白猫とお花見と誰よその女!
書き忘れたのでここに
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来週までに片付ける必要のある用事ができたので。
いや片付ける(暗殺)とかでは無く。
本日はお花見です。
もう一度言おう。 お花見です。 ちなみに花見のシーズンはとっくに過ぎてる。
だが、幸か不幸か我が家の桜は未だ満開! 無月! 花枯れるやないかい。
今もこうして風と共に桜の花びらが舞い踊る。 桜の花びらって微妙に掃除しにくいんだよなぁ……ブロワーのバッテリー持つかしら。
そんなお庭の真ん中にレジャーシートを敷いて弁当を広げ、続々と人が集まって周囲に靴が並んでいる。 本当にお花見だぁ。
「ソージー! こっちは準備出来マシター!」
「はーいはい」
「悠、この酒どうする?」
「そこら辺にでも置いておけ」
「ちゃんとこっちに置いておかないとダメよー? あの子達が間違えて飲んだら大問題だもの」
「あーいあい」
今日のお花見はいつものメンバーが勢揃い。 いつもの酒飲みが3人に現柳家の4人。 柳家殿堂入りの泉ちゃんと、誰かさんの嫁こと薪姫。 とりあえずは9人。
あとはそこら辺に居るであろうベルの護衛集団と多分来る頼金で10人ちょい。 俺は誘ってないから知らん。 そういうのはベル達の役目だし。
「ごめんくださーい!」
おっと誰か来たようだ。 これは薪姫かな?
「あ、レジ袋は要りませーん!」
そしてこれは頼金かな。 巫山戯てるし。
「ソージー? お客さんデスヨー」
「俺今手が離せないから莇にでも行かせろ」
「OK! アオバー! ワイフが来マシター!」
どんな呼び掛けだよ。
と思ったが俺は揚げ物中なので口には出さないでおいた。 これは素晴らしい唐揚げですよ。 明日また来なくても本物の唐揚げを食わせてやれる。
「…………」
紅葉が厨房入口にある暖簾の影からこちらをじっと見ている。 仲間になりたいのか?
「…………」
違う。 見てるのは俺じゃなくて唐揚げの方だ。
「……1つ、味見するか?」
「! (コクコクコクッ)」
おお、激しく頷いた。 首折れない?
楊枝を刺して唐揚げを持っていくと、紅葉がまだかまだかと口を開けと待っていた。 鳥の雛に餌あげてる気分。
「熱いから気を付けろよ」
「…………熱い」
紅葉は舌を出して抗議。 ロクに冷まさず食べるから……
「およ? クレハ、舌出してドシマシタ? ディープキスのお誘いデスカ?」
「真っ先にその発想に至るの末恐ろしい」
「……奏士に熱々の(唐揚げ)を口に入れられて舌を火傷した」
「ンなっ!? 既に尺八済みだったとは……中々のヤリ手、もとい口デス……」
なんでこの女はキメ顔してんの? 強敵目の前にして冷や汗かいてる戦闘狂じゃねぇんだぞ。
「…………」
「隙を作ったお前が悪い。 ちゃんと弁明しろ」
「……口で咥えてない」
「……ナルホド。 つまり手○キ飛ばしデスカ……隠れてやるにしては結構なハイレベルデス」
「どうすんだこれ」
「……誤解が解けないなら誤解じゃなくする?」
「うんそれで『じゃあ実際にやってみよう』とはならないからな?」
どうやら紅葉も困惑している様子。
……いや普段からこんな感じか。 元から思考回路がおかしいから分かんねぇや。
「それはそうと」
うわコイツ自分から始めたやり取りを流しやがった。
「ソージソージ。 ハナが探してマシタ」
「俺を?」
「YES。 不倫デスカ?」
「…………」
ほらーベルが変な事言うから紅葉ちゃん殺気放っちゃったじゃん。
でも言っとくけど、俺────というかオタクと呼ばれる人種相手に浮気で怒っても意味ないと思うぞ。 年中無休で真剣に浮気してるし3ヶ月スパンで嫁が変わるし。
紅葉は追加の唐揚げという賄賂でどうにか宥めて薪姫の元へ。 そういやどこおるん? 庭? 莇の部屋でイチャコラ? これは莇の脇腹に刺突定期。
「薪姫ー」
「はいはーい! お庭でーす!」
探すの面倒臭いから試しに呼んでみたらひょっこり出てきた。
ちなみに、襖や障子を開けていると厨房→居間→縁側(庭)と凄く見通しが良くなるから呼ばなくても庭で準備してる皆を一目で見れるぞ! 呼ぶ意味は殆ど無い!
「何用?」
「えーとえーと…………あれ? えーつとぉ…………あっ! そうでしたそうでした。 手ぶらじゃアレだからお花見のお弁当作って来たんですけど、これはどうしますか? そちらでも作ってるみたいなので……」
「あぁ、心配しなくても米1粒残さず食う奴がいるから出しちゃっていいぞ」
「はーい!」
にこやかに手を挙げて良いお返事。 薪姫、中身と1部除いた見た目が幼い印象を受けるが、変な癖が無いから凄く会話がしやすい。
「……なんだったの?」
「なんか手ぶらがどうとか聞こえマシタ」
変な癖がある奴らが来ましたね。 縮毛矯正でも直らない。
「弁当が増えただけだ。 もやる事ないなら庭の準備手伝ってこい」
「……アイアイサー」
「すイ○んサー!」
2人はピシッと敬礼して庭へ向かう。 あ、俺のサンダル履かれた。 俺どうやって庭に出れっちゅうねん。 浮遊か? 空中浮遊なのか? 念力という手もある。 手で触れないのに手もあるとはこれ如何に。
「っし」
厨房に戻って調理再開。 こっちも大急ぎだ。
それぞれのおかずを同時並行で作りながら庭の方をチラ見。 今日も泉ちゃんは可愛い。 去年は春服殆ど見れなかったからレアだね。
それはそれとして、こっちも集中しないと。 唐揚げとかは一気に作れるけど握り飯とかは1つずつだから大変だ。
にぎにぎにぎにぎにぎにぎ瓊瓊杵尊木花咲耶姫。 石長比売は? その方は受け取り拒否されたので……
あこれっくらい(六畳一間)の! お部屋の中にっ! 義理兄義理兄ちょいと詰めて! (監禁) ヤンデレ義妹に包丁持たせればアナザーストーリーの完成。 あれ俺今何作ってた? おにぎりじゃなくて新しい概念作ってた?
いや新しい概念ではないな。 既存弄っただけだし。
そう、新しい概念。 新婚風に言うと「あ・た・た・た・た♡」 新婚ってか死ん痕になりそう。
よし、おふざけチャージは完了。 やっぱこれだね。 プリ○ツサラダ味。 チョコ以前にロ○テですらない。
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「揃ったな? えー……では僭越ながら。 提案者の俺から乾杯の音頭を取らせていただくとしよう」
も助が咳払いしながら立ち上がって言う。 なんで休日も白衣なん? そういうキャラ付け? 立ち絵無いのに。
「タダ酒とタダ飯に感謝! 乾杯!」
「「「かんぱーい!!」」」
「……酷い音頭」
「本音隠す努力とか辞書に無いんだろ」
同人誌くらい薄そうだし。 サイズは文庫本。 もしくはガチャガチャ辞書。
「〜〜〜っあーっ! このために頑張った!」
早速も助がビール缶片手に叫んでおる。 今日は飲め飲め。 吐く時は自分の服の中に吐け。
「そら、飲め飲め」
「よく頑張ったわね。 今日は好きなだけ飲みなさい」
「おっとと……では遠慮なく」
早速ビール缶を空にしたも助に悠ちゃんが升を持たせ、瑠姫さんが清酒を注ぐ。 升酒だ。
「あ〜……なんか違法薬物に手を出してる気分」
「危ない表現やめろ」
「幸せ」って言いたいんだろうけどさ。 凄く悪いことしてる感じになるから辞めろ。
「そら、奏士も飲め飲め」
「おい」
もう1つの升に並々と清酒を注いで差し出すも助。 せめて量考えろや。 升酒で並々は零すだろ。
てか、なんか自然と俺が酒組の相手させられてない? これ学生組とどっちが平和だ?
「あら」
受け取った升酒に桜の花びらが1枚ふわり。
「花見酒か」
「オツだな。 良かったな奏士」
「いや汚いから普通に退けるけど」
冷静に考えて、野晒の桜とか綺麗でも汚いよね。 確かに見た目はいいけどさ。
「捨てんのか? じゃあその花びらくれ」
「どうすんだ?」
「俺の酒に浮かべる。 人工花見酒だ」
それオツもクソも無いだろ。 自然とは真逆のことしてるじゃん。
「でも実際、一緒に飲んで大丈夫なのか?」
「毒性とかは無いから一応は大丈夫じゃない? 雑菌とかは……一緒に飲むお酒がどうにかしてくれるわよ」
「────ぷはっ! アルコールの力って偉大だよな」
談笑しながらも凄いスピードで酒と飯が減っていく。 色々疲れてるんだね。
「……うげぇ」
受け取った升酒を1口。 すげぇ……エグイなこれは。
「どうした奏士。 いつも以上に不細工だぞ」
「そうね。 5倍くらいかしら」
「折角のイケメンが台無しだな(笑)」
「そっちに火がつくもんない?」
「……あっても渡さない」
ちっ
「んで、どうしたよ」
「いや……何だこの酒。 すげぇ臭ぇ」
「なんだ。 この味が分からんとはお子ちゃまめ」
「奏士もまだまたね〜 お酒はこの匂いがいいんじゃない」
「身体だけでかくなりおって。 酒を呑めても味は分からんか」
うわなんだコイツらウッザ。 ウッッッザ!
「料理にばかり酒を使ってるからそんな体たらくなんだぞ! もっと日頃から飲め!」
「教師がどストレートなアルハラすんな」
これ然るべきところに報告したら勝てるよね。 教育委員会とか、学園のトップとか。 あ、学園のトップここに居るわ。
「そうだぞ! 酒を飲めなきゃ飲みニケーションもままならんぞ!」
「酒に弱い奴も飲みニケーション失敗だろ」
学園のトップが古臭いアルハラしやがって……飲みニケーションする相手が居ないんじゃい! じゃあ問題ないな。
「でも、お酒の味が分かるって素敵なことよ? 楽しみが増えるし、味が分かった瞬間に大人になった感じがするもの」
「あ〜わっかるぅー!」
も助は無駄にテンション高い。 酒をがぶ飲みするから回りが早い。
「なんというか、こうして成人して酒を飲むようになってもなお、自分を『大人だーっ!』って思うことってあんま無いけどよ…………大人にしかできないことしてる時だけは子どもじゃなくなるんだよな」
まぁ確かに。 何となく言いたいことは分かる。
「競馬とかパチンコとかな」
うーんそれは分からなかったかな。 これはも助の習性を考慮しなかった俺のミス。
「奏士も大きくなったな。 クソ生意気なガキがこんなにでかくなりおって」
「そうねぇ〜 昔は色々と小さかったものね〜」
「背とかチ○コとかな」
「2つ目は含めなくていいだろ」
そんなこと言ったら悠ちゃんなんか未だに小さいんだぞ! 背も胸も!
「も助、空の酒瓶あるか?」
「おお、あるぞ」
「暴力反対」
あと器も小さいみたいだ。 酒瓶は凶器レベル高杉だからダメダメ。
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一方その頃 学生組は
「ぐぬぬ……ハナのお弁当がワタシより美味しくて悔しいデス」
「諦めましょうお嬢様。 華さんはその道10年以上のプロです」
「え、えへへ……」
「くっ! 夜の料理なら負けないのに!」
「……でもベル先輩未経験じゃないですか」
「うっ!」
「……そっちの面でも華に負けてる」
「ぐはっ!」
「あ、あの……ベルさんが胸を押えて蹲ってますからその辺で……」
「……夜の料理ってなんですか? お夜食の事ですか?」
「そうですねぇ……ある意味夜食でしょうか」
「うわ白々しい。 華ちゃん傷物にしたくせに」
「……黙秘権を行使します」
「そうだ! 結局華とはどこまで行ったんデスカ?」
「……色々あって聞きそびれた」
「あ、あーっとぉ……泉ちゃん助けて!」
「あ、えっと、その……ごめんなさい。 正直私も少し……」
「そんなぁ! 千聖ちゃん────は絶対向こう側だし!」
「華ちゃん?」
「いい信頼ですね」
「いや最初から信頼されてないんですけど」
「それも仲良しの証、デスよ! 」
「私以上に信頼されない人に言われた! サムズアップ腹立つ〜!」
「ブーブー!」
「……ベルが逆エド○るみになった」
「あの……結局華さんとのお話モゴッ」
「泉ちゃんしーっ! このまま話がズレてくれたら被害が出ないからしーっ!」
「あ! ハナが泉に背面指フ○ラさせてる!」
「良かったですね莇先輩。 推し同士の絡み合いですよ」
「この場合私は寝盗られた側では?」
「……寝盗られは許さない」
「やっべ会長純愛厨だ」
……こっちはこっちで騒がしくやってる様だ。
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「…………そういえば、奏士に前々から聞きたかったことがあるんだが」
「あ?」
悠ちゃんがおむすびを頬張りながら言った。 リスですか?
「……奏士、お前突然胸とか揉みたくならないのか?」
「従姉と猥談はキツイんだけど」
も助は同棲だし、瑠姫さんは仕事で散々こういった話をしてるからいいよ。
でも従姉はキツイって。 ただでさえ接し方考えてんのに。 従姉って少し気を使うぞ! 長年近くにいるから従姉って感覚薄いけど。
「まぁ聞け。 私はお前の社会性を取り戻そうと、この1年は無理矢理にでも人と触れ合わせてただろう?」
「そうだな。 ありがた迷惑な事にな」
ほんといい迷惑だ。 俺はこのまま自由気ままに重政と生きていくつもりだったのに。
「これに関してはある意味で成功したと言えるんだが、別の問題があるだろう」
「問題?」
「……同じ家に異性を住まわせた結果、予想以上に禁欲的環境を作ってしまった」
「「……あ〜」」
「あ〜」じゃないのよ。 最初はほんと困ってたんだからマジで。もうちょい早く気づいて欲しかった。
「無駄に乳のデカイ美少女が日頃から薄着で自分の部屋に出入りし、しかも2人とも妙に距離感が近い。 いくら奏士でもこう……時々ムラっと来るだろう?」
「いや来たことないけど」
「嘘だっ!」
「えぇ……」
本当のこと言ったら勢いで全否定された。 本当にしてないのに……ムカムカならしてるけど。 何度顔殴り飛ばそうと思ったか。
「奏士、強がりはやめろ? お前は正直になっていいんだ。 今ならどんな事でも酒の力でごまかせる」
「無理矢理望む証言を引き出しても無効になるんだぞ」
あとYESもNOも悪い未来しか見えないから答えたくない。 沈黙が正解なんだ。 周知されなければ問題にならない。(読心系能力者を除く)
「……んで、そこんとこどうなんだ? アイツらに欲情はしなくても、溜まり続けたら唐突に来る時があるだろ」
「俺は何も言わんぞ。 どう転んでも後が怖い」
「「「……ちっ」」」
おっとコイツら舌打ちしやがりましたよ? 舌切り取って出血多量でヒリヒリしちまえばいいのに。
「なーんだつまんねー」
「空気読みなさいよねー アンタが修羅場ってもそれが酒の肴になるんだから」
「紅葉、握りやすい瓶くれ」
「……絶対ダメ」
ちいっ! この際握りにくい瓶でもいい! 太客のキープボトルとか!
「……おい、アイツもしかして興味云々以前にEDじゃないのか?」
「もしくは心療系、かしら。 でも2次元の子には反応するのよねぇ……」
「やっぱ1回診てもらった方がいいって。 じゃないと後々の被害が大きいぞ」
「もう被害出てるがな。 こんなことになるなら昔行かせておけば……」
「今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ。 奏士と奏士以外の将来のためにも、今こそ頑張らなきゃだ」
「「「…………(コクリ)」」」
3人が静かに頷く。 どうやら不穏な会議は終わったらしい。
「奏士、後で私たちと楽しいところに行かないか?」
「えぇ、とっても素敵な場所よ」
「帰りに焼肉でも行こうぜ。 今回は俺が奢るからよ」
「もしかしてこれバカにされてる?」
この程度で俺が騙されると思われてる事に怒り心頭。 髪とか逆立つし金髪になる。
「じゃあ気になる女とか居ないのか!」
「そうだそうだ! 浮かれた話の1つもないぞ!」
「クラスで浮いてる話ならありそうね」
「うるせぇ」
なんだコイツら喧嘩売ってんのか? てか酔いすぎだろ。 しつけぇ。
「ヤメだヤメ。 くだらないこと話してないで花見に集中しろ」
「こんな話をするのも花見の醍醐味だろ」
「どんな話もお酒があれば笑い話になるのよ。 お子ちゃま奏士は覚えておきなさい」
「大人は話題を選ぶことを覚えなさい」
「どうする大人。 言い返されたぞ」
「そうねぇ……お酒飲んで流しちゃいましょうか」
「さんせーい! 奏士、そこのウォッカ取ってくれ」
「花見にウォッカ……まあいいけど」
「花見する時くらいビールか清酒で統一しろよ」と思ったけど言わないでおいた。 俺今卵焼き食べてるし。
「奏士、私には水を頼む」
「あら、悠ちゃん飲みすぎちゃった?」
「まだ行けそうですが……念の為に」
「そう? あ、私は日本酒が欲しいわね。濁酒とか」
「今家にあるのはマッコリくらいだぞ」
「それでいいわ。 どこにあるの?」
「あぁ、厨房に保管してるから俺が取ってくる」
「よろしく〜」
自分から言い出してなんだけど、酒飲みながら返事されると腹立つな。 マッコリじゃなくてまりも○こり持ってってやろうか。
……あのキャラクター、よく企画通ったな
「っとと」
立ち上がろうとしたら少しよろけてしまった。 危うく転ぶところだった。
「大丈夫か?」
「問題無い。 流石に少しは酒が回ってるらしい」
「大丈夫なの? 無理そうなら私が自分で取ってくるわよ?」
「俺以上に酒回ってる人に任せるよりは安心だからいい。 それより、あんま飲みすぎんなよ?」
「だ〜いじょ〜ぶよ〜 自分の限界くらいちゃんと分かってるわ〜」
既に呂律が怪しいが……今はそういう事にしておこう。
「じゃ。 他に持ってきて欲しいものはあるか?」
「ふ~む…………あ、アイスがあれば1つくれ。 果物系で」
「あいあい」
「俺も俺も〜」
「あーい」
一言言って家の中に入る。 思ってたより飲んでたらしく、気を抜くと少しフラフラする。 これは酔拳の練習をする良い機会だ。
うぉぉぉぉぉっ!!! 廬山昇○覇! せめて名前が似てる彗星拳しろや。
あ〜……これ二日酔いしそう。 明日学園あったっけ?
────────────────────────────── Daisansya side
花見の後、奏士は部屋で1人映画を見ていた。 どうやら本当に見たくなったらしい。
「……ふぅ」
そして今、1本目を見終わった。
「うむ。 やはりアメリカアクションは派手だな」
ついでに感想を言っている。 勿論、重政含め誰も聞いていない。
「2本目どうすっかな……」
ガサゴソと一般映画のディスクを入れた箱を漁りながら奏士は独り言を続ける。 何故『一般映画』で分けられているのかはお察しの通り『アニメ』と『特撮』が待ち構えているから。
「……コマ○ドーにするか」
そう言いながらディスクを装填してリモコンをポチリ。 読み込みが始まり、提供を挟んで本編がいざ始まろうかとしたその時
「……」
紅葉が部屋の扉を開けた。 いつものだ。
「んだ?」
奏士は映画を止めた。 まだキャラが一言も発していないのに。
「……映画を見てる音が聞こえたから見に来た」
「ディスク貸すから部屋で見ろ。 俺は1人で見る派だ」
奏士はいつも通り最初は断るが、紅葉がそんなこと意に返さず隣に座ると諦めて再生ボタンを押す。
「ほらよ」
「……おつまみばっか」
奏士が紅葉に分けたものは枝豆にサラミ、チーズとどれも酒に合うものばかり。 今現在進行形で飲んでたのだから当然と言えば当然だ。
「……お酒臭い」
「飲んでるからな。 だから部屋に帰ることを進めた」
紅葉の鼻に酒の強い匂いは厳禁。 花見の時は外+距離で気にならなかったが、こうして室内且つ隣同士だと気付くものはある。
「……珍しい」
「そういう日もある」
そう言いながら酒を1口飲んで枝豆をパクリ。 珍しく奏士がリラックスしている。 他人が居るのに。
「…………」
紅葉も特に気にしていないのか、部屋から持ってきたジュースとポップコーンをパクリ。 勿論、奏士がくれたおつまみと交換でポップコーンは共有。
「……この映画好きなの?」
「好きだぞ。 一般映画tear表トップだ」
「……他にアニメと特撮の表がありそう」
奏士と近い性質を持つ紅葉、大正解。 ちなみに、奏士のtear表は思い出補正バリバリだ。
それから30分ほど過ぎた頃だろうか。 紅葉は、奏士が自分のことを見ていることに気付いた。
「……?」
紅葉は理由が分からず首を傾げるが、奏士は紅葉と自分の手────正確には、摘んでいるブロックチーズを交互に見ている。
「……?……」
紅葉は試しに口を開けてみる。 何となくだ。
「…………」
が、どうやら正解だったようで、奏士は紅葉の口にチーズを落とす。
「……♪」
正直理由は分からないが、チーズは美味しかったから良しとする紅葉。
そして次弾装填をする奏士。
「……あー」
再び口を開けると奏士はそこに食べ物を入れる。 チーズ、薄切りサラミと続いてさきいかまで。
「……♪」
紅葉はご機嫌。 時々奏士が頭とか喉の当たりを猫扱いしてるみたいに撫でてくるが、それを払い除けたのは最初だけ。 今はもうすっかり受け入れている。 奏士に撫でられる心地良さが勝ったのか、食欲が勝ったのかは不明だが。
そんなことを続けて行くと、いつの間にか紅葉は奏士の足の間に座らされていた。
「……次はサラミ」
「おーう」
が、特に気にせず2人は続ける。 二人羽織のように紅葉が指令し、奏士が食べさせる。
「……これは便利」
「そうかいそうかい」
とてもご機嫌な紅葉と、一切拒否しない奏士。 普段の奏士からすれば異常とも言える光景だが、今の奏士は酒の力? で普段より機嫌が良いからか寧ろ面白がっている。 重政の代わりに紅葉を撫でているという線もあるが。
「……でもこれはちょっと違う気がする」
徐々に奏士の撫では進行し、最初は頭だけだったのが、喉をゴロゴロ撫で、終いには紅葉のお腹に手を回してポンポンと叩いている。
「…………」
この状況は俗に言う『バックハグ』に近い。 というか奏士にその意図が無いだけでほぼほぼその通りだ。
「…………」
流石の紅葉紅葉もお腹まで許す気は無いらしく、奏士の手を解こうとする。 が、
「……取れない」
奏士の腕は紅葉の馬鹿力を持ってしてもビクともしない。 まるで普段はワザと加減をしているかの如く、どれだけ力を込めても一切動かない。
「……ちょっと悔しい」
紅葉は脱出を諦めた。 幸い両腕は自由で食べ物は自分で取れる距離にあるから差程問題は無いと判断した。 奏士は少し硬めの座椅子と思うことにしたらしい。
「…………」
そのまま映画を見続けていると少しウトウト。 先程からずっと奏士が腹部を優しくポンポンと、まるで赤子を寝かし付けるかのように叩いてくるから眠気が来たらしい。
映画をBGMにこのままお昼寝をしようと紅葉は目を閉じた。 部屋に行こうにも「奏士が離してくれないから」と言い訳して。
「ん……」
「にゃっ」
一瞬で紅葉の目が覚めた。 奏士がいきなり自分の首────髪に顔を埋めてきたからだ。
「……何」
「んー? いや……」
突然のスキンシップに紅葉も少し動揺。 「普段はこれ以上のことをお前がやってる」とか言うのは野暮。
「(スーッ)なんか……凄くいい匂いがするな。 優しい匂いというか」
「…………」
紅葉は突然のセクハラに迷わず通報しようと思ったが、スマホに手が届かないから諦めた。 先から奏士の手が邪魔だ。
「……甘い匂いがするな……糖尿病か?」
「……(ムカッ)」
年頃の女の子特有の体臭を糖尿病と同一視されて紅葉はムカプリコ。 だがしかし、奏士に反撃する余裕は無い。
「(スンスン)でもなんか落ち着く。 重政に近いのか?」
「…………」
遠回しに「獣臭い」と言われた気がして少しショックな紅葉。 奏士の言う匂いはこの場合フェロモン等の類だと思うが、それに気付く余裕は今の紅葉に無い。
「……奏士、酔ってる」
「そうだなー 流石に昼から飲んでるからなー」
紅葉の質問を軽く流して奏士はクンクン匂いを嗅ぐ。
「よーしよしよし」
片手は紅葉の腹部に手を回したまま、もう片方の手は紅葉の頭を撫でる。 しかし片手でも紅葉は振りほどけなかった。
自分の力でも解けないほど力強いと言うのにお腹は優しく撫でてくる。 そのアンバランスと普段は手を抜いていたことに紅葉の感情はぐちゃぐちゃ。
「……」
でもあれだけ必死そうにしてた癖にこれほど余裕を残していたことに少しムカムカ。
しかし、その意図が分からずやはりぐちゃぐちゃ。 先程から奏士1人に翻弄されてばかりだ。
仕方なく奏士に寄りかかって全体重を預ける。 そっちが猫扱いするならこっちは本格的に座椅子として使ってやろうという所存だ。
「…………」
寄りかかって少し意識。 普段から情けない姿ばかり晒しているくせに身体はちゃんと男だと分かる硬さだ。
海に行った時や温泉等、奏士の裸は何度か目にする機会があった。 だが、こうして意識して見てみるのは初めてかもしれない。 と異性の肉体に少しだけドキドキ。
「……」
「どした?」
「……なんでもない」
それを正直に伝えるのはなんだか負けた気がしてついつい否定。 紅葉は相変わらず変な所で素直じゃない。
「……奏士」
「お?」
ふと、花見の席での話題を思い出して奏士に聞いてみる紅葉。 今のご機嫌奏士ならどんな事でも答えそうな気がしたからだろう。
「……気になる人、いるの?」
「気になる相手、ねぇ……それはどういう意味での気になる人だ?」
「……恋愛的な意味で」
「じゃあ居ないぞー」
「……(ホッ)」
普段と同じ返事で少しだけ安心する紅葉。何に安心したのかは不明だが、紅葉は『浮かれた奏士が仕事を疎かにすることを危惧した』事にした。
「……本当?」
「俺ってば世界中から視線集めちゃう系のアイドルだから決めた相手は作らないようにしてるんだよな」
「…………」
いつも通りのツッコミどころ満載の軽口も出てきた。 紅葉は呆れて流した。
「……質問を変える」
「ドシドシ聞いていいぞ。 今の俺は生成AIよりなんでも答える」
「……大事な人は、居る?」
紅葉は少し思いきった質問をしてみた。
が、質問したあとで気付く。 奏士ならほぼ100%「泉ちゃん」と答える事に。 悠達の可能性もあるが。
「逝るぞー」
やはりの答え。 ならこの答えを聞く必要は無いだろうと紅葉は判断。
「……1番大切な人は、泉?」
さっきより思い切った質問。 『大切な人』なら複数人該当するが、『1番』なら1人に絞られる。 紅葉も奏士の1番が誰なのか少し気に入った。 これの答えも泉だと思いながら。
「……1番、か…………なら違うぞー」
「!?」
予想外の答えに驚きを隠せない紅葉。 あれだけ泉が大好きな奏士にそれ以上の存在が居たとは。
「……! 奏士、重政は猫」
泉じゃないとなると重政のことを言っている。 そう判断して紅葉は訂正する。 奏士は日頃から重政美少女化(猫耳・尻尾付き)計画を立てていたからだ。
「そんなこと分かってる。 重政じゃないぞ」
「!?!!?!?」
予想外の連続に困惑が止まらない紅葉。 泉でもない、重政でもない。 となると誰だ?
紅葉は考える。 奏士の関係者を全員リストアップし、精査する。
まず同性、つまり莇達だが、奏士はある程度付き合いつつも一定の距離を保っているから恐らく違う。 焔もこの枠に入るだろう。
次に異性。 だが、紅葉の知る限り奏士の異性交友は友人達しか居ない。 そして友人たちはほぼ全員カップル。 そして泉は違う。
最後に奏士の知り合い。 釣りに行った時の人達とかだが、奏士的に論外。
となると残るのはベル、千聖、悠、も助、瑠姫。
そして自分。
ベルは日々奏士に愛を叫んでいるし、人から好意を向けられず人を信じない奏士にとって唯一の癒しになっている可能性もある。
千聖は奏士とノリの波長が合う後輩だ。 時折2人で話しているのを見かけるし、何やら個人的な付き合いもあるらしい。 泉の数少ない友人でもあるし、そういう意味では大切と言える。
あとの3人はそれぞれ奏士と長い付き合いだ。 誰も可能性は十分。
自分……自分か!
と紅葉は納得。 奏士は自分の絵の大ファンだし漫画の相方でもある。 1番長い付き合いのお友達だし、悠達身内組とは違って自分はそういう壁が無い。 大事に思われていても不思議じゃない。
「……じゃあ、誰?」
自分だと分かって一安心したが、念の為に正解を聞いておこうと改めて聞いてみる紅葉。 どうせ自分だろうけど。
「そうだな……………………橘花、だなぁ……」
「……?」
これまた予想外の回答。 突然知らない人が出てきた。
紅葉の知る限り、奏士の知り合いに橘花という名前の人は居ないはずだ。 2次元のキャラかVTuberか何かかと思ったが、それも違う。 『橘花』の名前が出てくる作品でも別キャラを推していたし、そもそもそんなに大事なら普段から話題や生活に出てくるはずだ。 それが無い以上、2次元ではない。
つまり3次元の人。
いや、まだ早いと紅葉は切り替える。 まだ名前を聞いただけ。 詳しく聞けば自分の知らない範囲に居た奏士の関係者かもしれない。 と。
「……どんな人?」
「そうだなぁー 橘花はとにかく可愛くてなー 」
紅葉の中でワンナウト。 残り二つだ。
「ちょうど紅葉と同じくらいか。 小柄で絵が好きで、いっつも俺について歩いて、お菓子をあげると喜んでな〜」
紅葉の中でスリーアウト超えてゲームセットだった。
「……世界一大切?」
「そうだなー 重政と比べられると弱いが、まぁ、世界一大切だな」
「…………」
紅葉は言い切った奏士に少しムカムカ。
これでも1年間一緒に過ごしたし実は前々から関わりがあったことも知った。 その過程でお互いがお互いのファンだと分かったし、奏士は日々紅葉に良くしてくれている。
これでも紅葉は奏士の事を異性だと1番大切なお友達だと思ってるし、奏士も認めないけどそうなんだろうと思っていた。
だが、今聞いた話だと奏士には自分以上の関係の相手がいるらしい。
自分と奏士の認識の違い。 その事もそうだが、自分以上のの相手が居ることに少しムカムカムカプリコ。
でもその事にモヤモヤ。
奏士の言い方、そして「橘花」という名前。 恐らくは女。
これが同性、男の子ならまだ許せたが、自分以上の関係の女の子だと思うと紅葉の不機嫌メーターは急降下。 ジェットコースターが地面に叩きつけられた。
「……(ムッスー)」
「どうしたー?」
奏士が頭を撫でてくるが、ご機嫌ナナメな紅葉はその手をペチペチ叩いて払い除ける。 頬も少し膨らんでいる気がする。
「……奏士の裏切り者」
「えー」
裏切るも何も無いのだが、これは理屈じゃなくて気持ちの問題なので何言っても聞かないだろう。
「……奏士はその橘花とやらの元に行けばいい」
「いやぁ今は無理だな。 まだやり残したことが山ほどある」
「……?」
紅葉は気になった 「ちょっと会いに行くのにやり残したことも無いだろう」と。
奏士の仕事、漫画を描く事はどこでもできるし、学園なんて奏士は辞めたがるほど嫌がっている。 重政は連れて行くか、この家に残せばいい。 数日くらいなら放っておいても無事だし、長引くならその間は私達が世話をするから、と。
「……何が理由?」
「いや、あの世行って戻って来れるわけないだろ。 ギャグ漫画じゃあるまいし」
「……あの世?」
「ああ言ってなかったっけ? 橘花はもう死んでるぞ」
「…………」
突然の報告に言葉が出なかった。 そういえば、奏士一度も「この世で1番」とは言っていないし、こっちも指定してない。
「昔昔のその昔。 10年以上前になー」
「…………」
これは謝るべきか悩んだ。 奏士が挙げるほど大切な相手の死を思い出させてしまったことに。
だが、まさか死者を言うとは思わなかったし、常識的に考えてこういう時は生きてる人を言うものだ。 言い出したのは奏士の方なのだからこの場合は相殺ということで紅葉は処理し、次を聞くことにした。
「……じゃあ、生きてる人で1番は?」
「そりゃ泉ちゃんでしょ」
「…………」
自分は2番でもなかったらしい。 でも泉なら納得だから今回は特に何も無かった。
「でも俺ちゃん欲張りだからなぁ……非情になりきれない半端者だし情とかに弱いし、そういう意味ではベルも、悠ちゃん達も、お前も1番と言えんのかね」
「…………」
突然の切り返しに紅葉は何を言えばいいのか迷う。
1番と言われたことは嬉しいのだが、どうやら「みんな仲良く一等賞」らしいので少しだけ悔しい。 女の意地、というものでは無いが、乙女心的に単独優勝が良いのだ。
「……奏士はハーレム思考」
「何を言う。 ハーレムは面倒臭いから嫌だぞ。 あんなもの成功するのは2次元とごく一部の3次元だけだ」
「……2人の妹と付き合う漫画書いてる癖に」
「それはそれこれはこれ」
「……奏士はああ言えばこう言う」
「なんだと? そんなこと言うならお仕置だべ〜」
「にゃっ」
突如脇を擽ったり背中に指を這わせて来て紅葉は飛び上がる。 勿論、奏士の手があって少し浮くだけだったが。
「……変態」
「ぐえっ」
紅葉の肘鉄が奏士の鳩尾に入る。 それと同時にお腹の手も緩んで紅葉は解放される。
「…………(プイッ)」
蹲る奏士を放置して紅葉は部屋に戻る。 映画のことは忘れた。
「な……なんだ……?」
奏士は息も絶え絶えに震えながら声を絞り出す。 映画は悪役が殺られた所だった。
そして部屋にて紅葉はベッドに横になりながら先程の話を思い出す。
奏士の1番が自分じゃないことは少し不機嫌だが、1つ気になるところがあった。
先程、奏士は言った。
「橘花(死者)に会に行くのは今は無理」と。
はいどーも指が震える作者です。 この小説書いてる時だけ指が凍える現象どうにかしてくれませんかね神。 暖房入れても治らないってどういうことですか。
とりあえず時間無いのでこの辺で。 明日以降にここを加筆するかもしれません。
ではまた




