踏み出せた一歩
「行っちゃったね」
「うん」
「また会いたいな。それでもっと旅の話を聞くの」
「うん」
「だから、また会えるように頑張ろうね!」
「そうだね。絶対に会って、未来の先で起きた事を話て俺達は無事だって伝えるんだ!」
「うん!」
アルトはボーっと椅子に座っているナートに声をかけた。
「ナートさん?」
「・・・ん? あぁ、アルト、と青髪のお嬢さん。どうした?」
ナートの様子に、やはりキケロが何かしたのだなと思い話かけた。
「父さんとモルさんを探してるんだけど、二人は森から帰ってきました?」
「いや、戻ってないぞ。聞いたかもしれないが、子供たちが変な草を触ってかぶれみたいな状態になったんだ。その子は小屋にあった薬で治ったけど、オーロンさんに草の調査を依頼したんだ。モルは付き添い」
「そうなんだ・・・。ちょっと二人で森の近くまで行ってくるよ。木剣じゃなくて、真剣を持って行っていいですか?」
アルトの言葉にナートはとても驚いた。
「村の外に出るのか!?」
「はい。ようやく心の整理がつきました。それと、やらないといけない事ができたので」
「・・・そうか。わかった! それなら念のため剣は持って行った方がいいな。ちょっと待ってろ」
ナートは小屋に入りガチャガチャと音を立て、一本の剣を持って来た。
「訓練で使っている木剣より軽いが、しっかりとした作りだ。振ってみろ」
剣を受け取り数回、振ってみた。ヒュッヒュッと風を切った。
「軽いけど、動きやすいですね」
「そうだろ。こういう時の為に、あいつは重めの木剣で訓練していたんだ。それを持っていけ」
「ありがとう! それじゃあ、行ってきます」
「あぁ、無理はするなよ! わかっているだろうが、夕暮れには帰るんだぞ!」
村を出て離れていくアルトの姿に、ナートは目を拭った。
「ねぇ、あの門番さん。村を出るって言ったらすごく驚いてたけど、どうして?」
「実は、ティトとの事があって以来、村の外に出れなかったんだ。また、魔物に会うんじゃないかって怖くて」
「そうだったの。大丈夫?」
心配そうに覗くミーナに、もう大丈夫と返し言葉を続けた。
「それに今は、やり遂げないといけない事がある」
そう言ったアルトの手は微かに震えていたが、ミーナは見なかったことにした。
「今、歩いてるこの道をモルさんと走っていたんだ。その後に森に近づいた所で未来予知が途絶えた」
話ながら歩いて行くと森が見えて来た。久しぶりに来たアルトの鼓動はいつもより早かった。
「ここを進んだら、池があるんだ。そこで魔物と会って・・・」
片手で剣の柄を握り森へ入ろうとしたアルトだが、急に立ち止まった。まだ森へ入ることへの恐怖があるのかとミーナは思ったが違っていた。
「こっちから父さんとモルさんが来る」
「アルト?」
モルがやって来た。
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