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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第三部:希望の継承者 第二章:砂塵は心を削りて
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ヤウィンの旅行記②

定期更新!

 《ヤウィン視点》


 黒い肌をした教会騎士フマディンキョウさんの作ってくれた美味しい料理を食べた後、皆は夕方の出発に向けて昼寝を始めた。黒い肌の人間って初めて見た。話を聞くと、砂漠の北に住む人間で多いらしい。人間にも色んな人がいるんだなぁ。初めて行く砂漠って所も砂だらけらしいけど、行くのが楽しみだ!

 今までの服から砂漠用に着替えて、頭に巻く厚い布ターバンっていう物が面白い。たくさん色があって、皆で考えて選んだ。僕は黄色にした。ルキシアの月が近いから暑くなるのに、さらに暑い砂漠へ行くのに長袖を着るのも不思議だ。コブトカゲに顔を舐められた時は、食べられるのかと思ってビックリした。でも、顎を撫でると嬉しそうで可愛い。


 この町に来るまで一番驚いた事は、とっても大きな山を沿いながら別の領地に移動してすぐの、大きな人間の町に寄った事だ。貴族の屋敷がとても大きくて、皆が泊まれる広い庭で黒髪の教会騎士ラーグさんが鳥肉の串焼きを作ってくれた。肉汁がいっぱいで不思議な匂いもして、美味しかった。それと、ここの貴族が僕達にってお菓子をくれた。大人はお酒を貰って嬉しそうだった。お母さんも少し飲んで上機嫌だ。


 ただ、バルコニーから庭を見下ろしてた人間が不気味だった。優しく笑ってたけど、何だか怖く感じた。アルトはその人間に気付いて、皆に配る用で持っていたたくさんの串焼きと人間の顔を何度も見ていた。多分、呼ばれたんだと思う。アルトはラーグさんの所に行って、少しの串焼きを持ってバルコニーに居る人間の所に行った。

 串焼きを食べ終わって眠る頃、大人達が何かしてる事に気付いて忍び足で近づいた。


「ベリノさん、そろそろ砂漠に近づくぞ。いつやるんだ?」

「そうだ。砂漠に入っちまったら引き返せすのも困るぞ」


 その言葉の意味が分かって、息を殺した。今、あの人達はいつアルト達を襲う計画を立ててるんだ。


「慌てるな。砂漠に入る前、準備の為に町へ寄る。そこには貴族が用意した物資や金がある。それを奪ってから、南に逃げる」

「サーリア地方にはいつ行くんだ? 神の祠に戻れば、起死回生が出来るぞ。今度こそ、人間共を……」

「落ち着け。時間はかかるが、また略奪をしながら準備をしてからで良い。あそこは簡単には見つからん。とにかく、砂漠入り直前で決行だ。良いな?」


 そんな話を聞いてから、ずっと不安だった。ベリノ爺ちゃんは僕達を助けるって言ってたけど本当にそれで良いのか。本当にアルトを襲って良いのか。あいつはお父さんや、友達のお父さん達も殺した。ラグムおじさんも殺されたんだ。まだ赤ちゃんみたいなエル・サラム様は父親のラグムおじさんの顔を覚えてるのかな。こんなに僕達を苦しめたアルトなんて嫌いだ。どうなっても良い!


 だけど、そんな風に思えなくなって来たんだ。関所や通りかかった村でも、襲われそうになる僕達を守ろうとしてた。初めて痛くない世界を見せてくれた。橋の光景は本当にすごかった。病気や怪我した人も助けて、夜は薬をたくさん作ってた。別の日は、フマディンキョウさんが休むように言っても、旅慣れしていない僕達が少しでも楽になるようにって、歩く人の足に塗る物を作ってた。それを使った人は足の調子が良いって喜んでた。


 こんなに僕達を心配してくれて守ろうとしてくれる人間を傷付けても良いのか。だからこそ思うんだ。何で僕達を守ろうとしたお父さんとラグムおじさんを殺したのか?


 知りたい。アルトを知ってみたい。でも、その為にはベリノ爺ちゃんがアルトを襲わないようにしないといけない。ベリノ爺ちゃんにも怪我をしてほしくない。

 だから、アルトの所に行った。テントに居るアルトへ声をかけるのが怖かった。でも、今しかないんだ!


 もしかしたら、僕達を守って来てくれたアルトなら、ベリノ爺ちゃん達も助けてくれるって信じる事にした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

楽しんでいただけたら、『感想』や『リアクション』を頂けると嬉しいです。また、『評価ポイント』を頂けると、能舞「老松」を鑑賞するほど喜びます。皆様の応援が、何よりの励みになります。どうぞ、よろしくお願いします。



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