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第5話  『 ペン持つと無性に折りたくなるよな 』

「なあボッチ。ちょっと勉強見て欲しんだけど……「珍しいね」って、まあ、来週から期末試験があんだろ。それで赤点取るのは嫌だからな」


 勉強嫌いなアマガミさん。こういう事で頼ってくるのは珍しかった。


「……やっぱいい。自分で勉強する。おいおいそんな悲しそうな顔すんなって! 分かったよ一緒に勉強すりゃいいんだろ……つか、教えてください」


 ヤンキーなアマガミさんは当然のように授業も嫌いなので、よく抜け出す。だから、分からない所だらけだった。


「なんか黙々とやるのもつまんねえし、音楽掛けていいか? 「それだと集中できないよ」って……わーったよ。我慢する。んぅぅ。でもなぁ」


 やっぱり重い腰が中々上がらないアマガミさん。でも、やる気だけはある模様。

 早速机に教科書とノートを開いたアマガミさん。カチカチ、とシャーペンをノックしたわずか一秒後に、


「ペンを持つと無性に折りたくなるよな。「なら勉強してる自分カッコいいと思えばいい」かぁ。カッコいいかな?」


 うん、と頷けば、アマガミさん照れながら気合を入れた。


「カッコいいと思われるのは悪くねえ。お前にそう思われるなら尚更な。「カッコいい、カッコいい」ってそう何度も連呼すんな! ……恥ずいだろうが」


 アマガミさん可愛い。


「ほら勉強すんぞ……おおぅ。数式見ただけで眩暈がしてきた。ボッチぃ。全然分かんねえよぉぉ」


 秒で泣きついて来るアマガミさん。ボッチも頼られて嬉しいので、喜んで教える。


「ふむふむ。ここをこうするとこうなるんだな。へぇ、それで次の式にいけると……なるほどな! ボッチ! お前やっぱ教えるのうめえな! なんか天才になった気分だ……ぁぁ嘘。次の問題もさっぱり分かんねぇ」


 落ち込むアマガミさん。また泣きついて来て、また教える。


「「ところで今年はどうしてそんなにやる気なの?」って……あー、なんか理由教えんのも恥ずかしいから嫌だな。「言いたくないなら言わなくていい」か。べつにそんんな深い訳でもないんだけどな」


 アマガミさんが口ごもる。

 眉間に皺を寄せて数十秒たっぷり悩んだあと、アマガミさん、ようやく教えてくれた。


「……だって、赤点で補習くらったら、今年の夏休みお前と遊べる時間少なくなるだろ。だから勉強しようと思って。――ああほら! そういう顔するから言いたくなかったんだ! 私の言い損だろ確実に!」


 思わず笑ってしまえば、アマガミさんは顔を真っ赤にしてしまった。


「柄にでもないこと言ってるのは分かってるけど、でも、お前と少しでも一緒に居たいんだよ。な、夏祭りとか、花火とか……楽しみたい。で、デートだってしたいんだよ。こんな理由、なんか女になったみたいでムズムズしてさ。ばかっ! 可愛いよとか言うな! ……え? 「僕も一緒だよ」って、ふんっ。そんなの分かってるつの」


 同じ気持ちだと伝えれば、アマガミさん、耳を赤くしてそっぽ向いてしまう。


「……「その為には勉強頑張ろうね」とか、お前容赦ないな。いや事実だけど。でもさ、もうちょっとカノジョに優しくしたり……え? 「今甘やかしたらアマガミさんと夏満喫できないかも」って、嬉しいけど目が怖いぞボッチ⁉」


 アマガミさんと今年の夏は愉しく過ごしたいから、ボッチは少しだけ鬼になる。


「今日から一週間みっちり勉強ぉ⁉ テスト明けるまで遊ぶのも禁止⁉ ゲームも没収とか、やることエゲつないぞ⁉ 私を殺す気かボッチ⁉ 「人はそう簡単に死なない」って、だからって極悪非道にも程があるだろ~~~~っ⁉」


 アマガミさん、ショックでテーブルに蹲ってしまった。

 それからチラッと覗いてくると、


「も、もしかしてキスとかも禁止じゃないよな? にやにやすんな。……「それは頑張ったご褒美」か。ほほぉ。それなら、飛び切りのご褒美をもらわないとなぁ。楽しみにしてるぜ、ボッチ」


 アマガミさんの期待に応えなければと、ボッチもやる気を出したのだった。


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