちょっと人手が足りなくてメンタル体力共に殺られるかもしれませんがちゃんと頑張りますので

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ