序章 雪山の中で
第一部第三章の連載を始めます!
適時、更新していくのでよろしくお願いします。
引き続き、お楽しみください。
『アルト、ありがとう』
優しい声が聞こえる。だが、目の前の光景は受け入れがたいものだった。
自分が斬った傷跡。冷たくなったリークトの体。崩れていくリークトの体。
最後の言葉を残して自分の肩を握る温もりの消失。
悲しい。とても悲しい。その気持ちでいっぱいになり彼の名前を叫ぶ。
「・・・・・・リークト!」
そこで夢から覚めた。冷たい風が洞窟を冷やすが、今いる場所はなけなしの木材を集めた焚火で温かい。アルトは身に着けているバングルを握り息を整える。
「ん。・・・アルト、うなされてたけど大丈夫?」
金髪の女の子がアルトの様子を尋ねる。
「うん。大丈夫。ちょっと嫌な夢だったんだ。ラーグの様子はどう?」
「落ち着いてる。寝苦しそうだったけど、熱が引いてきたのかも。アルトも体調には気を付けてね。何も無ければ、あと一日だから」
「あぁ。メアリーも寝ておくんだよ。君に何かあったら、家族にも申し訳ないし」
「あはは。その前にアルト達は遭難して死んでるよ」
彼女の言葉は決して冗談ではない。アルトとラーグだけでは間違いなく今の状況は遭難して、マダルモア行きだっただろう。
「それにしても、ラーグがこんなに狙われているなんて。厄介なお客さんを引いたなー。イケメン達と旅が出来るって浮かれてた自分を殴りたいよ」
雪山に入り、三日目。陰謀渦巻くこの雪山越えは何も無ければあと一日で終わる。何も無ければだが。
アルトはラーグの額を触り熱の様子をみた。
「ラーグ、頑張れ。あと一日だ」
激しい吹雪がこの地に住む生命を刈り取っていく。そして、アルト達はその命が刈り取られないように体を温めるのであった。
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