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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第一章:夢
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湧き上がる力

 

 アルトの頭には、いろいろな事で溢れていた。ミーナの事、モルの事、自分の事、生きて帰るのか。


(いや。考えるな。集中するんだ!)


 深く呼吸をして、剣を構える。その様子に魔物もアルトを睨んでいた。


(来る!)


 素早い一撃がアルトを襲う。飛び退いた後に、腕に一太刀いれる。魔物の腕と剣の鍔迫り合いのような状態になった。だが、筋力の差がでる。少しずつ後ろに下げられるアルトは精一杯の力で、腕を切り落とそうとした。


「ッ」


 弾き返されたが深く傷を負わせることが出来た。魔物は痛みで叫びながら暴れた。

 振るわれる腕を避けたが、失敗に気付いた。ミーナとの道が開けてしまった。


「ミーナ、離れろ!」


「うん!」


 急いで魔物を避けながらミーナのもとに駆け付けたが、暴れながらも近づいていた。

 腕の攻撃を流していくが、隙が出来た。魔物はそれを見逃さずに一撃をアルトに浴びせた。剣で直撃は避けれたが、木に叩きつけられて意識が朦朧とした。


 霞む視界で見えたのは、腕を上げる魔物とミーナの姿だった。


「やめろぉぉぉ!」


 血が舞った。

 ミーナの胸を爪が裂いた。

 時が止まった。頭が真っ白になり、息も止まった。それは数秒なのか、数分なのか、時が動き始めるまでの感覚が長かった。

 舞った血は地面に落ち、ミーナは倒れた。

 それを見て、言いようのない怒りが湧き上がってきた。身体が熱くなり、血の巡りを感じる。

 魔物はミーナへもう一撃を加えようと腕を振り上げた時に、キケロの姿が思い浮かんだ。


『強い思いを込めてこうすると、石が飛ぶ』


 何故かその場面を思い出し、強く、吹き飛べと思いを込めて腕を突き出した。

 すると、押されたように魔物は吹き飛ばされて木にぶつかった。


(これなら!)


 アルトは魔物のもとへ走った。飛ばされた魔物も起き上がり、アルトへ攻撃をする。

 腕と剣が交差する時に、自分の腕に『力を込めて』と強く思い、振り下ろした。

 その剣は魔物の腕を切り落とした。ドサッと落ちる魔物の腕を見てアルトは確信した。

 腕を落とされた魔物は、叫び、残った片腕を振り回し暴れる。

 その腕をタイミング良く剣を合わせ、着実に腕に深い傷を負わせていく。


(さっきから、こいつの動きがわかる。・・・今なら!)


「はあぁぁ!」


 横払いに来た腕を迎え撃ち、一気に切り落とした。そして、両手の無くなった魔物の首を目掛けて斬りかかる

 渾身の力と思いを込めて斬る。


 熊の魔物の首は、ねられた。

 その巨体は倒れ、チリチリと崩れ始めた。身体の崩壊を見て、倒せたのだと実感した。

 力が抜けていく。やっと倒せた。フラフラする、意識を手放しそうになるが堪えた。


「ミーナ・・・」


 ミーナのもとに駆け付ける。

 裂かれた胸からは血が溢れる。


「あると」


 小さく微かな声で呼ぶ。


『守れなかったのか』


 怒りで満ちていた熱は消え去り、悲しみが全身を包んだ。

 守れなかった。ティトを守れなかったように。悲しみと後悔が押し寄せる。


(助けれないのか。嫌だ。絶対に守ると約束したんだ!)


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