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教会騎士アルトの物語 〜黎明の剣と神々の野望〜  作者: 獄門峠
第一部:教会騎士 第一章:夢
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もう一人の来訪者

 

 アルトとミーナはオーロンを迎えに門番小屋を目指していた。途中、すれ違う村人たちが興味深そうにミーナを見ながら、二人には聞こえない程度の声で話し合いながら通り過ぎていく。

 何故か、すれ違う相手が女性が多いことに疑問を持ったが、気にする事なく歩いていた。

 しばらくすると、知り合いが声をかけて来た。『からかいのジェット』だ。


「よっ、アルト! すごい美人を連れてるな。お客さん?」


「そうだよ。リンド村から来たんだ」


「はじめまして、ミーナといいます」


「ジェットだ。よろしく! 親父達が青い髪の美人が来たって話てたけど本当に美人だな。アリア姉と並んでも違和感ない」


「そんなに美人って言われると照れちゃうな・・・」


 美人、美人と連呼するジェットに少し赤面しながらミーナは呟いた。確かに美人だけどと思いながら、『からかいのジェット』の異名を持つこの友人が、失言をする前に何とか離れようと考えた。


「ジェット、今、父さんを迎えに門へ行ってるんだ。悪いけど、もう行くよ」


「なんだ、もうちょっと話したかったのに」


「ごめんなさい。オーロンさんに大事な用事があって」


「わかった。それにしても今日は、美女といい、美男といい、村に珍しい人が来るよな~」


 立ち去ろうとしたアルト達に、ジェットが気になることを言った。


「村に誰か来たの?」


「あぁ、この先に男がいるけど、すっごくカッコイイ! 村の女が声をかけたらしいんだけど聖地コバクから来た旅人だって。黒髪に金色の目で紋章が入った上等なローブを着て、高そうな剣も持って、まとう空気が違う。絶対に金持ちだ。話しかけた奥様方がポヤ~としてた」


「もしかして、教会騎士じゃない?」


「教会騎士? なんだそれ?」


「プルセミナ教会に仕える騎士様のこと。魔物とかを討伐する人達よ」


「でも、旅人って言ってたらしいぜ」


「教会騎士って各地に旅をしながら仕事してるから、それで旅人って言ったんじゃないかしら。ローブは黒色か灰色のどちらかで銀の糸で太陽の紋章が書かれていなかった?」


「言われてみたら、黒色のローブに銀の糸で輝く太陽を思わせる紋章だった」


 やっぱりと呟いたミーナは、アルトに小声で『前に話した未来を予知できる人達よ』と教えてくれた。


「『みんなで貧乏になろう教』の騎士が、あんなに金持ちっぽいなんて許せねえな! こちとら、高い教会税を払ってるってのに!」


 ジェットの悪口に、流石だなと思いながら、『未来を予知できる人』にアルトの関心は向かった。


「アルト、滅多に会える人じゃないから会ってみようよ! 面白いを聞けるかも!」


 ジェットと別れたアルト達は門に向けて道を真っ直ぐ進んだ所にいる『未来を予知できるかもしれない男』に会いに行った。


 すれ違う人達は興奮したような雰囲気を放ちながら通り過ぎる。女性は頬を赤く染め、男性はどこかうわの空。

 進むと道の端に子供達が集まって座っていた。そして、その中心に座っている人を見てアルトは背中にゾクリと走るものを感じた。この世界のものじゃない。存在に違和感を感じさせる。そこだけが異空間のような感覚。本能がそう告げる。


 その男は両手から光の粒を発生させて、それが集まり虹を作り様々な形へと変えていった。犬、馬、ぺコル。そして鳥になった瞬間に、虹色の鳥は羽ばたいて子供達の周りを飛び回った。鳥は一人の子供の肩に止まると、ゆっくりと光の粒へとバラバラになり消えた。

 子供達は大きな声でもう一回見たいとおねだりをしていたが、男は遠く離れているアルト達に顔を向けると、もう終わりという風に手をヒラヒラさせながら、子供達を解散させた。


(あの光の粒、ティトが夢の中で出てくるときと同じだ)


 興奮止まない子供達が通り過ぎ、道には男とアルトとミーナだけになった。


「――ト、アルト!」


「ッ!」


 ボーっとしていたアルトをミーナに揺さぶられ、意識を戻した。


「アルト、大丈夫?」


「大丈夫。さっきの虹色の鳥を見て驚いてた」


「すごかったね! 物語で出てくる魔法使いみたいだった!」


「・・・ミーナは、あの人を見て何か感じた? 違和感みたいな」


「違和感ではないけど、雰囲気がある人だなって思ったよ」


「・・・」


「それより、あの人こっち見てるよ。待ってる様子だけど、行く?」


「うん。行こう」


 二人を見て待っている男に近づいていくと、丸太の椅子から男は立ち上がり二人を優しい笑顔で迎えた。


「待っていたよ」


 黄金色に輝く瞳は懐かしみや、どこか嬉しさを含んでいた。

読者のみなさまへ


今回はお読みいただきありがとうございます! 


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