目覚めと朝食
2025/3/4 現在、作品全体の改稿の準備をしています。人称視点の統一や、イベントの追加。人物名や地名の変更などがあります。メインストーリーに変更はありません。準備が完了次第、一気に改稿します。
改稿後は改めて報告します。
毎晩くり返される夢。何かを訴える声。夢で見るたびに掻き立てられる後悔。早く終わってほしいと願いながら、意識が浮上する。
「――ルト、―――アルト!」
ハッと目を覚まし、夢と現実が曖昧な頭で起こしてくれた母の声に感謝しながら、アルトは起きた。朝を迎え、涼やかな空気を吸い込み息を整える。灰色の瞳は力なく遠くを見る。その様子を母アルマは心配そうに見つめていた。
「また、あの夢を見たのね。大丈夫?」
ぼんやりとした頭で頷いて汗を拭き、母譲りの飴色の髪をかき上げる。もう大丈夫、と自分に言い聞かせるようにアルマに伝えベットから立ち上がった。汗まみれの体を拭き着替えをすまし、朝食のために居間へと行ったアルトを父オーロンが迎えた。
「おはよう。・・・顔色が悪いな。今日もか」
その立派な体格に似合わない不安気な顔をした父に、昔のことがあってから気まずく、目線が合わせられずにアルトは朝の挨拶をした。
「おはよう、父さん。夢を見たよ。でも、父さんがくれた薬で寝起きが楽になった」
「そうか。少しでも楽になったのなら良かった。在庫はたくさんあるから、欲しいときはいつでも言えよ」
筋肉でゴツゴツした体格からは想像できないが、父オーロンは村の薬師である。傭兵か盗賊と言われた方が納得できる体からは息子を気遣う雰囲気が漂い、アルトは申し訳なく感じる。
「さて、朝食にしましょ! 今日は、目玉焼きとパンとぺコルの塩漬けよ。アルトはハチミツもいるでしょ?」
二人に漂う気まずい雰囲気を払うように食事を持って来たアルマに、内心、感謝を伝え席につきハチミツを受け取った。
焼かれたペコルにハチミツを塗りパンで挟み、上に目玉焼きを乗せて食べる。肉厚なのにスッと嚙みちぎれるぺコルの肉に、肉汁の塩気に濃厚なハチミツの甘さ、白身がふわりとした絶妙な加減で焼かれた卵に、目覚めの元気をもらえて少し笑顔が浮かぶ。
その顔を横目で見たオーロンは、アルマに目玉焼きの焼き加減に文句を言って、アルマにトロっとした黄身をスプーンで奪われて、大人げないと言った。
アルトはどっちも大人げないと思いながらペコルのサンドイッチを食べた。
「母さん、いつもありがとう」
食器をアルマと片づけながら感謝を伝える。父とのやり取りにアルマが間に入ってくれるお陰で、なんとか日々を過ごせている。
申し訳なさそうなアルトにアルマは優しく微笑む。
「いいのよ。ゆっくり、少しずつ、お父さんと向き合いましょ。あんな事があったけどオーロンもあなたが大切なのよ。それは忘れないであげて」
「うん」
母の励ましを受け、一日が始まる。