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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第三部:希望の継承者 第二章:砂塵は心を削りて
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ノーヴェス城、入城

新連載、第三部『希望の継承者』第二章『砂塵は心を削りて』を始めます!

更新日は火曜日と金曜日を予定しています。更新を見逃さない為にも、ブックマークをオススメします。

 熱い体は力が入らず、視界はぼやけて見える。咳をする度に、喉と胸が痛い。熱いはずなのに、とても寒い変な感覚。そんな僕を、冷たい床に寝かせない様に、お母さんが抱き締めて寄り掛からせてくれる。


「ヤウィン。絶対にお母さんが守るからね……」

「おかあさん?」


 お母さんが何を言っているのか分からなかった。聞き返そうとすると、重い音を響かせながら何かが動いた。周りの人達の小さな泣き声が聞こえる。何が起きてるの?

 ぼーっとした頭で周りを見ると、馬に乗った人間がたくさん城に入って来た。人間!


「お、かあさん。人間が……逃げないと」


 僕の声が聞こえていないのか、強く抱き締めたまま動かない。


「大丈夫。大丈夫よ。あなただけでも、絶対に守るから。私が守るから」


 お母さんの体が震えて、涙が僕の顔に落ちて来る。やっぱり人間が来たんだ。早く逃げないと。お父さんと約束したんだ。お母さんを守るって。


「ヤウィン、じっとして。お願いだから」

「剣の所に、行かないと」


 お父さんから貰った剣が近くにあるはず。持って来ないと。戦い方を、お父さんから教えてもらったんだ。僕が戦わないと!

 お母さんの腕の中から出たいのに、もっと強く抱き締められる。これじゃあ、動けないよ。お父さんと約束したんだ。お母さんを守るって。人間がどんどんやって来る。早くしないと。

 息が苦しいけど、頑張るんだ。他の皆も怯えてる。あれ、何だか視界がグラグラしてる。こんな時に!


「ヤウィン? ヤウィン!?」

「ゴホッゴホッ。……お、かあさん」


 お母さんの声が変だ。何か言ってるけど、聞こえない。でも、誰かが来たのは分かった。


「この子に触らないで!」


 誰かに叫んでる。きっと、人間だ。色んな人の声がぼんやりと聞こえる。体が揺らされる。うぅ、気持ち悪い。


「お願い、やめて! ヤウィンを返して!」

「落ち着いてください。アルトに任せて。その子の病気を良くしてくれるから」

「ヤウィン!」


 お母さんが泣いてる。あれ? さっきまでお母さんと一緒だったのに。何で、他の人もお母さんを止めてるの?


「ゴホッゴホッ。に、にんげん……」


 目の前に、飴色の髪の人間がいる。そうか、僕は殺されるんだ。


「大丈夫。すぐに息を楽にするからね」


 人間が僕の胸を触って何かしてる。冷たい手にビックリした。光が見える。胸が光ってるんだ。体の中が熱くなって来た。燃やされるんだ。怖い、怖いよ。叫びたいのに声が出ない。お母さん、助けて! 息が苦しい!


「……ゆっくり、息をしてごらん」


 怖くて、固まってた体から力が抜けた。光がフワフワって飛んで、冷たかった人間の手が温かくなってる。燃やされるって思ってたのに、息が楽になって来た。あんなに苦しかったのが嘘みたいだ。まだ、喉とか胸が痛いけど、さっきより体が楽になった……。

 それに熱いとは違う。何だか、心がポカポカしてくる。お父さんとお母さんに、ギュッと抱き締められてるみたいで安心する。


「さぁ、眠って。俺が君達を守るから、安心して眠って」


 何だろう。この声を聞くと眠くなって来た。人間って、こんなに優しい声や目をする生き物だっけ? ダメだ。眠たすぎる。


「君達を絶対に守る。マス・ラグムとの約束を果たす為にも」


 目を閉じる前に聞こえたのは、おじさんの名前だった。ラグムおじさんの笑顔が浮かんだ。会いたい――だけど、目が閉じていく……。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


獣人の少年ヤウィンの視点から、物語は始まりました。もう一話ぐらいまでヤウィン視点でお送りしようと思います。

人間と獣人。アルトとマス・ラグムの約束。『希望の継承者』の物語を、是非、お楽しみください!


楽しんでいただけたら、広告の下にある「いいね」や「評価ポイント」をお願いします。皆様の応援が、励みになります。

どうぞ、よろしくお願いします。

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