白猫と貞操の危機 これ俺側が危機なのおかしくね?
\シャワァァァァァァ............/
このシャワーの音主張強くね?
そんなことよりヤバイヤバイヤバイヤバイヤパイヤバイ!
はい間違い探しターイム! 仲間外れはだーれだ? 答えはお・い・ら♡ 恐らくこのやり取りで初出の一人称だ。
だからそんな事してる暇無いんだって。 ほら考えすぎて室内でムーンウォークとか華麗なターンキメちゃってるじゃん。
状況を整理しよう。 落ち着くんだ俺。 まだ 首の皮は繋がってるし紅葉の膜は残ってる。 俺の俺は無垢な少年らしくゲーセンでアニマ○カイザーしてる。 懐かしっ
ここは何処? 東京のラブホですね。 名前は見てない。
誰といる? 紅葉と2人。 その紅葉さんは今人の事無視してシャワー浴びてますね。 ラブホのお風呂はスケスケだぁ。
奏士くんは乙女の肌は見ないように配慮してる。 紳士ですから。 あと万一見た場合の責任追及を避けるために。 いつもの。
何故だ? 何故紅葉はこんな暴挙に出た? 本能で生きてる紅葉でも流石に分別はつくはずだ。
ここは大人のホテル。 お互いに身体は大人。 男女が2人屋根の下で1夜。 何も起きない────あ、何も起きねぇわ。 成程俺のその点を信頼してのことか。 なるほどねとはならないなうん。
いくら信頼してるとはいえ、普通に考えて「ラブホに泊まろう」とはならない。 もしこれが俺と泉ちゃんだったら…………なんとしてでも安全に送り届けて俺は腹を切る。 マジかよ超武士じゃん。 モノノフじゃん。
「……奏士」
「何だ?」
振り向くと風呂場から顔をひょっこり出した紅葉が居た。 床に水垂れるから拭け。
「……そこのタオル取って」
「準備してから入れ」
極力紅葉の方を見ないように近くのタオルを投げる。 多分紅葉まで届いた。
「……一緒に入る?」
「お前もう出るじゃん」
「……冗談」
何がしたかったんだアイツ。
あ、でもなんか落ち着いてきた。
そうだな。 エロ担当は紅葉じゃなくてベルなんだし、気にする必要ないよな。 よーし今立てたフラグを即へし折ったたからこれ以上は大丈夫! 先に潰しておくスタイルは役立つ。
あ、そうだ家に連絡しとかないと。 グループでいいか。
『所用で出てたけど今日中に帰れそうにないから外泊する』
……お、返信来た。
『先程クレハから似たような文献で連絡が来ました』
……ベルってこんな感じの文章だっけ? 文字だけでも無駄にテンション高かった気が……
『帰ったら2人にお話があります』
……これもしかしてベルちゃんオコ? 帰るのが怖くなってきた。
でもまだ言わなきゃならん事があるから言わないと。
『今夜と明日の朝、ないし昼は誠に勝手ながらそちらでご自由に。 もし外食、又は食材を購入した場合は後で請求してください。 その分生活費に追加しておきます。 重政は放置しても自分で飯食うからそこまで気にするな』
「……奏士」
「今度は何だ」
「……ここバスローブある」
「えマジで?」
えマジで? あ、心の声と一致した。
─────────────────────────────
「出たぞー」
人生初バスローブにちょっとワクワク。 へーこんな感じなんだ。
『ohyes! ohyes!……』
「……おかえり」
風呂から出たら、紅葉がソファでAV見てた。 おかしい……文字にしても意味が分からん。
「……何してんの?」
『Come on! Come on!!』
「……テレビ見てた」
「いや……これテレビじゃなくt『C'est si bon! C'est si bon!!!』おいうるせぇからこれ消せ」
「……(ピッ)」
紅葉が渋々リモコンの電源ボタンを押した。 あーうるさかった。 風呂場から出た途端に聞こえるとは……ここの風呂場の遮音性凄くね? 普通のガラス張りだと思ってたわ。
「……で、何してんのお前」
「……何が見れるのか気になって出来心でやった。 興奮してない」
「興奮の有無は聞いてねぇ」
気になるお年頃なのは分かるけどさぁ……せめて1人の時に見るか同性と見るかしようよ。 セクハラと猥談までよ異性としていいのは。
「……一応聞くけど何故に洋モノ?」
「……あの人が1番おっぱい大きかった」
選出理由AV見始めた中坊かよ。 まぁいい。
「流れついでに聞くが、何故俺をここに連れて来た?」
「……? 奏士が『どっか話せる所入る』って言ったから」
ラブホで何を話すんだよ。 口より身体で話し合う場所だろここは。 気になって話どころじゃねぇよ。
「……よく考えたら分かる」
「分かるかよ理由もお前の頭の中も」
「……奏士は自分で調べる前に人に聞くタイプ」
調べに調べた結果分からないんですよね。 AIの聞いても答え返ってこねぇよ知恵袋なら行けんのか?
「……ラブホは『長時間ゆっくりできる・人が入ってこないから2人でお話出来る・ご飯も飲み物もトイレもお風呂もベッドもある・そこらのビジネスホテルやネカフェ行くよりコスパがいい』この5点セットが揃ってる」
なるほどなるほど。
紅葉ってアレだな。 料理のレシピに『レモンの酸味を加える』って書いてあったら『酸味』だけを見るから蟻酸入れるタイプだな。 同じ酸味でも別種だってのに。
「言いたいことは分かった」
「……なら、奏士がお風呂入ってる間にご飯頼んだから食べながらお話する」
「いや、俺はそこらのネカフェにでも泊まる」
最悪なんとしてでも家に帰る案もあったが、さすがに紅葉を置いて帰ると色々怖いし不安だから間を取った。 最大の譲歩だ。
「……ここは精算退室方式だからお金払うまで出れない」
「だろうね」
最初から何となく予想してた。 今回もこうなんだろうと。 ドアノブは動かないし壁に精算機埋まってるし。 これフードサービス代凄そう。
「……お話しよ」
「…………」
奏士君、多分人生1大きな決断の時!
どうする? 「無職の成人男性が女子校生とラブホで1泊しました。 でも何もやましいことはしてません」 なんて言い訳通じないぞ。 オールパーフェクトでアウトだ。 ワンチャン見逃してもらえるかもしれないけど俺は犬を飼ってないからその線も無い。
しかしこのまま拒否すれば紅葉は不機嫌間違いなし。 お互いに顔合わせした後でそれは少しマズイ。 今後の仕事に関わる。
「……ご飯冷める」
「……………」
「……話聞いてない……」
下を向いて考え事してたら紅葉が下から覗き込んできた。 コラコラバスローブからチラリズムしてますよ。
ホテルのアニメイトであるバスローブは比較的小柄な紅葉にしては大きいらしく、袖も裾も少し余っている。
のに胸元だけパツパツなの凄いなぁ。 記事が悲鳴上げてる。 これ次の人着れないだろ。
「……?」
目が合った。 紅葉は上目遣いで首を傾げてる。 そんなことより決断をしなければ。
「…………一緒にお話しないなら私は絵を描く気力を失うかもしれない」
「お前あんな話したあとでよくそんな脅し言えるな」
亡き親と親戚との思い出なのに。 もしかして紅葉、あんな話しといて特になんとも思ってない?
「…………ダメ?」
紅葉さんお得意の上目遣い+袖引き。
だがしかぁし俺には効かん! 身長差で普段から上目遣いだからもう慣れた。
でもそうだな。 野生のポリスメンに遭遇しても無傷で通用する言い訳を考えとかなきゃな。
紅葉は普段からあの指輪してるし、俺も何かしらの指輪しとけばワンチャン『婚約者』で通らないかな……うーん事案。 それもこれも紅葉が小柄で童顔なのが悪い。
言っておくが、紅葉は平均より低いってだけで実際に比べると意外と高いぞぉ! 具体的には頭1つ分+ちょいの差しかない。
「……俺の分の飲み物は?」
「……はい」
紅葉が態々ジュースをコップに容れて渡してきた。 あ、ちょっとワクワクしてる。
「……どれから食べる?」
「とりあえずピザだろ」
「……同意」
2人ソファに並んで座る。 特に意識したことは無いが、何となく、座る時は隣同士が恒例化してる気がする。
「……美味しい」
「ラブホの飯って案外美味いらしいな」
中には内装とか設備よりも飯に力入れてるホテルもあるとか。 ラブホとは一体。 アレだろカラオケのグレードアップ。 ドリンクバーが無いのが悩み。 潮と液のドリンクバーってことかね。
「……こっちの唐揚げも中々」
「マヨとレモン付属は有難い」
「……レモンかけていい?」
「別にいいけどかけすぎるなよ。 唐揚げが酸味で死ぬ」
「……唐揚げじゃなくて奏士の目に」
「なんだただのテロリストか。 タバスコで返り討ちにしてやるからやってみろ」
「……大人しく唐揚げにかける」
と言う紅葉ちゃん。 絞る力が強すぎてレモンが爆散。 手に残るのはレモンだった何か。 そして果汁が俺の眼球目掛けてファイア。 あっぶね。
「たこ焼きもあるのか。 どれ1つ」
爪楊枝付きとはなんと至れり尽くせり。 たこ焼きの爪楊枝が2本付属してるのはリア充がイチャイチャして食べる用じゃなくてたこ焼きを食べやすくするため。
「…………紅葉、ここのたこ焼きは随分と刺激的な味わいだな」
「……?」
1つを口に入れた瞬間、弾け飛ぶ脳漿。 崩壊する口内。 駆け巡る電流。
そして止まらない謎の汗。 何コレすっごい辛い。
「……別に変じゃない」
紅葉も1つ食べてみるが、特に変わった事は無いらしい。 虚勢はってる訳でも無い。
「……お前、これの品名何だ?」
「……たこ焼き」
「フルネーム」
「…………『どれか1つがワサビ入り! ドキドキ☆ロシアンたこ焼き! 6個入り』」
「お前マジでざけんな」
普通のたこ焼きだと思ったらハズレ引くとかさぁ……しかもこいつ知ってて黙ってたとか故意犯じゃん。 どうしよう帰りたくなってきた。
「……囁かなジョーク」
「これあと6個頼むか。 俺25個食うから、お前ハズレの6個な」
「……46656分の1の確率なんか奏士が引き寄せれる訳が無い」
「泉ちゃんという82億分の1を乗り越えた俺なら行ける」
「……少し説得力出てきた」
そう、これが重政だとしても約10億分の1を乗り越えたんだ。 計算すると凄いめんどくさいけど要するに1%以下だ。 有効桁数の話をすれば0%だ。
そんな俺がたかが4万ちょいの確率を出せない訳が無い。 と言う謎の自信。 俺はどれもこれもYESかNO、起こる起こらないの2分の1だと思ってる。
いざ!
──────────────────────────────
「…………」 ←合計7個食ったアホ
「…………今どんな気持ち?」 ←1つも当たらなかった
「……ワサビの風味が口いっぱいに広がって、これはまるでワサビを大量に食べた様な感じです」
「……奏士が壊れて意味不明な食レポしだした」
てか、俺も言っててなんだけど大量のワサビ食ったからこうなってんだろ。 何だこのクソな食レポ。 おい食レポに「クソ」って単語使うな。 別の意味に聞こえるだろ。
「あ、でもなんかワサビの刺激に慣れてきた。 なんかこう、ミントタブ食った時くらいの爽快感」
「……本当?」
「代償として鼻が使い物にならない。 今の俺はシュールストレミングが目の前にあってもノーダメ」
「……対価と報酬が見合ってない」
うーんそれにしても鼻がヒリヒリ。 これ紅葉が食べたらどうなるんだろ。
「お前って寿司食う時サビ抜き?」
「……お醤油に少しだけ溶かす」
ネタに付属する量は無理、と。 つまり風味はイけるけど辛さは無理なんだな。 なるほどなるほど。
「話変わるけど、ここってワサビ寿司もあるみたいだぞ。 食うか?」
「……何も変わってない。 食べるなら1人で食べて」
紅葉はそう言いながらピザと唐揚げをパクパク。 あ、そのゲリータは俺が狙ってたピースだぞ。
まいっか。 このクソ長いポテトで我慢してやろう。 端がカリカリになってて良き。
「……私の長いポテトが無い」
「早い者勝ちだ」
「…………」
お? 紅葉から謎の威圧感と効果音が。 何この『ゴゴゴ』って音。 ゴーレム? ターン1破壊無効?
「…………」
何を思ったか紅葉、チョコ付着細棒ゲームよろしく人が食ってるポテトの反対側を咥えた。
一瞬の膠着。 しかし次の瞬間、紅葉は齧歯類の様に素早い動きでポテトを食べ進める。
距離は20cm、15cm、10cmと刻々と近付き、遂に寸前に到達する。
「これ以上は色々と危ない」そう思ったとしても紅葉は止まらない。
が
「うっ」
「ぐおっ!」
『ガツン!』という音がして数瞬、紅葉の顔が離れる。
額に赤い痕を残して。
「……おああああっ………」
「……痛い」
お互い自分の額を手で押さえる。 凄い痛い。
「おっ、お前……目的はなんだよマジで」
「……私に聞かれても困る」
じゃあ誰に聞くんだって返しは口から出ること無く消えた。 今の俺の口は呻き声が占拠してる。
「少しはその頭で考えてから行動しろや……」
あと少しでおいちゃんのファーストキスが奪われるところだった。 危ない危ない。
「……でも7割食べたから私の勝ち」
「これそんなルールねぇから」
そもそもルールそのものが存在しないって野暮な事は言わない。 紅葉は無法者、アウトレイジだから。 デスペラードでも可。
「…………」
紅葉は自分の唇に指を添えて何か考え事。 何を考えているのかおいちゃんには分かりません。
紅葉リンガルとか販売してくれないかな。 もしくは金出すから作れ。 採算度外視でもいいからめっちゃ投資するぞ。
──────────────────────────────
そして大胆なカット編集で時間が飛んで夜の2時
「そろそろ寝るか」
「……夜はこれから」
「明日はさっさと帰るから早いぞ」
早く重政に会いたい。 監視カメラで見た感じ問題は無さそうだけど、アレは内心凄く寂しがってる奴だ。 確信は無いけどそうであって欲しい。 別に俺居なくても問題無かったら♡奏士くん泣いちゃう。
「よーいせっ」
ベッドにサイドフリップダイブ。 着地をミスってうつ伏せになった。
「……もうこれでいいか」
ベッドで横になったことで疲れとか眠気が一気に来たのか、体勢を変えるのが一瞬で面倒になった。 あ、薬飲んでないや……
「……このままだとタイミングを逃す」
紅葉がなんか言ってる気がする。 が、今の俺は開かない目と力の入らない腕を必死に動かしてスマホと薬入れを探している。 確かリュックに予備の薬が入ってたはず……
「……せい」
「うぇい」
紅葉にゴロンと仰向けにされた。 ベッドの端にいたのに中心に来ちゃった。
これはあれか? 『疲れてるから1人でベッド使っていいよ』的なアレか? いやそれは無いな。 紅葉がそんな気の使い方する訳ない。 アレはそんなことする前に自分もベッドで寝る。
「……お邪魔」
どうやら今日の俺は勘が少し悪いらしい。 なんか知らんけど紅葉が上に乗ってきた。
「…………あー…………あ? あー………………あ? あ?」
どうしよう考えてみたけど全く意図が分からん。 何故俺は紅葉に襲われているんだ?
まさか今からヤる流れなのか? 『男女が2人、ホテルで1泊。 何も起こらないハズがなく……』ってのは俺じゃなくて紅葉に向けたメッセージって事? そりゃそうだ俺は起こさなくても紅葉が起こさないとは言ってないもんねざけんな。
「……何用?」
恐る恐る聞いてみる。 どうか答えがマトモでありますように。
「……奏士が何もせず寝ようとしてたから目覚めさせた」
「なるほど……」
すいませんこれマトモなんですか? 後半マトモだけど前半気になること言われたんだけど。 「何もせず」って何? 何かされると期待してたの?
「もう少し起こし方あったと思うが大体分かった。 もうちょい付き合ってやるから降りろ」
老体に鞭打って上体を起こす。 が、紅葉は動かない。
「……邪魔、なんだけど」
「……動かれると困る」
「は?」
そう言って紅葉は肩に手を添えて再び仰向けに。 あれひょっとして俺今紅葉に押し倒された? 本当に襲われてる?
「何する気だお前」
「……男女がラブホに来てする事は1つ」
紅葉が一切表情を変えずに言ったその一言は俺をゾッとさせるに十分過ぎた。
「お、おい待て。 冷静になれ花伝紅葉! お前は今少し興奮して思考がおかしくなっている。 だから一旦そこから降りて、ソファに座れ」
「……ゴチャゴチャ煩い」
紅葉は言葉でなく行動で示すタイプ。 ただ腹の上に乗るだけだったのに座る位置をズラして人の丹田の上へ。 ブツの上じゃないのは何か意図があるのか。
ある意味、お互い未経験の癖に知識だけは山ほどある。 それらが正しいか間違いかの割合は別として、精通度で言えば下手な経験済みを超えていると言っていいだろう。 俺はちゃんと正しい知識も仕入れるようにしてる。
紅葉は分からないが、頭は無駄にいい紅葉の事だ。 ちゃんと知っているし、この場合どこにどうすればいいのかはちゃんと計算済みだろう。
「…………なぁ、お前バスローブの下は?」
「?」
バスローブの生地越しだが、本来そこにあるべき布の感覚が無い。
『バスローブの生地は厚い。 それが2枚も重なれば……』と思ったが、紅葉は今脚を開いて跨っている。 バスローブの生地は足に引っかかって盛り上がっている。 生地同士は接触面で重なっていないから間にあるのは俺のバスローブ1枚だ。
それに、伝わる感触が柔らかい。 パンツの生地はもう少し硬さがある。
いやうん、バスローブって要するに風呂場から部屋に行くまでのその場しのぎだから履いてないのは当然っちゃあ当然なんだけどさ……
「……履いてない」
「あーもう。 あーもう」
少しは異性がいることを気にしましょう。 俺は万一に配慮してトランクスを履いている。 なんて言っても紅葉に響かない事はこの1年でよく知った。
これは結構な頻度で異性として認識されてないのか、それとも
「もう何回か見たり見られたりしてるし今更別にいっか」
的な感じなのか。 後者なら現在の保護者として紅葉の親、それと祖父母に申し訳ない。 前者ならそれはそれで問題。
「……バスローブの下に下着はなってない」
「そうだな。 本来ならそれでいいけど状況が状況だからな。 今は俺が正しいぞ」
「……付き合ってない、婚姻関係でもない、セフレでもパパ活でもヤリモクでもない男女がラブホで1泊してる時点で状況に正しいも悪いもない」
あれ俺論破された? ぐぅの音も出ない。 ぐ〜の音は出る。 どうやら出るのは屁理屈の様で。
「……奏士も脱がなきゃ不平等」
「おい人のパンツに手をかけるな。 それと平等を求めるなら高みを目指せ。 相手を下層に落とすな」
「……人は元々全裸。 そう考えたら奏士が異端」
「何か正しいかは時間と共に移り変わるものだ。 今は服を着てる方が正しい」
「……ここは脱いでもいい場所」
「お前の方が屁理屈出るじゃん」
もうこの屁理屈王の王冠はお前にやるよ。 だからさっさと降りろ。
「てか待て。 脱がす前に待て」
「……待ったら脱ぐ?」
「いや脱がな……だから待てっての」
紅葉の両手首を掴んでどうにか制止する。 このままだとシャイボーイなうちの子が全世界生中継されちゃう。
「まずなんでこんな暴挙に出た。 お前はエロ担当じゃなかったはずだ」
エロ担当はベルだけで十分事足りてる。 というか1人で余分なのに2人もいたらオーバーフローで壊れちゃう。
「……最近ベルの出番が無いから私がやるしかない」
「色んな意味でやる気に満ちてるとこ悪いけど、お前のそれはただのお節介の空回りだ」
少なくとも俺は紅葉までベルト同じ路線に入られたら倒れる。 紅葉は絵師兼オタク兼相方としてできる範囲の猥談というか、そっち系の話で留めて欲しい。
「……あと瑠姫さんのお願いもある」
「お願い?」
そういや帰り際になんか話してたな……アレか。
「……『奏士がどのくらい現実に興味なくて、どのレベルなら反応するのか調べて欲しい』って」
「……で?」
「……ベルの失敗談とこれまでの経験から大体は意味無いと判断した。 だから手っ取り早くラブボで押し倒せば解決すると思った」
「そうか……色々ツッコミどころ満載だが、結論から聞こう。 どうだ?」
「……全く変化無し。 これはもう奏士が元々不能か男色のどっちか」
「こんな状況で反応するかよ」
確かにシチュ的には嫌いじゃない。 同心・エロゲ・音声作品で何度も見て聞いたし、紅葉とも何度も語り合ったさ。
でもな……それが好きだからって自分が当事者になってもそうとは限らないだろ。 俺仮面ライダー好きだけどあの世界に行きたいとは思わない。
「検証が済んだなら降りろ。 今なら不問で流してやる」
「…………」
しかし紅葉は降りません。 それどころか、ベッドに手をついて前屈みに。 徐々に近付いて来るのなんなん?
「何? 何だよまだなんか用?」
「……乙女のプライドに傷ついた」
「はぁ……で?」
「……こうなったら無理やりにでも反応させて瑠姫さんに成果報告」
「お前は病院にいけ。 頭のだぞ」
これはもう何かしらの病気の可能性がある。 素で頭イッてたらお手上げ。
「…………」
「おい無言で人の服に手を掛けるな。 俺は脱がん」
「……しまった奏士は半脱ぎ派」
「そういうことじゃなくてね?」
第1、脱ぎ加減って相手に適応されるもので自分の脱ぎ具合は差程気にしないんじゃないかな。
てか、さも当然のように人の性的趣向を認知してるの怖いな。 あ、そういやコイツ俺の古参ファンだった。
「……冷静になって考えてみるといい」
「まんまお前に返すわ」
「(無視)これは奏士にとって悪い話じゃない」
「……言ってみろ」
表情に大差無いが、どことなく真剣な紅葉の眼にやられて一時休戦。 でも紅葉は上から退く気配が無いし俺も反撃準備してるから休戦ってか停戦。
「……奏士は念願の『美少女・お互い未経験』で童貞卒業。 私は処女卒業で今後女性絵師界隈で面倒な目に合わなくて済む」
「なるほど」
言いたいことはあるけど今は聞こう。 そして後で言いまくろう。 その方が早く終わる。
「……1度関係を持っておけば今後一緒に仕事する時、変に意識しなくて済む。 それにイラストレーターとしての仕事でも、濡れ場を描く時の参考資料になる」
「なるほど」
「……そして奏士は『3次元の女相手でも十分反応する』という結果を伝えることでこれ以上あの3人に心配かけずに済む」
「なるほど」
「……だから今ここでヤる」
「なるほどなるほどなーるほど」
今紅葉が説明したことを頭の中でよーく整理しよう。 そして気になる点を抽出しよう。
「まず1つ。 女性絵師界隈がどうのこうのってのは?」
「……女性絵師は色々と複雑」
「それは度々聞く。 具体的には?」
「……大体みんな彼氏かセフレ持ち。 もしくは既婚者。 私みたいな完全独り身で未経験は少ない」
それは……まぁ、うん。 絵師と言っても色々いる訳で。 あくまで紅葉視点の意見だと言っておこう。
「……女性絵師界隈は時々未経験をバカにする風潮がある」
それは俺も聞いたことがある。 『あの女性絵師は未経験だから陰部を描くのが下手なんだ』とか『身が硬すぎるだろ……性観念大正時代か?』とか言われてる人を見た。
俺は別にそう思ってないがな。 経験済みでも下手な人は居る。 なんなら股に参考資料がある男絵師ですら下手な人は居る。
でもこれは「童貞」をネタにできる男ならではの価値観なんじゃなかろうかと思う時もある。 童貞と処女の価値は違うって言うし。
「……あと私は可愛い」
急な自画自賛? と言いかけたけど飲み込んだ。 今そこ触れるタイミングじゃないし、多分事実だし。
「……結構な頻度で声をかけられる」
「モテモテだな」
「……その内、薬を飲まされてヤリサーに……なんて事もあるかもしれない」
これは反応に困る。『同人誌じゃよくあるけどそんなの現実に……』とか言えないんだよなぁ実際に結構起こってるらしいし。
「……それは処女厨の奏士的に最悪と言えるケース」
「それは……うーむ」
確かに俺は相手に処女を求めるし、音声作品・同人誌・エロゲ・ラノベ漫画一般ゲーム等の創作物に対しても非処女である時点でどんなに面白くても拒絶する。 ネット記事で
『最近は非処女ヒロインが流行!』って文字見た時は卒倒しかけた。
が、必ずしも常に処女を強要するのではなく、むしろ添い遂げるなら賛美するというか。
アレだ。 『生涯においてただ1人と関係を持って欲しい。 但し無理矢理ではなくいちゃラブが根底にあってこそ』ってやつだ。 要するに面倒臭い。
それを踏まえると、推し絵師の紅葉が処女を卒業しようが、それが愛する人となら俺は喜んで拍手するしこれからも推し続ける。
でもそれが……って話だな今は。
「……これらを一括で解決する方法があった」
「それは?」
「……奏士で卒業すればいい」
なーるほどぉ……本気で頭の病院紹介した方がいいかもしれない。 常人の発想じゃない。
「……話は終わり」
「いや待て待て待て。 まだ終わってないし、お前はなぜ俺で卒業しようと思えた。 1番近くにいたからか? 内部ビッチか?」
「……誰でもいいわけじゃない」
紅葉がちょっと膨れる。 ハイハイこの後どうせロクな理由来ないんでしょ。 奏士くん何度も味わってるから。
「……別に、奏士ならヤってもいいと思った」
「…………」
奏士くん驚いて頭ん中で聞き返しちゃったよ。 え、俺そんなに好感度稼いでたっけ?
「……奏士は拒絶する程清潔感無い訳じゃないし、乱暴者じゃない。 女の子の扱いはなってないけど」
それは九分九厘お前側に問題があると思われ。 残りは俺がお前を異性として興味無い事と元々の反応の薄さと泉ちゃんの可愛さ眼にしてハードルバク上がりしてる事かな。 1厘に込められた要素デケェ。
「……あと日頃のお礼もある」
あ、ちょっと安心する理由でてきた。 そうだよ俺にはこれくらいの奴がお似合い。
「……日頃お世話してくれるから、抱かれてもいいと思った」
いややっぱ安心できねぇわ。 なんなの? 俺の好感度のフィーバータイムなの? 俺いつの間にこんなチャンス生まれるくらい稼いでたの?
確かに出会った当初は今より壁作ってたし紅葉を思い通り動くように誘導してたけどさ。 0→50と-50→50は上昇値違うけど同じなんだぞ。
「……もう終わった?」
「いや終わってないが」
「……続きは終わってからピロートークで聞く」
「いやーっ!」
今度は逃がさんとばかりに全力で服を脱がしに来る。 色々密着して胸とか超当たって潰れてるけど、これから行われることを考えたらそんなこと些細な事だ。
「……天井のシミを数えてる間に終わる」
「それは俺がお前に言うべき台詞! てかこの部屋の天井綺麗すぎてシミ3つしか見つからねぇし!」
「……じゃあ1擦りで1つ換算として、奏士が3擦り以内に出せば有言実行」
「人を早漏にするな! 泣きそうになる」
てか紅葉力強っ! わかってたけど力強っ! 俺今当然の如く意識的に火事場の馬鹿力全解放で抗ってんのに全然止まらねぇ。
このままじゃTODで奏士くんが奏士くんじゃなくなっちゃう。 この作品の男キャラ唯一とも言える童貞属性が絶滅しちゃう! 他の奴らの詳細は知らんけど、どうせどいつもこいつも『こんなことそんなことあんなこと』してんだろ? 俺はそんなヤツらの仲間になりたくない。
「ふんぐぐぐぐぐ…………」
「……往生際の悪い」
紅葉と両手を掴んで取っ組み合いになる。 ベッド上で暴れ回ったもんだからシーツはめちゃくちゃ。 ついでにお互いバスローブがはだけて色々とヤバいことになってる。 ねぇなんでこういう時俺だけ上脱げんの? ポロリのラッキースケベは紅葉の方が需要あるだろ。
「……私が全てやるから諦めて奏士は硬さを保つことに専念するといい」
「そんなの愛がっ…………愛がなぁーいっ!」
「わっ」
火事場の馬鹿力、どうやらまだ余白があったらしく、一瞬紅葉を上回った。
そこからは俺の身体は考えるより早く、安全を確保する方へ動いた。
まずは不利な下方から上へ。 起き上がって紅葉をベッドへ押し倒し、俺はその上へ。
その次は更なる危険の防止。 紅葉の両手を頭上でクロスさせ、左手で拘束。
最後に、助走距離で抵抗の威力を稼がせない為にできるだけ身体を近付ける。
これで紅葉に襲われる危険性は無くなった。
「…………」
代わりに俺が紅葉を襲ってる感じになった。 すいません対価と報酬がまた釣り合ってませんよ。
「…………」
紅葉と目が合う。 なんか凄い、汗が出てきた。
紅葉はもう凄い姿だった。
優しさの欠片もなく拘束したせいで長い銀髪は乱れ、途中までお互い互角に暴れてたせいか息も荒い。
バスローブがはだけて白い柔肌が露出している。 胸元は辛うじて布がかかっているものの、また動いたらご開帳だ。 下の方は見てないから知らん。 でも多分この感じだと下も危うい。
上気した頬と目に浮かべた涙。 顔の距離は10センチに満たない。
「……お前がやろうとしてたのはこういう事だぞ」
荒療治として、ワザとこのまま言う。 例えお子ちゃまでも自分が何しようとしたのか自覚すれば治るハズだ。
「……今は奏士が押し倒してる」
「……だな。 今は俺がお前を好きにできる」
紅葉に言われて振り返った。 バレンタインの時は事故だったが、今回は半自動とはいえ、俺が自分から紅葉を押し倒した。
お互い意図してなかったあの時とは何もかも違う。 それは紅葉も分かってるだろう。
「……私を好きにしてどうする気?」
「折角だからお前の話に乗ってやろうか。 お前は天井のシミでも数えてろ。 何度もな」
「……そんな度胸無いくせによく言う」
紅葉はいつもの様に言い返す。
が、言い出したのはそっちなので今の俺に意味は無い。 発言と行動に責任が伴うのが大人だ。 仕事をしてる以上、紅葉も知らないでは済まない。
「言っておくが、1回2回で終わらせるつもりは無いぞ。 こちとら1年の禁欲で色々溜めまくってんだ。 そうだな…………体力と時間的に、朝になれば終わる。 『今夜は寝かさない』んだろ?」
「…………」
紅葉が生唾を飲む音がした。
紅葉の目には、これから起こるであろう事への不安や恐怖もそうだが、期待も浮かんでいる。 今まで相手が居なかっただけで、興味そのものは人一倍あるのだろう。
というか同人作家なんて大体性欲強い。 同人誌って性癖暴露本だからね。 性欲を昇華した結晶を世に出してるんだ。
「悪いが優しくできる自信は無いぞ。 俺だって初めてだ。 それに…………人を散々おちょくって服を脱がせようとするくせに自分は脱ぎもしない。 その上興奮させようともしない。 極めつけは一番簡単な興奮方法のキスすらしない。 その他諸々、日頃から鬱憤は溜まってるからな」
正直、キスで興奮するのかはまた未経験なので分からないが、体験談聞いたり隠しハ✕撮りとか見る限りそうなのだろう。 AVは大して参考にならないから論外。
紅葉はすっかり抵抗すらしなくなった。 普段の威勢がどこへ行ったのか、なすがままなされるがままだ。
が
「まぁ、今日はなんの準備もしてないからな。 勘弁してやる」
そう言って身体を離す。 今まで近くにあった顔が、離れることでよりはっきり見えるようになる。
このホテルは妊活に親切設計。 ドムコンなんて置いてありません。
そして紅葉が避妊具もピルも持ってる訳もなく。 アフターピルなんて聞くまでも無い。
……あ、いや確か財布に1つ入ってた様な気が……確か、あの3人の大人の誰かが「お守りに持っとけ」ってくれた奴。
今まで備えあってプレイ無しだったけど、今役に立つ時が来たよ……
でもその時は俺の一存で流されたからもう来ないよごめん。
「今回で懲りたら二度と────」
そこで言葉が止まる。
原因は紅葉だ。 さっきまで嘘みたいに大人しかった紅葉が行動に出た。
出た、と言っても油断した所に殴り掛かる! とかじゃない。 ほんの些細な動き。
ちょっと目を閉じて、ちょっと唇を突き出しただけ。 たったそれだけ。
しかし、その動きだけで意図は分かった。
紅葉は本気だ。 冗談なんて無い。 本気で今、抱かれる気でいる。
それに合う気のいい返事なんて生憎と持ち合わせてないし、俺も言葉より行動で示すタイプなので動くことにする。
離した顔を再び近付ける。 さっきの様に雑ではなく、割れ物を扱う様にそっと。
目を閉じていても何となくは分かるのか、紅葉の身体がギュッと縮こまる。
緊張を解くようにそっと頬に手を添え、親指を動かして撫でる。 すると、心地いいのか徐々に強張りが解けていく。
「……後悔は無いな?」
「……自分で決めたこと」
「…………そうか」
言い残したことは無い。とばかりに紅葉は受け入れる姿勢。
そのやり取りを最後に俺はそっと────────
「ッ────────?」
「…………お仕置だ」
「\ズビシィッ!!!/うっ!」
頬に添えた手で紅葉の無防備な額へデコピン。 感覚的にクリーンヒット。
「っっつつ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
さっきまでのムードはどこへやら。 紅葉はさっきとは違う意味の涙目で額を押えて悶える。
「ふしゃーっ!」
紅葉の決死の反撃は軽く避ける。 あの蹴り、確実に俺のタマ狙ってやがった。
「……痛い」
普段と同じ言葉なのに今のはしょんぼりしてた。 あ、おデコ赤くなってる。
「……何するの」
「チョーシ乗ってやりたい放題やったお子ちゃまにお仕置。 げんこつグリグリじゃないだけ優しくしてやったと思え」
「…………」
怒り、悲しみ、殺意、虚無感。 色んな感情の籠った眼で紅葉が見てくる。
ついでに、今さっき悶えた時に紅葉のバスローブは完全にはだけた。 全力で見ない奏士くん最後の配慮。
「そう美味い話があると思うな。 分かったらさっさとあの人に俺が不能だのどうだの好きに報告して寝ろ」
俺はそう言ってササッとシーツのシワを整えて布団に入る。 今日のは悪い夢だと思うことにしよう。 それで流して明日も何も無い日々だ。
「…………」
そういやバスローブのままだ。 あくまでバスローブは仮の姿だから着替えなきゃだけど…………まぁ、こんな状況じゃそんなことしてる場合じゃ無いわな。
「…………」
紅葉に背を向けていると、後ろから「パサリ」と布が落ちる音が。 紅葉は着替えて寝るのかね。
「…………」
そして当然のように同じ布団に入ってきた。 クイーンサイズだから今度は安心! じゃないけどね。 もうこの程度は今更言わない。 紅葉も言ったけどラブホに来てる時点でナシナシ。
「……ヘタレ」
「なんとでも言え」
「……最後の最後で手を出せない腰抜け」
「あっそ」
「……女の子に恥かかせる男のクズ」
「さいすか」
そう返すと紅葉は背中にそっと触れ、次にピタッとくっ付いた。 あれ、背中越しに当たるこの感じ……何も来てなくね? あれバスローブ抜いだだけで着替えて無いのかよ。
「おい。 ちゃんと────────」
俺が言い終わる前に紅葉はバスローブの背中部分をギュッと握った。
「……………………バカ」
何処か不機嫌そうな声で、最後にそう呟いて紅葉は口を閉じた。
数分後、背中から寝息が聞こえてきた。 相変わらずの寝付きの良さだ。
……………………
紅葉は頑張った様だが、どうやっても紅葉相手に興奮する、ましてや発情なんてしなかっただろう。
確かに、死の直前に種の本能がどうとか、結局は理性で制御できないとかよく聞くが、本能すら凌駕するトラウマというものがある。
俺のトラウマはブレーキなんて優しいもんじゃない。 封印と同じだ。 どんな相手であろうと、生身が、3次元が相手だと俺の性欲は一瞬で消えうせる。 そして相手が離れるまで戻ることは無い。
トラウマを言い訳にするなんてカッコ悪いって? 野暮なことは言うなよ今更じゃねぇか。 必死こいて張ってる虚勢の隙間が見えただけだ。
背中に感じる服の張りが消えた。
身体ごと向きを変えて見ると、生まれたままの姿の紅葉が布団で丸くなって寝ている。
事情が事情とは言え、紅葉には悪いことをしたかね。
動悸はアレだし途中途中の流れは目も当てられないし最後の最後であやふやにしたが、紅葉の覚悟は本物だった。 恋愛的な好きは無くても、本気で俺で良いと思っていた。
の、だろう。 どんなに人の心を読む能力に長けていても、結局は観察と予測と経験の総合結果だ。 この内、経験が占める割合は大きい。
なら、人間不信の俺は結局のところ、他人の心なんて全く分からないのだろう。 答えを確かめる訳でもなく、只々1人で考えて、1人で納得して、1人で安心している。 例えそれが間違いだとしても。
俺も相変わらず学習しない。 愛だの恋だの、そんなもの雲より軽い綺麗事に過ぎない。 口にする奴らもそのうちそんな想いは薄くなって、消えて、忘れ去る。
俺の親がいい例だ。 愛なんてどこにも無い。
っと、少し考え過ぎたな。
それにしても、気が付けば紅葉の頭を撫でているとは……げに恐ろしき吸引力。 なんかこう、撫で心地いいと言うか。 髪質とか頭の位置とかかね。 詳しくは分からんが。
さっさと寝よう。 悪いことは桃にでも詰め込んで川に流しておサラバだ。
あとは誰かが桃を拾って育ててくれることに期待しよう。 鬼の残りの仕事はソレに倒されるだけ。
様々な想いが交差する一夜。 少女の想いも響くことは無く、珍しく真面目に終わるのであった。
────────────────────────────────
と思っていたのか? え?
朝
「眩しっ」
「……眠い」
あの後、お互いぐっすり寝てしまい現在時刻は午前9時31分。
出勤ラッシュは良くも悪くも避けた時間帯だ。 裏通りなのもあって、辺りに人は少ない。
が、ホテルから出てきた俺達……というより紅葉が注目を集めるせいで視線は変わらず。
そんな紅葉は立ったまま半分寝てます。 普段より睡眠時間は長いはずなのに。 外泊って普段より眠り浅いよね。
「ほら、駅行くぞ。 眠いなら特急の中で寝ろ」
「……奏士が昨日寝かせてくれなかったのが悪い」
「おい人聞きの悪いことを言うな。 真っ先に寝ただろお前」
どうにか俺が支えになる事で起きている紅葉。 荷物もあるし人目もあるからおぶって行くことは無理。
「ほら、早く移動しないと誰かに──────」
そう言いかけた所でその誰かと目が合った。
しかも今1番会いたくない人に。
「…………\パシャッ/」
「おい撮るな」
無言でスマホを構えて素早く撮る誰かさん。
というか瑠姫さん。
「ふぅ……今夜はお赤飯ね」
「話を聞け」
「安心しなさい。 今悠ちゃんとも助に連絡したから。 私も今日は休むわ」
「話を聞け。 聞いて? 聞く気ある?」
「いや〜 弟が漸く決心してくれて、姉として嬉しい以外無いわね」
全く聞かずに1人で盛り上がる瑠姫さん。 スマホがさっきからポコポコ鳴ってる。 多分あの二人も盛り上がってる。
「なんで裏道に……」
「私、ここら辺に住んでるから出勤する時は通るのよ。 それよりもさぁ……」
ホテル前から少し離れ、改めて瑠姫さんが俺と、紅葉を交互に見る。 何故か視線が往復する度ににやけていくぞこの人。
「確かに私は昨日冗談で肉体関係とか、アンタがどのくらい反応するのかとか聞いたけど……まさか本当に肉体関係持つとは思わなかったわ」
「誤解ですね」
「ねぇねぇ、最初はどっちから? どんな体位で何時間くらい? 何回ヤッたの? 避妊はした? どっちが受け? 暴発しなかった? 卒業した感想は?」
「誤解だっての。 鼓膜破れてんのか?」
「だってぇ〜 弟に先越されたのよ? 姉として気になるし、私個人としても2人がどんな感じに卒業したのか気になるわ!」
「ちょっ、勢い凄い! おい紅葉! お前連絡してないのか!」
「……起きたらする予定だった」
「さぁさぁさぁ! 今日は寝かさないわ! 明日の朝まで搾り取ってあげるわよ!」
「2日連続で聞きたくない!」
少し騒がしい終わり。 この作品にはこれが似合ってる言わんばかりにシリアスで終わらせない圧力を感じる。
その後、本当に瑠姫さんは仕事を休み、悠ちゃんとも助まで集まり、瑠姫さんの家で朝まで、本当にあったことを搾り取られた。
そして2日間紅葉と外泊したことでベルに正座で怒られた。
更に、重政は自分を放置した罪で次の日まで口を聞いてくれなかった。 踏んだり蹴ったりモハメド・アリなんだけど俺何か悪いことしました?
はいどーも冬場の執筆で指が寒くて、着けてもスマホが反応する手袋を買ったら指先の摩擦力エグくて即無駄金となった作者です。 試着した時は凄く滑ったのに何だこの差は。
言うて本当に触っても反応するんで完全な詐欺じゃないのが悩み。 まぁ『絶対に反応する』というより『指を強く押し付けて何度目かで反応する』程度ですし1000円ちょいなので防寒具として役立てます。
そんなことより本編です。
今回は東京回後編ということで、なんか普段より空気が違いました。 私も書いてて『あれコレってなんだっけ?』って思いました。 多分突然まで徹夜でゲームしてたのが悪い。
普通に考えて美少女と何も無いって凄いですね。 でも奏士に鉄の意志を感じないのは何故でしょう。 あれは意志関係なく反応しないからでしょうか。
とまぁ、奏士側にも色々事情があるみたいなので暖かく見守ってください。 ついでにコンポタ缶でも差し入れてください。 この前コンビニ言ったらコンポタ缶がプルタブじゃなくてキャップ式になってました。 なんでしょう利便性と引替えにロマンを失ったみたいな感覚は。
ではこの辺で。 次回もお楽しみに。 そろそろ3年生編ですね。 ハッハッハ紅葉√いつ終わるんだ




