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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第二章:ザクルセスの塔
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走りぬく

 

 アルトは宿屋に向けて急いで走っていた。


(なんで俺は、守られてばっかなんだ。......悔しい!)


 手を強く握り、後ろで戦っているであろう父と師匠のことを思う。


「なんで!」


 アルトの叫びは小さく村に響くだけだった。


 宿屋に着いたアルトは、足音を立てないように裏側に行き、人がしゃがんで通れるくらいの穴を塞いでいる石を動かした。小声で奥にいる人物を呼び掛けた。


「コーゼルさん。コーゼルさん」


 閉じられていた向こう側が開かれて、コーゼルが顔を出した。


「アルト君・・・。今、行かせる」


 反対側で何かやり取りをして、ミルテナが顔を出した。


「周りは大丈夫かい?」


 周囲を見渡し、誰もいないことを確認した。


「はい」


「...アリアさんとアリルちゃんを先に出すよ」


 しばらくすると、灰で汚れた二人が出て来た。


()()()、これでアリルを拭いて」


 裏側に隠してあった荷物からタオルをだした。アルトの言葉に、目を少し見開きタオルを受け取る。


「...ママ?」


「大丈夫よ」


 アリアの動揺が伝わったのか、アリルが問いかけるがアリアは顔を拭いた。

 奥では、ミーナとコーゼルの声が聞こえる。


「ミーナ、行きなさい」


「...うん」


 ミーナが奥から出て来た。


「ミーナちゃん。これで顔を拭いて」


「ありがとうございます」


 アリアからタオルを受け取り顔を拭く。

 拭き終わるとミーナはアルトを見た。


「アルト。行かないといけないの?」


「・・・そう」


 アルトが言いかけるとミルテナが出て来た。


「皆、こっちに来て」


 五人は静かに移動した。そこは雑木林で覆われた場所だった。

 ミルテナは草を掻き分けると、小さな道があった。


「下をよく見て。道が出来てるのがわかるでしょう。この道を暫く辿れば、村の外に出れる。そこから、東に行くと街道に当たるわ。その時は、ゴル村も通ることになるけど、迂回しなさい。もしかしたら盗賊がいるかもしれないから。うまくいけば、聖地コバクから送られている援軍にも会えるかもしれない」


 ミルテナはアルトの手を握り伝えた。


「アルト君、ミーナをお願いね。あたし達の大事な娘を守ってちょうだい」


 アルトは返事が出来ずに、その手を強く握った。ミルテナもアルトの気持ちを察していたので、何も言わなかった。

 道を進もうとするアルトの服の袖を誰かが引っ張った。


「......アルト、本当に行くの?」


 ミーナの深い青色の瞳がアルトを見つめる。問いかける言葉と瞳に、返す言葉が出てこなかった。

 アルトは袖を掴むミーナの手を握った。


 ***



「こいつら、普通のドヴォルじゃない! 魔法に気を付けろ!」


 アーブは警戒を呼び掛ける。周りには体に火が付き、のたうち回る人がいた。


「くっ!」


 ドヴォルの剣と見たことがない攻撃を受け、教会騎士達は苦戦していた。

 その正体が解らずに『魔法』と呼んだ。



 二体のドヴォルを教会騎士達が引き受け、もう一体は村人達で対応した。


「何なんだ、こいつら!」


「待て! 無闇に近づくな!」


 ドヴォルは重そうな剣を振るい、攻撃をしてくる。

 何とか剣を受けた村人は精一杯力を入れて、鍔迫り合いの状態にした。

 するとドヴォルの後ろから、何人かで斬りかかった。

 声を上げるドヴォルに攻撃が効いていることを知り、急いで離れる。


「モル、大丈夫か!?」


「手が痺れる。馬鹿力だ・・・」


「もう一度、剣を受けれるか!?」


「やるしかないだろに!」


 距離を取り、呼吸を整えながら目の前のドヴォルの様子を見る。

 するとドヴォルは握り拳をつくり、力を込めているようだった。その動作に全員がドヴォルから離れた。その拳をモルのいる方向へ手を広げながら突き出した。


(やばい!)


 炎が目の前に迫って来る。急いで横に逃げたが腕に掠り、火傷を負う。


「あぁっ!」


「モル!」


「掠っただけだ・・・」


 仲間の声に返すが、腕の痛みは激しい。


「モル、避けて!」


 後ろから聞こえた、聞き覚えのある声に一瞬で判断しモルは離れた。


 投げられた瓶はドヴォルの肩に当たった。


「グアァァ!」


 悲鳴を上げたドヴォルは剣を落とし瓶が当たった肩を抑えた。


「今だ! 全員、突き刺せ!」


「肩に触れるな!」


 モルの号令と瓶を投げたマールの声に従い、囲んでいた全員でドヴォルの体を突き刺した。

 体に無数に刺された剣にドヴォルは苦しむ。


「刺した剣を捻り抜け!」


 刺した剣を捻り抜くと、ドヴォルは膝をついた。


「くたばれ!」


 モルの一撃がドヴォルの首を刎ねた。

 倒れたドヴァルの体が崩れ始めた。


「ハァ、ハァ。...マール、助かった」


「間に合って良かった! 火傷したのか。これを」


 マールは持って来ていた、中級回復薬を火傷した腕にかけた。一瞬の痛みに耐えると、火傷は治った。


「やっぱお前、すごいな」


「アルト君のお陰だよ。今頃、村を出たと思う

 」

「そうか。ありがとう」


 モルに手を貸し、立たせると叫び声が聞こえた。振り向くと、教会騎士ラウが斬られた。


「ラウ!」


 アーブがドヴォルと戦いながら、仲間を名前を叫ぶ。

 ドヴォルは止めを刺そうと剣を上げた時に、横に吹き飛んだ。


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