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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第二部:殿上の陰謀 第一章:暗闇の弓矢
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村への潜入

 アルトとマードックは道を引き返し、村から離れた所で馬を止めた。


「ここからは歩いて行こう。村に入ったら手分けをして村の様子を見る。夜になったら、ここに集合だ」


「はい。それでは」


 マードックと別れ、アルトは村に潜入していく。マーラを使い用心深く村を探るとアルト達の予想の通り、村には若者と子供の姿が無かった。無人だと感じた家に忍び込み観察する。


(荒らされてる。でも、置いてある物は綺麗だ。最近、人がいなくなったのかな?)


 すると、家の外に人の気配を感じた。年配の村人がベンチに座り話し合っていた。


「リンドから衛兵が来たらしいぞ」


「衛兵。この前のか?」


「いや、十人くらいの集団らしい」


「十人! でも、今いないって事は・・・」


「あぁ。そう言う事だ。多分、あいつらにも知られているだろうな」


 一人の老人が頭を抱える。


「どうして・・・」


 アルトはその会話を聞き、この村に秘密がある事を確信した。そして、秘密を知っていそうな二人の老人の内、頭を抱えた老人の後を追う。

 老人達はしばらく会話をして別れた。夜までにはまだ時間がある。老人は家に戻ると外の椅子に腰かけた。外を見つめ、ボーッとしている老人にアルトは姿を現した。


「誰じゃ?」


「教会騎士のアルトです。この村について話を聞きに来ました」


 アルトの言葉に老人は驚き立ち上がって、周りを見てからアルトを急いで家に入れた。ドアを閉めてアルトに振り返る。


「誰かに姿を見られたか!?」


「落ち着いてください。誰にも姿は見られていません。俺がこの村に入ったことも気付いてないでしょう」


 老人はドアに寄り掛かりながら座り込み頭を抱えた。


「何で教会騎士がいるんじゃ」


「今日、ここに来た衛兵隊と共に来ました。村の様子がおかしいと思って衛兵隊と別れて調べていました。若い男女と子供がいないみたいですが、この村に何があったのですか?」


 老人は話そうか迷っている様子だった。アルトを見上げては口を開き、また閉じる。


「・・・もしかして、獣人ですか?」


 老人は目を見開き、アルトを見る。


「獣人がこの村に?」


「・・・あぁ。この村に二人の獣人がいる」


 老人は意を決したようにアルトにこの村に起きた事を話した。


「数か月前、村が獣人に襲われたんじゃ。大勢の獣人に村は占領された。その後、若い男女と子供はどこかに連れ去られた。村に残った獣人はわしらが余計な事をしないように見張っておるんじゃ。何かすれば連れ去った連中を殺すと言われて」


 震える体を抑えながら、涙ながらに話すとアルトに願った。


「孫を、娘を、助けてくれんか」



 ***



 夜。村はずれ。アルトは老人から得た情報をマードックに報告する。


「獣人に支配されていたのか。誘拐された人達も気になる。もしかしたらウェールドの誘拐事件にも何か関係があるのかもしれない」


「獣人を捕らえますか?」


「あぁ。居場所は集会所だったな。襲撃して取り押さえる」


「はい!」


 二人は再度、村に忍び込み集会所を目指す。暗闇が村を覆う中、集会所の明かりは目立った。中には話声が聞こえる。どうやら獣人達は酒を飲んでいる様だった。集会所の入口にアルト達は張り付き、剣を鞘に納めたまま紐で括り抜けないようにする。集会所の中に他の存在が無い事を確認してマードックと目を合わせ、突入をはかる。

 マードックが扉を開けてアルトが中に入る。アルトに気付いた獣人達は急いで武器を取ろうとするが、その瞬間にアルトが衝撃波を放ち獣人達を壁に打ち付ける。怯んだ隙にマードックも中に入り、真っ直ぐ獣人に向かう。


「くそ!」


 武器を取れなかった獣人達は、生来の身体能力でアルト達に抵抗する。素早い拳がアルトを襲うが、マーラの感知者として訓練して来たアルトには無意味な攻撃だった。拳が来る前に鞘に納めた剣で獣人を叩きつけて気絶させた。マードックの方も相手を気絶させていた。

 獣人達を厳重に縛り、アルトは騒ぎに気付き集まり出した村人達の元に向かう。そこには、小隊の対応をした老人がいた。


「あんたは、衛兵と一緒にいた教会騎士の・・・。獣人はどうなったんだ!?」


「我々が取り抑えました。今は気絶しているので目を覚ましたら、この村の若者や子供の行方を調べます」


「そうか。ありがとう・・・」


 老人は涙を拭き、他の村人に知らせると去って行った。



 ***



 朝方、目を覚ました獣人達は頑なに若者や子供達の居場所を話そうとはしなかった。想定内の事だったのでマードックはある技を使った。獣人の頭に手を乗せて意識を集中する。マードックの行動に警戒していた獣人の様子が変わっていく。鋭くマードックを睨んでいた目は遠くを見るようなボーッとした目に変わる。


「この村の若者と子供はどこに連れて行った?」


 マードックが問いかける。


「・・・ダボンの町。北。洞窟」


「ダボンの町の北にある洞窟か?」


「・・・あぁ」


「ウェールド地方の子供達の誘拐はお前達の仕業か?」


「おい! 喋るな!」


 仲間のもう一人の獣人が叫ぶ。


「・・・あぁ」


 マードックはアルトと目を合わせる。


「・・・ウェールド地方で誘拐した子供達はどこにいる?」


「・・・ダボンの町。北。洞窟」


「この村で誘拐した人と一緒に居るのか?」


「・・・知らない」


「何故、誘拐した?」


「・・・知らない。うっ」


 獣人の顔が痛みを現した所でマードックは頭から手を離した。すると、獣人は力が抜けたように寝込んだ。その様子を見てもう一人の獣人は、マードックに叫ぶ。


「お前ら、こいつに何をした!?」


 マードックはその叫びを無視してアルトと話す。


「あの言葉だと、この村の若者達とウェールドの誘拐された子供達は同じ場所にいるが、別の区画に分かれている意味にも捉えられるな」


「はい。それと洞窟は中が広いようにも思えますね」


「そうだな。別れた小隊と合流して、協力を仰ごう。この村だけが誘拐の被害に遭っているとは思えない。それと、情報をもっと聞きだそう」


 マードックは無視していた獣人の方を見た。


「やめろ! 何する気だ!?」


 マードックの手が近づくと、縛られて抵抗できない獣人は頭を精一杯振って触られないようにする。


「アルト。頭を抑えてくれ」


「やめてくれ!」



 ***



 アルト達は、小隊に合流すべく更に西へと馬を駆けさせた。

 獣人の情報では壊滅したダボンの町からリンドまでの村は獣人に制圧されていた。それぞれの村の若者や子供はダボンの町の北にある洞窟へと連れて行かれた。また、村には村人達を監視すべく見張りが着けられていた。


「小隊が無事だと良いですが」


「あぁ。あの村みたいに見張りが二人なら小隊でも対応できるだろうが、急いだ方が良いな」


 しばらく走らせていると煙が上がっているのが見えた。駆け付けると小隊がいた。衛兵の一人がアルト達を見つけると小隊の隊長ダラーが来た。


「騎士殿! ご無事でしたか!」


「これは獣人の襲撃ですか?」


「はい。寝込みを襲われました。そちらにも獣人が?」


「あぁ。二人いた」


「こちらも二人でした。全員、斬りましたが衛兵が三人やられました。それと村人から聞きだした情報ですが・・・」


 それからマードックとダラーはお互いの情報を共有した。その結果、ここから西のもう一つの村を開放すべく生き残った小隊と共に向かう事になった。この状況をリンドに伝えるために伝令が向かった。

 アルト達は最後の村へと向かった。

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