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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第二部:殿上の陰謀 第一章:暗闇の弓矢
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新たな世界

 ノーラ地方のアカウィル村で神聖な儀式が行われていた。司教は福音書を開き、聖なる言葉を紡ぎ最後の一節を話した。


「ここに、我が名において二人の教会騎士の誕生を祝う。汝らの元に、サドミア様の祝福とプルセミナ様のご加護がありますように」


 二人の若者は跪いた。


「我が剣は、教会の守護。我が心は、鉄の決意。プルセミナ様のご加護を賜らんことを請い願います」


 教会騎士アルトが誕生した。



 ***



「おめでとう!」


「おめでとうございます! アルトさん、セレスさん!」


 教会騎士に任命された夜、アルト達はメアリーとソフィアに祝福を受けていた。お祝いという事もありご馳走だ。


「ありがとう。二人共! まさか、マリーダ伯爵が早く帰れるように手を回してくれるなんて思っても見なかったよ」


 意外な人物の助力にアルトもラーグも驚いた。しかし、早くエストに帰らないといけなくなったのは二人共に残念に思った。

 アルトとラーグ。二人にとってウェル・バーンズ司教との出会いは、貴重な体験となった。プルセミナ教会の教えや体制を利用した、選任貴族や教会関係者の傲慢さと行動。

 非選任貴族出身のラーグはともかく、平民から教会騎士団に入り様々な場面を見てきたアルトにとって教会とは何か、正義とは何かを考えさせられて来た。レバレスに取り憑かれた仲間のリークトを斬ったのは事実だが、そこから濡れ衣を着せて処刑をされそうになった。そうやって仲間の死を利用して別の仲間と自分を処刑しようとした選任貴族と教会。平民に対する仕打ちだけではなく、これらの行動を鑑みればアルトが大陸を治める教会に不信を抱くのは当然の事だった。


 そんな時にウェル・バーンズ司教と出会った。貴族の立場を越える存在である司教でありながら、今の教会の体制に批判し、教えの解釈を様々な見方で説法する。その影響はアカウィル村の人々を見ればよくわかる。この教えや考え方が広まれば、この大陸をより良い場所に変えれるのではないかと感じた。それはアルトだけではなく、ラーグも同じ考えだった。


 ラーグは非選任貴族で大陸南部の盟主という貴族の生まれで、選任貴族とは敵対関係にある。そして宗教の面では、表立ってはプルセミナ教会に従っているが、星々の王マグナスを信仰する『星の民』として裏では対峙する関係にある。そのラーグの感情で言えば、『南部さえ良ければいい』となっていた。そんなラーグにバーンズはアカウィル村の村人との生活を通して、教会の可能性を見せ、ラーグは可能性を感じた。ルーダム山地でのアルトの行動とバーンズの教会の可能性。偶然、重なったこの二つの影響でラーグの心境は変わりつつあった。


 二人の若い騎士達にそんな光を灯した司教の下から去るには残念に思った。だが、二人は教会騎士になったのだ。新たな世界で教会騎士として活躍していかなければならない。


「司教様、お世話になりました」


「猊下の教えを胸に教会騎士として励みたいと思います」


 二人はバーンズに礼をした。バーンズは白い髭を撫でながら目を細めた。


「いやいや。最後に二人に会えて良かったよ。こんな機会は二度と来ない。私の教えを受け入れてくれてありがとう」


 三人はワインが入ったコップを当てて乾杯をした。


 翌朝、アルト達はザクルセスの塔へ帰る準備をした。内紛も収まり、教会騎士になったからにはなるべく早く帰る方が良いとバーンズに勧められた。名残惜しくもあるが、アカウィル村を去る時が来た。


「新年早々だが、下級騎士になると上級騎士の下へ配属される事になる。早く合流しておくといい。そうしないと上級騎士も任務へ行きにくいからね」


「わかりました。色々とお世話になりました」


「それじゃあ、私はノーラムまで二人を送っていくね!」


「三人共、気を付けてね! その、アルトさん、私とお母さんを助けてくれてありがとうございました! またお会いしましょう!」


 ソフィアは最後にアルトに別れを告げた。それを見たメアリーは目を丸くさせたがニヤニヤ笑い二人を促し、旅に出た。



 ***



 数か月後。


 馬を駆ける二人は、徐々に追いつく禍々しい気を放つ者へと剣を振り上げ斬りった。痛みに苦しむその生き物は倒れて体が崩壊し始めた。


「よくやった、アルト!」


「はい! これで、予定領域のスピナーは掃討しました。計画通り、この先の森に入りますか?」


「あぁ。森で魔物を召喚している奴を倒そう」


 焼けた肌と濃褐色の髪の男はアルトに指示を出し、二人は馬から降りて薄暗い森へと足を踏み入れた。


 アカウィル村から教会騎士団本部ザクルセスの塔へ帰還したアルトとラーグは、仲間達との再会を喜び合った。アカウィル村や教会騎士になった事やそれまでの話をして、その日は過ぎた。後日、下級騎士アルトは上層部による決定によって師匠をつけられた。それが、焼けた肌と濃褐色の髪を持つ上級騎士マードックである。

 マードックはマーラについて研究をする上級騎士で、その独自の感知力のもと、体の中に宿るマーラだけではなく、この世界『リンドア』に満ちているマーラの存在を感じ取れる。アルトの不思議なマーラの使い方についての研究と、最近報告に上がった魔物が使う、いわゆる『魔法』についての調査を任務の一つとして、アルトの師匠になった。


「マスター・・・」


「あぁ。いるな。他の組が来るまで様子を見ようか」


 アルトとマードック。それぞれ独自のマーラの感知で、選任貴族領内で発生した魔物の大群の首謀者がいる事がわかった。今回、魔物の大群とあって上級騎士と下級騎士の組み合わせで三組が作戦に参加した。事前の打ち合わせで、それぞれの領域の魔物を掃討したら、中央部の森に集結する手筈となっている。


 しばらくすると、次第に人が集まり予定通り森を半包囲する形で教会騎士達は集結した。


「アルト、集中を乱すなよ。マーラを安定させながら進むんだ」


「はい。やってみます」


 アルトは深呼吸してマーラの常時発動をする。

 これまで何度も魔物と戦う経験をしてきたアルトだが、今でも魔物と戦う緊張はある。だが、それは恥ではない。相手は容赦などしてくれないのだ。やるかやられるか。一手早い方が勝つのだ。


 そのまま、森の中央部に近づくと、二人は止まった。周辺のマーラに乱れがあるのだ。辺りを見渡すと、他の組の教会騎士達も来ていた。

 周りと息を合わせ、魔物の発生の元凶に飛び掛かった。教会騎士専用の剣であるスバラ鉱の剣が襲い掛かった。


 こうして、マードックとアルト。二人の師弟は各地の任務を行っていく。アルトは新たな世界を行く。

読者のみなさまへ


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