表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第三章:赦しへの旅路
123/283

捜査

小説更新について。

適時、更新していきますのでよろしくお願いします。

引き続き、お楽しみください。

 マリーダ伯爵とワイド司教からホワイトランディングで起きている誘拐事件の解決を依頼、言い方を変えれば命令を受けたアルト達は一旦ソフィアを連れてトルアーの宿に戻った。宿へ戻る道中、ソフィアに事情を話した。


「大変な依頼を受けましたね。でも、衛兵さんでも解決できないのにお二人でどうやって解決すればいいのか」


「そうだね。・・・まずは、あの衛兵について調べるのはどう?」


「確かに。あの衛兵が尾行者を牢獄に容れたのか気になるな」


 二人はニックスダムに行く途中に捕まえた男とそれを連れて行った衛兵に疑問を持っていた。


「ソフィアさんはトルアーさんの宿に行こう。ソフィアさんみたいな見た目の人が襲われてるから外には出歩けないけど我慢してくれる?」


「はい。二人の邪魔にならないように宿にいますね」


 宿にソフィアを連れて行った後、二人は衛兵隊の詰所に行った。以前、ラーグが逮捕された事もあるので話はアルトだけで行った。


「すみません。お尋ねしたい事があるのですが」


 詰所の前で門番をしている衛兵に声を掛けた。


「見ない顔だな。なんだ。今、衛兵隊は事件で忙しいんだ。くだらない事じゃないだろうな?」


 門番をする衛兵は腕を組みアルトに鋭い眼差しを送った。顔を覚えられていない事に少し安心した。


「その事件って金髪の女性の誘拐ですよね。実はさっき、マリーダ伯爵から誘拐事件について解決するように依頼をされまして。こちらが証明書です。それとニックスダムに行く途中に連れの金髪碧眼の女性が攫われそうになったんです。その時に衛兵さんが襲って来た人を逮捕してくれたのですが、その後どうなったのか気になって」


 衛兵は伯爵からの証明書を読んだ後、ここで待つように言って詰所に入って行った。しばらく門前で待っていると衛兵が出て来た。


「お前、中に入れ。衛兵長が呼んでいる」


 肩に積もった雪を払い、アルトは衛兵詰所に入った。案内されたのは見覚えのある扉だった。


「衛兵長、連れてきました!」


 扉越しに入るように言われて中へ入った。


「ん? お前はいつかの南部人の連れじゃないか。まだ、この町にいたのか。いや、それより伯爵からの証明書は読んだ。とりあえず、誘拐犯と衛兵についての話を聞かせろ」


「はい。俺達がニックスダムに行くところで・・・」


 アルトは衛兵長に尾行について、その後の逮捕と衛兵について話した。衛兵長は話を聞き終わると唸った。


「今日、逮捕された奴はいない。その衛兵がグルか賄賂で逃がしたかもしれんな。その衛兵の名前や特徴は覚えているか?」


「名前は知りません。聞くと関係ないと言ってすぐに尾行者を連れて行きました。特徴は、他の衛兵に比べて痩せているように思います。頬がこけている人でした」


 衛兵長はその特徴を聞き、考えていた。しばらくの沈黙の後、衛兵長は地図を出した。


「お前、この家に行って中を調べてみろ。ここは最近、退職した衛兵の家なんだ。お前が言った衛兵の特徴に合うのはいない。もしかしたら、辞めた衛兵が衛兵の服を着ていたのかもしれない。そいつは、病で衛兵隊を辞めたんだが、もしかすると思ってな。それと侵入は街の連中には見つかるなよ。目立たずにやるんだ。見つかったら建前上は逮捕しないといけなくなる」


「わかりました。とりあえず、その家の状態とか見てみます」


 アルトは詰所から出てラーグに衛兵長との話を伝えた。


「なるほど、不法侵入してコソ泥して来いか」


 ラーグは皮肉を言った後、何かを考えていた。


「・・・知り合いにそういう仕事が得意な奴がいたな」


「え、この町に知り合いがいるの?」


「あぁ、宴会をした仲だ」


「・・・・・・まさか」


 ラーグは悪い顔をしていた。



 ***



「ラグ様、お久しぶりです。まさか、俺を牢から出してくれるなんて、ありがとうございます!」


 男は泣きながら、地面に頭をつけていた。


「久しぶりだな、モグド。お前を釈放させたのは、ひとつ頼みがあるからだ」


「はい、はい。俺がお役に立てるのなら喜んでさせてもらいます」


「よし。確か不法侵入で捕まったって言ってたよな。その力を貸して欲しい。町の重大事件に関わる事だ」


「誘拐事件の事ですね。わかりました。コソ泥は俺の専門です。ご協力させてもらいます!」


「ありがとう。ちなみに失敗しても、建前上は逮捕されるだけだから安心しろ。それでだ・・・」


 ラーグは前回ホワイトランディングに来た時に牢屋に入れられた時の男、モグドを牢屋から出して不法侵入の計画を話した。


「わかりました。その元衛兵の家を一日見張ってどういう生活をしているか観察します。その後、お二人の元に行きます」


「あぁ、頼んだぞ。これは支度金だ。飲み過ぎるなよ」


「ありがとうございます!」


 モグドは金を懐に入れて走ってアルト達の元を去った。


「まさか、牢屋にいた人を使うとは思わなかった」


「こういうのは専門家に任せればいいさ。俺達は誘拐された人達の話を聞いてみよう」


 アルトは衛兵長から被害者のリストを渡されていた。話を聞いて何か感じる物はないか調べるためだ。



 ***



 誘拐された金髪碧眼の女性はどれも教会関係者だった。つまりは選任貴族出身という事だ。尋ねた最初は選任貴族らしい態度で追い払われそうになったが、この町の貴族の頂点、マリーダ伯爵の命令だと伝え証明書を見せると態度がガラリと変わった。


 話の内容は、どれも一緒だった。

 教会への奉仕に行って帰ってこなくなった事。最初は遊びに行っているものだと思っていたが、いつまでも帰ってこないので教会を尋ねると教会にも来ていない。

 ここで誘拐されたのだと思い至った。最初は選任貴族である自分達から身代金を求められるものとばかり思っていたがそれも無く、一切手掛かり無く消えてしまったのだ。最初の誘拐に気付いてから町の門番は増やされて警戒に当たっていたが不審者やそれっぽい人は見かけなかったので町の中にいると考えられた。

 手がかりも無くこつ然と消えてしまった中、一つだけ例外があった。被害者の中で唯一、平民出身の被害者が最近出たのだ。その人はノーラ地方では珍しくない敬虔な信徒で、仕事の片手間で教会に行ったきり帰ってこなくなった。家の人や職場の人も誘拐事件の事は知っていたが、貴族の話だと思っていたので、まさか平民出身の女性が誘拐されるとは思ってもいなかった。


「誘拐犯は身分関係なく、金髪碧眼の女性を狙っている?」


 まだ、平民の被害者は一件しかないが可能性としてはあった。

 アルト達は教会から誘拐された女性達の家までの道を辿って行った。それを地図に書き込んでいくと、一つの可能性に気付いた。


「誘拐された可能性の道の近くに例の家がある・・・」


 病で退職した元衛兵の家の近くにあったのだ。


「疑いの可能性は十分に出たな。この話を衛兵長に話してみよう」



 ***



「話はわかった。だが、部下達を貸そう」


 衛兵長はアルト達の話を聞き入れて衛兵を派遣してくれる事になった。


「ただし、条件がある。証拠を持って来る事だ。疑惑の段階で積極的に元衛兵の家を捜査するのは、衛兵隊の中でも抵抗がある。あいつの家の周辺に衛兵を隠して証拠を見つけ次第、衛兵達を突入させる」


「わかりました。今、俺達の仲間が家を見張っているのでその報告を受け次第、動きます」


 衛兵長の話が終わり、アルト達はソフィアのいるトルアーの宿へ戻った。


「あ、おかえりなさい。捜査はどうでした?」


「的は絞れたよ。明日、その場所に行くことになった」


「そうなんですね。良かった。宿に来る人に話を聞いてみたら皆、不安に思っていたみたいで。でも、二人はすごいですね。一日で目星がつくなんて」


「皮肉にも、襲われそうになったのが手掛かりになった。明日でケリをつけてアカウィル村に帰ろう」


「はい! それじゃあ、夕食にしましょうか」


 ソフィアは厨房へと行き、アルト達の食事の準備をした。

読者のみなさまへ


今回はお読みいただきありがとうございます! 


「面白かった」


「続きが気になる」


と思われた方は、よろしければ、広告の下にある『☆☆☆☆☆』の評価、『ブックマーク』への登録で作品への応援をよろしくお願いします!


 執筆の励みになりますし、なにより嬉しいです!


 またお越しを心よりお待ち申し上げております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ