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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 福山ショータ
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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レベナティア

 

 盗賊討伐以来、アルトの気持ちは沈んだままだった。その日、アーブ達はアルトと話したが精神的に疲れていると判断してヴェドナへもう一泊した。エストまでの日程には大きな狂いはなかったので、一日休ませた。

 そして今は、ヴェドナを出発して大街道を進む。先頭からラウ、アルト、アーブの順番で進む。


 今日の朝もアルトは、調子を取り戻さなかった。落ち込んでいる背中を見てアーブは、どうしたものかと困った。最初の討伐があれではショックを受けて落ち込むのも仕方がない。

 討伐依頼が当然の如く皆殺しの依頼であった事。目の前で、女は奴隷。子供は処刑と言い渡される光景を見た。そして、響き渡った子供たちの悲鳴。


(俺でもキツイ展開だったもんな・・・)


 洞窟に入った二人は結局は男の盗賊は全員倒して、残りの女子供を助けようとヴェドナへ連れて行った。抵抗してきた盗賊達は教会騎士の権限で処刑を許されるが、無抵抗の場合は男女子供問わず教会から取り調べを受けて、それに応じた罪を償う。それは囚人として労働するか、奴隷として売られるか、そして処刑されるか。それを想定してヴェドナへ連行したら、取り調べも無く奴隷落ちと処刑の宣告。


 アルトは心根が優しい人間だ。ここまで来る道中にアーブ達はアルトの話を聞き、教会騎士になる目的や家族と故郷と愛している人を知った。大切な人達を守ろうと、同時に誰かの大切な人達も守って笑顔でいてもらおうと覚悟を決めて教会騎士の道を歩もうとしていた。

 だが実際は、魔物の討伐をして世界を守るが、教会が定めた法や教えを理不尽に踏みつぶす貴族達の道具でもある教会騎士の姿を見た。本来なら、アーブ達のように何年もかけながら知っていく世界を一日で見せられた。全てのタイミングが悪かった。


 そして、自分が殺した盗賊の影響もある。

 故郷のゴル村を襲った獣人達は倒す理由があった。一方的に襲われ身を守る為に戦った。だが、捨てられた村で賊が生まれる原因を知った後で物品以外の被害を出していない、飢えたどこかの村人だった人を仕方なく殺した。そして、その盗賊には子供がいた。あの光景は忘れれないだろう。


「どうしたもんか・・・」


 アルトにはこれから、教会騎士になる為の厳しい訓練が待っている。もしかしたら、訓練に忙殺されて忘れることが出来るかもしれない。ザクルセスの塔で出会う仲間が助けてくれるかもしれない。


 アーブは頭を振って、その考えを改めた。

 リンド村を旅立つ前にアルトを頼むと彼の父と母に願われた。とても大切にされているのが分かった。何より自分達の命の恩人だ。見たことも無い力を使うドヴォルから自分や仲間を助けてくれた青年。教会騎士の先輩の一人として、アーブ自身の力でアルトを助けようと決めた。アルトの力になれる方法は知っている。ただ、とても険しい道のりを教えることになる。


 大街道を進み、今日の予定地に着いた。野宿になるため役割分担をして、それぞれが動く。

 寒い時期を迎え始めた今、三人は焚火を囲い温まっている。硬い干し肉を食べ終えて。アーブは話を切り出した。


「アルト。聞きたいことがある」


「・・・・・・はい」


「ヴェドナの時みたいな事をまた起こしたいか?」


「起こしたくないです」


「無駄に人を殺めたいか?」


「殺めたくないです」


「それなら、前を向け。起きた事はもう仕方ない。あれを繰り返さないでいい方法を教えてやる」


「方法?」


「そうだ。実現には時間がかかるし、命の危険もある。だが、やり遂げればヴェドナみたいな事を起こさずに済んで、無駄に人を殺める必要も無くなる」


 俯き気味だったアルトの顔が上がる。


「どんな方法ですか?」


「上級騎士より権限が大きい、『レベナティア』になるんだ」


「それは何ですか?」


「各地を旅しながら仕事をする上級騎士だ。教会の代わりに審問をして、出した判決は教会騎士を監督する司教位にしか覆せない。そして、司教は貴族達より偉い。よっぽどの事が無い限り覆せないんだ。これならヴェドナの時みたいな事は起きない。ただ、とても強くならないと就けれない役職だ。旅をしながら、疑わしい人を審問して異教徒を見つけ出して討伐や捕縛する。場合によっては一人で魔物と戦わなければならない。だから、騎士団が知らない内に殉職してる場合もある。そんな役職だ」


 アルトは真剣に考えている様子だった。


「エレーデンテから下級騎士。下級騎士から試練を乗り越えて上級騎士。そこから、最後の試練を終えてレベナティアになれる。かなり難しく大変だが、貴族に対抗出来る程の権限を手に入れれる」


「・・・俺、レベナティアを目指してみようかと思います。時間はかかるけど何もせずに、また理不尽に殺される事が無いようにしたいです!」


「それなら、立ち止まる時間は無いぞ。エレーデンテ課程を終えて、更に強くなって上を目指すんだ。だから、あの子達の死を悲しむのは今日が最後だ。前を向いて強くなれ!」


「はい」


 頷くアルトの瞳は力を取り戻していた。


 翌朝、アルトは昨日の面影もなくしっかりとした顔つきで、エストを目指して出発した。

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