教会騎士 キケロ・ソダリス
「待っていたよ。二人とも」
黄金色に輝く瞳を細め優しい笑顔を見せる男は、以前からアルトとミーナを知っている様な口ぶりだった。
歳はモルやマールと近いくらいか。黒髪は晴天に照らされ光を反射し、黄金色の瞳は淀みなく輝く。端正な顔つきから浮かぶ笑顔は、それだけで人を安心させる。頼っていい。自分がいる。何も怖くない。居てくれるだけで勇気づけられる存在。
まるで本に出てくる『勇者』のようだった。
さきほど感じていた違和感など、急に無くなったように穏やかな気持ちになる。
アルトはその存在感に息を呑んでいた。隣を見るとミーナもどこか惚けたような様子だった。
そんな様子の二人に男は苦笑いを浮かべ、パンッと手を叩いた
「二人とも、しっかりして。時は待ってくれないよ?」
「「!」」
二人はビクッと肩を震わせて、目の前の男を改めて見た。
「よし! それじゃあ、話し合おうか。君達の事を」
「その前に、あなたは誰なの? 私達の事って?」
「知っているはずだよ。赤茶色の髪の少年の言葉が、君達に答えを与えた」
ジェットの事だ。
「それじゃあ、教会騎士!? 本当に未来が見えるのね!」
「そうだよ。未来予知は全員が出来るわけではないけど。私の友人で私以上に鮮明に未来が見える人もいる」
そう話した男は、やはり最初に挨拶を受けた時みたいな懐かしむような目でアルトを見た。
「まずは自己紹介をしようか。私はプルセミナ教会、上級騎士キケロ・ソダリス。よろしく」
優雅に一礼をするキケロ・ソダリスを見て、二人は驚いた。
「名字付き! 失礼しました。私は、この村の隣にあるリンド村の宿屋の娘、ミーナと申します」
「ゴル村の薬師の息子、アルトです!」
相手の正体を全て理解したアルトとミーナは慌てて自己紹介をする。一礼するミーナを見習って、どうすればいいかわからないアルトも同じように一礼をした。それを見たミーナは頭を下げたまま小声で『違うよ!』と囁いた。
「ははは。二人とも顔を上げて。アルト君、男性は貴族への一礼はこうするんだ」
キケロは、最初とは違う一礼をしてアルトに見せた。
「まぁ、貴族なんて主要都市と聖地コバクくらいしかいないからね。知らなくて当然さ。気にしないでいいよ。・・・・・・それに二人は初めて私と会ったわけだが、私の方は随分前から、君達と会っているんだ。畏まらずに、キケロと呼んでくれ」
「か、かしこまりました! キケロ卿!」
ミーナの上擦った声にキケロは笑い、二人を丸太椅子に勧め自分も座った。
「晴天の佳人さん、難しいなら、キケロ『様』にしてくれないか」
顔を赤くしたミーナは強く頷いた。
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