奪還作戦
黄色の目をした獣人の側にミーナはいた。両手両足を縛られている。飛び出しそうになる気持ちを抑えて周りの様子を確認した。
「罠は無いようだ」
モルも同じことを考えていた。二人は剣を静かに抜き役割分担を決めた。
「俺が獣人を相手にする。その間に、ミーナちゃんにはナイフで足の縛りだけでも解いてもらう。あの縛っている縄だとすぐには切れない。ミーナちゃんを守ることに専念するんだ。あの様子だと人質が欲しいじゃなくて、ミーナちゃんを狙って来たように見える。だから二人で、あの獣人を斬る」
「わかった」
「よし。俺は反対側に回る。飛び出るから、その隙をついてミーナちゃんのもとに行け」
モルは静かに移動した。その間、獣人は道具を出して地面に何かを書いている。
急いでるのか、所々、書き直している。
(嫌な予感がする。あれを消せなくとも、どさくさに乱しておこう)
すぐに出れるように準備をして、モルが引き付けてくれるのを待つ。
「獣人、その子を返せ!」
「!」
黄色い目の獣人は自分の剣に飛びつきモルに構えた。
「獣人、言葉はわかるか?」
「わかる。こいつ、わたさない」
「なら、斬る!」
モルは獣人に斬りかかった。モルの剣を受け止め応戦した。
(今だ!)
アルトは急いでミーナのもとに走った。獣人は気付いたが、すかさずモルが斬りかかる。
「アルト!」
「ミーナ、このナイフで足の縄を切るんだ。その間、俺達が守ってる」
「わかった!」
ミーナにナイフを渡し、縄を切ってもらう。獣人はミーナに寄ろうとするが、モルの攻撃が激しく、受け止めている。
「じゃま!」
「邪魔してるんだよ!」
獣人が渾身の一振りでモルに反撃をした。強烈な一撃を受け止めるが、少し押されている。
その隙を見て獣人はモルを蹴飛ばした。
「ッ!」
アルトに向かって距離を一気に縮め剣を振り上げる。アルトも臨戦態勢で迎え撃つ。
力強い一撃に膝が屈しそうになるのを堪えて弾き返す。よろめいた隙をつくがいなされた。
腕に痺れを感じる。一撃一撃が重い。身のこなしも良く、隙をつきにくい。
村で戦った獣人よりも強い。
顔に汗が伝う。そんなアルトの状況に関係なく獣人は襲い掛かって来る。集中してマーラで直感力を高める。
「ッ!」
「この!」
相手の横払いから身を引いて、剣を突き出す。獣人は避けようとしたが、そこにモルが斬りかかった。
「ぐっ」
背中に一太刀いれたが、決定打にはならなかった。
「#####!」
「何言ってるかわかんねぇよ!」
痛みで叫んだのか、何か言おうとしたのか。忌々しくアルトとモルを睨む。
「アルト! 縄切れたよ!」
「ミーナちゃん、そのまま池から離れて森の方に行って!」
「はい!」
「にがさない!」
ミーナの移動を見て、苛立ちを露わにミーナの方に向かうがアルト達に阻止される。
「そっちには行かせない!」
「じゃま!」
直感力で剣を受け流し、攻撃する。避けた先に、またモルの一撃が襲う。
次は避けきれずに腕に深く入った。
「ッ! おまえたち、やめろ、たいこうに、ころされる!」
「たいこう? 誰のことだ!」
「######」
「わかんねぇ!」
モルの剣を片手で受け止められずに膝が折れた。その隙をついてアルトは斬りかかった。
背中に深く傷が入り、獣人は痛みで叫ぶ。剣を持つ手が緩み、モルの一撃も入る。
獣人は倒れた。
「よくやった、アルト!」
「助かった」
剣を下ろし脱力をしたアルトにミーナが駆け寄った。
「アルト!」
「ミーナも無事でよかった。腕の縄も斬るから」
「強かったな。何者なんだ、こいつ。あからさまにミーナちゃんを狙ってたよな」
「色々と言ってたけど聞き取れる言葉だけだと、『たいこう』って言ってました」
「?」
「そうだ、この紋章も消しておかないと。嫌な予感がする」
地面に書かれた紋章を払うと獣人が呻いた
「###・・・」
「まだ生きていたのか」
モルがを止めを刺そうと剣を上げた。その瞬間、背筋が凍る気配を空から感じた。
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