エピローグ 世界を覗く者
薄い青白い光が洞窟を照らしていた。この暗闇の洞窟の中で、青白い光は唯一の明かりとなっていた。そしてその光は周囲にいる人物たちを照らす。
ローブとフードを被った二人が両手を台の上から立つ青白い光へと手をかざし、光の粒マーラを放っていた。そしてもう一人は台に手をつきながら光の中へと頭を入れている。台の上から登る光は頭を入れる人物を包み。
「くっ!」
マーラを台の光へと放つ一人が苦しそうに呻く。
「大丈夫か?」
隣の男は呻いた男に聞く。だが、聞いた男自身もマーラを送りすぎて眩暈がしていた。
「大丈夫です。どのくらい経ちましたかね?」
「四十分くらいです」
陰に隠れていた女性が教える。
「マスターの様子に変わりはありませんか?」
「はい。微動だにせず、むしろ心配ですね」
「一気にマーラが引っ張られる感覚がしたが、向こうでマーラを使ったのかもな」
「観てるだけなのにマーラを使う?」
「確かにマーラが大きく動く瞬間がありました」
マーラを送っている二人は徐々に余裕が無くなる。早く彼らの指導者が過去の世界から帰還してほしいと願っている。
しばらくして、ようやく願いが届いたのか光の中に頭を入れていた人物が顔を上げる。その人は老人の顔が彫刻された仮面をつけていた。仮面はひび割れいつ壊れてもおかしくない。
「マスター?」
最初に呻き声を上げた男が、指導者に呼びかける。
「どのくらい経った?」
「一時間です」
「そうか。一時間で千年か。二人共、もうマーラを送らなくてもいい」
「はい」
呻き声を上げた男が倒れるように床に座った。
「司祭、癒してやってくれ」
「はい。これで汗を。水を持ってきます」
司祭と呼ばれた女性は暗闇の中、走って水を取りに行った。
最後の男は眩暈を堪えて台に手をつきながら聞いた。
「それで、収穫は?」
「あった。まさか、あの『指輪』があいつの手に渡されていたとは思わなかった」
「指輪? 指輪を探していたのか?」
「いや、指輪も必要になった。……君」
「は、はい!」
遠くから三人の男と一人の女を見ていた兵士が呼ばれた。
「大公に伝えろ。計画には、二つのものが必要となった。一つは要塞都市リンドにいる女性だ。大公はそちらを奪ってきて欲しい。もう一つは我々が取りに行く」
「わ、わかりました。それで狙いの女性というのは?」
「要塞都市リンドの宿屋エイドで働いている娘だ。空の様に明るい青い髪と青い瞳が特徴の人物だ。名前は、ミーナだ」
「要塞都市リンドの宿屋エイドで働くミーナ。ちなみにそちらの目標をお聞きしても? 大公様は必ずお聞きになると思うので」
「こちらはバルドスの指輪を奪う。奪うのに時間がかかるから、彼女を抑えたら大公の隠れ家で隠しておくように。手に入れ次第、伝令を送る。それと、大公にはその女性に手を出すなと伝えてくれ」
「かしこまりました」
一通りの言葉を聞いた兵士は走って洞窟を出て、主に伝えに行った。
司祭は戻ってきて、仮面を受け取ろうとした。
「仮面をお預かりします。どうか、お休みください。星の勇者様」
「ありがとう。……それにしても、まさかお前が指輪を持っていたとはな。アルト」




