番外編 涼やかな川遊び
第一部第三章の準備の片手間に、第二章の番外編を適時、投稿します。
これはゴル村が壊滅してアルト達がリンド村へ移住して一年が経った夏の頃の話である。
***
「アルト君、この薬と布だけどノムさんの家に届けてくれる。効果は説明できる?」
「布に薬を染み込ませて腰に巻くと痛みを和らげて血の流れをよくするでしょ」
「正解! それじゃあ、頼むよ」
アルトはマールに渡された薬一式を持って、リンド村の先住民のノムお爺さんの家へと配達に出かける。
治癒院を出ると二人の女子がいた。こっちも先住民だ。
「・・・こんにちは」
「アルト君、こんにちは! 薬の配達?」
「はい。ノムお爺さんの家に行くところです」
「そうなんだ。それなら途中まで一緒に行かない? 私達、薬草の事をアルト君に教えてもらいたくて来たんだ」
「そうだったんですか。良いですよ。何の薬草ですか?」
三人は女子達が持って来た薬草を見せてアルトの説明を受けながら道を行く。
「アルト君、村の生活は慣れた?」
「はい。皆さんのお陰で家もすぐに建ててもらえて、家族みんな、この村の暮らしに馴染めています」
「良かった! ねぇ、アルト君は村で友達とかも出来た?」
「友達はミーナしかいないですね。あ、あとゴル村に一緒に来たジェットもいた」
「あ~、ジェット君。この前、木こりのおじさんに斧振り回されてたね・・・」
「何やってんだ、あいつ・・・」
恐らくは『からかいのジェット』の異名が発揮されたのだろうと推察した。一人の女子がそういえば、と切り出した。
「アルト君ってミーナと仲良しだけど、二人は付き合ってるの?」
「え!? いや、付き合ってないよ。友達だよ」
本当は好きだが、そんな本心をペラペラと言えるわけが無かった。アルトの言葉を聞いた女子二人がアルトの前に出た。
「それなら、私達とも友達になろうよ」
「私達、アルト君と友達になりたかったんだ!」
「え? あ、うん。いいよ」
「やった! それじゃあ今度、遊ぼうよ。この時期だと川が冷たくて気持ちいいんだよ!」
「そうなんだ。どっかで仕事の休みもらうよ」
「約束よ! それじゃあね!」
「バイバイ!」
「バイバイ」
二人の女子達と分かれて一人、ノムお爺さんの家へと向かう。
***
「って、事があったんだ。川遊びなんて、久しぶりだよ。あそこに生えてる草って頑丈だから、船でも作ってあげようかな。どう思う?」
二日酔い止めの薬の配達に宿屋に来たアルトは、この前の出来事をミーナに話ていた。ミーナはニコニコとしながら話を聞いていたが、その頭の中では、とある事でいっぱいだった。
「ふーん。良いと思うよ。それにしてもシノンとセクノが・・・。ねぇ、私も行っていい?」
「・・・うん。いいよ」
「どうして返事まで間が空いたの?」
「いや、ちょっと」
ミーナがアルトの目を真っ直ぐに捉えて来るので思わず逸らすと、どことなく不機嫌な雰囲気をだした。
(薄着を来たミーナと川遊び・・・)
高鳴る鼓動を悟られまいと、出されていた水を飲む。好きな人と川遊びが出来る。緊張もしてしまう。
「それじゃあ、休み取っておくね」
「わかった。今日も弁当ありがとう。店に戻るよ」
「うん。頑張ってね」
アルトが出て行った扉がしっかりと閉まったのを確認して、ミーナは頬を膨らませた。
「もう!」
自分の想い人は相変わらずリンド村の女の子に人気なので、ミーナは忙しかった。
***
「・・・ミーナも来たんだ」
「そうよ。アルトが楽しそうに話してたから、私も遊びたくなったの! お邪魔だったかしら?」
「ううん。そんな事ないよ。宿の方はいいの?」
「えぇ。今日は早くからお手伝いさんが来てくれることになったから大丈夫よ。さ、遊びましょ!」
アルトはミーナの薄着に目を奪われながら、緩やかに流れる冷たい川に、この時期に取れる果物を紐で縛って冷やしていた。
「皆、ズンカを冷やしておくから後で食べよう!」
「ありがとう、アルト!」
「ちょ!」
「ミーナ!?」
「・・・」
ミーナはアルトを抱きしめた。それに、シノンとセクノが顔を赤くする。
「二人共、どうしたの?」
「どうしたのって・・・」
「抱き着く、なんて」
アルトの側からミーナは離れずに二人の様子に首を傾げる。
「うん? あぁ、これ。ゴル村にいた時に私達よく抱きしめ合っていたの。ね、アルト?」
「あの時だけだろ! 離れろって」
顔を赤くしながらアルトはミーナの肩を掴んで体を離す。
「あはは。それでも、いっぱい抱き締めてくれたじゃない!」
「~~~っ。ほ、ほら、革で作ったボールを持って来たんだ。これで遊ぼう!」
「う、うん」
「ありがとう。アルト君ってそういうのも作れるんだね」
四人は川に入りながらボールを高く打ち上げながら遊ぶ、何故か自然とアルトミーナがペアになり、シノンとセクノがペアになった。
「アルト、そっち行った!」
「任せろ!」
「・・・」
「・・・」
ボール遊びを楽しんだ後は、冷やしたズンカを目隠しで割る遊びをやった。アルトはマーラを使えばすぐにわかるが、皆の声に従いながら割ろうとするが外した。
ミーナの番となったが、迷うことなくスッと進みズンカを割った。
「・・・ミーナ、すごいね。迷わずに割っちゃうなんて」
「ふふ。アルトの誘導が上手だったからね! ありがとう、アルト!」
「う、うん」
シャクシャクと皆でズンカを食べながら、村の話や料理、薬草や草船の話をした。アルトの隣をミーナは誰にも譲らなかった。女子二人はアルト達を引き離そうとするが、ミーナの力は強い。
しかし、シノンとセクノはアルトが教える草船を手伝ってもらいながら一緒に作り、アルトとの距離を縮める。
最後の船を流す時だけ四人は、この日一番仲良く楽しんだ。
「あー、楽しかった! 誘ってくれてありがとう。アルト」
「え? うん。どういたしまして」
「「・・・」」
シノンとセクノはアルトを細い目で見る。
「シノンとセクノもありがとうね!」
「私もとても楽しかったわ! 最後の草船、良かったなー。アルト君、また一緒に作ろうね」
「うん。いいよ。喜んでもらえて良かったよ! 店の裏にある葉っぱだともっと大きいのが作れるから、良かったらおいで」
「え、お店に来ていいの!?」
「うん、いいよ。暇なときだったら付き合うよ」
「・・・・・・アルト、マールさんのお仕事を手伝わないと!」
「え?」
「お母さんに聞いてない? 二日酔い止めの薬の売れ行きが良いから、頻繁に配送してほしいって依頼出すって。アルトに話てるのかと思ってた」
「いや、聞いてないよ」
「それなら、マールさんに伝えに行くのかもね。だから、悪いけど忙しくなるわ」
「そっか、二人共ごめん。聞いての通り忙しくなったから、また遊ぶ予定でも出来たらその時に持って行くよ」
「・・・ううん、気にしないで。アルト君も大変だね」
「ははは。ミーナのお願いなら仕方がないさ。頑張るか」
「ありがとう。アルト!」
ミーナはアルトに満面の笑顔を向けた。向けられたアルトは、好きな人の笑顔を見れて今日は来て良かったと思い笑う。
その笑顔を見た二人が遊びに誘ってくることは無くなった。
***
「お母さん、本当にごめんなさい!」
「もう、どうしてそんな事を言ったのよ?」
「えっとね・・・」
ミーナはミルテナにたくさん謝り、その理由を話してミルテナは納得してくれた。
川遊びの数日後、二日酔い止めの薬が頻繁に運ばれるようになった。新たな火種を抱えて。
***
「というわけなの。マールさん。お願いできるかしら?」
「ミーナさんが・・・。そうだったんですね。ミーナさんがお相手なら、僕も喜んで協力しますよ」
「ありがとう。マールさん。お礼に、薬を届けてくれる日にはお弁当を用意するわね」
「面白い!」「また読みたい」と思われた方はブックマークや感想をお願いします。
また下の評価★を貰えると、作者の励みになります。よろしくお願いします!




