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団傑戦隊キズナイジャー  作者: 岩ノ森
6/7

イエローサウンド!闇夜で遊ぶな子供たち!!(前編)

 「あ」

 「よお!奇遇だなメグミ!」

 夕飯の買い物中、同じキズナイジャーの一員、グランイエローの大岩ライザさんと出会った。

 「買い物か?」

 「まあ。大岩(おおいわ)さんも買い物ですか?」

 「まーな。同じく晩飯の」

 横目で見てみるとスーパーのカゴの中にレトルト食品や総菜パンなどが山盛りになっていた。正直、いささか栄養バランスには欠ける。

 「あはは、ずぼらと思っただろ?」

 「いやそんなこと・・・」

 「目がそれてるぞー?」

 「すんません・・・」

 顔に出てしまっていたらしい。失礼だった。

 「いいっていいって。ホントのことだし」

 大岩さんは朗らかに笑う。天真爛漫な人とはこんな人のことを言うんだろう。

 

 「てか一人暮らしだとな―、難しいんだよ。実家みたく栄養バランス取れた飯」

 「一人暮らしなんですか?」

 「ああ、大学行きながら下宿してる」

 なるほど、俺より年上だろうなとは思っていたけど大学生だったか。何となく飄々とした自由気まま感が漂っているように見えたのはそのせいかもしれない。

 確かに独り暮らしだと炊事洗濯掃除全部自分でやらなきゃだもんな。そりゃ大変だろう。

 「良かったら、今日食べに来ます?」

 「えっ、いいのか?」

 「ええ、弟たちも喜ぶだろうし」

 「そっかー、確かにレンたちと会いたいなーって思ってたところなんだ。お邪魔していい?」

 「ええ、散らかってますけど」

 「んじゃあお言葉に甘えて」

 予期せぬ来客が来ることになった。

 ちょっと多めに買っておいてよかった。

 

 

 

 「ただいまー」

 「お邪魔しまーす」

 「あー!ライザお姉ちゃん!!」

 「いらっしゃーい!」

 「ライザ!早速遊ぼうぜ!」

 「ゆっくりしてってくださいね」

 「はははっ!ありがとなチビたち」

 帰宅した俺たちを4人の兄弟たちが迎えてくれた。みんなライザが遊びに来て興奮しているみたいだ。

 

 俺がキズナイジャーになった日、他のキズナイジャーの女の子たちを夕飯に誘った。その時、妹のマナ、ジュン、弟のジョウ、レン達はあっという間に大岩さんを始めとするメンバーのみんなと仲良くなった。社交性の高い人たちだ。

 「じゃー私はレンたちと遊んでるから、メグミは夕食の準備しててくれ」

 「はい、ありがとう」

 こうして兄弟たちの面倒を見ててくれてると助かる。まだみんな小学生だから、いかにしっかりしてると言えど目を離すとやはり不安だからだ。

 「ねーねー、ライザお姉ちゃん。今日風鈴ちゃんたちは来ないの?」

 そう大岩さんに尋ねるのは長女のジュン。女の子だけど男の子並みに元気いっぱいのお転婆だ。

 「ごめんなー、今日は私だけなんだ」

 「えー!ホムラねーちゃんにもあいてーよー!」

 そう駄々をこねるのは次男のジョウ。見ての通りわんぱくな男の子って感じだが意外と聞き分けはいい。

 「ジョウ、ライザお姉ちゃんにめいわくかけちゃダメだよ?」

 「レンはいい子だなー、うりうりー」

 「あ、ありがとう、ございます・・・」

 そうジョウを諫めるのは末っ子の三男のレン。大人しくて真面目で頭もいい。ライザとは一番仲がいいみたいだ。

 「あーあー!レン照れてるー!エロいのー!!」

 「えっ、エロくないよ!!」

 「二人ともぉ、落ちついてよぉ・・・」

 そう半泣きで仲裁に入ったのは次女のマナ。気弱だけど優しい子で、家事もよく手伝ってくれるいい子だ。

 「ほらほらケンカすんな!たっく弟たちはー」

 「ジュンの言う通りだ。今日はメグミたちの分もみんなと遊んだげるから。それで我慢してくれ、な?」

 「ちぇーわかったよー」

 「ごめんなさい・・・」

 「謝んなくていいよ。それよりゲームで対戦しよっか?」

 「「「「わーい!」」」」

 もうすっかりみんなと打ち解けている。面倒見のいいお姉ちゃんって感じだな。

 でも正直ちょーっと嫉妬もするけど。

 「ああヤバイ焦げる焦げる」

 目を離しているうちにミートソースに焦げ目がつき始めていた。

 

 

 

 

 「というわけでさー、昨日はすっかりご馳走になっちゃってなー」

 私たちは今、キズナイジャーの特訓とミーティングのため、母艦ドラゴンコンドルに集まっていた。雑談となって昨日、メグミの家でご馳走になったことをつい話した。

 「むーメグミー。私たちも誘ってくれれば良かったのにー」

 「ごめんごめん、たまたま大岩さんと会ってさ」

 「依怙贔屓。私もマナちゃんと会いたかった」

 「悪かったって。今度誘うから」

 メグミはホムラとナガレから責められていた。二人もレンたちとは仲が良いからな。特にホムラはジョウと、ナガレはマナちゃんと仲がいいらしい。

 「女子大生家に誘うとか。不純だわ不純」

 その中でもひと際不機嫌そうなのが風鈴(ふうりん)だった。

 「変なこと考えてたんじゃないのー?」

 「いや別に考えてないよ」

 「どうかねー、所詮男子なんて頭の中サルだからねー」

 「ウッキー・・・」

 「ちょっと風鈴、流石に感じ悪いよ?」

 「小学生とはいえもう少し慎むべき。礼儀大事」

 「へーへー」

 「まあまあ」

 目つきを鋭くして分かりやすく拗ねてる。ちょっと大人びた服着てるけどこういう所はまだ子供だな。微笑ましい気もするけど。

 「大丈夫。何もされてないよ」

 「ならいいけどさ」

 風鈴はやれやれと呆れたような仕草をする。大人の真似をしたいお年頃なんだろう。

 「風鈴」

 「ん?」

 私はこっそりと、風鈴に耳打ちした。

 「大丈夫、取ったりしないから」

 「このバカ金髪もげろ落ちろ」

 風鈴がドカドカと殴ってきた。

あまり痛くはなかった。

 

 

 

 皆が寝静まった深夜。人一人おらず響くのは虫たちの鳴き声くらいだ。

 だがそんな夜の世界に響き渡る、謎の音があった。

 

 ピューピューと笛のような音。

 妖しく思えるが心地いい音。

 その音の出る場所に思わず行ってしまいそうになる。

 

 しばらくして夜の家の扉が次々と開いた。

 出てきたのは小さな子供たちだった。

 子供たちは、笛の音の鳴る方に歩いていく。

 まるで花の香りに誘われる虫のように。

 

 そして子供たちは闇夜に消えた。 

 

 

 

 『ニュースです。昨夜、Nエリアの住宅の子供たちが一夜にして消えるという事件がありました』

 「何だって・・・?」

 そんなニュースが流れてきたのは、メグミが兄弟たちと朝食をとっていた時のことである。

 『警察はこの不可解な事件を同一犯による連続誘拐事件として調査を・・・』

 「怖いなーゆうかいだってよー」

 「私たちもさらわれちゃう・・・?」

 「大丈夫だってマナ。お兄ちゃんもいるし」

 「でもなるべくみんなで固まって外でた方がいいかもね」

 「レンの言う通りだ。必要以外の時は外に出ないこと。そして外に出る時はなるべく大勢固まって出ること。分かった?」

 「「「「はーい」」」」

 兄弟たちに注意はしたが、メグミの心の中は不安でいっぱいだった。

 メグミはこの事件に、ブラッククロスの影があると直感していた。

 

 

 

 「みんな!」

 「おー来たか」

 「遅いっての」

 「メグミ!ニュース見た?」

 「推測するに、この事件はおそらく・・・」

 『間違いなくブラッククロスのデビル怪人が引き起こしている』

 ドラゴンコンドル内に長官の通信が流れる。

 『他の惑星でもあった事例だ。子供たちが謎の音に誘われ神隠しのように消えた。そうして惑星中の子供がいなくなり、住民たちが失意に暮れている隙を狙ってあっという間に征服完了する』

 「なんてひどい・・・」

 「こっすい作戦」

 「子供を狙うなんて許せねえ・・・」

 「長官!そのデビル怪人の場所は分からないのか!?」

 子供を侵略に利用するなど一番許せぬ作戦である。キズナイジャーは怒りに燃えていた。

 『昨夜のNエリアで発せられた電波の波長は分かっている。後はその電波がもう一度発せられれば、その発信源を辿り場所は特定できるだろう』

 「現状後手に回るしかない・・・」

 「今すぐ特定できねーのか!?第二の被害者が出てからじゃ遅いぞ!!」

 『心配はいらない。まだ子供たちの体は無事だろう』

 「その根拠は!!?」

 『いずれ分かる。とにかく現在はまだ待機していてくれ』

 そう言って長官との通信は切れた。

 

 「ちくしょー!!」

 「子供たちを早く助けないと・・・!」

 「・・・悔しいけど焦ってもしょうがない」

 「とにかく、夜まで待つしかない」

 「徹夜になる?じゃあ私夜の分も寝だめしとくわ」

 何もできない自分たちにもどかしさを覚えながら、キズナイジャー達は長い長い1日を過ごし夜を迎えた。

 

 

 

 月明りで夜空が仄かに紫色に見える深夜。またも妖しい笛の音が響き渡る。

 『Dエリアで怪しげな音波が発生した。すぐ向かってくれ』

 待機していたキズナイジャー達がDエリアに急いで向かう。

 「子供たちが!!」

 外には無数の子供たちが、夢遊病にでも罹ったかのようにフラフラと裸足の状態で歩いていく。

 「ガラス片でも踏んだら破傷風になっちまう!」

 「みんな!家に戻れ!!」

 『無駄だ。子供たちは催眠にかかっている。発信源を叩かねば』

 「その発信源は?」

 『ポイント83に確認した』

 「よし!すぐ向かってデビル怪人倒しちゃおう!」

 「てかさ、同じくちっこい子供の私は大丈夫なわけ?」

 『ヘルメットに特定の周波数を遮断する遮音装置が施されている。それに、エレメンタルである程度は跳ね返せるからな』

 「便利かエレメンタル」

 これ以上子どもたちを苦しめるわけにはいかない。

 キズナイジャー達は急いでポイント83に向かった。

 

 

 

 「ピュピュピュ・・・かわいいかわいい子供たちが俺様のもとに集まってきている」

 そう暗がり古びた倉庫の中で、子供たちを侍らせ呟く怪人がいた。

 頭部はまるで蚊や蝶のような虫を思わせる形状、だが触角と口吻にあたる部分が縦笛のような器官となっていた。

 「ピュピュ、子どもたちよ。こっちにこい・・・。分からず屋の親たちに飼われて暮らすよりずっとずっと幸せだぞ・・・」

 「そこまでだ!」

 「むっ」

 その時、暗闇に現れる五色の影。

 「現れたようだなキズナイジャー」

 「この化け物め!子供たちを離せ!!」

 「化け物とは実に心外。ピュピュ」

 怪物はマントを翻す。

 「俺様の名はデビル怪人!(ふえ)デビル!!」

 「笛デビル!?」

 「そうか、笛の音で子供たちを操っていたんだな!」

 「その通り、かわいい子供たちは今や俺様の手の中にある」

 笛デビルはねっとりとした手で近くにいた女の子の顎を撫でる。

 「こんなかわいい子供たち、家の中に閉じ込めておくのはもったいなかろう・・・。ピュピュ」

 「うーわ、キモッ」

 「え」

 「小児愛者。しかも同意なしとは始末に負えない」

 「同意があってもダメでしょ」

 「ピュピュ・・・・・」

 グリーンとブルーの二人に軽蔑され、流石のデビル怪人も傷ついたようだ。

 「そんなに子供たちを集めて・・・いったい何が目的なの!?」

 「まさかお遊戯始めるってんじゃないよな?」

 「ピュピュピュ、冥土の土産に教えてやろう」

 笛デビルの目に今までで一番危険な光が宿った。

 「ブラッククロスの兵士にするのだ」

 「何・・・?」

 「その惑星の子供という子供を攫い、大首領の闇の因子を植え付け、次代のブラッククロスの兵隊として改造する。どうだ、自分勝手な親元で育ち鬱屈した世の中に出ていくよりもずっと栄光ある未来をプレゼントしてるとは思わんか!?ヒャーハハハハハッ!!!」

 子供を侵略兵器として使う。なんと非道な作戦で有ろう。

 キズナイジャーは全員怒りで震えていた。

 「貴っ様ぁ・・・」

 「ゆるさん!!!」

 「おっとぉ、いいのかなぁ。子供たちを巻き添えにして。ピュピュピュ」

 笛デビルは、子供たちの群れの後ろに隠れた。

 「なっ、卑怯よ!?」

 「戦いに卑怯もラッキョウもあるものか。ピュピュピュ」

 これでは攻撃したら子供たちに当たってしまうかもしれない。迂闊に動けないキズナイジャーだった。

 「さあかわいい子どもたちよ。か弱いおじさんを守っておくれ。ピュピュピュ」

 子供たちが笛デビルの前に人間の盾となって立ちふさがった。

 「くっ、みんなどいて!」

 「無駄。みんな洗脳されてる」

 「どうすれば・・・ん?」

 その子供たちの中に、ピンクは信じられないものを見つけた。

 「レン!?」

 そう。メグミの弟、レンが洗脳された子供たちの中にいたのである。

 「マナちゃんたちもいる!」

 他の兄弟たちも、洗脳されて連れてこられたらしい。

 「ピュピュピュ!キズナイジャーの身内か!これも面白い!!さあ攻撃できるかなぁ!?」

 「貴様ぁー!!」

 「ピンク!落ち着け!!」

 「うがああああ!!!」

 「私たちだって悔しいのは同じだ!」

 「でも現状何も手がない・・・」

 キズナイジャー達は完全に追い詰められていた。

 

 「ピュピュ―!楽しんでくれているかキズナイジャー?もっと面白いものを見せてやろう!!」

 「何!?」

 そうピンクが叫んだ瞬間、風の刃がキズナイジャー達“4人”を切り裂いた。

 「「「「うわああああああああああああ!!!!」」」」

 笛デビルの前に一凪の影が現れる。

 「ま、まさか・・・」

 その影は、みんながよく見知った影であった。

 「風鈴!?」

 ウィンドグリーン、(めい) 風鈴(ふうりん)である。

 「なっ、洗脳対策を施してたんじゃ!?」

 「残念だったなぁ。お前ら程度のヘルメットの遮音装置じゃ俺様の笛の音は誤魔化せないよ、ピュピュピュ」

 笛デビルは風鈴のみに聞こえる周波数の音色を少しずつ発し、バレないよう風鈴を洗脳したのである。

 「そ、そんな、風鈴まで」

 「隙あり!!」

 「あっ!!みんな危ない!!」

 危険を察知したレッドが、自分以外の全員を押しのける。

 「音波砲!!」

 

 ドゴーーーンッ!!!

 

 「ああああああーっ!!!」

 「「「レッド!!」」」

 レッドは笛デビルの放った音波砲を真正面から食らってしまいその場に倒れた。

 「まずい、一度退くしかない」

 「でも子供たちが!」「レン達も風鈴も!!」

 「グリーンも術中に落ちて、レッドも負傷している。どう考えても勝機はない」

 『ブルーの言う通りだ。一先ず、君たちを回収する』

 長官から通信が入った途端、倉庫の屋根を突き破りドラゴンコンドルが現れ、転送ビームでメグミたちを回収した。

 

 「ピューッピュッピュッピュ!キズナイジャー破れたり!!」

 笛デビルはゾンビのように突っ立っている子供たちの群れの中で、高らかに勝利に耽っていた。

 

 

 このまま子供たちはブラッククロスの兵士となってしまうのか!操られた風鈴の運命は!!倒れたホムラの命運やいかに!?

 負けるな!キズナイジャー!!団結せよ!団傑戦隊キズナイジャー!!

 


〇キズナイジャー小劇場その2

ホムラ「私たちが映像化されたらさー」

ナガレ「気が早い」

ホムラ「曲が付くわけじゃん?」

ライザ「そうだな」

ホムラ「戦隊のEDだからやっぱりダンス踊るのかな?」

ライザ「戦隊のEDつったら爽やかな青春ソングだろ」

ナガレ「戦いの虚しさを歌うバラード」

ホムラ、ナガレ、ライザ「・・・・・・・・」

ホムラ「ダンス」

ライザ「青春」

ナガレ「バラード」

ホムラ「ダンス!」

ライザ「青春!」

ナガレ「バラード」


風鈴「くだらないことでケンカすんなし」

メグミ「風鈴さんは何がいい?」

風鈴「演歌」

メグミ「へぇー・・・」

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