白猫と白い日と白いお菓子と白い目
「はいはるちゃん。 バレンタインのお返し」
「わぁ〜 ありがと〜」
「ね、ねぇ恭平……あんたはそと……何か渡すものあるんじゃないの?」
「……ああ! はいコレこの前借りた300円」
「違うわ! いや違わないけど違うわ!」
「冗談だよ。 はい、ハッピーホワイトデー」
「そ、そうよ……最初から素直に渡せば良いのよ……ふへ」
「皐月ちゃんにやけてる〜」
「にっ、にやけてないんだけど!」
吐きたい。 おうち帰る
はいデイリー早速帰宅願望クリアしたところでいつものモノローグ入りましょう。 ページはそのまま! ブラウザバックしようとしたら夢枕でブレイズキックしてやる手話で。 それなんか意味あんの? てか夢枕だと俺死んでね?
今年度の登校日も残り僅か。 今日はその残り僅かのうちの1日3/14だ。 畜生約分できねぇ。
「ねぇねぇ、ベルちゃんは何貰ったの?」
「ワタシはさっき3倍返しで21個入りのマシュマロを受け取りマシタ」
「それ嫌がらせじゃないの?」
「それに付属してグミとハンカチも」
「ホワイトデーの禁じ手三連星じゃない」
「でもなんか全部手作りだからモーマンタイ! これもソージなりの不器用な愛!」
「タフねぇ……」
あ、ちなみにベルからは合計7個貰いました。 俺の糖尿病リスクと引き換えに全部食ってやったぜぇ……ワイルドだろぉ? 懐かしいなこれ。
でもチョコが甘すぎたから苦いコーヒーと一緒に食べると程よかったぜぇ〜 マイルドだろぉ?
※ チョコとコーヒーを混ぜても程よくはなりません。甘さと苦味に口の中集団リンチされるだけです。 by田中
……田中って誰? まぁええか。
それにしてもどいつもこいつも浮かれやがってよぉ……発情しやがってヒト科ヒト属のホモサピ共が……
ホワイトデーに受け取ったって事は、バレンタインに貰ったって事だ。 つまりモテモテリア充なので処分対象。 晒し首だ。
と、去年までの俺は思っただろうが、今年は違う。
なんせ今年は泉ちゃんからド本命(違う)を貰えた。 今の俺はシーランド公国より広い心を持っている。
だからついさっき最愛の彼女にお返しを渡してついでにイチャイチャして上機嫌な目の前の男も許せる。
「奏士殿はお返ししないのですか?」
「ベルにはさっき渡した。 あとは放課後にでも渡す」
「そうですか。 ちなみにお幾つ?」
「本命1個、ド本命1個、義理ですらないの1個の3つ」
「流石奏士殿。 ファッション非モテ陰キャぼっちの名は伊達じゃありませんね」
喧嘩売ってんのかこいつ。 俺は正真正銘陰キャだし友達いないし残念ながらモテない。
ベル? あれは枠に収まる器じゃないから。 これマイナスな意味で使うことあるんだ……
「ちなみに私は「あ結構です」何故ですか」
いや惚気聞いて憤死する趣味は無いし。 末代まで祝ってやる! 有名なコラ画像のやつじゃねぇか。
「お前の惚気聞くぐらいなら個室トイレの隣人の音聞く方がマシ」
「そこまでですか」
いや……うん……あれ聞くとちょっと気まずくなるから正直聞きたくはないけどまだマシというかどんぐりの背比べというか。
「おらー ホワイトデーのお返ししてる奴全員しょっぴくぞー」
うわ来たモテない暴君その1。
「ホワイトデーなんて滅べばいいと思うが、俺に糖分を恵んでくれるなら今日は見逃してやる」
正々堂々学生を恐喝するクソ教師乙
「はいモスケ! 朝ごはん食べマシタカ!」
「今日は寝坊して食い損ねた。 だから今めっちゃ腹減ってる」
どうしよう寝坊したはずなのに普段と全く変化が無い。 普段通り覇気無いし寝癖凄いし初手瀕死みたいな顔してる。
「なんだ誰もくれないのか……ケチな奴らめ。 じゃあホームルーム終了! 俺は急いで学食か購買でなんか食ってくるから1時間目は自習な」
どうしよう本格的に仕事放棄しやがった。 確かに今の時期って共通授業(主要5教科)でやる所終わってるから大体自習だけど。
「ソージソージ、自習デス! 遊びマショー!」
「自習だから遊びません」
「自習時間に遊ばずに何する気デスか!」
「自習する気なんだけど俺なんか変なこと言った?」
「え、自習って『自由に遊んで学習する時間』の略じゃないんデスか?」
「間違いと断定出来ないけど違うな」
確かに教師陣もある程度は黙認してるけど。 変に騒いだり問題起こされるくらいなら自由に遊ばせてた方がマシ理論。 言うてこの学園実力重視だから時間の使い方はある程度委ねられてるけどさ。
「そんなこと言わないでトランプシーマーショー」
「よりにもよって大人数前提の遊びかよ」
自習時間の遊びってもっとこう、1人か2人でできるものを選ぶもんじゃないの? 先生来ても誤魔化せるように。
「とにかく俺はやる事がある。 他の人誘え」
「ぶーぶー」
文句を言いながらも莇を無理やり引っ張って禍塚達の席へ行くベル。 これで集中できる……
そう、最高のマイクロ黒ビキニメイドの創作に集中できる! ←アホ あ?
早速落書き用のノートを開いて落書き用のシャーペンを握る。 あ、シャー芯折れてら。 ンもう段取りの悪い……
……さて、いざ! 最 & 高のエロメイドを!
ちなみにエロメイドはギャル系よりも清楚系が好きです。 ギャルはちょいスケベなメイド服の方が萌える。 お前の性癖なんか知らんわボケ お前に言っとらんわカス
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そして休み時間
「あ、泉ちゃんめっけ」
「は、はい? 奏士さん……どうかしたんですか?」
「先輩……ここは1年生のフロアですよ。 幼女探しなら他所でやってください」
「頼金、俺の事をどうしようもない莇だと思ってる?」
「違うんですか?」
「男なので相応の変態だとは思うけどそんなオープンじゃない」
「えぇマジかこの人……」
え、なんでそんな反応? 俺そんなオープンにしてた? 泉ちゃん可愛い症候群は変態じゃなくて世の理だから変じゃない。 恋か変かと聞かれたら変。
「それで、何の用ですか? 私たちこれから体育なので更衣室行かなきゃなんですけど」
「これから体育なのは知ってる。 泉ちゃんに渡したい物があってな」
「わ、私に…ですか?」
「はい。泉ちゃんにホワイトデーのお返し」
取り出すは瓶に詰められた色鮮やかな金平糖。 店に並べたら1500円取れる。 土産屋価格抜きで。
「え、あ、ありがとうございます……綺麗、です」
「ほぇ〜金平糖ですか。 先輩これ意味知ってて渡してます?」
「知ってるぞ」
博識な奏士くんはなんでも知ってる。 知らないって怖いからね。 知識は貪らないと。
「?? えっと……意味、とは」
「それはね〜(ゴニョゴニョ)」
「は、はぁ……へ? はひっ(ドカン!)」
あ、泉ちゃん爆発した。
「あ、あのあのあのっ……これっ……」
「どうした泉ちゃん。 気にせずお食べ」
「いっ、いえいえそういうことではなく!」
「落ち着いて泉ちゃん。 この人どうせLoveを超えたlikeで遊んでるだけだから。 というかそろそろ泉ちゃんも学習しよ?」
「何を。 俺の愛を疑うのか」
「いえまぁ疑う余地もないというか疑う以前の問題というか……先輩のってどっちかと言うとアガペーに近いので」
成程『神の愛・無償の愛』か……なるほどなるほど成歩堂。
「それにしてもこれよく出来てますね。 この金平糖どこで買ったんですか?」
「いや俺が作った」
「へー…………え、金平糖を自分で?」
「自分で」
「どこで?」
「家で」
「……先輩の家って金平糖作る機械ありましたっけ」
「前使ってたのが使えなくなってたから新しく買った」
「ほうほう……ちなみにその機械を今後使う予定はあったりします?」
「知らん。 気が向いたら使う」
「ほうほうほう……泉ちゃんこの人頭おかしい。 一刻も早く縁切った方がいいよ」
「えっ……えっ?」
何故か頼金が白い目で見てくる。 俺なんかやっちゃいました? なろう系やめろ。 これなろうで書いてるんだけど。
「はぁ……流石先輩というかあっぱれというか……金平糖ってあれですよね。 作るのに凄く時間かかるって聞きますけど」
「だな。 だから先月から超頑張った」
ホントもうずっと金平糖作りにかかりっきりで他が忙しいのなんの。 漫画もギリギリだし。 生徒会活動が少ない時期でよかった。
「泉ちゃん、先輩の想いを無駄にしちゃいけないよ。 大事にお食べ」
「は、はぁ……えと……ありがたくいただきます」
「うい」
後輩からの評価とかが気になるけど泉ちゃんが嬉しそうにしてるから結果オールライト……略して…………略して……思いつかないからパス! ならやるな。
「ところで私と華ちゃんの分は無いんですか?」
「貰ってないのに渡す訳ないだろ。 むしろ寄越せ」
「欲しがりさんですね〜 そんなゴネるならさっきそこで拾った溶けかけた未開封の飴あげますよ」
「ゴネてないしお前が渡そうとしてるものを日本語でゴミって言うんだぞ」
「大丈夫です先輩のアルミの胃袋を信頼してます」
「脆くすんな」
どっちにしろ穴だらけでスッカスカの胃袋を信頼されてもなぁ……せめてもうちょい丈夫な胃袋が欲しい。 内部を生分解性プラスチックでコーティングできるような。 食歴とか食ってそう。
「それじゃあ私たちはここで」
「えと……ありがとうございました」
「うい」
「そういや、泉ちゃんのお着替え写真要ります?」
「泉ちゃんの前ではしたない事を言うな」
「先輩本音透けてます」
しまった最近透明人間になるゲームやったからつい。 いやこれ関係無いな。
「えっと……あ、あの……奏士さんは私が着替えてる写真が欲しいん、ですか?」
「泉ちゃん……安心していい。 俺はただ泉ちゃんの成長記録としてこれまでの写真を常に集めてるだけだ。 変なことには使わない」
「うわぁ素直に『エロいことに使う』って言われた方がマシなことってあるんだ……」
いやいやいやはっはっはっこの俺が泉ちゃんで欲情して処理に使うなんてそんなこと……ホント……そんなこと……はぁ。
そろそろ性欲が薄まって1年になるし、俺はこのまま若くして機能を失うのか心配になってきた。 なんでこんなガチめの問題抱えなきゃいけないんだ? 俺主人公ですよね。 それもこれも無断で部屋に入ってくる奴らが悪い。 俺だってまだ若い男だぞぉ!
「えっと……でしたら1枚くらいは……」
「マジで?」
「泉ちゃん気を確かに!」
そんな泉ちゃんが気の迷いで口走ったみたいに言わなくても……これはアレだ、泉ちゃんなりのホワイトデーのお返しなんだろ。 もしくは俺の信頼が為せる業。
「……んで、授業まであと五分切ったけど、着替えなくていいのか?」
「アンタが言うか! ほらほら、泉ちゃん早く行くよー!」
「あっ、はっ、はい! それでは失礼します」
「うい」
金平糖を大事に抱える泉ちゃんを頼金が引っ張ってパタパタと廊下を駆けていく。 あ、薪姫が来た。 あの3人仲良いなー
生憎と友情と無縁の人生、友人とか親友とかの概念がよく分かってないが、当事者からすれば楽しいものなんだろうな。 今更だけどなんでこんな感受性に乏しい奴が主人公やってんの?
……あ、次選択だから移動じゃん。 やべ────むっ!
「……!」
視線を感じて後ろを振り向くがそれらしい人影は無い。 そういやここ1年のフロアだから俺めっちゃ目立つやん。 そりゃ見られるわな。
しょうがないここは潜影してひっそりと退散しよう……
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一方、そんな奏士を影から見る少女はというと
「…………(ムッスー)」
凄く不機嫌だった。 またですか紅葉さん。
そしてまたかよ奏士。
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昼飯を挟んで午後の授業。 初手体育なの毎回思うけど編成ミスってない? 下手すりゃ死ぬて。
とは言ってもおいちゃん結構運動嫌いじゃないから別にいいとも思ってる。 基本的に面倒くさがりのニート思考だが、ニートはニートでもアクティブニートだから割と活発。 かっこよさのためにムッキムキになった男は言うことが違ぇや。
ちなみに体育そのものは嫌いじゃないけど誰かとやる系の体育は嫌い。 1人で運動してる方が好き。 ごく稀に存在する、球技よりマラソンの方が好きなタイプ。 体力無いからマラソン遅せぇけどな。 そこは完璧なペース配分でどうにか。
クッソどうでもいい自分語りはこれくらいにして真面目に授業サボろう。 さっきまでの自分語りどこ行った? いやだってこの時期マラソン終わったから校庭だろうと体育館だろうと球技オンリーだし担当教員居ないし……
別に球技が苦手な訳じゃないんだよな。 むしろ体力のなさと筋力を考えたら持久力の要るマラソンより1発1発が強い方が有利な球技は合ってる。
じゃあ何が合わないって?
「よし恭平! 決めろ!」
「ああ! これで……僕らの勝ちだっ!」
「「「キャーっ♡」」」
球技って団体チーム個人どれにしても必ず相手が必要だし学校体育が陽キャと運動部の独壇場なところかな。 ちなみに今はバレーの時間。
バレーってさ……マジで陽キャとバレー部の世界よね。 バレー部はその実力で無双できるし、陽キャは多少下手でも笑い合える。
そしてぼっちとうんちにとっては処刑場と変わらない。 俺は運動できてもチーム組めないから処刑場。
向こうでは禍塚ら学園を代表する2年のイケメン達が楽しくバレーで盛り上がり、女子はそれにキャーキャー黄色い声援上げてる。
その隣では別のグループがバレーやってるけど皆の視線は禍塚達に行ってるからめっちゃ静かに盛り上がってる。
そして俺は特に参加する訳でもなく、余ったバレーボールから最高の弾性と掴みやすさを合わせ持つ相棒を探し当てて遊んでる。
いやこれめっちゃ弾むし掴みやすい。 今日からお前が俺の相棒だ! いや、友達だ! なにこれキャプ翼? お前前に蝋の翼とか言ってただろ。 マジかよ意外な所で伏線回収じゃん。 伏線つっとけば過去のポイ捨てがチャラになると思うなよ?
ポンポンポンとリフティングしてみたり1人キャッチボールしてみたりボールを回して遊んでみたり。 ボールという自転する惑星が公転する俺はまさに太陽。 奏士系の完成だ。 これボールは衛星じゃね? 惑星1つしかないし。 何言ってんだお前。
「…………」
「お? どうした紅葉」
急に裾を引かれたからボール落としちゃった。 バレーボール……バリボーは足で触ると怒られるからしゃがまなきゃいけないのが面倒。
迷子の迷子の紅葉さん。 あなたの用事はなんですか?
「…………」
紅葉に聞いても喋りません。 こんなん俺が泣きたいよ。
「何? 暇なら俺じゃなくてお友達にでも構ってもらえ」
「……小百合はあっちでバレーやってる」
やっと喋った紅葉が指さした方を見ると、どうやら男女混合バレーをやってるらしい。 当然居る神鳴から執拗に狙われてる。
「そうか。 で、何用?」
「…………」
紅葉はそれでも言いません。 俺と目を合わせるためにずっと上向いてるけど首疲れないの?
「…………」
紅葉はじっと目を見たまま喋らない。 何かご機嫌ななめっぽいけど心当たり無いから俺は俺のやりたいことやろ。
「…………」
ところで、これ傍から見たら学生会長が副会長と2人で見つめあってるとか誤解されないかな……残念ながら紅葉の視界に俺が入ってても俺の視界に紅葉は入ってない。 今の俺は紅葉の頭の上にほボールを置く作業で忙しいから。 いやじっと動かないし行けるかなって。
「……人の頭で遊ばないで」
「だってぇお前何も言わないじゃん。 用があるならはよ言え」
「…………奏士から何か言うことがあるはず」
「は?」
はて……何かあったかしら。 業務連絡は逐一してるし、紅葉の描いた神絵には必ず感想送ってるし今日の弁当にピーマンは少しも入れてない。
あ、あれか? シャンプー変えたとか今日は化粧してるとかそういうめんどくせぇタイプか? いやでも別に変わってないしな……髪切って無いしオシャレもしてない。 強いて言えば体育だから髪型変えて今日はツインテールにしてる。
でもこれも普段と変わりないしな……体育の時はいつも髪型変えてるし。 ポニテとツインテとおさげを行ったり来たり。 これの感想を今更求められても困る。
「……あ、太「…………」ってはないな。 うん」
危ねぇ殺気を感じた。 殺気ってか殺気の塊で殴られたみたいな感覚。 怖い。
ふむ、どうしよう。 分からん。
体型に変わりは無い。 強いて言うならまた胸が成長なされた感じか? でもそれ言ったらセクハラになるから言わない。 というか紅葉が自分のサイズを気にしてないから言っても意味ない。 うわぁこれ聞いたら何人か泣きそう。
そういや、紅葉って半袖だな。 下は長ズボンだけど上は白い学園指定の半袖ジャージだ。 寒くないのか? まだ気温低いぞ。
「あ、もしかして長ジャー忘れたから貸せってか? 嫌だぞ3月でもまだ寒い」
「…………」
おや、どうやらこれも違うらしい。 紅葉ちゃんムカプリコ。
「…………プシッ」
え、何今のくしゃみ? 炭酸の抜ける音のと思った。 もしくは水素。
「……言われるとちょっと寒く感じてきた」
「動けばあったまるんじゃね?」
「…………それより早いのがある」
「は? おいこっち来るな。 俺の服に手をかけてどうする気だ。 待て追い剥ぎはやめろ俺は羅生門のババアか」
「……私の髪で遊んでたから実質そう」
「違ぇよバカ」
「…………」
「いやー」
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「ふぅ……いい汗かきましたわ」
「おめでとうお嬢様。 今日はボールを落とさずにすんだね」
「神鳴……貴方、懺悔の準備はできていまして?」
「うーんあと80年は必要かな」
「……はぁ……あら、紅葉さんどこに行っていましたの?」
「……少し」
「? そうですの。 ところで、その上着はどうしまして? 凄くサイズの大きいようですが……」
「……現地調達」
「そ、そうですの……」
────────────────────────────
「……おや奏士殿。 上着はどうしました?」
「突発性追い剥ぎ症候群の奴に盗られた」
「あらあらあらまぁまぁまぁ! それはそれは大変デス! ワタシのカラダで温めてアゲマス!」
「俺他人の汗NG」
「失礼な! 乙女の汗は極上のシロップデス!」
「いなごの佃煮って美味くても結局虫だよな」
「お、なんで今その話をした?」
──────────────────────────────
色々あって放課後
「……?」
帰ろうと身支度を整えていたところ、紅葉のスマホが鳴る。
「………」
『放課後用事が無いなら生徒会室にカモンヌ』
奏士からのメッセージはその1文だけで他には何も無かった。 ある意味奏士らしいと言えばらしいが、普段の奏士はスタンプ付き、というか基本的にスタンプで会話するから珍しい。
何より、奏士は重要事や業務連絡以外殆どしてこない。 そんな奏士が態々送ってきたという事は、相当な事だと紅葉は考えた。
「紅葉さん、私は準備できましてよ」
「……小百合、約束はまた今度」
「はい?」
「……急用ができた。 埋め合わせは後でする」
「えちょっ、紅葉さん!? 用事って一体────もう行ってしまわれましたわ」
「あらあら、お嬢様ってば振られちゃってぇ」
「神鳴……貴方のそのニヤケ顔を見るのは今日で18回目ですわ。 そろそろ飽きました」
「うーんこれは予想外の反応。 お嬢様ってば僕と花伝さんじゃ対応違い過ぎない?」
「相応の対応というものですわ。 それより貴方、どうせ暇ですよね」
「いや僕は今日これから帰って新作のゲームでも「ひ・ま、ですよね?」……仕方ないなぁ」
「よろしい。 丁度予定が空きましたの。 貴方、付き合いなさい」
「僕と放課後デートしたいなら素直にそう言えばいいのに……」
「ああ、そうですわね。 久しぶりにしましょうか」
「……こっち方面は強いから反応が面白くないなぁ」
「どうせ紅葉さんも彼と放課後デートですわ」
「そうかなぁ……」
──────────────────────────────
「……」
「お、来たな」
「…………」
おやおやどうして俺の顔を見た途端に不機嫌になるのでしょう。 紅葉ちゃんもしかして今日生理? いや生理はもうちょい先のはず。 じゃあただ機嫌悪いだけか。
「…………」
「まぁ待ちたまえ。 用事があって呼んだんだから帰ろうとするな」
「…………(プイッ)」
相変わらずお子ちゃま紅葉ちゃん。 反応が幼い。
「そっぽ向いてていいからとにかく座れ。 ほら、お前だけの会長席だぞ」
「……(ツーン)」
明後日の方を見て顔を合わせないようにしてる。 何だこの子供逆に可愛く見えてきたぞ。 なんかこう……手のかかる子ほど可愛い的な。
「よし、座ったな。 じゃあ今出すから、ここで待ってな」
「……脱ぐ?」
「ティンポロンはしない。 出すのは別の物だ」
紅葉が帰らないことを祈って隣の給湯室に行く。 えーと冷蔵庫の中に……あったあった。 ちゃんと保存できてる。
あとは準備してた紅茶と……詰めた袋を持ってっと。
「おまた」
「……セクハラ?」
「そういう意味じゃなくて」
紅葉の戯言を流しながら紅葉の前にカップとソーサーを置いて紅茶を容れる。 俺は以前紅茶の入れ方をマスターしたことがあってな。 完璧な腕前だ。 自画自賛すげぇや。 褒める人居ないんだから自分で褒めるしかないだろ。
「……紅茶?」
「あとはコレな。 はい、ホワイトデー」
紅茶を横に退けて紅葉の真ん前にドンと置く。 白いホイップと赤い苺の配色が見事なショートケーキ────
「……1ホール?」
「5号ケーキだ。 たんとお食べ」
「……? 何が目的?」
「いやこれといってでかい理由があるとかは無いんだが」
「……ケーキ1ホールで私を好きにできると思ってるなら大間違い」
「お前を好きにするメリット無いからしないし話を最後まで聞け」
「……? ……♪」
あ、もう食い始めてる。 ほっぺにクリームついてまっせ。
「ほら、今日ホワイトデーだろ。 お返しだお返し。 先月お前から貰ったマドレーヌのお返し」
「…………」
え、なんでそんな驚いたような目で見てくんの? 俺なんかした? マジで。 ねぇ?
「……奏士にそんな気があるとは思わなかった」
「どういうことだそれ」
「……いつまで待っても私にだけ私に来ないから忘れてると思ってた」
「忘れられねぇよ色んな意味で」
主にトラウマ的な意味で。 いやマジで怖かったし俺もガチ逃げしたし……特に最後が怖かった。
「……お返しがケーキ?」
「お前のお友達から聞いたぞ。 ケーキ1ホール一人で食べてみたいって言ってたそうじゃないか」
「……確かに小百合と話してる時に言った気がする」
「俺もそういや紅葉1ホール食わせたこと無かったなって。 当分の過剰摂取は身体に悪い」
言うて紅葉の代謝なら1ホールくらいなんともなく処理するんだろうけどな。 それでも万が一倒れられたら困る。 美少女神絵師が糖尿病とかシャレにならんぞ。
「…………」
「どうした? 遠慮しないで食べていいんだぞ。 全部お前のだ」
「…………少し反省」
「あっそ」
「…………奏士は人に冷たいところをいい加減直した方がいい」
「コーヒーも他人の事情も深いりしないのが俺の流儀だ。 言いたきゃ勝手に言え」
「……お子ちゃま舌」
「コーヒー飲めないお前に言われたくない」
俺はコーヒー飲めるもんね! 何度も言うが苦いのが嫌いなだけで飲めないわけじゃない。
「……今日は奏士がホワイトデーのお返しを忘れてると勘違いして一人で怒ってた」
「不機嫌の理由はそれかぁ」
「……ずっとムカムカしてた」
「ムカムカしてたらお前は追い剥ぎすんの?」
「……あれはちょっと違う」
何がどう違うのか説明お願いしたい。 お陰で体育の時間ずっと寒かったんだぞ。 「バレーに参加して温まれ」って言いたいのかと思った。
「……不思議」
「あそ」
「…………」
「ハイハイ分かった聞きますよ聞けばいいんだろ。どうした」
「……奏士相手だと色々と不安定になる」
「病院行けば? 精神安定剤とか処方してくれるぞ」
「…………今は別の理由で不安定になってる」
「フォークを人に向けるのは辞めよう」
激おこ紅葉ちゃんはまだほっぺにクリーム付けっぱなし。 うーん迫力無い。
「……奏士と居ると色々落ち着かない」
「さいすか」
「……でも今は別の理由でムカムカする」
「胸焼けじゃねぇの? ケーキ後でにするか?」
「…………」
ふむ、どうやら胸焼けじゃないらしい。 それどころか紅葉の俺を見る眼に込める感情の温度がグッと下がったぞ。 今はそう、アイスワールドよりちょっと低い程度だ。 それ相当だろ。
※ アイスワールドの内部温度は-30℃と言われている。
「…………奏士を見てるとムカつく」
「理不尽な怒りは他所にやれ」
「……八つ当たりを進めるクズ」
酷い言われよう。 俺じゃなきゃ泣いちゃうね。 俺は号泣してる。 俺じゃなきゃ構文を『自分じゃなかったらマシになる』って意味で使う人居ねぇから。
いや、あれ気付かなけりゃあの人退場しなかったかもしれないだしある意味こっちが正しいのか? 知らんわ。
「…………奏士と居るとドキドキする」
「急に何怖いんだけど」
「……いつか間違えて殺しちゃいそうでドキドキする」
「あれコレ今すぐ警察呼んだ方がいいやつだよな」
身の危険を感じるから保護してくださいって土下座しに行こうかしら。 基本姿勢が土下座なの卑屈の極みだな。
「…………奏士は悩みが無さそうで羨ましい」
「悩みなんていくらでもあるぞ」
「……例えば?」
「マイクロビキニメイドをちょっと胸があるロリにしようか、それとも学校1大きいと噂の清楚な同級生にしようか悩んでる」
「…………馬鹿みたいな悩み」
「何を言う。 俺の今日1番どころかココ最近で1番の悩みだぞ」
「…………」
紅葉が残念な人を見る目で見てるぞ何故だ? 俺の後ろに誰かいるのか?
「……奏士は能天気」
「それはちょっと違う。 確かに俺の悩みなんて他人が見れば小さいものだろうし、全体的に悩みそのものが少なく見えるかもしれない。 が、それは俺が悩む時間を極力削ってるからであって悩みが全く無い訳じゃない。むしろ人より悩みはある」
「……そうなの?」
特に『お前らが部屋に無断で入ってくる問題』とかな。 ねぇこれ知恵袋で聞いたら逆ギレされたんだけど。
「悩んで詰まってるくらいなら悩み諸共一笑に付してしまえ。 何事も口笛吹きながらが丁度いいって死んだジジイは言ってた」
「……深そうで浅い言葉」
「深いと溺れるだろ。 川も言葉も浅いくらいが安心安全」
「…………この上なく薄い言葉なのに悩んでる自分が馬鹿みたいに思えてきた。 屈辱」
「それは良かった。 俺は屈辱的なお前を見れて大満足だ」
「……やっぱり性格悪い……」
「お互い様だ。 俺は生憎と性悪説派なんでな」
「……泉は?」
「誰にだって悪い部分はある……が、泉ちゃんのはごく稀に生まれる天然物の性善だ」
天然物が頑張って善でいようとしてる、とも言える。 何度も言うが、俺は人の善性を完全に信用しちゃいない。
「……奏士は変なところで理屈っぽい」
「俺は根本的に理屈人間だぞ」
結構な頻度で大雑把だし割とふわふわしてる部分があるけど最後はどうしても理屈的に考えてないと気が済まない。良くも悪くも研究者タイプと言える。
「……紅茶が冷めてる」
「長々と変な話してたからな。 そこにティーポットあるぞ」
「……奏士が容れて」
「めんど……いやハイハイやるやるやるからフォーク戻せ」
このお姫様はワガママだ。 ワガママならもうちょい可愛い部分見せやがれ。 具体的に何かと聞かれると悩む。 絵、かなぁ……
「……♪」
パクパクとケーキを食べる紅葉を見ながら紅茶を飲む。 よくもまぁあの身体に入るもんだ。 胃袋どうなってんのか知りたい。 これじゃ研究者じゃなくてマッド系の科学者だろ。
「…………」
紅葉がケーキを器ごと持ってこっち来た。 会長机を汚したくないとか? お前汚すような食い方するのか?
「…………」
会長椅子を持ってきた紅葉が目の前に座った。 や、やんのかぁ? 正々堂々言葉でやるぞ!
「……」
どうやら俺の考えとは違ったらしい。 フォークで器用にケーキを切って向けてきた。
「……何コレ」
「……お礼?」
「何の?」
「……ホワイトデーの?」
なんでさっきから疑問形で返ってくんの? 自信持てないならするなよだから「本能で生きてる」とか言われんだぞ。 お前は熱血系ジャンプ主人公か。 もしくはマガジン。
「……ケーキは一人で食べるより誰かと食べた方が美味しい」
「はぁ……で?」
「……1人……2人」
なるほど俺をカウントされた。 俺はノーカンでお願いしたいんだけどなぁ……
「……あーん」
「……」
さてどうするよし食べよう。 過程飛ばしすぎて結論出すの早すぎるって。 だってさっさと食った方が楽に終わるし……
「…………」
なるべく、できる限り、極力、フォークに口つけないようにケーキを食べる。 あ、苺甘酸っぱくて美味しい。 流石俺パティシエの才能ある。
「……美味しい?」
「作ったの俺けどな」
「……美少女に食べさせてもらえる補正で美味しさ倍増」
「自己評価高杉。 太陽系突き抜けてんぞ」
「? 正当な評価」
うんまぁそれを自己評価高杉つってんだけど伝わりそうにないからいいや。
「……あー」
「やらんぞ」
「……ケチ」
お前がやるのは勝手だけど俺がお前に食べさせる義理はない。 ないったらない。
紅葉は不満そうに文句垂れるが、気が変わったのかケーキを食べる方に意識チェンジ。 急いで食べるからまたほっぺにクリームついてる。
「……♪」
何はともあれ、紅葉が上機嫌になったから全てヨシとしよう。 前回に引き続き結果オーライ過ぎない? 終わり良ければ全て良しって言葉があるから多分ヨシ!
「……ご馳走様」
「うむ。 拭くから口閉じろ〜」
「むぃ〜〜」
いつも通り紅葉の口周りと手をウェットティッシュで────しまったまた甘やかしてしまった……次こそは厳しく、ちゃんと自分で拭かせようと思ってたのに。
何が原因なんだろうな。 俺が甘ちゃんだからか? それとも俺が兄気質で年下に弱いからか? 悠ちゃんも年下に弱いし、も助も年下に弱い。 瑠姫さんは年下に甘える。 うわぁ嫌な所が似てら。
「…………?」
「いや、なんでもない」
考え事しながら紅葉をじっと見てたらしい。 紅葉は俺の事を「悩みが少ない」って言ってたけど紅葉は紅葉で特に何も考えてなさそうで羨ましい。隣の芝生は青2号ってな。 芝生に着色料で色付けんな
「……帰ろ」
「後片付けしてからな」
「……手伝う」
「殊勝だが大人しく座ってなさい」
「……むぅ」
そんな顔してもダメです。 雑に洗ったり力込めすぎて割ったりするかもでしょ。 手を怪我したらどうすんだ。 大事な商売道具だぞ。
……また、甘やかしてしまった……そりゃ俺がやれば早いけどさぁ……それじゃあ紅葉が育たないじゃん。 子育てって難しい。
いや紅葉俺の子どもじゃなかった。 すっかり父親目線で生活してた。 だって紅葉がまんま手のかかる子供なんだもん。
「……終わった?」
コート着て手袋はめて全身防寒した準備万端の紅葉が居た。 相変わらず暖かそうで。 足以外。
「終わった終わった」
「……手が冷たい」
「そりゃまだ春になりきってないからな」
本来なら3月は春の入口なんだろうが、最近は3月でも寒い。 暖冬って言うけど、俺は四季が少しずつズレてるんだと思う。
「……はぁーっ」
モコモコ手袋で包みながら息をかけてきた。 紅葉さんなんばしとっと?
「……暖かくなった?」
「色んな意味でゾクゾクする」
今なんか殺気を感じた。 まさか委員会の奴らが見てるのか? あいつらの感知能力は凄まじい。
いやでも俺リア充じゃないから違うか。 普通に寒いだけだな。
「……帰ろ」
「はいはい」
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そして夜
「重政ー ご主人様はそろそろ寝るぞー」
「……(スピスピ)」
いつの間にかお猫様が丸まって寝てる。 自分のベッドでお気楽に。
「んじゃ、おやすみんさい」
明かりをポチッと消して布団へムーンサルト。 足の入り方、頭と枕の位置、全てにおいて完璧だ……
但しものすんごい疲れる! あとミスると痛い! ミスらなくても若干痛い! ならやるなと言われてもやりたくなるのが俺。 もしくはアホ。 同じこと2回言ってんぞ。 誰の名前がアホだって?
「zzz……」
布団へ入ったらお薬の力でZの世界へ。 今日くらい幸せな夢を見たい。 完成したマイクロメイドビキニの夢とか。
「…………」
はい悩みの種紅葉さん乱入。 相変わらずノックしないし返事も待ちません。
「……今から寝る?」
「お前が来なければな」
「……なら丁度良かった」
「は? おい入ってくるな。 これは1人用だ」
「スネちゃまみたいなこと言っても無駄」
抵抗虚しく紅葉の身体をねじ込まれた。 布団狭い……
「なんだお前。 人が寝てる布団に入ってくるとか気でも狂ったか」
「……心外」
「今この状況において10:0でお前が悪い」
「……折角寒そうにしてる奏士を気遣ったのにそこまで言われる筋合いは無い」
「この状況が筋合いなんだよ」
そりゃ多少大きいサイズの布団だよ。 でも大の男が1人入って、それで限界のサイズよ。 もう1人追加する余裕は無い。
ちょっと前まではあったかもしれないけどお互い身体が成長してるから布団から出ないようにすると割とキツイ。 凄い密着しないと俺がまたクッション寝る羽目になる。
「……2部屋暖房つけるよりこうした方が節約になるし暖かい」
「節約って無理の無い範囲でやるから節約になるんだぞ。 無理したらそれはただの我慢だ」
「……奏士はつべこべうるさい」
「真っ当な反応だ」
紅葉が入ってきたおかげで俺は横向きで寝ざるを得なくなった。 涅槃に入った釈迦かっての。
「……奏士の硬いのが当たってる」
「それは俺の胸板だ。 含みのある表現するな」
こっちは逆に紅葉の柔らかいのが当たってますね。 あ、紅葉の寝巻きすっごいモコモコしてて肌触りいい。
「……暖かい?」
「暑苦しい」
「……もう少し大きい布団を買う」
「待て、お前今後も何回かやる気か?」
「……奏士が泣いて懇願するならやってもいい」
「なら買う必要は無いな」
「……こっちの方が密着するから?」
「違う。 お前の思考回路はおかしい」
「…………(スヤァ)」
「自分から始めた話題放棄したよこいつ」
ガン無視して自由に寝やがった。 枕を死守した代わりに右腕を枕にされた。 重いんだけど。 これ血流大丈夫かな……
もういい先に寝たならこっちの勝ちだ。 紅葉を部屋に放り込んでさっさと寝よう。
……眠いから後ででいいや。
そういや俺、さっき睡眠薬薬飲んだなぁ……
寝よ。 お休みんさい。
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朝
「…………」
紅葉がそっと目を開ける。
寝起きで視界がぼやぼやするが、まだ少し暗い。 どうやら早く目が覚めたらしい。
だが、普段より何時間も早いというのに普段以上に寝れた気がする。 日々の疲れも眠気も無い。
と、ここで思い出す。 昨日は確か、寝る直前の奏士の布団に入って自ら湯たんぽ代わりになった事を。
紅葉は人より体温が高い。 低体温の奏士はさぞ暖かっただろうと思いながら起き上がろうとするが、身動きが取れない。
試しに自分の全力で動いてみるが、元から動きが制限された状況でそこまでの力が出せるはずもなく、特に変わりは無かった。
幸い首から上は少し動くから動かしてみると、すぐ上に奏士の顔があった。
「…………」
紅葉は恐らく初めて見る奏士の寝顔に興味津々。 普段は寝ていても人の気配ですぐ起きる奏士がぐっすり寝ていることをいい事に顔をじっと見る。
改めて見て、色々気付く事がある。 奏士は日頃から巫山戯てイケメンを自称しているが、確かにイケメンではなくとも悪い顔では無い。
形が悪いパーツがある訳でもなく、肌も綺麗に整っている。 多少目つきが悪かったり目の下のクマが凄いが、こうして目を閉じて寝ている顔は紅葉的にどこか可愛げを感じている。
それにしても濃いクマだと紅葉は思う。 自分も徹夜してクマができることはあるが、ここまで濃くて消えないクマがある人は初めて見たからだ。
も助も似たような顔をしているが、あっちはいささか健康的になっているのに対し、こっちは未だ不健康。 そこらのホームレスの方がまだ生気を感じる。
「……?」
と、そこで紅葉は自分が動けない原因に気付いた。
原因は奏士だ。 寝惚けてはワザとかは分からないが、紅葉を抱き枕か何かだと思っているのか抱き締めるように寝ている。
抱き締めるといっても力一杯潰すようにではなく、そっと触れるように。 しかし、紅葉が動けない程度には力強く抱いている。
これに紅葉は奏士の男らしさを感じる────とかは無かった。 それよりも気になることが見つかったから。
「…………」
奏士の目から涙が零れているのが見えた。
横向きに寝ると重力で涙が出るだとかリラックスすると涙が出る、なんて知識は紅葉に無い。
「ん〜〜っ」
紅葉はどうにか両腕を引き抜いて自由にさせると、奏士の頭を包み込むようにそっと抱きしめて撫でる。
奏士がなんで泣いているのか、紅葉は知らない。この時の紅葉は、只、目の前で泣いてる子どもをあやす様に奏士を撫で続けた。
「……お?」
紅葉の撫でが効いたのか、それとも寝相かは分からないが、紅葉を抱き締める力が強くなり、より密着するようになった。
が、紅葉は以外にも嫌悪感とかは感じなかった。 むしろ、奏士が可愛く見えた。
自分より大きくて、口が悪い異性のお友達。 そして自分の絵の大ファン。 紅葉が奏士に対する認識はそんな所だが、今日、新たに1つ追加された。
曰く、『大きな子ども』と。
「……おやすみなさい」
紅葉は奏士の耳元でそう呟くと、まるでお互いに抱き合うように再び眠りについた。 どうせ今日は休みだから少しくらい寝坊してもいいだろう、と。
そして、この子が泣き止むようないい夢が見れるように願いながら。
なお、この後遊びに来た悠に見られて盛大に弄られた事は記すまでも無いだろう。
はいどーもこの前突然ひゃっくりが出て、出たことにびっくりしてその1回で止まった結果突然奇声あげた変人と化した作者です。私の横隔膜はどう落とし前つくれくれるんですか?
それより本編です。
なんか凄い文字数になってるんですけどどうしたんですか? 日曜日に待ちわびた通販の荷物届くからって興奮したんですか? あ、土曜日はこれ書いて終わりました。 他はカーテン買いに行っただけです。
いやーなんか珍しく紅葉と奏士がイチャイチャ……イチャイチャ? したるの見ると楽しくなりますね。 紅葉が1番書きやすいので。 口調的な意味で。
ちなみにマイクロメイドビキニは私の趣味です。 最近私の中でメイドブームが凄くてですね……
皆さんはメイドさんにガーターベルト必須派ですか? 私は服装に次第でファイナルアンサー
みんなも自分だけのメイドさんを妄想しよう! そして現実に戻って泣こう……
ちなみに来週は更新ありません。 1週間ずっと用事があるので書けそうにないので。 予約投稿なんて機能は無かったんだ……
て訳で次回は11/24です。
では次回もお楽しみに。 そろそろ春休みですね。 現実は冬突入ですけど。 さすがの私も長袖出しました。




