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狗神巡礼ものがたり  作者: 唄うたい
5/7

五:大狗祭り

 


 ***



 夜が明け、太陽がぼんやりと山の端に姿を現し始めます。

 仁雷さま、義嵐さま、そしてわたしの三人は、旅支度を整えると、塒の入口にて皆様の見送りを受けました。


「あけび様。着物を綺麗にしていただいて、ありがとうございます。」


 わたしが纏っていた着物の泥汚れはすっかり洗い流され、元の若草色が綺麗に現れています。

 お猿様達がどれほど丁寧に手を尽くしてくださったかが見て取れ、感謝してもしきれませんでした。


【勿体無いお言葉…。早苗様にはもっと長く、ここに留まっていただきとうございました。】


「あけび様に、皆様に会えて、嬉しうございました。どうかお体に気を付けて…。」


 あけび様から差し出された前足を両手で握ります。わたしはその感触と温かさを忘れないよう、胸に刻み込むのでした。



「では、狒々王。またいずれ。」


 仁雷さまの言葉に、狒々王様が穏やかな口調で答えます。


「左様ならば。仁雷殿。義嵐殿。…そして、早苗殿。

 また(いず)れ、この池泉にてお待ち申し上げる…。」


 優美な身のこなしで、深々とお辞儀をされました。指先から着物の裾に至るまでのしなやかな所作に、惚れ惚れしてしまいます。


 礼儀として、わたしもまたお辞儀を返しました。けれど内心では、“わたしはもうこの場に立つことは無いけれど”…と考えてしまいます。

 それを口にするのはきっと野暮なこと。池泉の皆様の笑顔を目に焼き付け、わたし達は次の巡礼地へと向かうのです。


 西の平野(へいや)大狗祭(おおいぬまつ)りへ。



「祭り…。」


 秋に行われる祭りといえば、豊穣のお祝いでしょうか。

 犬居家でも「例大祭(れいたいさい)」として、一年の実りに感謝を捧げる祭りを執り行います。

 そういえば…もうすぐ例大祭の日だわ。


 わたしは毎年、犬居の娘としてではなく、女中の一人として祭りのお手伝いをしてきた身です。馴染み深い祭りにもう参加出来ない。そのことに、ほんの少しだけ寂しさを覚えてしまいます。


「ーーー早苗さん、大狗祭りはこれまでのような危険な試練ではないから、あまり気負わないで。」


「…仁雷さま……。」


 仁雷さまがわたしを安心させようと、声を掛けてくださいます。

 不安の理由はそれではないのですけれど、こうして気遣ってくださるのは、優しい仁雷さまらしい…。


 わたしに向けられる穏やかな瞳。

 …ですがなぜでしょう。その瞳に見つめられると、わたし、わたし…、


「っ!」


 体が勝手に、外方(そっぽ)を向いてしまうのです。


「えっ……さ、早苗さん……?」


 背後から、仁雷さまの悲痛なお声が聞こえます。

 けれど、わたしはそちらに向き直ることが出来ません。心の中で何度も何度も「申し訳ありません」と謝っても、言葉が口から出て来ないのは非常に厄介でした。


 ーーーわたし、やっぱりどうかしているわ…。どんな顔で仁雷さまとお話ししたらいいのか、分からない…。


 外方を向いた先に立つ義嵐さまも、目を丸くされています。

 わたしの様子がおかしいことを、不思議に思われているのは明白でした。


「……ぎ、義嵐さま…っ!

 大狗祭りの場所まで、ここからどれほどかかるのでしょう…?」


 努めて平静を装いますが、声は震えて不自然極まりない。

 わたしを見下ろす義嵐さまの顔が、ふいに、何かを察したような納得の表情に変わりました。


「早苗さんの足で丸二日ほど。小山をいくつか越えれば平野はすぐだ。

 今回は“仁雷が先導”して、おれがきみの身を護ろうかな。」


「ぎ、義嵐!?なんで………っ!」


 そのご提案はわたしにとってありがたいものでした。

 仁雷さまに先導していただければ、お顔を見てまた逸らしてしまわずに済みますもの…。


「お、お願いします!義嵐さま!」


「早苗さんっ!?」


 仁雷さまは気を悪くしてしまうかしら…。

 いいえ、本来ならばお喋りなどせずに淡々と歩くことが望ましいのだわ。あけび様との散策で、わたしは少し山の歩き方に慣れたのです。お荷物にはなりません。決して。


「じ、仁雷さま…。ご案内、どうぞよろしくお願いいたします…!」


 気持ちを込めて、仁雷さまに対して深々と頭を下げます。その際も、なるべくお顔を見ないように…。

 仁雷さまは何か言いたげに声を詰まらせますが…


「…あ、ウン…行こうか……。」


 何も言及せず、わたしを先導してくださいました。


 ーーー申し訳ありません、申し訳ありません…。仁雷さま…。


 謝らないでと言っていただいたばかりなのに、わたしの胸の内は申し訳なさで一杯なのでした…。



 ◆◆◆



 おかしい。これはおかしい。

 仁雷の挙動は見慣れたもんだが、しっかり者の早苗さんまで…。これじゃあまるで、仁雷が二人に増えたようじゃないか。


 平野への道中は獣道続きであるものの、早苗さんが粛々と歩みを進めてくれるおかげで、予定通りに到着出来そうだ。

 …ただ、


「…………。」


 先導する仁雷は、歩いている時も休憩時もずーっと、丸一日黙ったまま。

 おれが手を引く早苗さんもまた。


「………………。」


 元々お喋りな子ではないけれど、それ以上に声を出すのを控えて、黙り込んでしまっている。


 まさか、とは思う。

 昨夜、仁雷の胸の内はハッキリした。予想通りといえばまあ予想通りだ。


 …しかし、早苗さんは?

 普通に考えれば、仁雷と同じ理由に思えるが…それにしても避け過ぎじゃないか?

 もしかして、早苗さんはもっと複雑な…?


「……はあぁぁ…。」


 大袈裟に溜め息を吐いて主張してみても、二人とも相手してはくれなかった。

 板挟みになってるおれの気持ちなど、二人は気にも留めないだろうな。


「……保護者は辛いなぁ。」


 つい漏れ出た独り言にも、反応してくれる者はいない。それが一層寂しさを際立たせた。



 その日は、小山をふたつ越えた辺りに位置する無人の社にて夜を明かすことにした。


 この時も早苗さんは徹底して仁雷を避けていた。一人で板の間に横になり、冷たい隙間風を痩せ我慢するものだから、見兼ねておれが添い寝をして、風避けになってやる。


「………………………。」


 仁雷の刺すような視線に耐えなければいけないのは、正直辛かった…。

 そんな仁雷には聞こえないよう、おれは体を丸くした状態の早苗さんに耳打ちする。


「…早苗さん。何か意地を張ってる?

 教えてくれないと、おれにはしてやれることがないよ…。」


「…………。」


 早苗さんの小さな手が、おれの着物をギュッと掴んだ。


 “ぎ、ら、ん、さ、ま…”


 小さな唇が声無く、おれの名を呼ぶ。その意図を汲み取った時、


「…………なあ仁雷、少し外を見回って来てくれないか?熊が歩き回ってるかもしれない。」


「………………分かった。」


 おれは仁雷を社の外へと誘導する判断をした。


 こうすれば早苗さんが落ち着いて、胸の内を明かせる。

 蝋燭の灯りにぼんやり照らされた、幼い早苗さんの顔を見下ろす。対する早苗さんは、不安げにおれを見上げた。

 言葉を慎重に選びながら、恐る恐る問いかけてくる。


「………義嵐さま、教えてください……。

 これまでに、“お使い様をお慕いしてしまった娘”は、いるのでしょうか…。」


 ーーーああ、やっぱりか。


 おれはさほど驚かなかった。何となく予想は付いていたから。

 “お使いを好きになった娘がいるか”。おれと仁雷以前にも、巡礼のお供を務めた山犬の話は多く聞く。そして、おれ自身…。


「巡礼は命懸けの旅。だからか、お使いと犬居の娘達の間に、特別な絆が生まれることはよくあるよ。


 …早苗さんは、仁雷を好いてくれてるんだね?」


 早苗さんは一瞬だけ体をビクリとさせ、狼狽える。しかし、誤魔化したり、はぐらかしたりはしなかった。


「……………はい……。

 仁雷さまのお顔を見ると…心がざわめくのです…。それに、いずれやって来るお別れの時を想像してしまって、平静でいられないのです…。」


 ーーーそうか、それで…。


 これがただの男と女の恋情だったならどれほど喜ばしかったことだろう。

 きっと早苗さん自身、ちゃんと分かってるんだ。己の立場も、相手の立場も…。


「……早苗さんはどうしたい?」


「…………。」


 早苗さんは目を瞑り、自分の中で気持ちを整理しているようだった。心を落ち着け、努めて冷静に答えてくれる。


「………わたしの想いを全うさせようとは、思いません。

 わたしは狗神様の物…。生まれた頃からそう教えられてきましたから。これまでたくさんの方が生贄の儀式のために手を尽くして……。」


 早苗さんは気持ちを秘めることを選んだ。彼女らしい。

 でもそれは、彼女の育った環境に()るところが大きいように見受けられた。彼女の本心が押し隠されてしまう、そんな不安を覚えたのだ。


「…それを知ったら、仁雷は悲しむよ。」


「……仁雷さまには伝えません。これは、きっと、抱いてはいけない想いだったのです…。

 だから義嵐さまも…仁雷さまには黙っていてくださいますか…?」


 おれを真っ直ぐ見つめる早苗さん。

 お願いのようでいて、おれの反論を許さない、そんな強い真意がありありと見て取れる。

 不安なくせに、恐ろしいくせに、どうしてそんなに気丈に振る舞おうとするんだ。

 君といい…。


「分かったよ。早苗さんがそう言うなら。

 …でも、辛いだろうけどせめて、いつものように仁雷と接してやって。君にとってもあいつにとっても、別れの時に悔いが残らないようにさ。」


 それはおれの、ただの我が儘だった。

 出来ることなら、二人の悲しむ顔を見たくない。おれ一人の利己に過ぎない。


 早苗さんは理解してくれた。

 おれの腕の中で、彼女は小さく肩を震わせる。



「………はいっ…。はい…。

 …そうですね。…本当に、その通り……。」



 その小さく弱い肩を抱き寄せて、おれは彼女が泣きつかれて眠りに落ちるまで、ただ黙って朝を待った。


 胸に、一つの決意を秘めて。



 ***



 翌朝、わたしの心はどこか晴れやかでした。秘めていた気持ちを、義嵐さまに聞いていただけたおかげでしょう。


 わたしの身を護るような体勢のまま、義嵐さまは目を瞑り、静かで規則的な寝息を繰り返していました。

 起こしてしまわないよう、ゆっくりゆっくり腕の中から抜け出すと、わたしは社の中を見回します。


「……………。」


 仁雷さまの姿がない。

 昨夜、義嵐さまに周囲の見張りを託されて、外で夜を明かされたのかしら。もしかしなくとも、わたしのせいで…。


 四つ足で出入り口まで進み、少し戸を開いて外を窺えば、柔らかな朝の木漏れ日の中に、仁雷さまは一人佇んでいました。

 太陽に顔を向け、全身で朝日を感じている。芒色の髪がきらきらと輝く姿はあまりに神々しく、わたしは思わず目を奪われてしまいます…。


「……………仁雷さま。」


 お名前を呼んだのは無意識のことでした。

 ゆっくりこちらへ顔が向けられ、仁雷さまの綺麗な、深い琥珀色の瞳が、わたしの姿を映します。


「…さ、早苗さん………。」


 恐る恐る…といった様子のお声。

 わたしの中でまた、高揚感と悲壮感が同時に襲い来る。

 けれど、負けては駄目。義嵐さまと約束したのだから。


『いつものように仁雷と接してやって。君にとってもあいつにとっても、別れの時に悔いが残らないようにさ。』


 わたしは平静を心掛けます。きっとぎこちなくて不自然な振る舞いに見えることでしょう。

 それでもただ目の前の仁雷さまだけを見て、感謝の言葉を述べるのです。


「……ひ、一晩中、見張りをしてくださったのですね…。ありがとうございます。骨が折れたでしょう…。」


「…イヤ、これが役目だから…。」


 仁雷さまは戸惑いがちに視線を足元へ逸らし、かと思えば、また恐る恐る、わたしの目を見てくださいます。


「……早苗さん、すまない。

 俺の不甲斐無さに、呆れているんだろう…?

 お使いのくせに逆に助けられて…本当に、格好が付かないよな…。」


「えっ…。」


 その時、わたしはなぜこんなにも仁雷さまに心惹かれてしまうのか、分かった気がいたしました。


「…うふふ、ふふふっ、ふ…。」


「……えっ、……な、なんで笑うの……?」


 仁雷さまの真面目な性格。

 それは仕来りや責任を重んじるばかりでなく、まるで子どものように澄み切った純粋さに起因するもの。

 底巧(そこだくみ)や慢心など一切ない。だからわたしは当たり前のように、心を開くことが出来た…。


「……うふふ、ご、ごめんなさいっ…。

 …ふふ、どうか謝らないでください。わたしは仁雷さまのこと、不甲斐無いなんて思ったことありませんわ。

 心から、信頼しています…。」


「…そ、そうか……ありがとう…。」


 仁雷さまの顔に、安堵の色が戻りました。

 困らせたくない。いつまでも仁雷さまには、安らかであってほしい…。


 そうしてわたしは誓うのです。この想いは決して、仁雷さまには打ち明けまいと。



 ***



 連なる稜線(りょうせん)を越え、天高く昇っていたお日様が、また山の向こうへと沈んでいく頃。

 わたし達が辿り着いたのは、夕暮れの太陽に照らされて一層黄金の輝きを増す、見渡す限りの(すすき)の平野でした。


「………まぁ…!!」


 その幻想的な美しい風景に、わたしは感嘆の声を漏らします。

 狗神様のお山の中に、こんな場所があったなんて知りませんでした。

 義嵐さま、仁雷さまも、雄大な芒の野を、どこか懐かしげに眺めます。


「見えるかい?あれが白露(はくろ)神社だよ。」


 義嵐さまの指差す彼方には、大きな切妻屋根を備えた、神社らしき建物が見えました。

 芒の野の中に一本だけ、芒が刈られ(なら)された道が伸び、わたし達の立っている場所とその白露神社とを繋いでいるのが分かります。


 耳をすませば、微かに聴こえる囃子(はやし)の音。間違いありません。あれこそが、


「大狗祭り…が、行われているのですね…。」


 試練へ挑む緊張感はあります。

 けれどなぜでしょう。軽快な太鼓や笛の音色に、つい心を躍らせてしまうのは。


 音の方へ体が引き寄せられる感覚。そんなわたしを、仁雷さまが引き留めました。


「早苗さん、祭りに向かう前にこれを被って。」


「え?」


 仁雷さまが懐から、ある物を取り出します。

 木を薄く削り出したのでしょうか。丁度顔の上半分を覆うような形状で、目の辺りには視界を確保するための穴が開けられています。控えめにつんと尖った鼻と、三角形の耳。それは、山犬を模したお面でした。

 どこか、仁雷さまのお犬の姿に似ています。


「可愛い…!わたしが被っていいのですか?」


「ああ。昨晩、貴女に合うよう作った物だから。」


「えっ…え!昨晩!?

 仁雷さまが作られたのですかっ?すごい…!」


 予想外のことに、わたしは驚きを隠しきれませんでした。

 確かにその面は汚れひとつ無い新品。削り出しは見事で、てっきり名のある職人の手仕事かと思ったものですから。


「へへ、早苗さん。仁雷はお使い歴ウン十年の玄人(くろうと)だよ。手先が器用でね、このくらいはお手の物さ。」


 仁雷さまの後ろから、ひょっこり顔を出した義嵐さまが、我が事のように教えてくださいました。


 そっか…、そうよね。お二人は今は人の姿をしているけれど、実体は何十年も生きている山犬のあやかし。

 山犬の面からは、これまで気の遠くなるほどの時間を鍛錬に費やしてきたことが窺えました。


 ーーー(わたし)の寿命など、あっという間に尽きてしまうほどの長い時間を…。



 仁雷さまの持つ面が、そっとわたしの顔に宛てがわれます。この芒の原と同じ、黄金色の組紐(くみひも)が頭の後ろで結ばれる感覚があり…、山犬の面は驚くほど顔の形に馴染みました。

 仁雷さまと義嵐さまは面を見つめ、嬉しそうに褒めてくださいます。


「うん。よく似合ってる。」

「可愛いよ。おれらの仲間みたいだ。」


「あ、ありがとうございます……。」


 照れながらもわたしも気になって、帯から手鏡を取り出し、顔を映します。鏡の中の、木製の山犬と目が合いました。

 面を被るなんて生まれて初めて。自分のはずなのに、自分ではないような不思議な感覚。でも、決して嫌な気持ちはありませんでした。


「でも仁雷さま、なぜ面を…?」


 面といえば、儀式的な意味合いが強い道具です。狗神様の巡礼自体をひとつの大きな儀式と見るならば、何となく、これまでの試練とは一線を画すような緊張を覚えます…。


「山犬の仲間達は、俺と義嵐が巡礼のお供をしていることを知らない。ましてや犬居の娘を連れているなんて思いもよらない。」


「なぜですか?仲間なのに…。」


「大狗祭りでの試練を恙無(つつがな)く遂行するためなんだ。

 だから早苗さんには、“遠方から狗祭りに遊びに来た山犬の客人”として振る舞ってもらいたい。」


 山犬として振る舞う…。しかし面を被っただけで、身も心も山犬になれたわけではありません。わたしはお二人のように変化(へんげ)も出来ませんし…。


 わたしの不安な気持ちを察して、仁雷さまが柔らかく仰います。


「大丈夫。皆祭りに夢中で、早苗さんを物珍しがって詰め寄る…なんてことにはならないから。


 この面が、ずっとそばで貴女を護るから。」


「そ、そうですか…ちょっと、安心いたしました。」


 芒の均された道を先導する仁雷さま。


「…さあおいで、早苗さん。」


 そのお姿、その優しいお声に、わたしは既視感を覚えます。


 最初の巡礼への旅立ち。岩場のお堂から、わたしを連れ出してくださった時も、こんな風に…。


 あの時は先の見えない不安で一杯だったけれど、今は違います。

 わたしは決意を胸に、仁雷さまと、義嵐さまの後に続くのでした。



 芒に囲まれた一本道を辿り、目的地の白露神社に近付くにつれ、囃子の音は大きく賑やかになっていきます。

 だんだんと薄暗くなる空とは対照的に、神社は赤い柔らかな光を帯びていく。それは、境内を彩る無数の提灯による明かり。


 大きな木目の鳥居の前に立ち、わたしは高鳴る胸を抑えます。

 境内には、食べ物や玩具を立ち売りする屋台が並び、何とも色鮮やか。境内の中央に聳える舞殿(ぶでん)の中で、太鼓や笛の囃子方(はやしかた)が、軽快な音を鳴らしています。

 楽しげな笑い声。陽気な歌声。祭りを楽しむ、たくさんの老若男女の姿…。わたしの見知ったお祭りの雰囲気そのものでした。


 仁雷さま、義嵐さまに続き、わたしはお辞儀をしてから鳥居を潜ります。

 領域内へ足を踏み入れると、一層祭りの熱気が強まりました。見渡す限りの人、人、人。


 右を見れば、竹製の弓と玩具の矢を用いた射的が行われています。

 左を見れば、甘い香りのする、色とりどりで形も様々な飴細工が並んでいます。

 一歩進むごとに、毛色の異なる屋台が現れ、わたし達の目を楽しませてくれました。


 目移りが止まらないわたしを、義嵐さまが見兼ねてしまいます。


「ほーら早苗さん、(はぐ)れるよ。遊ぶのは神社の参拝が済んだ後な。」


「あっ、そ、そうですね…!」


 お二人と少し距離が空いてしまい、わたしは慌てて後を追いかけます。

 その時です。擦れ違い様に一人の女性が、


「ーーーあれ?貴女の匂い。」


 わたしの首元のにおいを嗅いだのです。


「…ひゃ!?」


 突然のことに、わたしは思わずその場で固まってしまいます。

 わたしに顔を近づける女性は…一人ではありませんでした。彼女を筆頭に、近くを歩いていた方々が、物珍しげにわたしの匂いを嗅ごうとするのです。


「……あ、あの、あの…何でしょう…?」


「………んー。

 …やっぱり!“仁雷”の匂いだわ!」


 最初の女性が口にした仁雷さまの名。そして、顔が近づいて初めて気づく、皆様の“琥珀色の瞳”。

 もしや、ここにいる方々は全員…、


(みな)、久しぶり。」


 こちらへ戻って来た仁雷さまが、親しげに皆様に声を掛けました。

 次いで、わたしに彼女を紹介してくださいます。


「早苗さん、この祭りに参加しているのは皆、仲間の山犬だ。」


「そ、そうでしたか…っ!

 初めまして、早苗と申します。」


 たくさんの琥珀色の瞳…やはり、人の姿をしているけれど、山犬。わたしは緊張で固くなる身を、何とか一礼させます。

 すると、皆様が口々に不思議なことを仰るのです。


「ふふ、可愛い〜。ちっちゃい山犬だこと。」

「毛並み具合が仁雷の仔犬の頃に似てるな。飴でも買ってやろうか。」


「え、山犬…?」


 至って平然と仰る皆様。

 確かに今のわたしは山犬の面を被っているけれど…ちょっとしたお戯れなのかしら。言葉の意味を考えあぐねているわたしに、そっと義嵐さまが耳打ちをします。


「……今の早苗さんは、仁雷の面で山犬の匂いを纏ってる。だから誰も、君が人間と気付かないよ……。」


 なるほど。義嵐さまの仰った「仲間みたい」とは、比喩ではなかったのですね。

 わたしが山犬…。全く違う自分を装うという体験は、奇妙ですが何だか心浮き立つものがありました。


 お祭りを謳歌していた周りの方々が、話と匂いに気付き、続々と集まって来ました。

 いくつもの琥珀色の瞳が、わたしの顔を覗き込みます。匂いをクンクンと嗅ぐのは皆様共通のようで。


「本当!仁雷と似た匂いだわ!」

「外山から来たの?楽しんでおいきなさいね。」

「仁雷、まさかお前の子か?匂いが同じだな。」


「子ッ!?ち、違う!彼女は…客人で…っ!」


 仁雷さまが慌てて否定してくださいますが、どうやらわたしは、皆様の目には、仁雷さまのお子くらいの歳に映るようで、内心ちょっと複雑な思いでした。


 それにしても、皆様なんと仲の良いこと。

 きっと山犬同士の結束は深いのでしょう。仁雷さまと義嵐さまのお二人はとても仲良しですが、ここにいる山犬の皆様とも、昔馴染みらしい気軽さ。仁雷さまのお顔も、どこか緩んだ雰囲気が感じられます。


 ーーーなんだか、心地好いわ…。


 例え、仮初めの面だとしても、山犬の方達の輪の中に混ぜていただけたような和やかさに、わたしは一人癒されていました。


 …と言いましても、わたしはあまり匂いを嗅がれるのには慣れていないものですから、だんだんと恥ずかしさで肩身が狭くなっていくのです。


「あ、あの…そんなに……嗅がないでくださいませ……。」


「……お前達!あんまり早苗さんを物珍しがるな!詰め寄るな!!」


 仁雷さまが皆様を解散させてくださったおかげで、わたしはそれ以上の恥で溶けてしまわずに済んだのでした。



「ほら早苗さん!仁雷も!おれ達が今優先すべきは参拝!いいな?」


 背後から待ち兼ねた義嵐さまの腕が伸びて、わたしと仁雷さまの手を掴みました。


「わ、分かったから!義嵐…!

 …あ、じゃあ皆、また…。」


「あ、み、皆様、失礼いたします…っ!」


 多くの山犬の瞳に見送られながら、仁雷さまとわたしは、そのままズルズル引きずられる形で、白露神社の拝殿へと伴われるのでした。



 白露神社の立派な拝殿を前に、わたしは溜め息を()いてしまいます。

 木本来(ほんらい)の色を見せる柱に、山犬を模した大胆な彫刻。とても古い建物のようですが、時を経ても全く色褪せない荘厳さがありました。


「白露神社は、“狗神が住まいの入り口”。早苗さん、手を合わせて、挨拶と報告をしてくれるかな?」


 仁雷さまと義嵐さまが進み出ます。

 賽銭箱も本坪鈴も無い入り口に立ち、柏手を打って祈りを捧げる…。わたしもそれに倣い、手を合わせて目を瞑りました。


 ーーー狗神様がいらっしゃる…。とうとう、ここまで来たのね…。


 そうして心の中で、狗神様へたくさんのことをお話ししました。

 これまでの試練で感じたこと。巡礼先で出会った優しい皆様のこと。仁雷さま、義嵐さまへの感謝と、特別な気持ち。そしてもうすぐお会い出来るかもしれない狗神様への…期待と不安。


 ご報告と同時に自分の心と向き合うと、揺らぎそうな気持ちがまだ残っていることに気付きます。


 ーーーいけない。わたしは生まれた時から、このために…。犬居の娘なのだから…。


 だから(きた)る時まで、お二人との…仁雷さまを想う時間を大切に……。



「…早苗さん、目を閉じたまま聞いて。」


 左から、仁雷さまの落ち着いた声が聞こえました。

 わたしもまた落ち着いた気持ちで「はい」と答えます。

 けれど、その後に続く言葉は、わたしの決意を揺るがせてしまうほどの内容でした。


 仁雷さまの低い唸り声が響きます。



【ーーー早苗さん、最後の試練だ。

 この大勢の山犬の中から、“俺を見つけて”。】



「……え?」


 その直後、突風がわたしの髪を巻き上げました。

 驚き、しかし目は固く閉じたまま、何か良くないことが起こったのかと身構えます。


「……じ、仁雷さま?

 一体、どういう意味なのですか……?」


 暗闇の中で問い掛けます。…けれど、仁雷さまからの返事はありません。

 恐る恐る目を開け、左を見ると、


「…………えっ…あれ…?」


 ついさっきまでそこに立っていたはずの仁雷さまの姿は、雲散霧消していたのです。

 辺りを見回しても、大勢の山犬達の姿はあれど、見慣れた芒色の髪を見つけることが出来ません。


 拝殿の前にはわたしと義嵐さまのみ。

 わたしは弾かれるように、義嵐さまへと顔を向けます。


「……ぎ、義嵐さま…!

 仁雷さまが……これが…、大狗祭りの、試練なのですか…?」


 義嵐さまは合わせていた手を下ろし、そして穏やかな目をこちらへ向けて、仰いました。


「…遊びに行こっか、早苗さん。

 祭りはまだ始まったばかりだから。」


「………えっ…?」


 わたしが聞き返すよりも先に、義嵐さまに手を引かれ、背後で聴こえる賑やかな祭囃子の中へと導かれて行きます。



 体の大きな義嵐さまは、人混みを物ともしないで、目当ての屋台を目指します。


「……あっ、あの、義嵐さま…!?」


「あ!なあ、それひとつくれる?」


 義嵐さまは、飴細工の屋台のご主人に声を掛けると、目立つ位置に飾られていた飴をひとつ受け取ります。

 そのまま流れるように、飴をわたしへと手渡しました。


「あっ………。」


「ほらどーぞ、早苗さん。これ食べながら周ろうじゃないか。」


 ツヤツヤとした鼈甲飴(べっこうあめ)は、四つ足の犬…いいえ、どうやら山犬の形になっています。狗祭りらしい細工に思わず見入ってしまいますが、


「あ、ありがとうございます…。

 でも、義嵐さま、わたし……。」


 仁雷さまを捜さないと。

 飴をお返ししようとしますが、義嵐さまは次の屋台へ向け、足早にわたしを連れ出します。


「……義嵐さま………。」


 一体何を思ってらっしゃるのかしら…。

 疑問は大きくなります。けれど、わたしを引く義嵐さまの手は力強く…何か大切な思いを隠していらっしゃるような気がして。

 わたしには、彼の歩みを止めることが出来ませんでした。



 ***



 山犬達は皆、祭りを心から謳歌しているようでした。

 きっと彼らにとって、この祭りは何より尊ぶべきものなのでしょう。

 山犬の面を被って、皆と同じ物を食すわたし…唯一違うのは、わたしは山犬ではなく、人の身であるということ。


 境内の隅に建てられた、古い物見櫓(ものみやぐら)の上からは、そんな大狗祭りの全容が見渡せました。


「ここ良いだろ。おれのとっておきの場所なんだ。」


 義嵐さまは嬉しそうに言いながら、手にした串団子を口へ運びます。

 わたしの手にも、焼き目がついて香ばしい匂いを纏うお団子が一串。このお団子の屋台を始め、義嵐さまはお勧めのお菓子や工芸品の屋台などをたくさん案内してくださいました。


「…義嵐さまは、大狗祭りが大好きなのですね。」


「山犬達が(つど)う唯一の機会だからね。

 “狗神への感謝を表す”って名目も、“賑やかな雰囲気を味わいたい”って思うのも、人の祭りと何ら変わらないよ。」


 巡礼の最後の聖地。身構えていた部分もありましたが、お祭りとは本来、そこに住まう者達が一堂に会して、交流が生まれる場。

 もっと肩の荷を下ろして楽しんで良い所。

 もしかすると義嵐さまは、わたしのために…。


「あの、義嵐さま。ありがとうございます。

 わたしに最後に、楽しい思いをさせてくださったのですよね?」


「…分かった?

 (わざ)とらしかったかな。」


「いいえ、そんなことありません。」


 やっぱり義嵐さまはお優しい。

 そして、同じお使いである、仁雷さまもまた。


「義嵐さま。わたしはもう大丈夫です。

 仁雷さまを捜しに行って参ります。」


「…………。」


 ふと、義嵐さまの顔が曇りました。

 その目は賑やかな祭りではなく、もっと遠くに向けられて。


 かと思えば、こちらへ向き直った彼の瞳は、ひとつの強い決意に燃えていました。


「………早苗さん。

 おれと一緒に、遠くへ逃げる気はない?」


「………え……?」


 突然の申し出に、わたしは手にしていたお団子を思わず落としてしまいます。

 串は櫓の遥か下へ下へと落ち、音すら聞こえなくなります。


「…義嵐さま、ご冗談でしょう…?

 なぜそんなことを…?」


 わたしの巡礼への決意を、義嵐さまは知ってくださった。

 それなのに、なぜ…?


「おれはどうしても、きみを死なせたくない。

 これは、巡礼の試練で命を落とした、秋穂(あきほ)さんとの約束なんだ。」


「…………っ。」


 背筋に冷たいものが走りました。

 義嵐さまの口にした名。秋穂。


 それは昔病死した、わたしの母の名だったのです。



 ◆◆◆



 早苗さんが、ゆるゆると首を横に振る。

 信じられない、信じたくない、と言うように。


「………うそ。母は昔、流行病に罹って亡くなったのです。」


「…いいや。きみのお母上は十年前、犬居の娘の身代わりとして巡礼に挑んだ。そして、志半ばで命を落とした。」


「……うそです。

 母は外山から来た…妾だったんです。犬居の血が流れていないのに、生贄に選ばれるはず、ありません……。」


「お母上自身の意志だよ。

 “自分は狗神への信心が深いから”と。


 何より…まだ幼かった犬居の娘…“早苗さん”を生贄に献げることを躊躇い、正体を偽って自ら生贄になったんだ。」


「……そんな、…そんなの……。」


 蚊の鳴くような声を漏らした後、櫓の手摺りに縋り付くようにして、早苗さんは項垂れてしまった。

 やはり。耐えられないほどの大きな衝撃だろう。これを口にするおれ自身、胸が張り裂ける思いだ。


 …だけど、言わないわけにはいかない。

 だってこれは、秋穂さんの最期の願いなんだから。


「…早苗さん、思い出話を聞いてくれる?

 十年前。仁雷とおれが、きみのお母上…秋穂さんと出会った時のこと。」


 早苗さんは俯いたまま微動だにしない。

 けれど耳は傾けてくれていると信じて。


 おれはひとつ深呼吸をすると、未だ鮮明に思い起こせる当時の情景を、順を追ってゆっくりと、語り始める…ーーー。



 ーーー



 十年毎に狗神の命令で、仁雷とおれは始まりの場所…山犬の岩場にて、新たな犬居の娘が献げられる瞬間を見届けてきた。


 それは大昔から幾度も行われた通例の儀式で、仁雷もおれも、自身に課せられた役目を淡々とこなすだけだった。

 犬居の娘を守護し、三つの巡礼地を訪ねる。


 犬居の娘は言わば、狗神様の所有物だ。

 だからこれまで、おれ達は特別な感情を抱かなかった。唯一思うところがあるとするなら「気の毒に」程度。


 元々、外山(そとやま)からこの地に流れて住み着いたおれからすれば、たかだか「この地に長く住んでいる」という理由だけで、若い身空で命を落とさなければならない運命は、ひどく不憫(ふびん)に思う。


 …だから、仁雷の毎度の肩の入れようには、正直呆れてた。

 だってそんなに親身になったら、娘はお前を好いてしまうだろ?


 なぜ狗神がおれ達に、見目麗しい人間の姿に化けるよう命じるのか。それは、娘がおれ達に(うつつ)を抜かすことなく、狗神への信心を保っていられるか…それを試しているんだ。

 酷い話だろ。


 …仁雷は生真面目で鈍い男だから、そんな真意に気付くことはないだろうが。



 十年前の、今日みたいな秋晴れの日に、山犬の岩場に送り出された犬居の娘…それが秋穂さんだった。


 黒い髪に、大きな瞳。美しく、真っ直ぐな心の持ち主。そんな印象だった。

 淡い若草色の着物も、彼女の素直な心を体現しているようで、よく似合っていた。


【きみが犬居の娘か。】


 初めて彼女の匂いを感じ取った時、本物の山犬を見て内心ひどく怯えていたけれど…彼女はそれを表には出さなかった。

 狗神に目通るため。なんとしてでも巡礼をやり遂げる。そんな強い意志を感じた。


「はい。犬居…秋穂と申します。」


 …今思えばこの時点で、秋穂さんが妾であることに気付けていれば、きっと未来は違ったんだろう。

 犬居の娘特有の匂い…それは、狗神にしか嗅ぎ分けられないものだから。


「義嵐様。」


 彼女に何度名を呼ばれたか。

 どんな時でも彼女は強くあろうとした。おれ達を信頼してくれて、何があっても決して、巡礼から逃げ出そうとはしなかった。


 なぜそれほどまでに強い信心を持つのか…。

 一体なぜ、そこまで強くいられるのか…。


 彼女は不思議な人だった。

 素直なのに、とても謎めいて見えた。


「義嵐様。」


 彼女がおれの名を呼ぶ度、


「ねえ、義嵐様。」


 おれは、知らず知らずの内に彼女を目で追い、彼女の匂いを覚え、その体にその髪に触れたいと願い、


「義嵐様…。」


 そうしていつしか、


【秋穂さん…おれは、きみを好いているよ。】


 お使いの身でありながら、山犬の身でありながら、人である彼女をすっかり愛してしまっていた。


 困らせてしまうことは分かってた。

 でも、一度自分の気持ちに気付いてしまったらもう隠すことは出来ない。


 狗祭りへ向かう前夜、山の中でひっそりと、おれは秋穂さんに想いを伝えた。

 …伝えただけだ。それをどう受け止めるかは、卑怯にも彼女自身に任せた。


【巡礼の邪魔をしようとは思わない。

 きみがここに来るまで、どれほど頑張ったかを知ってるから。

 でも、せめて知っていてほしい。

 大勢の山犬のうちの一頭が、狂おしいほどにきみに恋焦がれていることを…。


 …おれがただの山犬であったなら。…いいや、おれが人間だったなら、胸を張ってきみの隣に並び立てたのにな。】


 秋穂さんがおれの毛並みを撫でてくれる感触を、しっかりと体に覚え込ませる。

 秋穂さんはただ笑ってた。笑ったまま、何も返事はしなかった…。


 …ああ。秋穂さん…ごめんよ…困らせて…。

 君の本心なんて何も気付かず、おれはひとり呑気に過ごしていただけなんてな…。



 …結果、秋穂さんは“大狗祭りの試練”で、呆気なく命を落とした。


 彼女がこれまで必死に隠し続けてきた、三つの大きな嘘が、暴かれてしまったためだ。


 一つ目は、実は犬居の娘なんかじゃなく、外山から来た妾であること。

 …二つ目は、幼い娘を生贄に差し出すまいと、自分が代わりに生贄に名乗り出たこと。

 彼女がどんな時も巡礼をやめなかったのは、狗神への信心だけじゃない。愛する娘の命を守るためだったのだと、この時ようやく思い知った。


 血まみれで、息も絶え絶えで、目も霞んで、あんなに強かった秋穂さんの死に行く姿に、おれは寄り添うだけでどうすることも出来なかった。


【………秋穂さん…。】


 おれがあの時、彼女を連れて山から逃げ出していたら、未来は違ったのかな?


【…秋穂さん……。】


 彼女の小さな唇が、


「…ぎ、ら、ん、さ、ま………。」


 おれの名を呼んで、そして死に際の願いを託してくれた。


「……むすめを……。

 早苗を、どうか、まもって…。」


【……早苗……。】


 秋穂さんが命をかけて庇った娘…。

 願わくば、“秋穂とおれの子”となることを夢見た娘…。


【……分かった。

 約束するよ、秋穂…。】


「………ね、義嵐様…、わたし…、」


 秋穂が死に際に見せたのは、とても安らかな笑顔だった。


「……義嵐様と、夫婦(めおと)に、なりたかった……。」



 そうして、三つ目…。

 おれが喉から手が出るほど欲しかった言葉。やっと彼女の本心を知れた時には、何もかもが手遅れだったんだ。



 ーーー



 おれが、お母上との思い出を語り終えた頃には、早苗さんは目に一杯の涙を溜めて、おれの顔を見上げていた。


 その姿も素直さも、一途さも、匂いも。間違いなく、あの人の娘なのだと思い知る。

 山犬の仮面でも隠しきれない。残酷なくらい、この子は秋穂さんの面影を残しているのだ…。


「……ここまでの早苗さんの努力を思っても、おれはもう後悔したくない。

 最愛の秋穂さんばかりか…彼女に託されたきみまでも失うのが、恐ろしくてたまらないよ。」


 ーーーだから…。


「お願い早苗さん。おれと逃げて。」


 早苗さんに手を差し出す。

 彼女は戸惑いを隠せず、おれの顔と手とを交互に何度も見る。


 混乱させてる。当然だ。彼女にとっては人生がひっくり返るほどの出来事に違いない。

 辺りに聴こえる囃子の音が、今だけはしんと静まり返るように感じた。


 早苗さんはどう思っただろう。

 秋穂さんの決意を。そして、彼女の死の上に、今の早苗さんが存在する事実を。



 やがて早苗さんは、ゆっくり一言ずつ、胸の内を整理するように言葉を紡ぐ。


「………義嵐さま、は……、」


「…うん。」


「……今も、母様(かあさま)のことを…想って、くださってるのですね……。」


「………。」


 早苗さんの目から、一粒の涙が零れ落ちる。

 それを拭う資格が今のおれにあるのか、分からない。


「……ああ。心から。

 おれにとっては後にも先にも、秋穂さん以上の人はいないよ。」


 早苗さんの表情は今は、寂しげで…穏やかだった。

 全てを受け入れる優しい顔には、秋穂さんを護れなかった“おれ”への憎しみも、お母上の死の元凶である“狗神”への憎しみすら宿っていない。何も。


 早苗さんは涙を二粒、三粒と零しながら、胸の内を明かしていく。


「……母様は、わたしくらいの年の頃から犬居家に奉公に出されて、()()れの美しさを買われて妾となったそうです。父様との間に愛があったかも分かりません…。きっとわたしの想像に及ばないほどの、大変な苦労があったと思います……。


 でも、仁雷さまと、義嵐さまと出会えた…。

 それはきっと、母様の救いになったに、違いありません……。」


 その優しい表情の意味を知った時、


「だって、わたし自身がこんなにも、心救われているのですから。

 人の暮らしの中では得られなかった安らぎを、お二人が惜しみなく与えてくださったのだから…。

 本当に…ありがとうございます……。」


 おれは胸がひどく締め付けられた。

 息苦しいほどの焦燥に駆られた。

 いけない、早苗さん。


「……それは、おれ達が狗神のお使いだからだ。…犬居の娘を護ることが役目だからだ。

 …“きみのため”である保証は、無かったんだよ…?」


「……例え、そうだったとしても、いいんです。

 死に行く旅の中で、束の間でも、“誰かに恋焦がれる想い”をさせていただいたのですから。


 …義嵐さまを愛した母様に、後悔は無かったと信じています。

 そして、…仁雷さまを愛せたわたしも、後悔はありません…。」


「……………。」


 おれは何十年も流れ作業のように、犬居の娘達の最期を見送ってきたが、そこに存在する彼女達自身の“心”は、少しも考えなかった。


 ーーー今になって。よりにもよって、一番死なせたくない人の本心を知ることになるなんて…。


 今度は、おれが項垂れる番だった。

 どうあっても早苗さんは、意志を曲げないだろう。

 そっくりだ。そういうところが…。


「…義嵐さま…。

 わたし、やはり、試練を続けたいです。

 わたしの、わたし一人の力で、試練を達成したい。


 そうしてその先で…狗神様にお目通りが叶うなら、わたしどうしてもお会いして、“お願いしたいこと”があるのです。」


「………お願いしたいこと……?」


 そんな要望を持った者はこれまで一人もいなかった。

 早苗さんは今この場では、その言葉の意味を教えてはくれなかったけど、


「皆様の優しさの上に成り立つわたしの命を…決して無為には終わらせません。」


 泣き出してしまいそうな笑顔で言ったのだ。



「……そっか。」


 おれは項垂れていた頭をもたげる。

 早苗さんの慈悲に満ちた顔を見ると、おれの心までも救われる気がした。


 ーーー仁雷の姿がこの場に無いのが、残念でならないな…。


 それから祭りの灯りの方を見遣り、おれは刻の訪れを感じ取る。


「…早苗さん、もう間も無く、大狗祭りの正念場(しょうねんば)が始まる。」


「……え…?」


 その直後だ。

 祭りを謳歌していた山犬達が突如一斉に、天上の月に向かって遠吠えを上げた。


 何十、何百という山犬の合唱は、空気をびりびりと振動させる。同じ山犬たるおれの心臓までもが同調し、高鳴りを覚えた。


 次に、山犬達は次々に変化を解き、本来の獣の姿をもって、一斉に拝殿の奥…本殿の方向を目指して駆け出した。

 黒、茶、赤、様々な毛色の蠢く大群は、まるで一匹の巨大な(もの)()のようでもある。山犬達の足音は地響きとなり、立ち並ぶ屋台を大いに揺らし、中には振動に耐えきれず崩れ落ちる屋台もあった。


 境内の隅に立つこの物見櫓でさえ、足場がぎしぎしと軋む。落ちないよう、早苗さんの小さな体を支えながら、おれ達は山犬達の行く先を見送った。


「……義嵐さま…皆様は、どうなさったの…?」


「大狗祭りは十年に一度、狗神への目通りが許される日でもある。白露神社の本殿…狗神御殿(いぬがみごてん)に、おれ達の主神(しゅじん)御座(おわ)すのさ。


 山犬達はずっとこの日を待ち侘びていた…。」


 物見櫓の上からは、拝殿奥の山の中へ伸びる、朱色の千本鳥居が目視できる。

 山犬達は続々と鳥居を潜り、山の上に位置する狗神御殿を目指す。

 そして、おれもまた…。


「…早苗さん、きみの意志は伝わった。

 おれは一足先に、狗神御殿できみを待つよ。」


 おれは人間の変化を解き、燃え尽きた炭のような、黒々とした大きな山犬へと変わる。

 …秋穂さんが愛してくれた姿へ。


【……必ず、きみが生きて、最後の試練を達成してくれると信じているから。】


「……義嵐さま……っ。」


 そうしておれは身を翻し、櫓の天辺から狗神御殿の方角へ、高く高く跳躍した。

 一度拝殿の屋根に着地をし、踏み台にしてさらに高く跳ぶ。


 後方に過ぎ去る櫓から、微かに早苗さんの声が聴こえる。


「………はいっ、わたし、きっと…!」


 大丈夫。

 きみなら、大丈夫と信じてる。



 ***



 あっという間に、義嵐さまと…あんなに賑わいを見せていた山犬の皆様の姿は、境内から消え失せてしまいました。


 わたしの足元には、ぼんやりと夜闇に浮かぶ提灯の群れ。入り口の大鳥居から、拝殿、そして、本殿…狗神御殿の千本鳥居へと続く、朱色の灯りの道。山の奥深くへと迷子を誘うような、妖しい美しさがあります。

 そしてそれは、わたしが進むべき道を示しているようにも思えたのです。


「………っ。」


 胸の前で両手を強く握り合い、決心しました。


 物見櫓の急な梯子(はしご)をゆっくりゆっくり降り、提灯の灯りの道を辿ります。山犬達の足音で崩れた屋台を避け、拝殿を過ぎ、その裏手へと。


 拝殿の裏にはさらに山の上へと続く階段があり、階段に沿って、朱色の千本鳥居が長く長く続いています。

 奥を覗いても、気の遠くなるような鳥居の道が続くばかり。先は見通せません。

 提灯の赤い灯りに照らされた千本鳥居は、神聖な物のはずなのに、どこか不吉な予感を抱かせました。


 ーーーもしかすると仁雷さまも、この先に…?


 わたしはごくりと生唾を飲み、ゆっくりゆっくりと、階段を登っていきます。


「………。」


 ただ前方だけを見つめ階段を登り続け、程なくしてのことでした。



「ーーー早苗さん!」


 背後から、わたしは名を呼ばれたのです。

 忘れようはずもありません。その優しいお声を。


「…じ、仁雷さま…?」


 振り返れば、鳥居の階段を足早に登って来る、仁雷さまの姿があったのです。

 紅潮した、どこかとても嬉しそうなお顔。


「早苗さん、よく此処(ここ)へ来てくれた!

 そうだ。俺はずっとこの鳥居で、早苗さんを待っていた。貴女が恐れず、狗神へ目通ろうとしてくれることを信じて…!


 おめでとう、これで狗祭りの…いや、全ての試練達成だ!本当によく頑張ってくれたね!」


 仁雷さまは興奮冷めやらぬ様子で、わたしの手を強く握りました。こんなに嬉しそうな仁雷さまを見たのは初めてです。何より、


「…わ、わたし、本当に?試練を達成したのですか…?」


「ああ、その通り!早苗さんならやり遂げられると信じていた。」


 とうとう試練をやり遂げた。

 感動が、わたしの奥底から湧き上がって来るのを覚えます。

 仁雷さまの嬉しそうなお顔…それが見られただけでも、この長い道程を歩いてきた価値が大いにあると思うのです。


「ああ、早苗さん…!」


「っ!」


 すると、仁雷さまはわたしの体を強く抱き締めました。

 突然のことにわたしは驚き、同時に恥ずかしさで体を固くしてしまいます。仁雷さまは落ち着かせるように、優しい手つきで、わたしの頭を撫でてくださいました。


「……早苗さん、貴女も知っての通り、狗神の元へ行くということは、死を意味する。

 これまでの旅で…貴女も、俺も、それを分かった上でここまで来たはずだ。」


「はい………。」


 仁雷さまの手が止まります。

 不思議に思ったわたしが見上げると、まるで熱に浮かされたような、苦しそうな仁雷さまのお顔があるばかりなのです。


「……仁雷さま…?」


「………さあ、早苗さん。

 もう終わったんだ。

 俺と一緒に、“狗神の山を出よう”…。」


 その言葉は、わたしの体を一層硬直させました。


 狗神様の山を出る。それは、巡礼からの逃避に他なりません。

 仁雷さまのお顔に、冗談めいた色は見られません。とても真剣な様子が窺えました…。


「………でもっ……わたし、狗神様に…。」


「…早苗さんは充分すぎるほどの勇気を示してくれた。狗神もそれを分かってくれたよ。ずっと見守っていたからな…。

 俺と、早苗さんの深い絆を認めてくれた…。


 もう狗神の呪いに縛られなくていい。

 俺達二人で、外の世界で、新しい人生を歩んで行けるんだ。」


 狗神様が、わたしを見ていてくださった?

 仁雷さまと、わたしを認めてくださった…?


「……そうで、あれば……、」


 ーーーこんなに、幸せなことはありません。



「俺は早苗さんが大切なんだ…。

 何があっても俺が護ると誓うから、どうか…俺と一緒に来てくれ…。」


 仁雷さまの綺麗な瞳。

 それが真っ直ぐにわたしを映す。


「…………仁雷、さま…。」


 夢のよう。仁雷さまと一緒にこの先を歩んでいける。そんな未来が、わたしに許されるだなんて…。


 本当に、夢のよう。


「……………あなた……っ、」



 そう、そんなのは夢に過ぎないのです。



「あなたは…仁雷さまじゃない(・・・・・・・・)…っ。」


 わたしは精一杯の力で彼の胸を押し、抱擁から逃れました。

 驚き、見開かれる琥珀色の目。


「……わたしの知る仁雷さまは、決してお役目を違えず…、わたしの決心を尊重してくださる、真摯な方です…!それに…っ、」


 ーーー仁雷さまから、これほどまでにわたしの欲しい言葉をいただけるなんて、有り得ないことだもの…。



 その者は信じられないという顔で、わたしの大好きな(かた)の姿で、なおも続けます。


「……なぜ…、お願いだ、早苗さん!

 俺は俺だよ…っ。貴女に嘘は吐かない…決して…!」


 わたしの決意がぐらぐらと揺さぶられる。

 胸が押し潰されそうに痛み…視界がみるみるぼやけていく。そんな中で、わたしは懐から、蒔絵の手鏡を取り出します。


 決して離さぬよう、柄を両手で(しか)と握り込み、仁雷さまの姿の“者”に、鏡を向けました。



【………っ!!】


 鏡に映る己の姿と対面したとたん、この世のものとは思えない、不気味な呻き声を上げたのです。


 もがくように両手で宙を掻き、それから必死に、自身の顔を隠そうと腕で庇います。

 その行動の意味はすぐに明らかとなりました。


「っ!?」


 相手の体が、煙のように宙に溶けていくのです。姿形を保てなくなったその者は、煙の中で正体を露わにします。


 仁雷さまのものではない…豊かな美しい白銀色の毛並み。大狗祭りの誰よりも大きな大きな体を持つその“山犬”の、深い琥珀色の瞳と目が合います。


「………っ!」


 その幾重にも深まる琥珀の瞳は、仁雷さまのものとは全く違う輝きを放ちます。

 けれどどこか…嬉しそうな、安心したような輝きもまた秘めており、その一点だけは、仁雷さまの瞳とよく似ていたのです。


 かと思えば、山犬は猛烈な突風を巻き起こし、目にも止まらない速さでわたしの横を走り去りました。


「…きゃっ…!」


 すぐに振り返ったけれど、白銀の山犬の姿は、千本鳥居の彼方へ消えてしまった後でした。

 千本鳥居の中には、山犬の面を被るわたしの姿があるのみ…。


「あれは……。」


 あれが、最後の試練だったのかもしれません。

 仁雷さまの姿で、仁雷さまの声で、わたしの決意が揺るがぬかどうかを試すために。


「…………。」


 もしかすると母様もまた、義嵐さまの姿に惑わされて、命を落としたのやもしれません…。

 そうだとしたら、巡礼とはなんと険しく、そして残酷な道なのでしょう…。


「……………っ…。」


 わたしはたまらず、その場にしゃがみ込んでしまいます。

 進まなければ。仁雷さまを捜さなければ。…なのに、体が思うように動いてくれない。


 池泉の山の中では、あけび様と…知らない獣がそばに居てくださいました。

 けれど今は、小さく丸くなることしか出来ない、わたし一人だけ。


「………仁雷さま……。」


 お顔が見たい。お声が聞きたい。


 護る…と、約束してくださったのに。

 一番お顔を見たい方がそばに居ないことが、こんなに辛く苦しいなんて。


『この面が、ずっとそばで貴女を護るから。』


 ーーー面…。


「………仁雷さまは真摯で…真っ直ぐな方…。」


 わたしは手にした蒔絵の手鏡の中に、自身の“山犬の面”を映しました。

 仁雷さまが付けてくださった…仁雷さまを思わせる、山犬の面。


 それが、どうしたことでしょう。

 いつしかそこに“面は無く”、代わりに、



「……………久しぶり、早苗さん。」



 わたしの体を後ろから抱き締める、仁雷さまの姿があったのです。

 わたしの髪に、ご自身の髪を遠慮がちに擦り付ける素振り。鏡に映る芒色の髪も、深い琥珀色の瞳も、わたしの知る姿そのものでした。


「………仁雷、さま……なの…?」


 思わず、声が掠れてしまう。

 だって、こんな近くにいるなんて。こんな近くに“居た”なんて、ちっとも…。


「そう。俺は“面”に変化(へんげ)して、ずっと貴女のそばにいた…。

 見つけてくれてありがとう。」


「…………あ………。」


 拝殿の前で目を閉じていた時、髪を巻き上げる突風が吹いたことを思い出します。

 もしかして、あの時…。


「………ほんとうに、仁雷さま、なのですか…?」


「……ああ。そうだよ。

 蒔絵の手鏡は真実を映す。

 あの物の怪は、早苗さんの望む姿で現れ決意を揺さぶる、“山犬の生霊(いきりょう)”だった。

 そして、“俺の正体”も、こうして明らかにした…。」


 仁雷さまの手に力が込められます。


「巡礼の試練は、すべて達成された。

 貴女の(たゆ)まぬ努力と真っ直ぐな優しさは、この目で確かに見届けたよ。

 本当におめでとう…。」


 雉子の竹藪。

 狒々の池泉。

 そして、大狗祭り。

 わたしのこれまでの歩みは、三つの試練を達成し…狗神様の元へ行くため。

 けれど、その達成感を噛み締められないくらい、今のわたしは動揺していました。


 仁雷さまが、ずっとそばに居た。

 それはつまり、わたしが義嵐さまと話したことも…さっきの、わたしの願いを体現した生霊の姿も、すべてすべて仁雷さまに…。


「………わたしの想いも、ぜんぶ、見てらしたのですね……。」


「…………ああ。」


 わたしはたまらなくなり、手鏡を足下に落として、両手で顔を覆ってしまいました。


 恥ずかしい。悲しい。みっともない。苦しい。消えてしまいたい…。顔が紅潮して、胸が締め付けられるように痛くて、涙が止め処なく溢れ出て来るのです。


「………あなたには、知られたく……なかったのに……っ。」


 どうせ叶わぬ想いなら、わたしの胸の内に永遠に留めておきたかった。


「……………………。」


 仁雷さまは何も言いません。

 ただわたしが声を上げて泣き続けるのを、後ろから優しく体を抱き締めたまま、そばで待ち続けていました。


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