白猫と姉を名乗る人妻と……
翌日 翌日って……あ、このネタはやったか。
昨日のアレから時間が経ったから流石に忘れてるだろうなぁと思ってた。 甘い考えだった。
「……(じー)」
草葉の陰からすげぇ見てくる。 めっちゃ観察されてる。
いやそれだと紅葉死んどるやないかい。 視線の圧で死にそうなのは俺なのに。 実際は柱の影ね。
「…………」
「柳さん、アレは一体なんですの?」
「し〜らね。 ストーキングがマイブームなんだろ」
「他人事だねぇ……」
我がクラスのバカップル、もとい紅葉の保護者2人に聞かれても、俺はなーんも知らない。 知らない知らない僕は無知無知の無知だから知らない。
「……(じー)」
話しかけてくるとか、何かしらの嫌がらせ・脅迫をする訳でもなく、今日は朝からずーっと見てるだけ。 ははーん俺がイケメンということに気付いたから話しかけにくいんだな?
「…………」
「(ささっ)」
時々振り返ってみるが、その度に紅葉は視界から消える。 なんか見えない時だけ現れる系の妖怪みたい。 家の庭にあった石のガチャガチャから出てきたこのライト付き時計なら見えないかな。
「(じー)」
「……」
本当に何もしてこない。 探っているのか? それとも、昨日あんなこと言っといて、その実無計画だったのか? ノリと勢いは最初からクライマックスにするならいいけど、無計画が加わると途端に破綻するぞ。
「……本当に放置してよろしいんですの?」
「今のところ俺に害が無いからまだセーフ」
許容範囲超えたら速攻お叱りだけどな。 それでもお叱りで済ませる俺の寛容さに全※が涙しちゃうね。 全米じゃないのかよ。
「(じー)」
「貴方が構ってあげないから紅葉さんが不機嫌になっていますわよ」
「そういうのはお嬢様の役目じゃないですか。 なぁ彼氏さん」
「だそうですよ。 お嬢様が橋渡ししてあげないと」
「私、便利屋ではありませんのに……」
そんなこと言いつつも行動に移してくれるポニテさんマジ聖女。 この人めっちゃ煽てたら何でも言う事聞いてくれそう。
「紅葉さん」
「…………何?」
意外にも、紅葉は逃げも隠れもせずにポニテさんとのお話を受け入れた。 成程逃げるのは俺だけか……
「あの人と何かありましたの? 話くらいなら聞きますわ」
「……別に」
紅葉は顔を背ける。 台詞、態度、動作全てが「何かあった」と表現している。
「はぁ……喧嘩なら早く解決した方が身のためですわ。 長引いてもいいことはありませんの」
「……喧嘩じゃない」
「ではなんですの?」
「……奏士の弱みを握ってる」
「…………」
未だに名前がなんだったか覚えてないでお馴染みポニテさんが呆れ顔でこっち見てる。 ヤダ、視線の数が倍になったわ。
「君の弱みを握ろうとしてるみたいだね」
「観察なんてまどろっこしい事しないで、素直に首掴んで窒息させればいいのに」
「それは弱みじゃなくて物理的弱点だね」
そんなことしてたら予鈴が。 宿学の予鈴は音量が異様にデカイ。
「あら、早く行きませんと」
「お嬢様着替えるの遅いからなぁ……体育に遅刻するのはお嬢様1人だけにしてくださいね?」
「今日は紅葉さんも一緒だから問題ありませんわ」
「……何が問題ないのか分からない」
あれだろ。 同じ怒られでも自分以外に怒られてる奴がいたら怖くない理論だろ。 あれ聞いてる無関係側にも被害あるんだよな。 クソ面倒。
「では僕達はお先に」
「生徒会長が遅刻するなよな」
「……他人事だと思って」
「いえ、完全に他人事ですわ。 現状彼は何もしていませんし」
「!?」
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さーて体育中でも紅葉が見てくるぞ。 しかも今度は隣からだ。 超至近距離だ。
「(じー)」
「…………」
なんか慣れてきた。 相変わらず適応力高くて素晴らしい俺。 エクセレント俺。 マーベラス俺。 あと何があったかな……賛美?
「(じー)」
「ヒソヒソ……」
「ヒソヒソ……」
成程こういう弊害があるのか。 紅葉の視線には慣れたけど、「生徒会長が副会長をじっと見てる」っていう状況に周囲のヒソヒソ声が止まらない。 視線がさっきより多いよぉ……
「あれ、クレハはなーにをしてるデスか?」
「柳さんの弱みを握るために観察してるらしいですわ」
「それ、直接やる事?」
あちらでは仲良しガールズがパス回ししながらこちらを見てる。 視線増えたぁ……
「おーい柳ー! サッカーの人数足らねぇから入ってくれー!」
「えー」
不知火に呼ばれた。 団体球技は苦手なんだけどなぁ……テキトーに走り回って参加してる感じ出しときゃいいか。
「……あっ」
サッカーに行こうとしたら何やら後ろから声が。 なんだ? 離れるのが寂しいのか? しょうがないにゃあ……
俺の思念体置いてくからそれでも観察しといてくれ! じゃあな! ここでジャージの上を置いていくヘマはしないのが俺。
「…………」
それはそうと紅葉からの視線が痛いから早くサッカーしよ。 イナイレとカルチ○ビットで鍛えた俺のテクを見せてやる。
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Momimomi side
「…………」
……特に何も考えてなかった。
昨日啖呵切ったけどノリと勢いで言ったから具体的な策が無い。 まずい。
「そよ○ステップ!」
「うぉっ!? なんだ今のドリブル!」
「まるで風だな……松じゃなくて柳だけど」
何か思いつく可能性に賭けて奏士を観察してみたけど成果が無い。 強いて言えば奏士が授業を殆ど聞いてない事が分かったけど、学年首席の奏士だと弱みにならない。
「Z○ラッシュ!」
「そんな切り返しありか!?」
「奏士殿楽しそうですねぇ」
「必殺技練習してたんじゃないかな」
弱みを握れば交渉して過去を話して貰えると思ったけど、よく考えたら奏士は弱みとして使える弱点が無い。 弱点だらけなのに。
虫を放り込む案もあるけどそれは流石に交渉以前に奏士がショック死しかねない。 というか家を追い出されかねない。 まずい。
「ピュゥイっ!」
「カー!」 「カー!」
「カー!」
「カー!」 「カー!」
「な、なんだこの烏達は!」
「一体どこから……」
「指笛、鳥が5匹、シュート体勢……まさか!」
「おぉぉぉぉっ!! 【皇帝レイブンX】!」
「烏達がボールと一緒に!」
「はぁぁぁっ!! グ○ートバリアリーフ!」
……考え事してたら奏士が改変版の必殺シュート決めてる。 千聖の言ってた噂の1つが事実になった。
「ふぃ〜」
折角の作戦会議タイムなのに奏士が帰ってきた。 どこかスッキリした顔してる。 私はこんなに悩んでるのに。
「……(じー)」
奏士の目をじっと見る。 相変わらず目にも生気が無い。
「…………」
奏士が見返してきた。 上から見下ろされてるみたいで腹立つ。
「…………」
違う。 この男、私の目を鏡代わりにしてる。 サッカーで解けた髪を結び直してる。 無駄に長いんだから切ればいいのに。
「……」
奏士は綺麗に結べて満足そう。 奏士は少しくらい他人を思いやる気持ちがあってもいいと思う。
「…………」
「……(じー)」
「……それやってて楽しい?」
「楽しいわけない」
「成程あえて苦痛に身を投じるドMか……ドMのMはMOMIJIのMか?」
「…………」
「おい顔に触るな」
相変わらずの言い回しにイラッとしたから奏士のほっぺをペチペチしてみた。 頭を撫でられるのを嫌がるし、奏士は触れられるのが苦手?
「……♪」
……ちょっと楽しくなってきた。 男の子にしては奏士の肌が綺麗だから触り心地が悪くない。
「触れるな言うとろうに。 そんなに触りたかったら自分のもちすべ頬っぺに触れ」
「……自分のを触っても意味が無い」
「なんだコイツ」
奏士は「水道言ってくる」って言って後にした。 頭グリグリ撫でられた。
「紅葉さん、私とPK勝負をしませんこと?」
「…………」
「……頭を抑えてどうしまして? 痛みますの?」
「……奏士は時々雑」
「……何の話ですの?」
このままでは時間だけが過ぎていく。 こうなったら人の手を借りるしかない。
「……ちょっと電話してくる」
「ちょっ、紅葉さん!? 授業中ですわよ!」
「……急用だから仕方ない」
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「……なるほどねぇ」
放課後 家に天音さんを呼んで事情を説明した。 生徒会の仕事は奏士にお願いしたからまだ帰ってきてない。
「ふむふむーふむふむ……つまり紅葉ちゃんは奏士くんが気になって気になって仕方ないってことなんだね」
「……上手く伝わってる気がしない」
天音さんは恋愛脳だから何でもかんでもそっちの話に結び付ける。 人妻になったんだからいい加減大人しくなってほしい。
「強情だなぁ〜 それで? 紅葉ちゃんはどうしたいの?」
「……奏士の弱みを握って交渉する」
「……弱みを握る以外の選択肢は?」
「……そんなものがあるなら既にやってる」
泉を人質に取るとか、奏士に自白剤を飲ませるとか。 でも前者はリスクが大きいし、後者はそもそも自白剤が無い。 ベルの実家の会社に頼めばワンチャン貰えそう。
「うーん……無理やり引き出した答えに意味はあるのかなぁ」
「……少し痛い」
流石にそれは少し自覚してた。 理事長も「無理に引き出すな」とは言っていた。
「やっぱり、奏士くんが言いたくなるまで待てばいいんじゃないかな」
「……このままだと卒業まで言う気配が無い」
規約上は「次の家が見つかるまで」だったのを、無理言って「卒業まで」に延長してもらってる身。 普段は色々言ってはいるけど、学園を卒業したら家を出ていく必要がある。 となると、奏士とは仕事以外で確実な繋がりが無くなる。 つまり聞く機会を失う。
「……いっそ奏士くんに言っちゃえば? 『大好き』って」
「……なんで?」
さっき切ったハズの恋愛路線がまた戻ってきて少し困惑。 天音さんはしぶとい。
「ほら、流石に恋人を無理に追い出すことはしないと思うし。 恋愛の初手は意識させることだから、可愛い可愛いとっても可愛い紅葉ちゃんが自分を異性として惚れてる事が分かれば流石の奏士くんも────少しくらい…………ごめんやっぱり今のはナシで」
「…………」
大きな接点も無いのに、奏士は天音さんからどんな評価をされているのか。 あの天音さんが自信を無くす瞬間を初めて見た。
「むー……奏士くんの攻略が難しいよ〜」
天音さんは机にビタっとうつ伏せで張り付く。 ベルは一体どうやって奏士を攻略しようとしたのか。
「……やっぱり、脅────交渉が1番手っ取り早い」
「あれ今本音が……でもそれだと完全な解決にならないし〜……」
「…………」
ここまで来ると、あそこまで強情な奏士が悪いみたいな考えになってきた。 これはさすがにダメな考え。
「……じゃあもう奏士くん襲って既成事実でも作っちゃう?」
「…………」
「ああっ! 紅葉ちゃんがお姉ちゃんに向けちゃダメな目で見てくる!」
流石にこれはどうしようもない。 天音さんは見た目に反して意外と肉食。
「だってぇ……今の紅葉ちゃんは奏士くんにおんぶにだっこというか生活の大半を任せてるから大きなことは言えないし……もうここは日々のお礼と称してエッチなことするしか無いよ!」
「……色々尊厳を捨て過ぎだと思う」
「何を言うの! 紅葉ちゃんそんないいカラダしてるのに! こんな大きなものもぶら下げて! これを有効活用しない手は無いよ!」
「……ヤケになってる」
確かに主観的に見ても自分はとても魅力的だと思う。
だと言うのにあの男は一度もそういった素振りを見せない。 なんだかどんどんムカムカしてきた。
「……でも流石に却下」
「なんで!」
「……奏士がトラウマ増やして本当のインポになる」
「あ〜……」
ただでさえ人嫌い、対人メンタル雑魚、3次元に興味無しのお得三点セットが揃っているのに、これ以上対人恐怖を増やしたら奏士が本格的に人と関わらなくなっちゃう。 そうなったら私も色々とまずい。
「……じゃあもうやっぱり奏士くんが話してくれるまで待とう! 紅葉ちゃんが卒業後もこの家に置いて貰えるようにお姉ちゃんも手を貸すから!」
「……結局そこに行き着く」
「ふっふっふっ……お姉ちゃんは恋する女の子の味方なのだ。 それが紅葉ちゃんなら味方の味方! 3々3で9方!だよ!」
「……天音さんにも奏士語が……」
恐るべし奏士語の感染力。 これはもう戻らない。 名無。
「たでー」
奏士が帰ってきた。 普段より声が疲れてる。
「はーい」
私が迎えに行くより早く天音さんが部屋を出てった。 あの人何をする気なのか。
「おかえり〜 お風呂にする? ご飯にする? それともお姉ちゃん?」
「なんで居んのあんた」
「ブブ〜 3択以外は受け付けてないでーす」
「なんだコイツ」
奏士が帰宅早々ドン引きしてる。 天音さんも天音さんで、人妻なのに後輩にそんなことしていいのか問題。
「そんなこと言う後輩には、私の可愛い可愛い紅葉ちゃんを進呈するよ! 一生大事にしてね♡」
「どっちにしろ手に余るからい〜らね」
「…………ꐦ」
「何? なんだ肩叩きか? それとも骨砕きか?」
「…………お仕置」
「紅葉ちゃんに慣れてきてる……」
ムカつく事にこの男、無駄に適応力が高い。 今だって叩いてお仕置してるのに平然としてる。 前は反省したのに。
「んで、誰? コレ呼んだの」
「……私」
「本人目の前にして『コレ』呼ばわりはどうなの?」
奏士は「だってなぁ……」とでも言いたそうな顔をしている。
「まぁいいや。 何してたん?」
「……別に」
「では解答権が譲渡されまして」
「ふっふっふっ……ヒ・ミ・ツ♡」
天音さんがパチンとウィンクをした。 奏士はまた嫌そうな顔。
「女の子には聞いちゃいけない秘密があるんだよ。 どうしても知りたかったら紅葉ちゃんを娶る事だね!」
「そこまでの興味と覚悟は無い」
「意気地無し!」
「なぁこれそこまで言われること?」
「……私に聞かれても困る」
「お前のお客じゃん」
奏士はそんなことを言うけど、私だって今の天音さんは制御しきれないからどうしようもない。 さっきまでは私が相手してたから今は奏士に任せる。
「俺の部屋入った?」
「……入ってない」
「ならいいけど……あまり遅くならないうちに返すんだぞ。 新婚早々浮気を疑われてスピード離婚とか笑い話にしかならないからな」
「でも私、君が笑ってるとこ見たことないよ?」
「……私も」
「マジか」
言ってて思い返してみると、どこまで遡っても奏士の笑顔を見た覚えが無い。 本人曰く、表情筋が有給消化中らしいけど本当の事は分からない。
「俺に用が無いなら部屋行くけど、煩くするなよ? この家は人間を基準にした強度だからな?」
「……私だってか弱い人間」
「か弱い人間は170kgを簡単に持ち上げないぞ」
「……それは火事場の馬鹿力的なの」
「お前常に瀕死なん?」
奏士は「そんなことより」と切り返す。 私が人間か否かが「そんなこと」で終わった。
「ちゃんと客に飲み物は出したか?」
「……出した」
「お茶請けは?」
「……出した」
「おしぼりとかは? 」
「……奏士、いちいちうるさい」
「言わないとやらない可能性があるからな」
「……(ムッスー)」
「紅葉ちゃんが膨れてる……」
口煩い奏士は背中を押して部屋に押し込む。 奏士が部屋に入ったタイミングで重政も目覚めた。
「…………」
「……えいっ☆」
突然、天音さんに頬を押された。 口の中の空気が抜けた。
「……何?」
「んーん? 紅葉ちゃんは可愛いな〜と思って」
「……?」
天音さんはなんだか嬉しそうな顔でニコニコしてる。 変なものでも食べた?
「奏士くんも帰ってきちゃったし、続きはまた今度にしよう!」
「……突然」
「大丈夫! 私はいつだって紅葉ちゃんの味方だよ。 あ、紅葉ちゃんが明確に悪い時以外ね」
「……一瞬で矛盾した」
あまりの勢いに一瞬流されかけた。 あの天音さんが奏士の悪影響を受けて言動が支離滅裂になってきてる。
天音さんは部屋に戻って鞄と上着を持って戻ってきた。 来る時も来ていた白い上着。 花粉が凄く着きそう。
「……気を付けて」
「それじゃあバイバイ。 奏士くんにもよろしくね」
「……(コクリ)」
チラッと奏士の部屋の方を見ると、お庭の方から奏士が蔵の扉を開ける音が聞こえた。 一応、暫く戻らないみたい。
「あ、そうそう」
天音さんは靴を履いているからか、自分から来るのではなく、私を手招きした。 玄関は高さがあるから少し屈むのが面倒。
「私はいつでも報告を待っているよ。 奏士くんと末永くお幸せにね♡」
「…………」
「それじゃ、バイバーイ!」
天音さんは不穏な耳打ちをすると、私が何か言う前に帰って行った。 また変なことを言ってる。
「工具工具……あ? 玄関何してんだおめー」
「……なんでもない」
「さいすか。 工具工具……重政ー 俺の工具箱知らんかー?」
「なぁ〜お(知るか)」
「ちっ、使えねぇ……どこだよ工具箱」
本来飼い猫とするはずのない会話をして奏士はまたどこかへ行った。 工具箱なら靴箱の下にあるのに……
「…………」
──────────────────────────────
夜 気配を消して、音が出ないように襖を開ける。 奏士は微かでも感じとったら起きるから面倒で困る。
「xyz……」
どうやら奏士は珍しくぐっすり寝ているらしい。 凄く近付いても全く起きる様子が無い。
「…………」
起こさないようにそっと布団に入る。 幸か不幸か、奏士はお庭の方を向いて横向きに寝てるから私が入るスペースはあった。
「……」
「za……」
奏士の背中にそっと触れる。 絶妙に頼りないけど男の子だから私より大きくて硬い。 奏士のくせに筋肉はいっちょ前にある。
「……」
ぺたぺた触ってみても起きないから、思い切って密着してみる。 胸が押し潰されるくらいぴったりくっ付いてみるが、奏士は全く変わりない。
なんで深夜に男の子の部屋に忍び込むなんて真似をしたのかは自分でもよく分からない。 なんだかそうしなきゃいけない気がして、気が付いたら布団に入ってた。
「∑∑∑……」
さっきから奏士の寝息がおかしい。 でもこれに触れたらなんだか目覚めそうだからあえて流す。
「……」
こんなにも密着してるのに、本当に奏士は全く起きないし身体の変化も無い。 男の子は寝てる間に大きくなって硬くなるらしいけど、奏士はどうなのか。 確かめたいけど布団で見えない。
「…………」
気が付けば奏士のことばかり考えてる気がする。 そういえば、今日は絵を描いてない。
「…………」
ふと、天音さんに言われたことを思い出した。 私が奏士を好きとかどうとか。 あの人は昔からおかしなことばかり言う。 今は異様に奏士と結婚させようとしてくる。
『お姉ちゃんは恋する女の子の味方なのだ! それが紅葉ちゃんなら味方の味方! 3々3で9方!だよ!』
本当に、意味が分からない。 奏士が美少女の私に惚れるならまだしも、私が男の子に興味を持つなんてありえない。
『奏士くんと末永くお幸せにね♡』
「……」
天音さんの言葉は忘れよう。 脳の容量の無駄遣いだ。
「zero-one……」
私が色々考えてる間も奏士は何も変わらない。 前みたいに可愛い寝顔を見せてる。
それを見てたら色々どうでもくなってきた。 私も早く寝よう。
このままでは寝にくいから奏士と背中合わせになる。 さっきまでより奏士の体温を感じた。
「……バカ」
詳しいことは、明日起きた時か、その時になってから考えよう。 そう思い、私は目を閉じた。
そして翌朝、私より早く起きた奏士に怒られた。
はいどーも自分が近所の幼稚園で不審者として認識されてると知って泣きたい作者です。
弁明すると、私はロリコンでもあるだけでロリコンではありませんし、幼稚園児に興奮はしません。
ただ、幼稚園の隣を通らざるを得ないことが最近何度かあり、そのついでに幼稚園の様子を外から見てただけです。 直射日光が苦手なので、フードを被って。 書いててなんですけど完璧に不審者ですね。
この話をその幼稚園に通ういとこから聞いた時は焦りました。
「なんか最近近くで不審者が出たんだってー」と。 泣いてもいいですか?
そんなことよりほんぺぇぇぇんです。 ちょっと古い言い方するとほんへです。
今回は主に紅葉視点の回です。 紅葉視点だと地の文が物凄く難しくて難産でした。 奏士の地の文のどんなに楽な事か……いやあれはあれであのイカレポンチを再現するのに苦労してますけど。 紅葉さん、色々淡白で……
また1歩進行した気がします。 この作品は相変わらず無駄に長く停滞するくせに進む時は一気に進む。 ちゃんとしてください作者さん。
ではこの辺で。 次回もお楽しみに。




