この作品の本題を思い出して久しぶりに来る才能の無駄遣い……とかそんなことは無い冬の締め括りみたいな回
「……寒」
「な〜(おい布団動かすな)」
「お前自分の寝床あるだろ」
朝起きたら布団に重政が潜り込んでいた。 猫毛除去面倒くさぁ……
「おい重政。 布団片付けっからそこ退け。 邪魔だ」
「な〜(嫌じゃ)」
「んだコラ」
このお猫様はご主人様の布団の上で身体を丸めて動こうとしない。
仕方なく布団は諦め、代わりに重政の背中を寝起きモフモフ。 長く柔らかい冬毛が素晴らしい。
日に日に弱体化の激しい身体に空想幼女がゴミを見る目で罵倒して鞭打って踏み付けられて立ち上がる。 いやー朝からポッカポカ。 これは一種のシバリングと言える。 朝から何してんだこいつ。 縄で縛るタイプのシバリングはしてないからまだ健全。
ググッと背伸びすると背骨から嫌な音。 最早恒例行事。
……寒い。
もう冬も終わるってのに上がらない気温。 夏の終わりは気温下がって欲しくて冬の終わりは上がってくれねぇかな。
なんて微塵も思わない。 寒い方が虫出ないから大好き。 重政も熱源を求めて甘えて来るから超好き。 俺も暑いの嫌いだからどちゃクソ好き。 要するに冬大好き。
ま、『暑いのが嫌い』って言ったけど寒いのも普通に嫌だけどね。 暑くても寒くても適温の我が家が大好き。 つまり我が家大好き。
でもエアコン起動してないんだけどこれどゆこと? 何お前タイマー入れたのに寝坊? 大遅刻やぞ。
「……エアコンのリモコンは何処?」
右見て左見て、ついでに右肘左肘交互に見ても見つからないリモコン。 さてはリモコン隠しの仕業だな〜?
も〜今すぐリモコン俺の目の前に出さないとポアするぞ。 ガチギレじゃねぇか。
なーんて、我が家のエアコンはスマホから操作出来るからリモコン隠しは大して意味無いんだなぁ。
…………で、俺のスマホはどこ?
机の上にあるのは仕事用のスマホ。 仕事用だから最低限+αの機能しかない。 つまりエアコン操作アプリなんて入れてない。
探せど探せど見つからない俺のスマホ。 こんなにも必死に探してるのに見つからないとか夢と希望かよ。 俺の夢はとりあえず死者蘇生出来るようになりたい。 もしくは神。 黙れゴミ。 ゴミってなんだよせめて"筋肉"を付けろ。 付けたとて。
それはそうとガチめにスマホが行方不明。 なんだ家出か? この寒さの中スマホ放置したら野垂れ死ぬぞ。 そういう問題じゃない。
仕方なく仕事用スマホから電話をかける。 『柳奏士』と『千面童子』の繋がりを極力作りたくないから正直使いたくない手だが、この朝が寒すぎて俺のやる気諸共冬眠しそうなレベルだからしゃーなし。 ペロロロロロ……やる気のねぇ呼出音だな。
『えっほ、えっほ、えっほ、えっほ……』
おやおやおや。 重政君の下から着信音が聞こえるぞな。
「…………」
「スピスピ……」
どうしよう重政寝てやがる。 これ起こすのはちょっとアレだなぁ……
まぁうん、こんなに寒いとスマホ壊れちゃうからね。 秀吉宜しく懐で温めておいてくれたんだろ。 そういう事にしとこう。
……やっぱダメだクソ寒い。
服を着替えながら嫌でも分かる肉体の冷え。 太ももとか足とかクソ冷たい。 特に足が温度の概念を超越してる。 これ凍傷でもげるんじゃね?
はっ……こんなに寒いともしや
と思ってトランクスを少し下ろす。
やはり……やはりだ。 奏士君の奏士君が縮こまっている!
寒い時の生理現象としては至って正常なのに何だこの物悲しさは。
例えるならそう、同人誌の総集編買ったら商業誌掲載部分が入ってなかった時くらい悲しい。 しかもそれが1番好きなストーリーだったってね。 ごめんこれ何の話? 作者の実話だろ。
俺のご立派様がこの寒さで徳用ウインナーみたいになっている。 それ以前に上裸+中途半端にパンツ下ろしてるせいで半ケツな今の姿見られたら終わるな。 いや「普段の醜態に比べたらマシ」とかじゃなくて。 絶対にこっちの方がアウトだろ。
「……奏士」
ほらそんな事言うから来たじゃん。 この作品は噂をすれば影がさす超えて影が乱れ突きなんだから下手なこと言うなよ俺。
「…………」
「なんだその目は」
「……朝から粗末なもの見せないで」
「見たのはそっちだし何度も言うが入る前にノックしろ」
言うて最後にノック云々を言ったのって何か月前だっけ。 バチくそ朝が弱い紅葉がこんな時間に起きるとは思ってないから油断した。 珍しく油断した。
「あと、これは寒いからこのサイズなだけで普段はもっとこう……エッフェル塔くらいある」
「(プススーッ)」
あれなんで今笑われた? 笑うところあった? ねぇ
「……奏士程度でエッフェル塔なら世界がバベルの塔で溢れかえる」
「そこまでにしておけ。 異性からの酷評はより深く刺さる事をお前はまだ知らない」
現に俺は泣きそうだよ。 なんで朝から滅多打ちされなきゃならんのだ。 寒いから余計に痛い。
しかし、どれだけ酷評されようと紅葉は本気の俺を知らない。 だからまだ俺のメンタルは形を保ってる。
本気の姿、第2の脳が第1の脳の支配から解き放たれた姿。 通称『身勝○の極意』を見られても評価が変わらなかったら俺のメンタルは灰となって消える。 その前にオル○ェノクにならないと……
「まぁいい。 何用だ」
「……その前に早く履いて」
「これは失礼」
パンツ上げて動きやすい修行服に素早く着替える。 何故紅葉は俺が着替えてる間もずっと見てるのかはもう聞かない。 お年頃だからって人のをジロジロ見ちゃ行けないんだぞ! 見られて特に何も無い俺も俺だけど。
「終わった。 で? お前なんでこんな時間に起きてる」
俺が起きたばっかな事から分かると思うが、今はまだ6時前。 冬は寒いし日も短いから少し活動開始を遅らせてるとは言え、紅葉が起きてるハズがない時間だ。
完徹でもしない限りは。 さてはコイツ寝てないな? 今日学園あるのに。
まぁ学園で寝たら寝たでお世話係のお嬢様にお任せするとして……
「……外見れば分かる」
「外?」
自分の口から言う気は無いらしい。 ほら許可出してないのに部屋に入ってきて縁側の雨戸開けてる。
「……寒い」
雨戸を開けた途端に入り込む冷気。 部屋の寒さとは段違いの寒さが薄着の俺を襲う。
「……見て」
「うげぇ」
開けられた雨戸から覗く景色は白。 右も左も上も下も全てが白い世界。
「……雪積もってる」
「昨日の予報が的中したか……どうせ積もらんと思ったのに」
日本海側ならまだしも、太平洋側、特に北関東(の中でも茨城)は降雪が少ない。 というか雪が降る事すら稀だ。 その理由については説明が面倒だから各自調べろ。
そしてこの作品の舞台名が茨城でも茨城でもなく茨城であることを初めて知った人は手を挙げなさい。 そしてそのまま右手をピンと伸ばして水平にしなさい。 急に敬礼するじゃん。
「……はーっ」
紅葉が白い息を吐く。 俺もやってみよー
「はーっ」
うっほ出た出た。 幾つになっても息が白くなるだけでちょっと楽しくなれる俺は幸せ者。 もしくは永遠のバカ。
「……ふーっ」
紅葉が口を窄めて息を吐く。 すると収束したホワイトブレスがファイアする。 横文字使えば頭いいと思ってんな?
「……凄く寒い」
「3℃だってよ。 こりゃさみぃ」
俺が今見たのは室温計だから外気はもっと寒いだろう。 大体-1℃くらいか?
「……今日は学園休む」
「俺も適当な理由付けて休みたい」
が、どう足掻いてもあの理事長がズル休みを許さないから俺は休めない。 よって紅葉も休ませない。 意地でも学園行かせる。 何故ならズルいから。
「こりゃ除雪するしかねぇな……鍛錬してる場合じゃねぇ」
「……雪遊び?」
「雪かきだ」
庭の積もり具合的に家の前の道も酷いことになっている事は言うまでもない。
その上ロクに舗装されてない道だから足元見えない状態で歩くとどう怪我するか分からん。 確実にすっ転ぶか雑木林に迷い込む。
「……私も遊ぶ」
「だから雪かきだっての。 遊ばねぇぞ」
「…………」
そんな残念そうな顔しなくても……
「遊ぶならちゃんと防寒着と手袋を完備してから遊びなさい。 庭から出ないなら危なくな────」
いや庭も危ねぇな。 そこら中に防犯の罠設置してある。 この雪で安全装置がおかしくなってる可能性もあるから1回確かめないと。
「……お庭?」
「いや、今日は家の中で大人しくしてろ」
「……残念」
「ちゃんと暖かくしてるんだぞ」
「……ココアがあると嬉しい」
「コップに粉とお湯入れるだけだろ自分でやれ」
「……残念G2」
「究極奥義と同じ枠なん?」
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「……やるかぁ」
道着から作務衣に着替えてウインドブレーカー着て手袋はめてストール巻いてスコップ持てば死体遺棄する不審者の完成。 おかしいだろこんなの。 やっぱ素体が原因なのか?
それにしてもウインドブレーカーとジャンパーってどう違うの? というか、ウインドブレーカーってシールド何枚割れるの? もしかしてW・ブレイカーと同じ枠だと思ってる?
「おや、奏士殿」
スコップ振り回して(準備運動)背伸びしてたら莇が帰ってきた。 何故かスポーツウェアで。
「……お前まさか、この環境の中走ってきたのか?」
「えぇ、日課ですから」
もしかしてコイツは頭がおかしいんじゃなかろうか。 クソ寒い+雪が積もってんだけど。 あとクソ寒いしクソ寒いしクソ寒い。 要するにクソが積もってる。 抜粋が下手糞過ぎる。 クソだけにってかやかましいわ。
「奏士殿も如何ですか? 空気が澄んでいて中々に気持ちいい走りですよ」
「俺は風の子じゃないから遠慮しとく」
おいちゃんにこの寒さは結構キツイ。 細マッチョ故に脂肪が少ないから保温力も低いし頼みの筋肉は約立たず。 暖房の効いた部屋と炬燵でほっこり過ごしたい。 ついでにみきゃんとナイスなアイス食いたい。 どうでもいいけどマカロン食べたい。
いやこれはちょっと前まで乱用してたネタの再利用じゃないですから。 じゃあお前唐突にスイーツ食いたがるやべぇ奴じゃねぇか。 それでもなお通常時の方がヤバいというバグ。 これはもう、とあるドライバーのver.2と同じくらい仕様で押し通すしかない。
「では私はこれで」
「うーい」
「……あ、道場は開いておりますか?」
「あんなクソ寒い部屋に近付くか」
「動けば暖かいですよ?」
「お前は寒すぎて足の裏が床にくっ付いたことあんのか?」
「貴方は経験が?」
「いや俺は無いけど」
「時間と体温を返してください」
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疲れた。
えっほえっほと雪をスコップで掘りまくって道だけは出来た。 住宅街から我が家へ続く道は実質1本だから雪が積もると我が家は孤島と化す。 サスペンスなら5人は死ぬ。 か○いたちの夜なら最低1人で済む。
それはそれとして
雪かきしたお陰(皮肉)で腕と腰が痛む。 その対価として俺は心身共にぽっかぽか。 今なら全裸で雪にダイブできる。 スケ○ヨになる未来しか見えないからしないけど。
脱いだ防寒具と獲物のスコップを持って帰宅。 作務衣だけなのに寒さを感じないなんて雪かきカイロは凄まじい。
蔵にスコップを片付けて服に着いた雪を落としながら家の中に戻る。 裾が雪で濡れて少し冷たい。 でもどうせ暖房とコタツで直ぐ乾くから許す。
あ、そういや布団敷きっぱなしだった。
「重政〜 飯の前に俺を労れー」
『雪かき頑張ったで賞』と布団代を徴収しようと部屋に戻ると布団が膨らんでる。
考えられる可能性は3つ。
1.人間体になった重政が全裸で寝てる
2.ベルが全裸で寝てる
3.全裸と毛布の相性の良さに気付いた紅葉が全裸で寝てる
とりあえず2と3はナシだな。 1が真っ先にナシだろ。 つーがなんで全部全裸? だって全裸毛布って暖かいし……皆、全裸毛布する時はパンツを絶対履こう。
何はともあれ、布団を捲れば判明する。 よぉーし切って確かめよう!
…………
えー、正解は3番でした。 いや正解でもないけど正解っちゃ正解。
布団を捲ると、全裸の重政と服着た全裸の紅葉が仲良く丸まって寝てた。 どこのハイエース乗りだよ。
布団を剥がされて寒いのか、2匹の猫がプルプル震えてる。 ウチ、こんなデカイ猫飼ってたっけ? 俺の記憶だと1匹だけなんだけどな。
「おい、起きろ紅葉。 人の布団で寝るな」
「……あと5週間」
「雪解けまで寝る気か」
「にゃ(寒い)」
「……布団返して」
「元から俺の布団だ。 出ろ駄猫共」
「……スピ~」
布団を取り返すのを諦めて2匹仲良く寄り添って寝やがった。 こいつらホンママジで外に放置したろか。
「スー……」
とりあえず紅葉だけでも縁側に捨てちゃえ。 そーれぽぽいのぽ〜い
「ふぎゃっ」
冷気がこれ以上部屋を侵食する前に障子を閉めてっと。 重政どうするかな。 紅葉は頑丈だから雑に捨てたけど、重政は無駄に繊細だからな。 重政用のベッドに放り込むか。 そーれぽぽいのぽ〜い
「にゃ?」
無事放り込んで2匹が戻ってくる前にささっと布団の毛を処理して畳んでっと……よしこれでフェーズ1クリアだ。
「……奏士は非道」
続いてフェーズ2 全身ヒエヒエカチコチの紅葉から生き残れ。
「……お仕置」
「その冷たい身体で触れようもんならまた放り出すからな」
こういう時のために用意してあった刺股が役に立った。 普段の紅葉なら無理だけど半分寝てる紅葉ならこれで動きを止められる。
「……力が出ない」
「大人しく部屋帰れば?」
「……めんどい」
色々と諦めたのか、紅葉は近くにあったコタツに潜り込んだ。
「……暖かくない」
当然、起きたばっかでコタツのスイッチ入れてないから内部は冷気が篭ってより寒い。
しかしそこは紅葉。 出ることすら諦めてそのまま寝始めた。 紅葉の中に、意思が、無い! 拾う価値も、無い! 逆溺死○ーちゃんやめろ。 逆溺死ボ○ちゃんって何?
だがまぁ、これで紅葉は大人しくなった。 フェーズ2はクリアだ。
さーてそれじゃあ朝飯作るか。 今日はより温まるものを作ろう。 温まるって具体的に何? 家庭とか? 笑えないジョークだ。 笑えよ。
『えっほ、えっほ、えっほ、えっほ……』
重政から奪還したスマホが鳴った。 朝の電話って絶対マトモな用事じゃない。
着信画面を見れば『クソガキ』の4文字が。 ほらー悠ちゃんからとか絶対面倒事じゃん。
どうせあれだろ? 学園の除雪手伝えとかそういうアレだろ? 工業科にやらせとけよどうせ体力余ってんだから。
初手は居留守でガン無視安定。
『えっほ、えっほ、えっほ、えっほ……』
居留守無理そう。 ずっと鳴ってる。 ホラー映画くらい電話鳴ってる。 これ出たら詰まない?
「あいもすもす」
『早く出ろ』
朝からオコな悠ちゃん。 ヤダ〜もう更年期? カルシウム足りてないんじゃない? 身長的にも。
『まぁいい。 奏士、学園からの連絡だ。 今日は休校になった』
「それは外見りゃ分かる」
『だが、生徒会役員は通常通り学園に来てもらう。 雪掻きを手伝「いーやーじゃー」拒否権は無い』
この暴君はいい加減権力の椅子から落とした方がいいんじゃなかろうか。 バカとアホに権力持たせるとロクな結果にならないことは時代が証明している。 バカを演じてるならともかく。
「外見ろ。 マトモに動ける気温と積もり具合じゃねぇぞ」
『安心しろ。 雪掻き後の褒美を用意してある』
「お前雨で濡れてる人に着替え渡すタイプだろ」
雨降ってんだから傘を寄越せや。 要するに雪掻きを却下させろ。
「つーか金あるんだから除雪車とか使えよ」
『そんなものは学園周囲の道を作るために使う。 お前たちがやるのは学園敷地内の道作りだ』
「俺、さっき家の敷地の雪掻きしたばっかなんだけど」
『その筋肉はなんのためにある』
カッコつけのために決まってんだろボケ。 見た目重視じゃい。
『何も歩いて来いとは言わん。 車両での登校を許可しよう』
「この状況で安心して車出来るかボケ」
スタッドレスタイヤにしててもアイスバーンとか怖いだろ。 それ以前に車庫前の雪掻きしてないから入れないし。
『ちゃんと全員連れてくるんだぞ。 今お前の部屋にいるであろう花伝もな』
なぜ分かったし。 さてはモニタリングしてるな? 監視カメラはどこじゃ?
「一応聞くけど雪掻きの参加者って何人? まさかとは思うが、生徒会役員5人だけじゃないだろうな」
『私も限度を超えた無茶はさせない。 私の方からから何人か当たっているが、お前達の方で心当たりがあるなら誘ってみろ。 増えた分の報酬はちゃんと用意しておく』
心当たり、ねぇ……委員会の奴らでもこき使うか。 餌ぶら下げときゃやるだろ。
『ではな。 時間に遅れてても安全第一で来い。 本当に無理なら連絡を入れろ』
「やりたくない」
『それは無理な理由に該当しない』
それを最後に切れた。 あんのロリガキ……後で太ももに正の字書きまくってやる。
……とりあえず紅葉起こすか。 紅葉のバカ力で雪掻き即終了させてさっさと帰ろう。
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「うへー 寒いデス……」
「はぁーっ……息も凄く白いですね」
泉ちゃん今吐いた息言い値で買うからちょっと待って」
「先輩最高にキモイ心の声漏れてますよ」
「じゃあもう変わらんか。 泉ちゃんちょっとこの袋に吐いてみて」
「え? え?」
「ハイハーイ! ワタシの火照った息なら幾らでも吐きマース!」
「そんな毒ガスは要らん」
「喧嘩だァ!」
叫びながら襲いかかってくるベルは雪に投げ込んで放置する。 顔から行ったけどまぁ大丈夫だろ。
「それにしても本当に寒いですね……」
「本当ですね……暖かいおしるこが飲みたくなります」
「あ〜……私はコンビニに売ってるコンポタが飲みたい……先輩買ってきてくれません?」
「学園目の前のコンビニくらい自力で行け」
寒さを誤魔化す雑談を挟みながらクソガキの登場を待つ若人達+年寄り1名。 後者は勿論俺。 熱い緑茶飲みたい……
「耳あてしてくればよかった……優しい優しい泉ちゃん、その耳あてかーしーてー」
「嫌です。 絶対嫌です」
泉ちゃんが真顔で拒絶した。 泉ちゃんも脂肪が少ない(失礼)から寒さに弱いのかな。
「そういえば先輩、会長どこ行ったんですか?」
「あ、そういえば紅葉さんのお姿が……」
「紅葉ならここ」
寒さを我慢してコートの前を開けるとプルプル震えるフルアーマー紅葉が一瞬覗いて一瞬で閉められた。
「寒すぎて断固として出てこようとしない」
「えぇ……先輩は先輩で受け入れてる」
「慣れた」
「慣れ、ですか……慣れって怖いですね」
頼金は何故か遠くを見つめる。 でもほんとにね。 慣れって怖い。
なんせ「紅葉の体温でコートの中少し暖かい」って考える余裕出てるし。 狭さは無視することにした。 もうワンサイズデカイコート買おうかな……
「それに比べて……」
頼金が校庭の方に目線を移す。
「キャッホーイ!」
「華さん、あまり走り回ると危ないですよ」
そこには寒さなんてなんのその。 ロクに防寒具も着けずに遊び回る2匹の犬が居た。
「あのカップルは元気ですねぇ……」
「華さん殆ど素なのに……」
「男子小学生なんだろ。 寒さ耐性がバグってやがる」
ほら、今も手袋着けずに雪合戦してる。 雪玉に石入れて投げつけたろか。
「その後ろで先輩のお友達が雪の代わりに拾った石投げようとしてますけど、あれ止めなくていいんですか?」
「赤の他人だから知らね」
「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……」
「イチャイチャしやがってぇ……」
「俺だって、俺だって彼女と雪遊びしたかったよ……」
「おい、貯水タンクはどうだ? 確か学園の隅に使われてないのが1つあっただろ」
「いや敷地内は定期検査でバレる可能性が高い。 雪山まで移送しよう」
「だな。 雪の中に埋めときゃ発見時には身元が分からないくらいにはボロボロになってるだろ」
「じゃあ顔中心で殺るぞ」
「おう」
なんか莇の死体遺棄をどうするか会議してたけど、まぁ聞こえなかった事にしておこう。 どうせバレるし。 海育ちは山に埋めて山育ちは海に流すって言うじゃん。 こいつら街育ちだけど。
「あっちは色んな意味でアチチだぁ……こうなったら泉ちゃん! 私達もアチチになろう!」
「え、え? えええええ!?」
「先輩知ってます? 泉ちゃんって体温高いから抱き着くとすっごい温もり感じるんですよ」
「知ってる。 因みにこうして撫でるとより温い」
「わ、わ……(ボフッ)」
「ホントだ〜 私は泉ちゃんに抱き着く係担当するんで先輩は頭撫でて温める係お願いします」
「巫山戯んな逆にしろ」
「……うるさい」
紅葉に手を叩かれた。 だってお前の頭撫でても静電気発生するだけじゃん。
「こうなったら会長を撫でてあげるしかないですね。 先輩ちゃんと仕事するんですよ?」
「……頼金、ちょっと手袋外してみろ」
「? こうですか?」
「そう。 で、俺も手袋外して紅葉の頭を撫でる」
「……む」
「で、この撫でた手でお前の手に触れると────」
「? 触れるtあ痛ぁッ!」
「バチィッ」と音を立てて通電。 今一瞬だけど電気見えた?
「何するんですか!」
「お前が撫でろと言ったんだろうが。 紅葉の髪は静電気起こりやすいんだ。 容易に触れるとシビれるぞ」
「何字面だけかっこいいセリフ吐いてるんですか! あーいって……」
「す、凄いです……」
「泉ちゃんも静電気とか凄そうですけど。 先輩下敷き持ってます?」
「あるぞ」
「な、なんで懐から下敷きが……」
「どうも。 これで頭を擦って〜」
「あ、ちょ待っ──(ボフッ)」
「……爆発したな」
「爆発しましたね」
下敷きという名の静電気発生装置を使った事で泉ちゃんのくせっ毛が覚醒。 凄いことになってる。
「……これ、元に戻りますか?」
「なぜ俺を見る?」
「うう……セット大変なのに……」
「あーゴメンゴメン! 今ちゃちゃっと直すから! 先輩が!」
「お前やらねぇのかよ」
「私にそんな女の子らしい技術求められても困りますよ! むしろ先輩の方が詳しいでしょうそういうのは!」
「マジ顔で何言ってんだこいつ」
まぁやれるけど。 静電気を抑える櫛とか持ってるけど。
「整えるからちょっと待ってちょ。 紅葉、邪魔。 出ろ」
「絶対嫌」
「ノータイム返答……こんな会長をよくもまぁ連れてこれましたね」
いやまぁ連れてきたというか無理やり連行したというかほぼ誘拐というか。 詳しい事は言わないけど無理やり着替えさせて無理矢理連れ出したよね。 紅葉が半分寝てる隙に。
「すまない。 待たせたな」
ここで元凶のロリ登場。 遅せぇわボケ。
「おーい……ちょ、待てよ悠……おま、これ結構重いぞ……」
そして遅れて登場サボり魔も助。 リアカーを引いての登場だ。
「それは重い云々以前にお前の運動不足とタバコが原因だ。 動け」
「限度ってもんがあるだろ」
も助のリアカーにはスコップやらスノーダンプが乱雑に置かれていた。 もっとこう丁寧にさぁ……
「あいまいみい……20人弱か。 結構集まったな」
それより数え方おかしくね?「あいまいみい」なら多分mine含めて4人までしかカウント出来ないだろ。
「あれ、先輩そういえばあの人たちどうしたんですか?」
「どなた?」
「ほらあの……なんか凄いイケメンとギャルの人達」
「……どなた?」
どうしよう俺もガチめに忘れてる。 だって最近出てないしさぁ……
「その区分はベルに聞けば分かるだろ」
「そうですか。 ベル先輩は雪に埋まって動きませんけど」
「……死んだか。 まぁ餅も雪も紅葉も童貞を殺すワンピースも、白いものは犠牲者多数って決まってるし仕方ない」
「いや仕方なくないデスよ!」
ちっ 生きてやがった。
「ベル先輩大丈夫ですか? 顔が真っ赤ですよ」
「いや〜下半身が無防備だったから壁尻プレイの妄想してたらそれはもう興奮して……」
「凍傷じゃないんかい。 無事ならそれでいいですけど」
……え、いや今更壁尻につっこまないよ? キリないし。
「えーとなんの話しだったっけ……そうそうイケメンの話しでした」
「イケメン? ソージ以外で誰のことデスカ?」
「最初から俺をイケメンから除外するなよ」
「だってw ソージはどう見てもイケメンじゃないデスよww」
「何笑ってんだお前」
いやまぁうん。 散々イケメンだのなんだの言ってるけど客観的に見てイケメンとは思えないけどさ。 世のラブコメ主人公が自称フツメンで溢れる中、俺は自称イケメンの普通を地で行く男だけど。
でも顔なんて好きになれば気にならなくね? 2次元美少女と世界一の美少女である泉ちゃんが大好きな俺が言っても説得力無いだろうけどさ。
「で、クラスのイケメンさん達は今日はどうしたんですか? 姿が見えませんけど」
「あ〜 サツキ達は電車が止まってるから来れないって言ってマシタ」
あーそういやあの人たち隣町住まいでしたね。
「紅葉、お前の保護者はなんて?」
「……小百合と神鳴も断られた」
「はーん」
「……神鳴が寒さで動かないから介抱と日々の仕返しチャンスで無理って」
「ウケる」
なんてあのお嬢様は言ってるけど、そのうち元気になった神鳴にやり返されるんだろうな。 もしくはヤり返される。 リア充死ね。
「全員注目! これより雪掻きを始める! 範囲は校門から各校舎の昇降口周辺! 終わり次第昼食等を用意している」
「「「おー」」」
「そして一番の朗報だが……雪掻きが終わり次第、校庭を解放する! 雪遊びを楽しめ!」
「「「おーっ!」」」
「「「えー」」」
雪遊びが楽しい風の子側とそんな事より寒い人の子側で別れた。 人の子側が少数精鋭なのが気になるけど。
「ソージソージ! 終わったらカマクラ作りマショー!」
「雪の量的に無理だろ」
「……寒い」
「クレハも! そんな所に隠れてないで出てきなさーい!」
「フシャーッ! フーっ!フーっ!」
「クレハが威嚇した!? ソージも手伝ってクダサイ!」
「俺今紅葉に命握られてるから嫌」
「おい奏士。 お前は雪掻きじゃなくて調理担当だ。 こっちに来い」
「あー! 先輩ずっる! 1人だけ暖房効いた調理室でサボる気ですか!」
「奏士さん……」
「おお、イズミが裏切り者を見るような目でソージを……堕天デス」
「……私は味見役をする」
「会長もずるっ! それなら私も味見役しますよ!」
「わ、私は奏士さんのお手伝いを……」
「そんなに人手は要らん。 奏士1人でいい」
「だ、そうだ。 せいぜい頑張りたまえ諸君」
「ベル先輩、コイツのドヤ顔ウザいんで殺っちゃっていいですか? ちょうどスコップ持ってるんで」
「ワタシも協力シマス」
「…………」
「クレハはいい加減にソージのコートから出る!」
「……今の私は雪掻きの役に立たない。 ただ存在して体温下げるだけなら味見役に専念して皆が食べるお昼のレベルを上げることに尽力する方が資源の有効活用」
「あの……それっぽいこと言ってる様で要するに『寒いから外に居たくない』って事では……」
「…………そうとも言う」
「あ! クレハ引っ込んだ!」
「先輩動かないでください! 先輩の前に会長を引きずり出します!」
「す、すみません奏士さん……でもこれも平等の為なので!」
「泉ちゃん?」
寒さは人をおかしくさせると言うが、泉ちゃんですら堕天するとはげに恐ろしき日本の冬。
「あ、ちなみにも助。 お前は雪掻き班だぞ」
「え〜」
──────────────────────────────
そして調理室
「今更だけど20人前を俺1人で作るのって雪掻き以上にキツくね?」
「だから長めに時間を確保してある。 ほら、あと3時間で昼だぞ。 おにぎりと卵焼きと豚汁をさっさと作れ」
「作るけどさ……」
工程多い料理を大量に、とかじゃなくて、ただ米炊きまくって卵焼きまくって豚を汁りまくるだけでいいからまだ未来がある。
「材料は冷蔵庫入れてあるから自由に使え。 食材費は私持ちだ感謝しろ」
「むしろ雪掻き手伝ってやってる事にそっちが感謝しろ。 普通は業者のやる事だぞ」
「この予想外の積雪で業者も引っ張りだこでなぁ……」
さいすか
そうとなれば早速仕込みに入ろう。 量と調理時間から逆算して最高に温かいタイミングで提供してやらんと。
「…………」
悠ちゃんはあったか〜いココアを飲みながら窓の外────雪掻きしながら遊んでる学生達を眺めている。 も助は即ダウンして休憩中。
えーと、米、米……あと炊飯器────は業務用があるか。 だいたい5台を一斉稼働させれば20人前+αが同じタイミングで炊けるな。
「…………」
紅葉はヒーターの前で毛布にくるまってあったか〜いココアを飲んでいる。 意地でも動く気は無い。
それにしても、これ米持ってくるのも洗うのも結構大変だな。 20人前をこの冬の水道水って手が死ぬぞ。 無洗米くらい置いとけや。
「「…………」」
卵も順番に焼いてたら冷めるから同時進行で────
「……なぁ」
「なんだ? 何か足りないものでもあったか?」
「いや……悠ちゃんも雪掻き行けよ」
「断る」
「あと紅葉も」
「……断固拒否する」
「拒絶が徐々にレベルアップしてんな」
────────────────────────────
「む、予想以上に雪掻きが早いな」
「マジ?」
「ああ。 まだ始まってから1時間だが、既に大半が完了している」
「そうか。 まぁ委員会の奴らはスコップを使い慣れてるし、それが10人以上入れば終わるのも早いか」
「……そんなに生徒会活動で使う機会あった?」
「いや、使ってるのは主に処刑する奴を埋める時とかだが」
「……聞いて損した」
「怪我の功名、か」
「……瀕死なのに功名も何も無いと思う」
まぁそれ以外にも「雪掻きの熱で薄着になった美少女を見れるぞ」って伝えたからだと思うけど。 残念ながら女子比率が壊滅的に低いがな。 泉ちゃんを変な目で見ようとしたら潰すし。
はいどーも久しぶりに書いて興奮してる作者です。 割とマジで久しぶりです。
1ヶ月って待つと長いですけど待たないと短いですね。 私、体感だとまだ1週間くらいなんですけど。 早すぎません? もう10月終わりますよ。
それはそうと本編です。
今回は冬の締め括りということで雪掻きしました。 雪遊びシーンが無い? そんな体力は残ってない。
まぇ雪遊びなんて技術と体力勝負ですからね。 技術力カンストの奏士と体力カンストの紅葉が無双して終わりです。
一応言って起きますと、卒業式はまだ過ぎてませんよ。 3月はまだ来てません。 まだ2月です。 1年でいちばん短い月を一番長く引っ張る当たり流石私です。 超無計画。
ではこの辺で。 今回は私の勘を取り戻す目的もあって大したオチのない休憩回ですけど、次回から真面目にやります。 ちゃんと毎週投稿で。
では
あ、積雪についてはモデルの場所より多少盛ってます。 リアル寄りで書いたら数年に1度積もるか積もらないか以前に目に見えて降るか降らないかレベルなので。




