白猫と愚か者の日
3月も終わって4月になりました
だからどうしたって話だ。 どれだけ時間が過ぎようが、俺の世界に変化は無い。
強いて言うなら冬アニメが終わって春アニメになった。 俺のがアニメ化する時はどの季節だろうか。
春と言えば花粉症、虫の活発化、滑り止め学校への通学と様々だ。 いやもう今年も花粉が凄くて。
でも俺は花粉症対策のクリス飲んでるから。 それ飲んだら松村にならない?
「…………」
陽光降り注ぐ暖かな縁側で、猫2匹とのんびり日向ぼっこ。 心が安らぐ。
直射日光は好まないが、春の陽はなんだか心地いい。 ビタミンDが生成されていく……
こうして仕事の心配もせずにポケーっとできる時間があるだけでおいちゃんは幸せじゃ。 あとは泉ちゃんがここに居たら完璧。
一方、2匹のお猫様はというと。
「(スピスピ…………)」
「…………(スヤァ)」
縁側で丸くなって寝ております。 日向ぼっこ様様だ。 お日様様様だ。 様多いから略してお日(様)³だな。
あ、でもこれお日様をサマーとするならサマー様様になるから、これも略してサマ³-だな。 何言ってんだオメー
重政と紅葉はとてもリラックスして寝ている。 重政は動物に襲われるベルに唯一懐くと言っていい猫だけど、なんだかんだ一番懐いてるのは(殿堂入りの俺を除いて)紅葉なんじゃないかな。 同じ猫同士で生態が合うし。
重政は美少女大好きだし、紅葉も猫好き。 くっ……俺も美少女ならもっと重政と仲良くなれるのに! 蔵に性転換する薬とか玉手箱的なの置いてないかな……言うて帳簿にはそれらしきもの無いんだよな。
でも柳の一族は大体性格悪いし、何か他の物に紛れて置いてあるはず。 負の側面とちょっとしたファンタジーを信じて夢を見よう。
「…………ふぁう」
この陽気とムードに流されてか欠伸が。 少し眠くなってきた。
このシチュエーションでうたた寝は最高と言えるかもしれんが、今寝たら悪夢を見かねない。 奏士くんの忘れ設定その1『寝る時は薬で深く眠らないと悪夢を見る』が再発するぞ。
気を紛らわせるために厨房へ。 茶と茶請けでも作って持っていこう。
てれててれて
てれてててれ
てれてててれてててれってってって〜♪ アイム神! 曲違ぇよバカ。 このネタ前にやったし。 前回とは違う終わり方なのだから差分と言え。
今回作るのはお茶とお団子。 春らしく三色団子にしましょうか。 よもぎ団子もいい。 いっそ春っぽい団子全部作るか。 どうせみんな食べるし。
ではまず、団子を作る意志を用意します。 用意してなんやかんやしてできたのがコチラになります。 放送事故だろ。
てれれれ〜 『そうじは だんごを てにいれた!』
大胆なカットを挟みつつ、山盛りの団子の乗った皿と緑茶セットを持って厨房を出る。 本日のお茶は奮発して玉露だ。
「はぁーいソージ、なぁーにしてるんデスか?」
どことなくイントネーションが工作兄弟のお友達感あるベルが出てきた。 あれ、そういや久しぶりに見る気がする。
「団子作った。 冷蔵庫にお前と莇の分入れてあるぞ」
「なんと! お礼にワタシの脱ぎたてパンツを……」
「今脱いだらお前の目玉を団子と入れ替えるぞ」
「そ、そんな……『お前の綺麗な瞳を俺だけのものにしたい』だなんて……キャッ♡」
あーそういやベルってこんな感じだった。 久々のウザさで逆に嬉しく思えちゃうね。
「まぁそれはそうと。 お気に入りだから使ったらちゃんと返してクダサイねっ? あ、洗わずに!」
「それはそうと」って前置きから話変わらないことってあるんだ。 奏士君また1つ賢くなっちゃったぜ。
「そういや莇は?」
「アオバならそろそろ────あ、来マシタ来マシタ」
丁度ベルが指さした方を見たタイミングで莇が部屋から出てきた。 軽装だな。 そんな装備で大丈夫か?
「アオバー come on達夫」
「お嬢様、生物が聞き取れる言語でお願いします」
「なんですと!」
あーもうまーたこの幼馴染系主従が盛り上がってる。 2人で盛り上がるなら俺の居ない時にやってよ。 3人なのに俺1人置き去りじゃないか。
「それで、どうしたんですか?」
「ソージがお○んご作ってクレマシタ! アオバの分もありマス!」
「……なんて?」
「おっと間違えた。 お団子作ってクレマシタ!」
「普通そこ間違えるか?」
今の平和なやり取りで規制音入ることねぇだろ。
「sorry……実はワタシ、今バスコ・ダ・ガマの呪いで「だ」が「ま」になってしまうんデス」
どうしよう未知の呪い出てきた。 絶対適当ぶっこいてるだけだろ。
「まからもし変なこと言っても気にしちゃまめデス」
「ネタが細かいな」
そんなことより
「莇の分もあるから食っていいぞ」
「それはそれは。 とても有難いのですが、私はこれから用事で出ますので、冷蔵庫にでも入れておいていただけますか?」
「まーたハナとデートデスか?」
「いえ、店の内装を春仕様にするらしいので、そのお手伝いに」
「なら、包んで持ってくか? それなりの数作ったから店の人達に差し入れでもしてやれ」
「では有難く」
ササッと容器に団子をつめつめ。 えーとこれは────
「あ、一応聞いておきたいんだけど」
「どうしました?」
「お前オオスズメバチに刺されたことある?」
「いえ……記憶上ではありませんが」
「ちっ……」
「え、なぜ舌打ちを?」
いやいや。 ちょっと蜂毒をグイッとね。 蛇毒は経口摂取でも差程意味無いが、蜂毒ならまぁまぁ効くらしい。
「冗談だ。 ほれ」
「確かに」
団子容器の包みを片手に莇は家を出た。 薪姫と出会ってから生き生きしてて素晴らしい。 生気で溢れてる。 『生きてる』って感じがしてるね。
「いや〜 アオバは相変わらずハナにゾッコンデス」
「転生トラックでデストロイすればいいのに」
「そんなに羨ましいなら……ソージソージ」
ベルが傍にあった机に器を置いて振り返る。
「あん?」
「ワタシは今日、ソージを襲わない!」
ウインク交じりで言った。 はぁ……
「はぁ……どうも」
俺の平穏を理解してくれたのだろうか。 いや、ベルは理解してもなお突き進むタチだろう。 何を企んでいる?
「ソージが受け入れた…………合意GET!」
近くの椅子に片足を乗せて天高くガッツポーズを決めるベル。 なんかテンション高ぇなこいつ。 しかも発言が意味不明だし。
「て訳で早速!」
そう叫びながら振り向いてガバッと飛びついてきた。 コイツ、速い! 2フレームか!
何となく久しぶりな感じに一瞬反応が遅れたが、その飛び掛りを軽く避ける。
「フギャッ!」
俺が避けたことでベルは急に止まれず、俺の後ろにあった柱にデコキス。 今カエルが潰れるような音した。 実際に聞いても無音だけど。
「なっ、なんで避けるんデスか!」
「逆に聞くけどなぜ襲いかかってきた?」
「質問を質問で返すな!」
なんだこいつよっちゃんか? そんな旧知の友みたいに……いやそういや前にも言ってたな。
「だってソージがワタシの問いかけに合意シタカラ……」
「俺は一言もしてないが?」
俺の聞き違いかなとも思ったけど、よーく思い返しても見返しても間違えてない。
「嘘おっしゃい! さっきワタシはこう言いマシタ! 『ワタシは今からソージを襲う!』って」
「さっきと言ってること逆じゃねぇか」
俺の記憶が確かなら「襲わない」とか言ってた希ガス。 あれ、俺の認識違いか?
「チッチッチッ……もう1つチッ。 今日は4月1日、エイプリルフールデス。 嘘は実に実は嘘に。 人の発言は逆の意味で捕えないとダメデスよ」
「そんなん知るか」
今日がエイプリルフールだと知らないってか、興味すら無かった俺にどうしろと? この作品季節感とかねぇだろ。
「つまり、さっきのワタシの発言に対してのソージの返答は『いつでも準備出来てるから来い!』になりマス」
「伝言ゲームの最後の方じゃねぇんだぞ」
これはもう俺が忘れてたことが悪いってよりベルの脳内変換が悪いな。 さっさと新品にアップデートしてくれませんか? もしくはロボトミー。
「いいから部屋に帰れシッシッ。 今日の俺は特別休暇だ」
「ブーブー! 毎回そうやってワタシを放置する……ワタシが何度枕と股を濡らした事か!」
「知らんわボケ」
お前の事情とか知ったこっちゃない。 でも濡れたままだと風邪引くかもしれないからちゃんと着替えるとか処理してね。 看病面倒臭いから。
「くっ、今はこのくらいにしてやりマス! 覚えてろー! あとお団子thank youー!」
何故かやられ役みたいなセリフを残してベルは部屋に戻った。
……なんか疲れた。 休日に疲れるって何? 俺は休むことすら許されないってこと? 何それ異界ジェノサイダーみたいでカッコイイ。 HNはYGSかな。
話変わるけど、イニシャル3文字で検索すると何かしらヒットするの面白いよね。 話戻る。
団子と茶を持って部屋(縁側)に戻る。 どうやらお猫様達はまだ夢の中。
起こさないようにそっと座って団子を1つ。 ほんのり優し、春のような甘さだ。
相変わらずおいちゃんは多芸多才。 各分野の専門には叶わずとも、やり方次第で勝るとも劣らない能力を持っている。
うん、この味は店で出せる。 普通に並べても売れる。 ババ様が認めた味だから間違い無い。
「……うにゅ……」
団子の香りか、それとも茶の香りか。 それに反応したのか、紅葉が微かに動き始めた。
「…………?」
鼻をヒクヒクさせてる。 目は開いてない所を見るに、どうやら半分夢の中に居る様子。
試しに団子を1つ摘み、紅葉の鼻の近くに持っていく。 お、すっげぇ匂い嗅いでる。
「スンスン、スンスン…………」
まるで初めて見る物を警戒する犬のように鼻をヒクヒクさせてる。 ほぉ〜れ怖くなーい怖くなーい。
「……あむ」
安全だと分かったのか、紅葉は目を閉じたまま団子を食べる。 俺の指諸共。 なんか前にもあったな。
「……こっちは美味しくない」
まるで海外のカートゥーンが食べるチキンの骨みたいに指を吐き出した。 左手の親指・中指・人差し指が唾液でてらてら。
「……♪」
余程に気に入ったのか、紅葉は小さな舌でペロリと口周りを舐める。
「…………? 」
と、ここで紅葉さんお目覚め。 辺りをキョロキョロ見回した後、俺を見つける。
「……おはよう?」
「聞かれても」
「…………いい匂いがする」
寝起きでも食欲旺盛な紅葉さん。 お団子へまっしぐら。
が、しかし────
(ヒョイ)
(スカッ)
「……? …………」
(ヒョイ)
(スカッ)
「……! …………」
(ヒョイ)
(スカッ)
「……………………」
器に手を伸ばそうとする度、寸前で俺が器を移動させることで空振り。 紅葉の手は虚空を掴む。
「……イジワルしてる」
「してないぞ」
「……なら、なんで避けるの?」
「これは俺が食いたいから作った団子だ。 お前の分は無い」
「……? …………!? !?!!?!?」
最初は意味が分からなかったみたいだが、徐々に理解したのか紅葉がすっごい驚いてる。
徐々に萎れる紅葉。 そして最終的にプルプルしてる。
あ、なんか「キュッ」ってしてる。 全体的に「キュッ」ってしてる。 お口とかどこぞのうさぎみたいな『☓』になってる。
「冗談だ冗談。 ほら、お前の分もあるある。 というかお前も食う前提で作ったから俺一人じゃ食いきれん」
「……本当?」
「ホントホント。 this is Aprilfool joke」
「……foolは複数形になると思う」
「今そこ論点じゃないから」
やめろ作者のカスい英語力がバレる。 アイツ前に「英語の順位は学年1桁」とか言ったけど本当は「11人中1桁」だぞ。 そりゃ余程の馬鹿じゃない限りは1桁になるわ。
「……なんで意地悪したの?」
「正確には意図的にした覚えは無いというか」
ホントホント。 マジで。 さっきベルがエイプリルフールとか言ってたから俺も言ってみたかっただけ。
というか何気に人生初エイプリルフール。 今の今までエイプリルフールに態々嘘つく人居なかったし。 重政に俺が嘘ついて悲しませる訳ないだろ。
「折角だから嘘ついてみようと思ったんだが……難しいな。 正直者には厳しい日だ」
「……奏士が正直者?」
おっとなんだその目は。 なぜ俺が意味不明発言をしたみたいに見てるんだ?
「……嘘つきの奏士が正直者なら世界から嘘つきは消える」
「何を言う。 俺は人生で1度も嘘をついたことが無い、正真正銘正直者だぞ」
「……どっちにしろ今ので1回分カウントが増える。 今のとさっきので最低2回」
おっとこれはしてやられた。
でもマジで嘘はそこまで言ってないんだ。 嘘にならない程度にぼかしてるだけで。
「…………」
紅葉はモキュモキュと団子を食べる。 奏士くんは罪滅ぼしに筆頭お茶汲み係に務める。
「……♪」
気に入ったのか、投げ出した足をパタパタさせてる。
エイプリルフールには失敗したが、団子は成功したようで何よりだ。
それにしてもお茶が美味い。 高級品なだけある。
俺、普通にドクペとかジュースとか飲むし、肉も食うし油っこいものも時々食べるけど、それでもジュースよりお茶の方が好きだしそこらの菓子より和菓子とか煎餅とかの方が好きだし、根本的に年寄りなのかもしれない。
まぁ大人びてるとは言われる。 こう見えて幼い頃は『神童』を自称してたからね。 神のタクトとか使えるし。 サッカーする仲間居ないから指揮者1人の演奏会だけど。
「…………」
隣に座る紅葉がじーっと顔を見てくる。 なにかついてる? 今回は食べカス着くようなものは無いぞ。
「……奏士は時々おじいちゃんっぽい」
「含む意味次第で受け取り方変わるぞ」
確かに、紅葉より年上だし保護者だし、時々孫みたいに見える時があるけどまだ若い方だ。 そこまでかね。
「……お茶飲んでる姿に若さが無い」
「なんだ? 自分がピチピチだからって挑発か?」
確かに大人びてる分、子ども特有の若さとかフレッシュな感じは無いって昔から言われてるけど。
「……あと多分服装」
「それはどうしようも無い」
作務衣着るなんて坊さんと趣味除けばジジイくらいしか居ない。 俺は単に好みだから。
「……もう少し若々しい格好すれば少しはマシに見えると思う」
「見た目的にそういうのは似合わん」
以前、試しに最新ファッションとかをやってみたけど恐ろしく似合わなかった。 俺という素材が服に負けてる。 もしくは素材の味が強すぎて服で上書きできない。
「……相変わらず奏士はイケメンになりきれない」
「逆に聞くけどイケメンの俺ってどうなんだよ」
「…………」
紅葉が空を見上げて考える。 本当に聞いたてみただけだからそこまで返答は気にしてない。
「……無駄にキラキラしててウザイ」
「だろ?」
お互いイケメンへのイメージが悪いが、共通の知り合いである禍塚達が無駄にイケメンでキラキラしてる分、イメージはより悪化している。
「……奏士もあの中に混ざれば少しは底上げされると思う」
「イケメン度合いが上がる前に俺が死ぬから却下」
あんな連中に混ざったら俺が俺でなくなる。
どうせあれだろ? イケメンに混ざってもその光でできた影に溶けて見えなくなるポジでしょ? 女が合コンに連れてくる友達みたいに引き立て役になるのがオチ。
「……奏士は多分、奏士を気に入る人からはとことん好かれるタイプだから希望は残ってる」
「その希望って何パーセント?」
「……パーセントは分からないけど、多分世界に3人くらいはいると思う」
「多いのか少ないのか分かんねぇな」
えーと3人ってことは泉ちゃんと〜、ベルと〜
「あと1人かぁ」
「……絶対泉をカウントしてる」
だって泉ちゃんって俺の事大好きでしょ? Loveかlikeかは置いといて。 そういうことにしておく。
「なんかこう、運命的な出会いとかないもんかね」
「……例えば?」
「例えば、か…………こう、『子どもの頃遊んでた相手と再開』とか、『顔も名前も知らない関係だけど現実で既に会っていた』とか」
「……最近増えたラノベみたい」
最近増えたよねーそういう系の作品。 『学園のマドンナがネトゲのフレンドでしたー』とか『険悪な中なのに許嫁でしたー』とか。 やっぱラブコメに持って行き易いのかね。
「……あとは無いの?」
「あと、あとか…………」
うーんと腕組みして考える。 これでも今はラブコメ漫画家、そしていちゃラブ同人作家。 昔はサイト投稿小説家。 運命的な出会いとかは山ほど考えたし、自分でも良いなと思ったのは幾つかある。
「……あ、『落し物から始まる運命の出会い』とかベタだよな。 ハンカチとか」
「……恋に恋する乙女が考えそうなネタ」
「言っておくが、運命の出会いについて例を挙げただけだからな?」
俺は運命の出会いとか重いのはいいっす。 運命の出会いよりうんめ〜! の出会いの方がいい。 美味しいものに出逢えた方が嬉しいだろ人生。
「…………」
突然紅葉が考え始めた。 これは紅葉も幾つか挙げるパティーン?
「……ちょっと考えた」
「ほう」
「……もしかしたら、私と奏士は運命の出会いというものをしてる」
「なんですと?」
紅葉と運命の出会いをしたっけ? 運命もクソもない出会いならした記憶がある。
……あ、あ〜そういう事ね。 なるほどなるほど。
「……私の落としたハンカチを奏士が拾って届けた」
「だな」
「……漫画のコンビだけど、お互い顔も名前も知らない関係だった」
「だったな」
「……残りは私と奏士が子どもの頃に会ってたらコンプリート」
「難しいな」
紅葉ちゃんかなーり昔に『幼い頃遊んでたお友達が〜』とか言ってたでしょ? それとか思い出せないの?
「アレは? お前の昔遊んでた相手って奴」
「……アレは確か女の子」
ほな俺と違うか。 俺別に小さい頃は女の子みたいに可愛かったとか無いし。 今も昔も可愛げの無い男です。
「……でもどことなく奏士に似てるような気がする」
ほな俺やないかい。 俺みたいな子どもが2人もいてたまるか。
「……やっぱり奏士より可愛い」
ほな俺と違うか。 ねぇ作者もしかして最近牛乳少年にハマった? 人のネタパクるなよ。
「…………やっぱり思い出せない」
「記憶の欠落は刺激するといいって聞くな」
「……刺激?」
「実際にその場所に行ってみるとか、写真でもなんでもそれに近いものを見てみるとか話を聞くとか」
これの効果が有るか無いかは別として、民間療法的な感じでやってみるのも手じゃなかろうか。 民間療法、意外とバカにできない。 プラシーボ効果ってのがあるから。
「……おじいちゃん家に行けば何か分かるかもしれない」
「さいですか」
おじいちゃん家ってことは帰省か。
「そういや、お前今回は帰らんのか?」
ベル達は春休みに入って早々一時帰省した。 一方紅葉は毎日お部屋でダラダラしてるかお散歩してるか。 時々ババアの駄菓子屋に出没するらしい。
「……一応、画面通話で近況報告はした」
「あそ」
爺さん達的には直接会いたい気持ちもあるだろうに。 もう長くないだろ。
「……今はこの家に居る方が落ち着く」
そう言いながら紅葉は横になる。 人の膝を枕にして。
「……硬い。 けど無いよりはマシ」
「勝手に膝枕要求しといてよく言えるな」
「……奏士は無駄に筋肉がある。 引きこもりの陰キャならもやしであるべき」
「俺がもやしならお前は既に俺を殺めてるぞ」
この見せ筋と無駄な耐久力があるから今の今まで紅葉の無茶苦茶に対応出来たと言うのに。 感謝しろ。 崇めよ。 邪教は不要!
「……お団子」
「起きて自分で食え」
「……しょうもない嘘で女の子を悲しませた罰」
「はいはい」
団子を1つ、口を開けて待つ紅葉へ運ぶ。 横になりながら食べると逆流性食道炎で色々と危ないんだけどなぁ。 逆流性食道炎。 なんか技名みたい。
「……もっと」
「はいはいはい」
人を枕にしてゆったりと団子を食べる紅葉。 この自由さ、まさに猫。
「……ん」
紅葉は唐突に空いてる俺の手を掴んで自分の頭の上まで持っていく。
そのまま何も言わないが、何となく要求を察して動く。
サラサラの銀髪に触れ、そっと手を動かす。 まるで芸術品を扱うように。
「……♪」
頭を撫でられて気持ちいいのか、紅葉はどことなく上機嫌。
試しに顎の下も撫でてみる。 が、どうやら今はお気に召さない様子。 なんだ猫ならこっちも喜ぶと思ったんだがな。
「…………」
徐々に紅葉から力が抜け、いつしか穏やかな寝息が。
まだ陽は天から覗いている。 だってのに紅葉は自由気まま、のんびり過ごしている。 羨ましい限りだ。
ポカポカ陽気と春のそよ風。 最高の日向ぼっこ日和の中、猫は再び眠りにつく。
さっきと違う点は、2匹並んでではなく、飼い主を巻き込んでいる点。
「紅葉も寝たし……」と思って撫でる手を止めると、嫌そうに紅葉は身動ぎする。
あとズボンの生地を掴んで寝てるから動けない。
仕方なく、大きな白猫の頭を撫で続ける。 今度は起こさないようにゆっくりとリズミカルに。
幸い、ここには茶も団子もある。 今後のことでも考えながら、温かい茶でも飲んで今日は店じまいしよう。
そんな矢先、俺にも再び眠気が。 紅葉の子ども体温にやられたか。
が、紅葉を撫で続けなきゃいけない以上、今はまだ居眠りもできない。
どうしようかと考えてた所、小さな白猫が前足で俺の空いてる右足をポンポン叩いている。
「どうした重政。 起きたか」
「にゃ(俺にも団子くれ)」
「ダメだぞ。 お前一応老猫なんだし、喉に詰まらせたら危ない」
「にゃー(ダーメ?)」
「可愛く言ってもダメ」
「ふーっ! ふしゃーっ!」
「ぐえっ!」
重政からアッパーを食らった。 あの野郎器用に顎を狙いやがって……
だが、おかげで目が覚めた。 紅葉が起きるまでは持つだろう。
「しょうがないな……おやつをやる。 今日は煮干しだぞ」
「にゃー(寿司くれ)」
「お前食った事無いだろ」
「にゃ(ケチ!)」
何だこの猫。 うちの猫は2匹揃って自由すぎる。
それでも煮干し(猫用)を与えると食べる重政。 美味そうに食べるね。
「それ美味いか?」
「にゃ(なかなかいけるぞ)」
「マジか」
やはり、どこか人間臭くても重政は根本的に猫なのか。 俺は猫用煮干し食ったけど美味しくはなかった。 味付けが違うしね。
「~~……」
大きな欠伸をして背伸びをする重政。 飯食ってお眠か。 牛になるぞ。
「にゃ(おい、俺にも枕寄越せ)」
「定員オーバーだ」
「にゃ(しゃーねーな)」
重政は部屋に戻ると自分用のクッションを引き摺ってきた。 お前猫の口で器用だな。
「寝るのか」
「にゃ(猫は寝る生き物だ)」
それもそうだ。 猫は本来半日以上寝る生き物だったな。
……いやお前必要か? 狩りしねぇだろ。 一日の殆どを平和で安全な我が家かテリトリーで過ごしてるだろ。 そんなに寝る必要あるか?
なんて考えても、お猫様のお考えは俺程度じゃ分かりもしない。 色々あるんだろう。
重政はクッションを置くとその上で即寝。 わぁ寝付きいい。
さて、これで俺は左側を紅葉、右側を重政に陣取られて挟み撃ちにされた訳だが。
ここから入れる保険とかあります? ちょっとトイレ行きたい。 お茶飲みすぎた。
あっ、ダメだ紅葉が離れない。 どうしようズボンだけ脱いで行くか? いやこれ脱いだ後履けないし、まだベルが家に居る以上遭遇する可能性もある。
あ、ちょっマジでヤバそう。 ちょっ、紅葉離せ! 手を離せオラ!
「……動かないで」
モゾモゾ動いてるのが気になるのか、紅葉はガッチリ体重をかけて固めてきた。
待って待ってマジでそれはヤバい。 頭撫でてる場合じゃない。 意識するとトイレ行きたい欲が凄い。
待って! マジでヤバいって! マジ漏れるから離せ! その手を離せ紅葉!
「……うるさい」
「ひょっ」
寝ているとは思えない正確さで紅葉の裏拳が腹へ直撃。 普段ならちょい痛いくらいで済むが、今は違う。 膀胱を圧迫されて尿意がヤバい。
あと腹に力込める余裕無かったから普段以上に痛い。
「お、おおおおおおおお!!!!!!!!!!」
その後、最終手段として空蝉としてズボンを置き去りにすることで漏らすことは無かった。
が、トイレから戻ると紅葉が起きていて、罰が増えたのはまた別の話。 絵のモデルとして脱がされた……まぁ上半身だけだったから良いけどさ。 ベッドシーンの再現までさせられたのは良くない。 ポージングめっちゃ恥ずかしかった。 俺にも羞恥心ある。
……でも自分がモデルになった同人誌がどうなるのかはちょっと気になる。 俺、推し絵師の力になれたんだ。 ファンとしては最高だね。 男としてはアレだけど。
はいどーも最近トイレ入る度に紙がない作者です。
家のトイレ、お店のトイレ、公衆トイレ、駅のトイレ。どこ入っても何故か全てにおいて紙がないという地味ながら嫌すぎる被害にあっています。
まだ替えの紙が近くにあるならマシですけど、この前入ったトイレはそれすらありませんでした。
助けを呼ぼうにもそんな連れは居らず、このままトイレで人生を終えるのかと覚悟したその時!
隣の個室に人が! 勇気を振り絞って紙を貸して貰えました。
顔も名も知らない運命の人、ありがとう。 シャンランランララでガムシャラララです。 マジで感謝ってやつです。
皆さんも、トイレに入ったあとは紙を切らしてないか確認しましょう。 ウォシュレットも無いトイレに放置された時はガチ焦りします。
そんなことより本題へ
今回は時々ある休息回です。 次回から3年生編が始まるので、それの前準備的な感じです。 あと前回奏士に無茶させたのでお詫びも兼ねて。
物凄く遅いですが、奏士達も3年生です。 皆さんこれが始まった4、5年前は何してましたか? 私は今これを書いてる時と同じように毛布にくるまってました。
時の流れはあっという間。 令和に生まれた子どもは小学生になり、令和に結婚したカップルは離婚し、令和に始まったライダーはもう6作品目。 ついこの前まで見ていたはずのライダーがもうレジェンド側になっているのは違和感があります。
それなのにこの作品は一向に終わる気配がありません。 果たして令和10年までに終わるのでしょうか。
そして誰一人として誕生日イベントをしていないことを知る作者でした。
それでは次回もお楽しみに。




