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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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訓練の日々

「つかれた~」


 アルトは一日の訓練を終えてベッドに飛び込む。グラウェルとの訓練が始まり一週間が経ち、マーラをレバレスの宝玉に送り込む修練を続けている。


「アルト、大丈夫か? 顔色も悪いぞ。それに休みも無しにやって」


「んー、大丈夫。マーラを毎日使い切ってるから疲れて。でも、効果が出てるのかもしれないけど、送っている時に感じていた頭痛は無くなった」


「頭痛よりも体調が悪く見えるぞ。・・・アルト?」


 リークトの心配を他所に、アルトは眠っていた。せめて首元だけ楽にしようと、制服の襟を緩める。その顔は血色が悪く、疲労が見て取れる。


「ん~、相談すべきか」



 ***



 レバレスの宝玉は最初の頃に比べて強い輝きを放っていた。その力強い輝きに目を背けてしまう程だ。


「・・・はぁ、はぁ、はぁ」


「そろそろ限界かな」


「はい。力が、入りません」


「うむ。宝玉への注入時間も伸びている。体内のマーラは増えていると思うが、実感としてはどうかね」


「最初の頃は頭痛がありましたが、それも無くなりました。ただ、毎回の疲労感が激しいです」


「確かに顔色も良くないな。扱えるマーラが増える分、それが無くなると比例して疲労感も来るのか」


「おそらく、そうだと思います。すいません、座らせてもらいます」


「あぁ、いいとも。茶を淹れよう」


 グラウェルは茶を淹れてアルトの前に出す。それを受け取りゆっくりと味わう。


「いつも思いますが、グラウェル卿が入れるお茶は美味しいです」


「ははは。ありがとう。物が良いからかな。アルト君も上級騎士になれば、この茶葉くらいはすぐに買えるようになるさ」


 そんな会話をしながら、一杯の茶を飲み一息つく。


「でも、さすがとしか言いようがない。レバレスの宝玉のずっと輝きっぱなしになるほどマーラを送れるなんて。例の吹き飛ばしをすると、どうなるのかな」


「そうですね。やってみないとわかりませんが放出のコツは掴めたので、今なら実技試験ほど苦労せずに出来るかもしれません」


「よし、気分転換がてらにやってみよう。訓練場へ行こう」


 グラウェルに続いて訓練場について行く。そこでは、皆が、木剣を振るって剣術の訓練をしていた。


「あ、アルトだ」


 クラルドの声に周りが反応していく。


「おーい、アルト!」


 周りが手を振るのを応える。その間にグラウェルは木人形の準備をしている。


「どうしたんだ、珍しいな? というか。久しぶりに会ったけど顔色悪いぞ」


「そうよ。大丈夫なの?」


「あぁ、疲れてるだけだから。大丈夫。今から、ラーグを倒した時の吹き飛ばしをやる所なんだ」


「あれをやるんだ! 見たいなー」


「ダメよ、上級騎士との訓練中なんだし。戻りましょ」


 去ろうとするクラルド達をグラウェルが呼び止め、一緒に見ることになった。


「それじゃあ、準備はいいかい?」


「はい!」


 アルトは手を突き出す。すると、固定されていた木人形は軸を抜けて吹き飛んだ。その勢いは、ラーグを吹き飛ばした時以上の力だった。


「ッ!」


「アルト!」


 衝撃波を放った後にアルトは眩暈を起こし倒れた。



 ***



「ん・・・」


 瞼を上げると、最近見た天井があった。


「医務室? そうか、倒れたんだった。でも、久しぶりにこんなに寝た気がする」


「あら、アルト君起きたのね」


「先生」


 声をかけたのは肩まで伸ばした黒髪が印象的な後方支援部、医務室担当の上級騎士ポノリーだった。彼女は医学に詳しいこともあり若くして、後方支援部の上級騎士に任命されたセレス地方出身者である。

 薬学に詳しいこともあり、アルトとポノリーは話が合う友人となった。


「相当、疲れていたみたいね。ここに来た時は顔色が悪かったわよ。でも、今はマシになったわね。無理をさせるなってグラウェル卿に言っておいたから」


「え」


「ふふ、大丈夫よ。あの人も反省してたみたいだし、明日は休みだって伝言を頼まれていたわ」


 伝言を伝えると、ワゴンを持って来た。そこには医務室送りになった人には馴染みのある液体があった。


「デルベラジュース。しかも、二杯」


「そうよ。リークト君から聞いたけど、食事もちゃんと食べずに寝ていたんでしょ? その顔色の悪さは栄養失調もあるわ。はい。飲んで」


 紫色のドロッとした口当たりが苦手な人が多いデルベラジュースは栄養俸給にはぴったりの飲み物だ。最初にアルト達が見たのは、初めてザクルセスの塔に来てエリーやクラルドと一緒にルベンに連れて来られた食堂でルベンが飲んでいたやつだ。

 一気に飲まないと辛い味だ。


 アルトは一杯目を勢いよく飲んだ


「・・・・・・はぁ、はぁ」


「よくできました。はい、二杯目」


「・・・・・・」


 二杯目は無心で飲めた。

 ポノリーはコップを片づけて、明日も安静にと去って行った。


「はぁ、久しぶりにゆっくりできる」


 夕暮れになり始めた外を見ながら呟く。また、眠気が来てアルトはおとなしくそれに従った。

読者のみなさまへ


今回はお読みいただきありがとうございます! 


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