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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第一章:夢
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奪還作戦

 

 黄色の目をした獣人の側にミーナはいた。両手両足を縛られている。飛び出しそうになる気持ちを抑えて周りの様子を確認した。


「罠は無いようだ」


 モルも同じことを考えていた。二人は剣を静かに抜き役割分担を決めた。


「俺が獣人を相手にする。その間に、ミーナちゃんにはナイフで足の縛りだけでも解いてもらう。あの縛っている縄だとすぐには切れない。ミーナちゃんを守ることに専念するんだ。あの様子だと人質が欲しいじゃなくて、ミーナちゃんを狙って来たように見える。だから二人で、あの獣人を斬る」


「わかった」


「よし。俺は反対側に回る。飛び出るから、その隙をついてミーナちゃんのもとに行け」


 モルは静かに移動した。その間、獣人は道具を出して地面に何かを書いている。

 急いでるのか、所々、書き直している。


(嫌な予感がする。あれを消せなくとも、どさくさに乱しておこう)


 すぐに出れるように準備をして、モルが引き付けてくれるのを待つ。


「獣人、その子を返せ!」


「!」


 黄色い目の獣人は自分の剣に飛びつきモルに構えた。


「獣人、言葉はわかるか?」


「わかる。こいつ、わたさない」

「なら、斬る!」



 モルは獣人に斬りかかった。モルの剣を受け止め応戦した。


(今だ!)


 アルトは急いでミーナのもとに走った。獣人は気付いたが、すかさずモルが斬りかかる。


「アルト!」


「ミーナ、このナイフで足の縄を切るんだ。その間、俺達が守ってる」


「わかった!」


 ミーナにナイフを渡し、縄を切ってもらう。獣人はミーナに寄ろうとするが、モルの攻撃が激しく、受け止めている。


「じゃま!」


「邪魔してるんだよ!」


 獣人が渾身の一振りでモルに反撃をした。強烈な一撃を受け止めるが、少し押されている。

 その隙を見て獣人はモルを蹴飛ばした。


「ッ!」


 アルトに向かって距離を一気に縮め剣を振り上げる。アルトも臨戦態勢で迎え撃つ。

 力強い一撃に膝が屈しそうになるのを堪えて弾き返す。よろめいた隙をつくがいなされた。

 腕に痺れを感じる。一撃一撃が重い。身のこなしも良く、隙をつきにくい。

 村で戦った獣人よりも強い。

 顔に汗が伝う。そんなアルトの状況に関係なく獣人は襲い掛かって来る。集中してマーラで直感力を高める。


「ッ!」


「この!」


 相手の横払いから身を引いて、剣を突き出す。獣人は避けようとしたが、そこにモルが斬りかかった。


「ぐっ」


 背中に一太刀いれたが、決定打にはならなかった。


「#####!」


「何言ってるかわかんねぇよ!」


 痛みで叫んだのか、何か言おうとしたのか。忌々しくアルトとモルを睨む。


「アルト! 縄切れたよ!」


「ミーナちゃん、そのまま池から離れて森の方に行って!」


「はい!」


「にがさない!」


 ミーナの移動を見て、苛立ちを露わにミーナの方に向かうがアルト達に阻止される。


「そっちには行かせない!」


「じゃま!」


 直感力で剣を受け流し、攻撃する。避けた先に、またモルの一撃が襲う。

 次は避けきれずに腕に深く入った。


「ッ! おまえたち、やめろ、たいこうに、ころされる!」


「たいこう? 誰のことだ!」


「######」


「わかんねぇ!」


 モルの剣を片手で受け止められずに膝が折れた。その隙をついてアルトは斬りかかった。

 背中に深く傷が入り、獣人は痛みで叫ぶ。剣を持つ手が緩み、モルの一撃も入る。


 獣人は倒れた。


「よくやった、アルト!」


「助かった」


 剣を下ろし脱力をしたアルトにミーナが駆け寄った。


「アルト!」


「ミーナも無事でよかった。腕の縄も斬るから」


「強かったな。何者なんだ、こいつ。あからさまにミーナちゃんを狙ってたよな」


「色々と言ってたけど聞き取れる言葉だけだと、『たいこう』って言ってました」


「?」


「そうだ、この紋章も消しておかないと。嫌な予感がする」


 地面に書かれた紋章を払うと獣人が呻いた


「###・・・」


「まだ生きていたのか」


 モルがを止めを刺そうと剣を上げた。その瞬間、背筋が凍る気配を空から感じた。


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