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団傑戦隊キズナイジャー  作者: 岩ノ森
7/7

イエローサウンド!闇夜で遊ぶな子供たち!!(後編)

 「ホムラ、大丈夫?」

 「うぅ・・・」

 笛デビルの襲撃を受け、ドラゴンコンドルへ退避したキズナイジャー。その戦果はボロボロと言っていいものであった。

 子供たちは洗脳され囚われ、風鈴も操られ、ホムラは笛デビルの攻撃で負傷してしまったのだから。

 

 『早くメディカルカプセルへ』

 長官からの指令で、ナガレたちはホムラをメディカルカプセルへ寝かせる。

 「どれくらいで治りそう・・・?」

 『全身の骨にひびが入っている。最低でも3~4時間はかかるな』

 「へー、そんな短時間で。流石の科学力」

 「でも、子供たちを助けるには時間が足りなさすぎる」

 メグミは洗脳された子供たちを助けようと躍起になりすぎていた。

 「メグミ」

 「ごめん、ちょっとイライラしてて・・・」

 「やむなし。これだけの状況だから」

 メグミを諫めるナガレとライザだが彼女たちもかなり焦っていた。ホムラの容態もそうだが、囚われた子供たちの身を案じていたのだ。

 「長官、風鈴と子供たちの洗脳を解く方法はないのか?」

 『笛デビルを倒せば洗脳は解けるだろう』

 「つまり乗り込むっきゃないってわけか」

 「でも多分笛デビルも私たちに襲撃されて、アジトの場所を変えているはず。その場所がどこなのか・・・」

 『心配はいらない』

 長官の落ち着いた声が響いた。

 『奴の居場所なら割れている』

 

 

 

 「いそげいそげっ、急がないとまた逃げられちまう」

 俺と大岩さんは目的地に向かうため、夜の山道を急いでいた。

 「・・・・・・・・」

 「大岩さん?」

 大岩さんの様子がおかしい。先の戦いで疲れてしまったのだろうか。

 「大丈夫ですか?休みます?」

 「いや、大丈夫だ!早く子供たちを助けねえとな!!」

 大岩さんはいつものように朗らかに笑う。だが明らかに大丈夫じゃないのは俺にだってわかった。

 「大岩さん」

 「んー?」

 「無理しないで」

 「えっ?」

 「子供たちは助けなきゃいけないけど、無理したってしょうがない」

 レンたちにもよくあることだ。

 大丈夫って言ってる時が、一番精神的に大丈夫じゃない。

 「・・・・・このまま子供たちを助けられなかったら」

 大岩さんがその場にしゃがみ込み、重々しい口調でしゃべり始めた。

 「あの子たちの運命を握ってるのは私なんだ。さっきだってもっと私がしっかりしてたら子供たちを助けられて、風鈴も洗脳されてなかったかもしれない。弱気になっちゃいけないのに」

 そう話す大岩さんの声は少し鼻声になっていた。目は見えないが涙ぐんでるだろう。

 何でもかんでも背負い込んでしまうんだ。

 真面目で優しい。いいことだけど。

 俺は同じくしゃがみ込み、ライザさんに目線を合わせる。

 「ねえ、火をつけちゃいけないランプって何だ?」

 「は?」

 ライザさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。これはいわゆるなぞなぞだ。

 「そんなことしてる暇ないだろ」

 「いいから考えて。これくらいのなぞなぞに答えられないようじゃ笛デビルにしてやられますよ」

 ライザさんは納得のいかない様子で考え始める。

 「・・・わかった。トランプだろ?」

 「ブーッ」

 「え?じゃあ何?」

 「正解はガソリンまみれのランプでした」

 「それ、なぞなぞの答えじゃねーだろ」

 「そうすかね」

 「そうだよ」

 お互い顔を見合わせる。

 「・・・プッ」

 「クスッ」

 何だかおかしくなり、お互い笑う。

 「お前、意外とおかしなこと言うんだな」

 「レンが落ち込んだ時によく言ってるんだ」

 「レンが?」

 「真面目でしょ?あいつ」

 「あー、確かになー」

 レンがミスしたり学校で嫌なことがあったりしてしょげてる時に、こういうずるいなぞなぞを言うとずるいずるい!と怒りながらも、いつの間にか笑っている。

 ジュンたちもそうだ。落ち込んだりした時は俺やレンたちがおかしなことを言って、ふざけあって励まし合う。

 俺が落ち込んでる時だって、逆にレンたちが助けてくれることもある。

 「だからさ、一人で抱え込まないでってことです」

 「・・・・・・・・・」

 「互いを互いが助け合うのが人間、そして戦隊でしょ?」

 いきなり俺達は家族だ、友達だ、なんて言えないけど、こうして少し元気を与えることはできる。

 そして今度は、ライザからも元気をもらいたい。

 「ありがとな!メグミ!!元気出たぜ!!」

 「そうか!良かった!!」

 「この戦いが終わったら、お前んちのカレー食わせろ。大盛四杯な!」

 「うちはカレーは大盛二杯までって決まってるんで。二杯にしときな」

 「あーっ!厳しいー!そんなに厳しいとレンたちグレるぞー!?」

 「いや、そんなことは・・・ないと思う」

 「何だよ今の間は」

 そんなこんなでお互いふざけ合いながら、俺たちは子供たちを助けるため目的地へ向かった。

 

 

 

 

 「ピュピュピュピュ・・・。だいぶ子供たちも集まった・・・」

 闇夜の寺、地蔵が月明りに照らされ少々不気味に見える。

 そこには無数の目に光がない子供たちと、怪人笛デビルがいた。

 「さて、そろそろ本部へ戻るか。兵士用の子供たちも連れて・・・」

 「そうはいかないぞ!」

 「むっ!?」

 そこに現れたのは、グランイエローとラブピンクの二人だった。

 「貴様ら、どうしてここが?」

 「さっきの戦いのとき、子供たちの一人に発信器をつけておいたのさ」

 「むう・・・信じられん。ありとあらゆる電波を察知できる俺様の耳を欺くとは」

 「キズナイジャーの発信器はキズナ力を発信してるんだ。お前ら闇の住民じゃあ察知できないだろうよ」

 「ぬう、味な真似を」

 笛デビルは悔しそうに身を震わせる。

 「だがどうする?この子供たちの盾を突破できるかなー?」

 「くっ、卑怯だぞ!」

 「ピューッ!卑怯もラッキョウも大好物だ!それに!!カモン!!」

 パチンと指を鳴らす笛デビルの目の前に現れたのは。

 ウィンドグリーン、明 風鈴だった。

 

 「「風鈴!!」」

 「ピューピュッピュッピュ!!俺様には心強い兵隊がいることを忘れたか!?さあウィンドグリーンよ!あのデカ女とピンク男をけちょんけちょんにのしてしまえ!!」

 「はっ、笛デビル様」

 風鈴はキズナブレスレットを作動させた。

 「チェンジダンケツ」

 そして洗脳状態のまま、ウィンドグリーンに変身してしまった。

 「目を覚ませ!風鈴!!」

 「無駄無駄。俺様の洗脳は決して解けやしない。さあ行け!キズナイジャーの手でキズナイジャーの首を取るのだ!!」

 「参る」

 グリーンはウィンドブーメランを構え、イエローとピンクに高速で突撃してきた。

 「ぐわあっ」

 「くそっ、攻撃できない!」

 仲間に攻撃などできるわけがない。

 それに、風のエレメンタルによって高速で移動し、攻撃を仕掛けてくる風鈴を補足するのも困難であった。

 「ヒャーハハハハハッ!!!これほど面白い見世物もないなぁ!!ゲヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」

 笛デビルは下種な笑いを響かせながら、キズナイジャー同士の戦いを観戦していた。

 

 

 (ライザ、メグミ、耐えて・・・)

 そんな中、ブルーは寺の天井裏に潜んでいた。

 目的はもちろん、笛デビルを攻撃するためである。

 『笛デビルの洗脳音波が出ているのは、頭の笛からだ。それを壊せば子供たちの洗脳は解けるだろう』

 長官の言葉を思い出しながら、ブルーは慎重にアクアーチェリーで笛デビルに狙いを定めていた。

 (決して失敗できない)

 ワンチャンス。ワンショット。この一撃に全てをかける。

 ブルーは音を鳴らさないよう慎重に弓を引いた。

 

 そして水の矢が放たれた。

 

 その矢は。

 

 笛デビルには命中しなかった。

 

 「なっ!?」

 「ピュッピュッピュッ!狡い真似を!音波砲!!」

 「ああっ」

 ブルーに直撃こそしなかったが、屋根裏が吹き飛ばされ、ブルーは床にたたきつけられた。

 「ブルー!」「ブルー!!」

 「ぐっ、くっ!」

 「ピューピュッピュッピュ!頭の回らん奴らよ!!俺様は100㎞先に落ちた針の音も聞き分けられるのだ!貴様が屋根裏に潜んでいた程度のことなど、百も承知だったわ!!」

 「迂闊・・・」

 「ちっくしょーっっっ!!!」

 「ここまでか・・・」

 ラストチャンスも不意にしてしまい、洗脳を解く方法も無くなった。

 「さあ、とどめは同じキズナイジャーに刺してもらうことにしよう。ウィンドグリーンよ!!」

 「はっ」

 「奴らの首をはねてしまえ!!」

 「御意」

 洗脳されたグリーンが、負傷したキズナイジャーに迫ってくる。

 もはやキズナイジャー達に打つ手はない。

 勝負は決したのだ。

 

 

 「ところが、ぎっちょん」

 

 ズバズバズバァッ!!

 

 「ぐぎゃあああああっっっ!!!」

 「うん!?」

 「何だ!?」

 「一体何が・・・?」

 笛デビルの頭の笛は切り裂かれていた。

 ウィンドグリーンの手によって。

 「あれーどうしたんだろう?」

 「ここどこー?」

 「おかーさん!こわいよー!」

 「子供たちの洗脳が解けた!!」

 「みんな!こっちだ!!」

 『わあああああああああああ!!』

 「ああっ!かわいい子供たちぃぃぃ!!!」

 「相変らず、キモイッ!!」

 

 ザシュッ

 

 「ぎゃん!!」

 グリーンがさらに、ウィンドブーメランで笛デビルを斬り裂いた。

 「風鈴!」

 「操られてなかったんだな!!」

 「よかった・・・」

 「ぐおおおっ!何故だ!!?」

 「ふーん、私の耳はエレメンタルでコーティングしてあったの」

 「何!?」

 「エレメンタルでガードすれば、あんたの洗脳音波は効かないって聞かされてたからね。でもそれだけじゃ子供たちの洗脳は解けないからさ。長官と相談して一芝居打ったってわけ」

 『その通りだ。よくやってくれた、風鈴』

 「長官!!」

 「知ってたなら教えてくれよ!!」

 「伝達不足。私たちにも知らせてほしかった」

 『敵を騙すには、まず味方からだ』

 

 「ぐぅぅ~!おのれ~!!許さん!!バッテン兵!!」

 「バッテン!」「バッテン!!」

 地面から無数のバッテン兵たちが沸いてきた。

 「5人揃わぬキズナイジャーなど恐るるにたらず!やってしまえ!!」

 「そうはいかない!!」

 「何ぃ!?」

 「フレアビュート!!」

 「「「「バァーテッン!!」」」」

 ズビシィッと炎の鞭が閃き、バッテン兵たちをあっという間に叩きのめした。

 そこに現れたのは、治療中のはずのフレアレッド、赤崎ホムラだった。

 「ホムラ!」

 「大丈夫なのか!?」

 「子供たちが大変なのに、おちおち寝てなんかいられない!!」

 「ホムラ、無茶は禁物」

 「だいじょーぶ!ちゃっちゃとあいつ倒してちゃっちゃと寝るよ!」

 「やれやれ、リーダー様は全く」

 

 「き、貴様ら~」

 

 「固いキズナ!グランイエロー!!」

 

 「熱いキズナ!フレアレッド!!」

 

 「満ちるキズナ。アクアブル―」

 

 「吹きゆくキズナ。ウィンドグリーン」

 

 「愛のキズナ!ラブピンク!」

 

 「5人揃って!!」

 

 「団傑戦隊!キズナイジャー!!」

 

 ドドドドド―――ンッッッ!!!!!

 

 「なあこれ寺の修繕大丈夫か!?」

 「あとで長官がどうにかしてくれるでしょ」

 「超科学力。それが長官の良い所」

 「どっちかというとご都合主義だろ」

 「うぅ~くそっ!覚悟しろ貴様ら!!」

 「覚悟するのはお前だ!ゴーッ!!」

 

 相対する笛デビルとキズナイジャー。

 「こいつは私に任せろ!こいつだけは許せねえ!」

 「小娘が!!」

 笛デビルの前にグランイエローが立ちふさがった。

 笛デビルは巨大なフルートのような武器を取り出し向かってくる。

 「グランステッキ!!」

 イエローは穂先に岩の付いた棍棒、グランステッキで応戦した。

 「だぁっ!とりゃっ!!おうりゃぁっ!!!」

 「ぶっ!ぐえっ!!ぎゃああっ!!!」

 武器のフルートごと粉砕され、笛デビルは叩きのめされた。

 「あいつ、直接戦闘能力は大したことない」

 「得意の音波砲ももう出せないみたいだな!」

 「おのれ~!こうなれば最後の手段!」

 笛デビルはじりじりと後ずさりし。

 「逃げる!!」

 スタコラサッサと逃げていこうとした。

 「あっ、待て!!」

 「ここは私に任せて」

 グリーンはウィンドブーメランを取り出し構えた。

 「演技とはいえ、仲間に攻撃させたお礼したげる!ブーメラン!!」

 

 ヒュルヒュル! ズバァッ!!

 

 「ぎゃあああんっ!!」

 「よし当たった!」

 「やったな風鈴!」

 「まーね」

 イエローとグリーンはハイタッチした。

 

 「今だ!ピンク!!エレメンタルストーム!!」

 「OK!エレメンタルストーム!!」

 ラブピンクが自分の愛のエレメンタルを集め、球状にし仲間にトスをする。

 「イエロー!!」

 「任せろ!グリーン!!」

 「オーケー!ブルー!!」

 「オーライ。レッド!!」

 4人のエレメンタルが集中したエネルギー弾が、レッドの頭上高くに上がる。

 「フィニッシュ!!」

 レッドにより蹴り飛ばされたエネルギー弾が、逃げていこうとする笛デビルに直撃し爆散した。

 「ぎゃああああああああああっっっ!!!!!」

 

 ドゴゴゴォォーーーーーンッッッ!!!!!

 

 「よっしゃぁぁぁ!!」

 「一件落着」

 「子供たちも無事に家に帰れたかな」

 「やー良かった良かった!みんな無事で!」

 「それにしてもこんな短時間でケガ治してくるなんて、さっすがリーダー様」

 風鈴がホムラの体をポンッと叩く。

 「いったぁぁぁぁぁーーーっっっ!!!」

 「え?まだケガ治ってないの?」

 「やっぱ無理してたのか」

 「ホムラ・・・無茶しないでって言ったよね・・・」

 「早く早くメディカルカプセルへ!!」

 戦い終わった後も締まらない5人である。

 だがこれこそ、平和の象徴なのだ。

 

 

 

 今私はメグミの家に向かっている。たくさんの食料を持って。

 それに私だけじゃなく、ホムラたち3人も一緒だ。

 「「「「お邪魔しまーす」」」」

 「あ!ライザおねーちゃん!」

 「おー!レン!」

 「いらっしゃい風鈴ちゃん!」

 「おっす、ジュン」

 「ホムラねーちゃん!遊ぼうぜ!!」

 「いいよー、ジョウくん」

 「ナガレさん、また勉強教えて・・・」

 「うん、マナちゃん」

 これからメグミの家でパーティなのだ。

 

 「いらっしゃいみんな。今からご飯の準備するから」

 「じゃあその間レンたちは任せな」

 「一緒に遊んどくから!」

 「家事分担。集団でいたら重要なこと」

 「まっ、私は一緒にユー〇ューバーの動画見るだけだけど」

 「いや、助かるよ。今日は楽しんでってくれ」

 まあ特に何もない日だけど、いいよな。

 

 「メグミ、約束通り大森4杯な?」

 「2杯にしとけって、ライザ」

 「ずりーの」

 「何コソコソ話してんの。不純なやつらめ」

 「そんなんじゃないって風鈴」

 「そうだよ、取ったりしねーから」

 「落ちろもげろ泣け」

 何でもない日にパーティしたって。

 

〇キズナイジャーファイルその4

名前:笛デビル

身長:165㎝

体重:53kg

能力:笛の音による洗脳能力、100㎞先に落ちた針の音をも聞き分ける超聴覚

技:音波洗脳 笛の音で人間を洗脳する。サイクルを変えることでどんな人間、生物も洗脳できる。

  音波砲 口の笛から音波の衝撃波を放つ。その威力は小さな山なら吹き飛ばせるほどである。

備考:洗脳などの特殊能力に秀でているぞ!だがその分、近接戦闘能力はあまり高くないんだ!


〇次回予告

戦いの最中、子ども扱いされ拗ねる風鈴。だがそんな時、風鈴を除く4人がデビル怪人の手にかかり負傷してしまった。戦えるのは風鈴ただ一人!頑張れ風鈴!小さな体に宿る、大きな力を見せてやれ!!

次回!団傑戦隊キズナイジャー!!

「グリーンスナイパー!風鈴危機一発!!」

どうぞお楽しみに!!

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